ホワイ・ダニット 行動心理捜査官・楯岡絵麻 - さ行の著者
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ホワイ・ダニット 行動心理捜査官・楯岡絵麻

著者:佐藤青南



シリーズ第10作となる連作短編集。全4編を収録。今回は、タイトルの通り、犯人の動機というのがテーマになっている。
1編目『殺人動画にいいねとチャンネル登録お願いします』。人気のカップル配信者「はるみき」のハルトが配信中に殺害された。まもなく、犯人として、このチャンネルの熱狂的なファンが逮捕される。犯人の女は、自分が殺したことを認め、動機は「ハルトの浮気によって、二人の関係も終了。それが許せなかった」というのだが……
ここまでのシリーズで描かれたエピソードの中でもトップクラスにねじ曲がった話のような感じがする。配信者を殺した犯人は確保。動機そのものも、一応、筋が通っている。実際に、恋人同士、ということで活動をしている二人だけど、数か月前に破局。それでも配信は続けているものの、そこで映る表情などには確かに親愛な様子はなかった。そして、その女性側には明らかな嘘のサインが見えていて……。女の側が、実行犯を唆した? しかし、犯人は単独犯と供述しており……。実行犯自身に自覚がないからこそのややこしさ、というのが面白かった。ただ、じっくりと調べれば、結構、簡単にからくりはバレるんじゃないか? とも思ったりはするけど。
2編目『指名料はお前の命で』。新宿で男が暴行の末に殺された。男は新米ホストで、その店のナンバーワンホストから厳しく叱責されていた。まもなく、絵麻は、ナンバーワンホストが犯人と見抜くのだが……
やる気のない新人ホストをナンバーワンが指導をする。しかし、そんな指導に対して、あまりやる気の感じられない反応。だから……。そんな動機は筋が通っている。しかし、他の新人などには目もくれなかったナンバーワンがなぜ、被害者にだけ? これだって、体育会系な世界では、と言えばそうかも知れない。だが、ナンバーワンの過去などを探る中で露になるのは……。真の動機は一応、露になるけど……最後に絵麻が言う結論はちょっと納得できなかったかな? 勿論、プライドというのもあるとは思う。思うのだけど、同時に被害者との関係性には、色々な想いが渦巻いていると思う。それをその一言でまとめるのは、ちょっと強引な気がしないでもない。
1編目はともかく、2編目以降は、犯人は最初から明らかで、なおかつ、犯行自体も認めている、というところから。それだけに、じっくりと捜査をすれば動機は明らかになりそうな気はする。けれども、それを一足飛びに、というのがこの巻の見どころ、という感じなのかな? という風に感じる。
その上で、シリーズ当初から絵麻とコンビを組んできた西野が婚約。コンビ解消という話も見え隠れ。その一方で、そんな西野、そして絵麻を狙う黒幕ともいえる存在の暗躍。シリーズ完結へ向けて、という感じがするけれども、これらをどうまとめるのだろう?

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Tag:小説感想佐藤青南

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