タチバナ菓子工房 つれづれ菓子日記

おそらく15年くらいは使っている包丁。
研いで研いで研いで、ずいぶん短く薄くなった。
見た目は悪いけど切れ味は抜群で、柔らかいシフォンケーキもねばつくチョコレートケーキもチーズケーキも、具だくさんのサンドイッチもトマトのスライスも、ほとんどこの２本で事足りる。
もうどこで手に入るのか定かでないので、私にはなくてはならない貴重品だ。
以前地域のおばあちゃんたちと、この包丁持参で豚汁を仕込んだとき、よく切れるね、と私が誉められた訳でもないのに自分の格が上がったような、誇らしい気分になった。これはもしかしたらブランドのバッグを持つのと同じなんだろうか？と、ふと気がつく。まあ、私にはよく切れる包丁のほうが百倍いいけど。
問題は、研いでくれるのは夫で、私にその技術はないということ。

台風で子供たちは休校、今日の仕事は昨日のうちに済ませ、お菓子教室はキャンセル。
降ってわいたような休日に、待望のCDが届く。
寺尾沙穂の８枚のアルバムの内の２枚。
今日なら歌詞を見ながらゆっくり聴くことができる。夜が楽しみだ。
きっかけはTwitterの情報。原発労働者のことを透明な声で歌った曲がどうにも印象的で、色々と聞いているうちに、すっかり引き込まれてしまった。
たまたまライブが福岡であると知り、企画した書店にお願いして、チケットを取り置きしてもらった。とらきつねさん、無理を聞いていただいてありがとうございました。
外は風が強まって木が暴れ、いよいよ台風らしくなってきた。子供の頃のワクワク感を思い出す。普通じゃない感じと、守られている感じ。今は守る立場なんだけど、CDのおかげですっかり能天気になってしまった。

と言うか散歩に近いのだけど、早朝ウォーキングを始めてそろそろ半年。月～金曜日の朝６時からひとりせっせと歩いている。
運動不足はわかってたから歩こうと思ったものの、ああジャージがいるシューズがいる、汗かくから化粧したくないけど日焼けも気になるし、そのあとシャワー浴びてる時間もないしと、出来ない理由ばかり考えてしまうのはなぜだろう。もたもたすること数年、はじめの一歩はある朝突然やって来た。
寝苦しい夜が明けて、娘と一緒にバス停まで付いて行き、涼しかったのでそのまま散歩したのが意外にも気持ちがよくて、翌日から歩きはじめた。なんだ、邪魔してたのは意気込みだったのか…。結局のところジャージもシューズも化粧がなくても、何の問題もなかったわけだ。
夏～秋、冬と３つの季節を過ごしてきて、日の出の時間や空気の冷たさ、雲の形、山や葉っぱの色や鳥の声、あらゆる自然の変化を毎朝発見出来て、何だかいい感じで１日が始まる。寒さには負けるな…と思ってたけど、それはそれで心地いいのが、我ながら驚きだ。

最近はこんな暗さなんだけど、夜行性の動物に会えるとうれしいなーとか思いながら、毎朝結構元気に歩いている。

モリンガスコーン
パンデピス

年が変わって気分新たかなせいか、新作を出したくてしょうがない。
蜂蜜もの、干柿もの、ライ麦ものなど、
ちょっと個性的なものがいい。
で、あれこれ試作中である。

いただきもののモリンガはホワイトチョコとスコーンに。普通に美味しかったけど、翌日はパサついて今一つ。モリンガ効果も少量過ぎて期待できない。
蜂蜜が使いたくて作ったパンデピスは、食べ方が分かりにくい。
蜂蜜パイはすぐにしとっとなるし、マイブームのマカロンは着地点がよく分からない。
そんなこんなでなかなか商品化できないまま、時間ばかりが過ぎていく昨今だ。

どうぞ気長に、新作をお待ちください。

雪の日

やけにしんとすると思っていたら、案の定雪が積もっていた。
困る娘と喜ぶ息子。
私は今日は外出しなくていいので、雪を愛でる余裕がある。
きれいな雪景色。
家の中がどんなに散らかっていても、真っ白な風景にすべてかき消されるような、圧倒的な空気感が好きだ。
表に出てきりっとした寒さを感じるのが好きだ。
上を向くと方向感覚がなくなって、昇って行くような感覚も好きだ。

家族が出払って、ひとりマカロンが乾燥するのを待ちながら、波多野睦美のメゾソプラノの歌声を聴くぜいたく。完璧だ。

今月末の波多野睦美のライブチケットが取れて、
ここしばらくの原動力になっている。
雪、ちょっとだけ降らないかな…