(書評)VS!! 正義の味方を倒すには - あ行の著者
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(書評)VS!! 正義の味方を倒すには

著者:和泉弐式

VS!!―正義の味方を倒すには (電撃文庫)VS!!―正義の味方を倒すには (電撃文庫)
(2012/01/07)
和泉 弐式

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俺の名は戦闘員21号。正義のヒーローとの戦いで叫びながら、アッサリと倒されてしまうあれ。毎度毎度、新たな怪人に率いられては敗戦を繰り返す日々。正義の味方に勝てるわけがないじゃないか。そんな中、組織では、史上最強の怪人が誕生したという。しかし、その怪人は……
なんか、これを読んで最初に思い出したのは『桜田家のヒミツ』(柏葉空十郎著)。どちらも、ヒーローものの中でアッサリと消されてしまう戦闘員をメインに添えているから。もっとも、『桜田家~』は家族をメインに添えているのに対し、こちらは戦闘員のプライドとでも言うべきものをメインにした作品だけど。
最強の怪人だったはずのジャバウォックはいきなり組織から逃走。そして、なぜか美少女の姿で21号と22号の部屋へと同居することに。力はあるが「戦う理由がわからない」というジャバウォックとの共同生活が始まって……。
何度も何度も戦いを挑み、そのたびに仲間が命を散らしていく様を見てきた21号。そんな彼と仲良くなり、彼を守るために命を散らしたジャバウォック。その遺志を継ぎ、勝利への足掻きを見せる……。
この21号の葛藤って凄くリアルなのだと思う。
普通の人間と比べれば上でも、ヒーローたちにはとてもかなわない。それは、自分たちより遥かに強いはずの怪人ですら、結局、負けているのを見れば明らかだし、何より、触れることすら出来ないで終わってばかり。勝てないのなら、生き残れば勝ちだ。でも、それを周囲は理解してくれない。ただただ直情的に突っ込んでは命を散らすばかり、というのをひたすら目の当たりにするしか出来ない……。一方で、その中で勝ちたいという気持ちもしっかりと秘めている。ヒーロー側の人間が、口にするのはいつも怪人ばかり。自分たちの存在は、気にすらされていない、という屈辱……。何か冷めたような雰囲気に見せながら、秘めた情熱がある、というのが巧く描かれていたと思う。
ある意味じゃ、21号の作戦というのはせこいというか、ヒーローもののお約束を無視したやり方。けれども、「本気で」戦いを挑むのであれば、それしかないのだろうと思う。非力な戦闘員が、怪人もなくヒーローを倒す方法。それは、数の優位さを用いるしかない。そして、統率の取れた戦いという武器を用いて……。
いくつか、戦闘員の身体的な設定がどうなっているのか曖昧だったり(かなり精密な検査をされても、普通の人間と判断された、なんていうシーンがある)とか、細かいところで気になった箇所はあるが、なかなか楽しく読めた一冊だった。
でも、これ、続編出るの?(笑)

No.2817

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