2020年12月:社会保険労務士試験ブログ「佐藤塾」

2020年12月

2020年12月31日

みなさん、こんにちは。
佐藤としみです。

本日は、湯島天神に幸先詣に行ってきました。

※湯島天神では幸先詣を推奨しています。
初詣も新様式 湯島天神が勧める「幸先詣」って何?


幸先詣


例年、湯島天神で、受講生のみなさんの合格祈願をしています。

ここでお願いすることは、2021年社労士本試験関係の3つです。
① 地道に努力している受講生が報われますように。
② 選択式を外しませんように。
③ 白書・統計数値の提供する情報に漏れや誤りがありませんように。

特に2020年本試験での選択式「労基・安衛」「労一」「社一」のような問題に対処するためにも、②③は重要です。

2021年向けフルパック☆プラスで受講いただいている方の中には、2020年本試験の択一式でかなりの高得点を取られている方も多く、その方達の命運を託されていることを思うと、身の引き締まる思いで臨まなければならないと思っています。


湯島天神


今日の東京は天候も穏やかで、心地よい日照りです。
さすがに大晦日の正午なので参拝客はまばらですが、それなりにはにぎわっていました。

「資格勝得守」で必勝祈願です。


資格勝得守


例年、新年を迎えてから行っていましたが、今年は分散参拝の要請もあり、また、私が感染してしまうとみなさんに迷惑をおかけしてしまうので、できる限り、年末年始を含めて当面は巣ごもり生活を送るようにし、参拝も1日早い日を選びました。

明日から新年です。
気持ち新たにがんばっていきましょう。



「ランチタイム・スタディ 2020本試験」の第94問です。

94問目は、択一式の労働基準法です。

正答率9%の問題で、難問です。

※難問とは、合格者でも正答率が50%を割ってしまっている問題を指します。
※令和2年度社労士本試験(選択式・択一式)の中で、最も正答率が低かった問題です。


<問題( 択一式 労一 問4 )>

〔問〕 労働組合法等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 労働組合が、使用者から最小限の広さの事務所の供与を受けていても、労働組合法上の労働組合の要件に該当するとともに、使用者の支配介入として禁止される行為には該当しない。

B 「労働組合の規約により組合員の納付すべき組合費が月を単位として月額で定められている場合には、組合員が月の途中で組合から脱退したときは、特別の規定又は慣行等のない限り、その月の組合費の納付につき、脱退した日までの分を日割計算によつて納付すれば足りると解すべきである。」とするのが、最高裁判所の判例である。

C 労働組合の規約には、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ、同盟罷業を開始しないこととする規定を含まなければならない。

D 「ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである」から、「ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法28条参照)。」とするのが、最高裁判所の判例である。

E いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地からみて労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められる場合には、使用者の正当な争議行為として是認され、使用者は、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)が正当な争議行為として是認される場合には、その期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務を免れるとするのが、最高裁判所の判例である。



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step1 正解は・・・



B
   


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step2 解説

A 〇 (労働組合法2条、同法7条) 本肢のとおりである。労働組合法は、労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払について経理上の援助を与えることを不当労働行為として、使用者に対しその行為を行うことを禁止しているが、本肢の場合は、経理上の援助に該当しない。

B × (労働組合法2条、昭50.11.28最高裁第三小法廷組合費請求事件) 「労働組合の規約により組合員の納付すべき組合費が月を単位として月額で定められている場合には、組合員が月の途中で組合から脱退したときでも、特別の規定又は慣行等のない限り、「その月の組合費の全額を納付する義務を免れないものというべきであり、脱退した日までの分を日割計算によって納付すれば足りると解することはできない。」とするのが、最高裁判所の判例である。

C 〇 (労働組合法5条2項) 本肢のとおりである。

D 〇 (平元.12.14最高裁第一小法廷三井倉庫港運事件) 本肢のとおりである。ユニオンショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入しているもの、及び締結組合から脱退しまたは除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は公序に反し無効であるとした。

E 〇 (昭50.4.25最高裁第三小法廷丸島水門事件) 本肢のとおりである。使用者の争議行為(ロックアウト)の正当性については、「労働者の争議行為により使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、衡平の原則に照らし、使用者側においてこのような圧力を阻止し、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められるかぎりにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認される」と解すべきである。なお、使用者の争議行為としてのロックアウトに相当性が認められる場合には、使用者はロックアウト期間中の賃金支払義務を免れる。




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step3 コメント

・択一式の労働一般常識の問4は、最高裁判例を含めた労働組合法等に関する問題でした。正解肢であるBの組合費の日割計算をするか否かの判例は難易度が高く、本試験の限られた時間の中で判断するには難しかったと思われます。


これでランチタイム・スタディ2020本試験は終了です。
今年もお世話になりました。
良いお年をお迎えください。



「ランチタイム・スタディ 2020本試験」の第93問です。

93問目は、択一式の労災保険法です。

正答率100%の問題です。

※本問は、没問につき、全員正解の問題です。
※最終問題前にお届けします。



<問題( 択一式 労災 問6 )>

〔問〕 業務災害の保険給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分のみについて労働し、当該労働に対して支払われる賃金の額が給付基礎日額の20%に相当する場合、休業補償給付と休業特別支給金とを合わせると給付基礎日額の100%となる。

B 業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合に限り、その日において、使用者は労働基準法第81条の規定による打切補償を支払ったものとみなされ、当該労働者について労働基準法第19条第1項の規定によって課せられた解雇制限は解除される。

C 業務上の災害により死亡した労働者Yには2人の子がいる。1人はYの死亡の当時19歳であり、Yと同居し、Yの収入によって生計を維持していた大学生で、もう1人は、Yの死亡の当時17歳であり、Yと離婚した元妻と同居し、Yが死亡するまで、Yから定期的に養育費を送金されていた高校生であった。2人の子は、遺族補償年金の受給資格者であり、同順位の受給権者となる。

D 障害補償給付を支給すべき身体障害の障害等級については、同一の業務災害により身体障害が2以上ある場合は、重い方の身体障害の該当する障害等級が、その複数の身体障害の障害等級とされ、たとえば、第10級と第14級の場合には、当該身体障害の障害等級については、第10級とされる。

E 介護補償給付は、親族又はこれに準ずる者による介護についても支給されるが、介護の費用として支出した額が支給されるものであり、「介護に要した費用の額の証明書」を添付しなければならないことから、介護費用を支払わないで親族又はこれに準ずる者による介護を受けた場合は支給されない。



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step1 正解は・・・



解なし(すべて誤り)
   


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step2 解説

A × (法14条1項、特支則3条1項) 所定労働時間のうちの一部分について労働した場合の休業補償給付の額は、給付基礎日額から賃金の額(20%)を控除して得た額(80%)の60%である「48%」相当額、休業特別支給金の額は、休業給付基礎日額から賃金の額(20%)を控除して得た額(80%)の20%である「16%」相当額となり、休業補償給付と休業特別支給金とを合わせると給付基礎日額の「64%」となる。

B × (法19条) 「療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合」だけでなく、「療養の開始後3年を経過した日後において傷病補償年金を受けることとなった場合」についても、労働基準法第81条の規定による打切補償を支払ったものとみなされ、解雇制限は解除される。

C × (法16条の2第1項) 本肢の場合、遺族補償年金の受給資格者は17歳の子のみで、当該子が受給権者となる。なお、遺族補償年金の受給資格者となる子は、障害の状態になければ、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者とされるため、19歳の子は、受給資格者に該当しない。

D × (則14条2項・3項)同一の業務災害により2以上の身体障害を残した場合は、重い方の身体障害の該当する障害等級が、その複数の身体障害の障害等級とされる(併合)が、同一の業務災害により第13級以上の身体障害を2以上残した場合は、重い方の身体障害の該当する障害等級を、1級から3級の間で繰り上げた障害等級がその複数の身体障害の障害等級とされる(併合繰上げ)。本問では、2以上の身体障害を残しており、ひとつの障害が第14級であるが、それ以外の身体障害の程度がわからないため、併合か併合繰上げかの判断が付かない。

E × (法19条の2、則18条の3の5) 親族又はこれに準ずる者による介護を受けた場合は、介護に要する費用を支出して介護を受けた日がなくても、介護補償給付は支給される。なお、介護費用を支出しないで、親族等による介護を受け始めた最初の月については、介護補償給付は支給されない。




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step3 コメント

・択一式の労災保険法の問6は、業務災害の保険給付に関する問題でした。当初、Dを正しい肢として作問されたようですが、この問題文の内容では第10級とは判断できないため、全員正解の没問となりました。



「ランチタイム・スタディ」の第92問です。

92問目は、選択式の労働基準法です。
(本問は、本来は、12月19日に掲載すべき問題でした。アップができていなかったため、最終日である本日、最終問前にお届けします。)

正答率86&30%の問題で、難問です。

※選択式労基B=86%、C=30%(Bは正答率がCより高いものの同じカテゴリーですので、Cの正答率に合わせここで掲載しています。)


<問題( 選択式 労基BC )>

最高裁判所は、自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、労働基準法上の労働者に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

「上告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、F紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、 B の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がF紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。そして、 C 等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。そうであれば、上告人は、専属的にF紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも1割5分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。」



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step1 次の選択肢の中から答を選んでください。

B及びCの選択肢
⑨ 業務遂行条件の変更
⑩ 業務量、時間外労働  
⑮ 公租公課の負担、F紙業が必要経費を負担していた事実 
⑯ 時間的、場所的な拘束
⑰ 事業組織への組入れ、F紙業が必要経費を負担していた事実
⑱ 事業組織への組入れ、報酬の支払方法  
⑲ 制裁、懲戒処分
⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担


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step2 正解は・・・



B → ⑯ 時間的、場所的な拘束 (平8.11.28最高裁第一小法廷判決横浜南労基署長(旭紙業)事件)

C → ⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担 (平8.11.28最高裁第一小法廷判決横浜南労基署長(旭紙業)事件)



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step3 コメント


・選択式の労働基準法のB及びCは、最高裁判例横浜南労基署長(旭紙業)事件からの出題でした。Bの正答率は高かったものの、Cは難問であり、判旨の内容を理解していないと正解することは難しい問題でした。⑰、⑱にある「事業組織への組入れ」は、「労働組合法上の労働者」とされるか否かの判断基準であり、「労働基準法上の労働者」であるか否かの判断基準との比較は困難であったと思われます。ただ、一度、出題されましたので、「労働基準法上の労働者の判断基準」と、「労働組合法上の労働者の判断基準」の整理はしておくべき内容といえます。

・本問は、Cの難易度が高く、安衛法のEも難易度が極めて高い問題でした。そのため、労基・安衛の選択式が2点の人は全体の約3割いたのですが、0点の人が約2%、1点の人が約11%であったため、2点救済は行われませんでした。択一式の総得点では高得点であった方でも、労基・安衛の選択式が2点で涙をのんだ方はかなり多くいるように見受けられます。労基法の選択式では、今後も引き続き、判例が出題される可能性が高いと思われます。数年前までは、労基法の知識があれば判例自体を知らなくても正解できる問題が散見されましたが、今後は、判旨の内容を知らないと確実に正解するのは難しい問題が出題される傾向が高くなると考えた方が無難です。実務的にも意味合いが大きい判例もここ数年多く、過去の判例でも学術的に学者が興味を引く内容のものはありますので、同じ轍を踏まないためにも、今まで以上に判例対策を施しておく必要があるように思われます。



2020年12月30日

「ランチタイム・スタディ 2020本試験」の第91問です。

91問目は、択一式の労働基準法です。

正答率11%の問題で、難問です。

※難問とは、合格者でも正答率が50%を割ってしまっている問題を指します。
※令和2年度社労士本試験の中で、2番目に正答率が低かった問題です。


<問題( 択一式 労基 問3 )>

〔問〕 労働基準法第64条の3に定める危険有害業務の就業制限に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 使用者は、女性を、30キログラム以上の重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。

B 使用者は、女性を、さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務に就かせてはならない。

C 使用者は、妊娠中の女性を、つり上げ荷重が5トン以上のクレーンの運転の業務に就かせてはならない。

D 使用者は、産後1年を経過しない(労働基準法第65条による休業期間を除く。)女性を、高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務に就かせてもよい。

E 使用者は、産後1年を経過しない女性が、動力により駆動される土木建築用機械の運転の業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合、その女性を当該業務に就かせてはならない。



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step1 正解は・・・



B
   


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step2 解説

A 〇 (法64条の3、女性労働基準規則2条1項1号、同則3条) 本肢のとおりである。重量物を取り扱う業務(満18歳以上の場合、断続作業は30キログラム以上、継続作業は20キログラム以上)は、女性の就業が禁止されている。

B × (法64条の3、女性労働基準規則2条1項24号) 本肢の業務が禁止されているのは、「妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性」である。

C 〇 (法64条の3、女性労働基準規則2条1項4号) 本肢のとおりである。使用者は、妊娠中の女性を、つり上げ荷重が5トン以上のクレーン若しくはデリツク又は制限荷重が5トン以上の揚貨装置の運転の業務に就かせてはならない。

D 〇 (法64条の3、女性労働基準規則2条1項14号、同則3項) 本肢のとおりである。なお、妊娠中の女性については、本肢の業務に就かせてはならない。

E 〇 (法64条の3、女性労働基準規則2条1項7号、同則3項) 本肢のとおりである。




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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問3は、妊産婦等の就業制限に関する問題でした。このあたりは、労基法の中でも最も学習が後手になってしまう箇所でもあり正答率は低くなりました。


明日もがんばりましょう。