焼けた釘を刺す - か行の著者
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焼けた釘を刺す

著者:くわがきあゆ

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帰省した千秋は、後輩の萌香がストーカー被害に遭っている、ということを知る。そして、その数日後、その萌香が他殺体となって発見される。千秋は、萌香を殺した犯人を捜すため、彼女の服を身にまとって調査を開始するが……
第8回暮らしの小説大賞・受賞作。
『このミス』大賞を受賞した著者だけど、実際のデビュー作はこちら。一応、これで3作目になるのだけど、これで確信した。著者は、こういうドロドロとした、かつ、異様な感情を持った主人公を描くような作品を得意としているのだな、ということを。
物語の主人公は二人。冒頭に書いた千秋は、自分の後輩が殺されたことを知り、その犯人を自ら探す。そのために、萌香が来ていた服を身にまとい、彼女が通っていた大学のサークルに参加したり、彼女のアルバイト先の喫茶店に顔を出すように。明らかに大学生ではない千秋に怪訝な目を向ける者もいるのだが、そんな中で怪しい存在を見繕っていく。一方、就職に失敗し、現在はブラック企業で働く杏。職場でも、叱られてばかりだが、唯一、自分に優しくしてくれる先輩に心惹かれていくのだが……
まぁ、この文章だけならば、そんなに変な連中ということはないと思うはず。死んだ萌花と同じ服を着て、その周辺をうかがっている存在がいたら、それは怪しいと思うのは当然だし、杏に関しては何一つとしておかしなところがないのだから。
しかし、後輩の仇を、という千秋の中にあるどうしようもない性癖。引っ込み思案で、職場で苦労している杏の抱えている過去と、そこから覚えたこと。どちらも、色々と狂った存在と言える。そんな両主人公の隠された一面が明かされながら、やがて、その萌香殺害事件の真相へと迫っていくところで、もう一つ、大きな仕掛けが炸裂する。それまでの言動などの意味が全く違う形になり、なるほどな、という感じになり、さらに最後のページで明かされることは……
作品のカラーはこれまで読んだ作品と近いものがあるのだけど、でも一番、楽しめたように思う。

No.7184

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Tag:小説感想くわがきあゆ

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