白堊館
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2009.12.12 menu
いらっしゃいませ
詩や小話を置いてます
1つの作品としてお読みください

少しお休みします

テンプレートイメージ : 『ミッドナイトベイビー』

↓ 解説と目次
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2009.02.26 土と茎
 『土と茎』


 「健康なことは一番の幸せ」

 「でも、暑くなってきたなぁ」

 「サッパリしてくるか」

 * * *

 「私は暗算が得意です」

 「私は覚えることが好きです」

 「皆は私を賢いと言いますが、玄関が広い、と愚痴をこぼされます」

 * * *

 「夏は気持ちよくていいんだがな…」

 「冬は風が寒くてしょうがねえよ」

 * * *

 「やはり私にはエレガントさが似合うわ」

 「ですがお嬢様。最近は傷が目立つようです」

 「そんなの補修すればいいのよ。美しさを保てればいいの」

 * * *

 「旦那! そんなの被らずに早くアレ使ってくださいよ!」

 「アレって何だよ…」

 「育毛剤ですよ!」
 『ミッドナイトベイビー』

 ああ 眠れない そんな夜には思い切って飛び跳ねてみるのさ
 ほら 一瞬でも 星が流れて降ってくるように見えるから
 願いごとを3つ考えつく頃には
 そうさ 疲れて眠気がやってきてる

 健気なベイビー ベイビー
 その輝いてる瞳 ゆっくりと閉じて
 暗闇に怯えてごらんよ
 太陽だけでこの世界は出来てないこと
 ちょっとだけでいい
 一人きりの 深夜の月に 可愛いキスを

 暗闇に慣れて まぶたを開ければ ほらね
 いつもより眩しい朝がやってきてるから
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2009.02.18 蝙蝠
 『蝙蝠』

 暗闇に潜む蝙蝠たち 少しの音も逃さない
 侵入者には警告を鳴らし 連結する危機感と不安

 奥にある1つの綺麗な水辺 群がり水を分け合う
 仲間との会話には 少しの嘘を織り交ぜて
 いつか美味い血を飲める日を望みながら談笑した

 木々の間を飛び交い つかまりやすい枝を探す
 逆さまの視界で 自分の生き様に疑問を覚え
 未来は光っているのか 世界の裏側まで一人で論じていく

 一匹の妄想家の蝙蝠に 同じ妄想家の恋人ができた
 枝に止まり肩を並べ 妄想話に花を咲かせる
 二匹の未来は明るいと その枝はやけに眩しく映った


 ある日彼らの耳に突き刺さった爆音
 翼で小さな体を閉じて 必死に耐えようとするも

 落ちてしまった 二匹の蝙蝠

 少年少女の二人組み 蝙蝠たちを見つけて持ち帰った
 名前をつけて毎日会話を交わし たくさんの愛情を注いだ
 家族となった二人と二匹 その幸せは掛け替えのないものだった

 蝙蝠たちの墓標 掘られた文字は「現実」
2009.02.16 世界時計
 『世界時計』

 外が豪雨でも 波が荒くても
 旅の支度が整うときまで
 船は揺られながら待っている

 出航からしばらくして難破した
 溺れながらでも生還すれば
 ひとちぎりのパンでも 極上の味
 航海日誌は誰かを救助する

 ――時は残酷に刻まれていく

 僕らの行く末を少しも案じることはなく
 世界時計は笑って言う
 「今日はすこぶる良い天気だね」

 大袈裟に返答する
 「そうさ、笑顔が多かったのさ」


 自らを縛る 苦悶の会話
 最もな解答など1つもなく
 それでも空はたまに晴れている

 悩んだ事実 捉えた真実
 上映する映画は増えていき
 見ることを許されるのは 二人席
 映画館は微笑みで充満する

 ――時は無情に刻まれていく

 僕らの悩む声に少しも助言をくれる気はなく
 世界時計は笑って言う
 「ああ、それが君の歩みかい?」

 大袈裟に返答する
 「そうさ、これが僕の人生さ」
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2009.02.10 一夜の雨宿り
 『一夜の雨宿り』

 このような辺境の地に
 ようこそいらっしゃいました
 館の主人でございます

 外は酷い豪雨だ
 全身は濡れ、強風に煽られ、
 それでも森を駆け抜け、
 さぞお疲れでございましょう

 まずは暖炉で冷えた体を暖めましょう
 御食事も用意しておりますゆえ
 どうぞごゆりるとお寛ぎください

 おっと、当館は土足厳禁でございます
 靴の泥を落とし、綺麗に並べてからお入りください


 言い忘れがございました

 御就寝なさるときには
 当館に存在する夢たちをご覧になるとよいでしょう
 様々な夢がございます
 あなた様に合ったものをお取りください

 ただ明日の朝に豪雨が止んでいれば
 私は満足するのです

 良い眠りにつけることを願っております


 それではごきげんよう
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2009.02.10 愛犬
 『愛犬』

 およしになって
 およしになって
 そんな子犬のような目で
 見つめないでくださるかしら

 本日のために徹夜で服職人に縫わせたドレスたちは
 少しの汚れも許さないというのに!
 貴方の涎によって一晩で使えない物になるのよ

 なんて無様でしょう
 なんて無様でしょう
 お父様とお母様にどんな言い訳をすればいいの
 あまりにも小さなガラス細工の靴でも
 無理して履いて微笑んだら許してくださるのかしら

 ねえ、貴方
 その子犬のような目は
 何処の貧相な商人が売っていたのか
 明日にでも盛大な晩餐会を開くから
 目線を私からずらしながら教えてほしいわ

 嗚呼! 明日の晩は満月
 私は月光に導かれて清純無垢なお姫様になり
 貴方は全身の毛が逆立つ野獣になってしまう
 可愛らしい子犬が番犬になるのは嫌なのに

 いくら暴言を飛ばしても
 もう服職人は疲れ果ててしまっているのよ
 代わりのドレスは幾らでもクローゼットにあるけれど
 あれもこれも着飽きてしまったわ

 ねえ、貴方
 子犬の目はそのままでいいからその隠れた牙で
 私を甘噛してくださらない?
 そうすれば私、きっと満足するわ
2009.02.09 鳥瞰
 『鳥瞰』 

 「日曜日」という休日になれば
 ここは人間で溢れかえる

 人間は別に嫌いじゃない
 小さいのや大きいのがいて
 顔をコロコロ変えたり走り回ったり
 私たちには到底出来ないことだし
 それを羨ましいと思うこともある

 でも、人間になりたいとは思わない
 どれだけ頑張って手を振り回しても
 彼らは私たちを捕まえることができないし
 地面に足をつけて歩くのは色々と危険だから

 飛んでいると考えてることがどうでもよくなる
 悪口で鳥頭という言葉があるのはムカつくけど
 風に乗ればきっと彼らだってそうなる
 目の前に空がないから気苦労も多いのだろう


 一番人気の観覧車には
 恒例行事のように長い行列ができる

 行列には
 友達、夫婦、親子、家族がいる
 たまに一人で並んでる奴がいるから
 傍によって私はちょっかいを出す

 「一緒に遊ばないかい?」


 順番が来ては乗り込み
 観覧車は上がっていく
 一番上に達したらあとは
 ゆっくりと下がっていく

 毎週必ず見に来てるけど
 何1つその様は変わらない
 変わるのは乗りこむ人間だけ
 たまには逆に回ればいいのに

 ゴウンゴウンと鳴る音は
 乗っている人間には多分聞こえてない
 窓に張り付いて頬を緩ませて
 空を飛んでいるとでも思っているのだろうか

 「鳥頭なんて言葉はもう使うなよ?」


 おや これは珍しい

 観覧車が動きを止めてしまった
 他の乗り物は動いているし
 別に停電したわけじゃない

 たった1つのネジの緩みが原因らしい

 観覧車を止めたのは
 管理をしているじいさん
 ずっと隣にいた人が
 動きを止めたという事実

 当然なものは当然だから、分からない

 「それはまるで愛のようだね」




 ――鳴きながら飛び去った

 あの烏のために僕は
 毎週一人で行列に加わっている

 きっといい友達になれると思うから
2009.02.09 送迎
 『送迎』

 アナタは素晴らしい!

 何が素晴らしいかって?

 そりゃあ、生き急がないことさ
 誰にでも出来ることじゃない
 それはお金と縁のないものだしね

 道を焦って駆け抜ければ
 転んだ時の怪我はそれはもう痛くて仕方がない
 もしかすると入院までしなければならないかもしれない
 それをアナタは本能で知っていて
 上手く避けているんだからね 

 自分は何も良いところがない?

 じゃあアナタはとても悪人で酷い人なんだね
 この鬼! 悪魔!
 清めの塩でもまいたろか!
 エクソシストよ、カモーン!

 …ん? 少しは優しいかもだって?

 優しいんじゃないか


 いってらっしゃい
2009.02.09 answer
 『answer』

 息が止まりそうなほど この濃い空気は
 どれほど僕らを 悩ませるのだろう
 その上で誰か 笑っているの?

 「空を見てれば大きくなれる」
 空をもう望めない 誰かが言った
 手を伸ばしても 掴めることはないのに

 祈りと拘束 神様のいない世界
 英雄と支配 戦争の終わった国
 命をかける意味を知らないまま
 僕らは生きる意味を探してる

 誰かの幸せを願うこと
 何かを犠牲にすること
 それでも僕らは自分の顔を覆うほどの
 大きさの手しかなくて

 ねえ、もういない神様
 それでも願うのは愚かなのかな
 誰も触れられない権力で
 力強く何か 言ってほしいよ


 「希望と絶望は一緒なんだよ」
 安らかな笑みを浮かべた 誰かが言った
 どっちも限りなく薄い この世界の端で

 その人が悩んでたら 一緒に悩んで
 その人が泣いてたら 隣に座って
 人は歩く途中で誰かと出遭う
 心に闇も併せ持つ人間に 

 人は神様になれっこない
 心は1つしかないから

 ねえ、もういない神様
 たった一人の誰かを愛するのが答えなら
 これからそれを探す旅に出るよ
 いつ終わるのか分からない僕らの旅
 ちゃんと見ててね