著者:知念実希人
唯一の肉親である父が死んだ。悲しみに暮れる医師・千早の前に現れた弁護士は、父の遺言により、その遺体を解剖せよと告げる。納得のいかない千早。しかし、その遺言通りの解剖に自らも立ち会うことを決意する。果たして、その胃壁にはメッセージが残されていた。さらに、父がかつて敏腕刑事と呼ばれており、ある連続殺人犯を追っていたことも判明。28年ぶりに、同様の殺人が起こる中、千早は、解剖を共にした病理医・紫織と共にその犯人を追うことに……
うーん……ちょっと無理がないか?
唯一の肉親である父の死。その遺体の胃壁には……。この時点で色々と無理がある設定のように感じるのだけど、そんなとき、父の元同僚だったという刑事・桜井が現れ、父がかつて鬼刑事と言われていたことを知らされる。そして、時を同じくして、28年前に世間を騒がせていた連続殺人鬼「折り紙」が再び動き出す。父は、その折り紙を追うために、警察を辞していた……という形で物語が始まる。
物語のテンポの良さとか、そういうのはいつも通り。母の死の後、どうしても疎遠になってしまった千早と父の関係性。自分は、父に愛されていなかったのでは? 最後のやり取りも、「お前は自分の娘ではない」というものだったし……。そんな千早の疑念。その中で起きた殺人事件。28年前、それは、自分が生まれた年。その時に何があったのか? 連続殺人の中で、唯一、被害者の遺体が発見されていない事件。それは何なのか? そして、警察を離れた父が取っていた奇妙な行動の意味とは?
これは、メタ的な視点になってしまうのだけど、読者としては、これを読んでいる最中に父が隠していた秘密の一つは想像できてしまうんだよな。そして、そこから父が取っていた行動の意味も……。当事者でもある千早が気づけないのは仕方がないのだけど、どうしても読者目線では「違う、そうじゃない!」という感じがしてしまう部分が多かった。
物語として、確かに、綺麗にまとまって入るのだけど、最初に書いたように、ちょっと無理な設定を上手いこと料理してまとめ上げた、という印象がどうしても残った。
No.5890
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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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唯一の肉親である父が死んだ。悲しみに暮れる医師・千早の前に現れた弁護士は、父の遺言により、その遺体を解剖せよと告げる。納得のいかない千早。しかし、その遺言通りの解剖に自らも立ち会うことを決意する。果たして、その胃壁にはメッセージが残されていた。さらに、父がかつて敏腕刑事と呼ばれており、ある連続殺人犯を追っていたことも判明。28年ぶりに、同様の殺人が起こる中、千早は、解剖を共にした病理医・紫織と共にその犯人を追うことに……
うーん……ちょっと無理がないか?
唯一の肉親である父の死。その遺体の胃壁には……。この時点で色々と無理がある設定のように感じるのだけど、そんなとき、父の元同僚だったという刑事・桜井が現れ、父がかつて鬼刑事と言われていたことを知らされる。そして、時を同じくして、28年前に世間を騒がせていた連続殺人鬼「折り紙」が再び動き出す。父は、その折り紙を追うために、警察を辞していた……という形で物語が始まる。
物語のテンポの良さとか、そういうのはいつも通り。母の死の後、どうしても疎遠になってしまった千早と父の関係性。自分は、父に愛されていなかったのでは? 最後のやり取りも、「お前は自分の娘ではない」というものだったし……。そんな千早の疑念。その中で起きた殺人事件。28年前、それは、自分が生まれた年。その時に何があったのか? 連続殺人の中で、唯一、被害者の遺体が発見されていない事件。それは何なのか? そして、警察を離れた父が取っていた奇妙な行動の意味とは?
これは、メタ的な視点になってしまうのだけど、読者としては、これを読んでいる最中に父が隠していた秘密の一つは想像できてしまうんだよな。そして、そこから父が取っていた行動の意味も……。当事者でもある千早が気づけないのは仕方がないのだけど、どうしても読者目線では「違う、そうじゃない!」という感じがしてしまう部分が多かった。
物語として、確かに、綺麗にまとまって入るのだけど、最初に書いたように、ちょっと無理な設定を上手いこと料理してまとめ上げた、という印象がどうしても残った。
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