熱中症による脱水症状を完全に防ぐ!命を守る水分補給5つの知識

熱中症による脱水症状を完全に防ぐ!命を守る水分補給5つの知識

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熱中症の少年

熱中症や脱水症状は命に関わる大変危険な疾患です。

熱中症によりお亡くなりになる方は毎年20人前後を数え、救急搬送される件数は枚挙にいとまがありません。

脱水症状は軽度でも著しく体調を害し、短時間で重篤なステージに到達します。後遺症にさいなまれている人も大勢います。

毎年夏になると水分補給の必要性があらゆる場所でアナウンスされますが、中には宣伝的要素が多い情報も見受けられます。

熱中症による救急搬送は例年7月にピークを迎えますが、5月末から急激に件数が増え始めます。

参考:https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r4/heatstroke_geppou_202205-09.pdf(令和4年 総務省消防庁のデータによる)

これは、急激な気温・湿度の上昇、暑熱順化がされていない(高気温に体が慣れていない)ことが原因と考えられています。

この記事では、最新の知見に基づき、もっとも確かといえる水分補給の方法をお伝え致します。

確実に熱中症予防を行いたい方はぜひご一読ください。


1.脱水症状のステージとケア

何よりもまっさきにケアが必要なのは、すでに熱中症(脱水症状)を起こしている場合です。ここでは緊急対応が必要な方のために、脱水症状の程度を判断できるチェックリストとケアの方法をお伝えします。

軽症(Ⅰ度)

・ふくらはぎがけいれんする

・足がつる(こむら返り) 

・立ちくらみがする

・突然意識を失う場合もある(Ⅰ度の場合はまもなく回復するケースも)

対処法 運動を中止し木陰や冷房の効いた涼しい部屋で寝かせ水分補給を行う。衣服を脱がせる、風を送るなどをしてカラダを冷やす。

熱中症のケア

できるだけ複数名で手分けをして速やかにケアを行ってください

中等症(Ⅱ度) 

・ひどいだるさを覚える

・めまいや頭痛がする

・吐いたり、吐き気を感じる

・下痢が急に始まる

・39度までの熱が出る

対処法 Ⅰ度の対処法に加えて、脇や太ももの付け根を水やアイスバッグなどで冷やす。やや冷たい程度の水風呂に浸からせる。水分を取れなかったり、飲んでもすぐに吐く、回復の兆しがないという場合は救急搬送の要請を行う。

※下図の要領でも深部体温が下がらない、という論文が発表されました。中程度以上の場合は水風呂、氷水風呂などを利用して体の深部まで冷やすことが重要です。アイスマッサージと併用すれば、水温は12〜15度でも下がるとのことですから、水道水でも川の水でもなんでも利用してとにかく全身を冷やすことをおすすめします。参照:https://nettyuusyo.com/ice-bags-on-major-arteries/

熱中症のケア2

中程度の可能性を感じたら、アイスバッグなどで早急に冷やします

回復をしても体調の回復には時間を要する場合が多いです。食欲減退の際は、1日の食事を5〜7回にわけて取らせるようにします。

重度(Ⅲ度)

・意識がもうろうとする。倒れる場合もある

・わけのわからないことを話し始める

・大声をあげたり奇声を発したりする

・運動中に急にふらつく。話しかけても反応が得られない場合もある

・40度以上の高熱が出る

対処法 脳障害や内臓障害、血液障害を起こしており大変危険な状態。ただちに救急車を呼びⅡ度の対処をしながら待つ。致死率は30%といわれ、この状態になる前に手を打つことが非常に重要。


2.熱中症・脱水症状とは

2−1.熱中症とは

熱中症

高温下または多湿下で身体が適応できなくなっておこる障害の総称です。具体的な症状としては脱水症状、それによる体温上昇、下痢や嘔吐、悪寒、意識の混濁や喪失、臓器血流低下、多臓器不全などがあります

2−2.熱中症が起きやすい環境

気温21〜25度になると起こる可能性が増えてきます。国立衛生研究所の資料では、25℃あたりから患者が発生し(段階的に増え)、31℃を超えると急増すると発表しています。屋外に限らず屋内でも発生します。

特に以下の環境で起こりやすいです。

サッカーの試合

  • 前日と比較して温度が急上昇した日
  • 温度がそれほど高くなくても多湿であれば起こりやすい(汗による蒸散ができず、体内の熱を発散できなくなるため)
  • 涼しい室内で作業をしている人が、急に外に出て作業した場合
  • 作業日程の初日 〜 数日間が発症しやすい(カラダが新環境に慣れていないため)
  • 安全上薄着になる事が不可能な工事現場、製造業、災害救助現場[
  • 長時間にわたる屋外でのスポーツや行動、屋内でも防具や厚手の衣服での行動
  • 時間帯 -午前中では10時頃、午後では1時から2時頃
  • 季節 – 梅雨明け後から増え、7月、特に8月。運動会シーズンも。

2−3.熱中症が起きやすい人的要因

全年齢で起きる可能性があり、7〜18歳では部活や学校行事で、65歳以上では自宅(居室)で発生する割合が高いです。

その中でも特に起きる可能性が高いのは、以下のような方です。

  • 5歳以下の幼児
  • 65歳以上の高齢者
  • 肥満の方
  • ふだんから下痢が多かったり、飲水が少ない等脱水傾向にある方
  • ふだんから汗をかきにくい方
  • 発熱のある方
  • 足の冷え性の方
  • 睡眠不足の方
  • 遺伝的素因…かかりやすい親族がいる方
  • 予防策や対応策に関する知識が不十分な方

2−4.脱水症状とは

脱水症状のプレーヤー

スポーツ大会の前夜など緊張して睡眠不足になると脱水症状を起こしやすいです

熱中症の代表的症状が「脱水症状」です。人間は体温が上昇すると汗をかくことでカラダを冷やします。汗をかくと体内に水分が必要となります。暑い時期は汗をかきやすいのでそれに見合う水分量を補給しないと体内から水分が失われるのです。

人体の60%は水分で、細胞はいわば水分に浸されているような状態です。体内の水分が通常より1%失われるだけで人によっては脱水症状を感じ、4~5%の水分が失われるとふらつきやめまいを感じ通常の行動をとることができなくなります。

また、血液がドロドロの状態になり、血栓ができやすくなったり、反対に血管が広がることで血圧が低下するなどの悪影響もでてきます。脳梗塞や心筋梗塞の可能性が飛躍的に高まるのです。

ノドの渇きをおぼえる前に適切な水分を補給しましょう渇きを覚えるころには、水分が不足しだしているからです。次章にて詳しくお伝えします。

3.水分補給・5つの知識

ここからは、なにをいつどれだけ飲めばいいかについて具体的にお伝えします。運動前後に速やかにロスなく水分補給を行うためにはスポーツドリンクをこまめに飲むことを最もおすすめいたします

3−1.浸透圧は糖の割合! アイソトニック・ハイポトニックとは

水分の体内吸収速度に大きく関係するのが「浸透圧」です。「スポーツドリンク」と「水やお茶」で大きく違うのがこの点になります。

スポーツドリンクにおける浸透圧とは、水分中の糖質の割合で決まります。つまり砂糖、果糖等がその飲料にどれだけ入っているか、ということです。

糖分の浸透圧が平常時の人間の体液と同等のものをアイソトニック飲料といい、運動時と同等のものをハイポトニック飲料といいます。その差は糖質の割合です。

アイソトニック飲料は、糖質(炭水化物)が5〜8%程度、ハイポトニック飲料は2.5〜3.5%程度となります。運動前はアイソトニック、運動中と直後はハイポトニック飲料を飲むことをおすすめします。アイソトニック飲料を水で薄めればハイポトニック飲料となります。

アイソトニック飲料は糖質=エネルギーが多いですので、運動前のエネルギー補給にもなります。糖質は体内では速やかにエネルギー源となります。ダッシュやジャンプなど瞬発力に必要な栄養素です。蓄えられる量が少ないのが残念な点です。

アイソトニック飲料の例ハイポトニック飲料の例
ポカリスエットポカリスエット・イオンウオーター
アクエリアスアサヒ・スーパー H2O
GREEN DA・KA・RAキリン・ラブズスポーツ

以上の表を参考に適切な水分補給を行ってください。運動や肉体労働前後以外は水やお茶をおすすめします。

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TEA SPOONは小さじです


スポーツドリンクは極めて安価に自作できる

  • 通常の練習は水やお茶。スポーツドリンクは大会の時だけ。という方が多いと思います。それはスポーツドリンクのコストがかかるからです。しかしご家庭でも簡単に自作できます。しかも極めて安価です。

    ハイポトニック飲料ならば、水1リットルに対し、砂糖大さじ2杯(小さじなら6杯)。塩小さじ半分だけです。十分に溶かして冷やしてお飲みください。レモン汁やクエン酸を足すことでレモン味になります。

    アイソトニック飲料の場合は砂糖の量を倍にします。実際に作ってみるとわかりますが、けっこう砂糖を入れることになります。

3−2.電解質について。ナトリウムなどミネラルも必要

スポーツドリンクの商品解説でよく「電解質」という言葉が出てきます。「電解質=イオン」と書かれていることもあります。電解質とは、物質を水に溶かしたときに電気を通す物質になるものです。しかしこの説明だけでは「何かスゴそう…」と思われるかもしれません。

実は、スポーツドリンクの場合の電解質は単にナトリウム(塩分)やカリウムなどのミネラルのことだとお考えください。一定量のミネラルが加味されることで、カラダが必要とする栄養素を補給でき、水分の体内吸収が良くなるので添加されているのです。

塩田の風景

塩田の風景

目安としては、100mlあたり40~80mgのナトリウムが配合されていることを注意してください。

浸透圧=糖、電解質=塩などのミネラル。この2つが理想的なバランスで配合されているのがスポーツドリンクなのです。飲料メーカーではさらに別の成分を加味していることもあります。

経口補水液OS-1は医師の指示のもとで飲む


  • 大塚製薬から発売されている「経口補水液OS-1」というドリンクをCMや店頭で見られることがあると思います。この飲料は主に下痢等の症状の時に勧められるものです。パッケージにも「医師から脱水状態時の食事療法として指示された場合にお飲みください」と明示してあります。熱中症対策としてのスポーツドリンクになるものではありません。同様の製品にアクアソリタ(味の素)、アクアサポート(明治)というものがあります。

3−3.いつ、どれだけ飲むか

渇きをおぼえる前に飲む、ということはお伝え致しました。具体的には「15分に1回は飲む」と意識してください。事実、アメリカのプロチームでは練習中2〜30分に一度は強制的に吸水タイムを設けています。そのタイミングでブザーが鳴り響き、何をしていても中断して吸水します。

「30分に一度吸水すればいい」と思っていると、練習に集中するなどで遅れがちになります。それを防ぐために15分ごとに吸水すると思っておくことが、熱中症の予防になります。

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ドリンクの温度は常温でOKですが、おいしく飲めることも重要ですので、お好みの温度に冷やしてください。冷やしすぎておなかを下す人は自分の傾向をつかむと良いでしょう。

一回の水分補給適正量はおよそ150ml、小さいコップで1杯くらいです。少ないと感じるかもしれませんが、一回の補給量はこれくらいで大丈夫です。

大人が口いっぱいに含んで一口。これがおよそ150mlです。そのぶんこまめに補給したくなるでしょう。大きいボトルでガブ飲みすると、おなかが水分でふくれて動きにくくなったりします。

3−4.水やお茶は危険?

誤解しないでいただきたいのは、何も飲まないよりは水やお茶を飲んだ方が圧倒的に良いということです。特に平常時は意識的に水を飲むようにしてください。水はどれだけ飲んでも害はありません。

運動時はじゃっかん注意が必要です。水は糖分がないのでかなりのハイポトニック飲料です。吸収性がありそうですが、意外とロスが大きく、飲んだ量の半分は尿として排出されます。

さらに自発的脱水の可能性があります。これは水をじゅうぶんに飲んでいるのにも関わらず脱水症状に陥ることです。

これは、水を飲むことでのどの渇きが止まり、飲水が停止することから始まります。まず、水を飲むことで体内塩分濃度が薄まります。カラダは体液の塩分濃度を戻そうとして、尿で水分を排出させようとします。塩分量を元に戻すために、体内の水を排出するわけです(水利尿)。

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自発的脱水のメカニズム (C)大塚製薬

結果、塩分量は戻りますが、水分がまったく足りない状況が生まれるのです。ノドが渇いて水を飲んでもおしっこばかり出る、という方は注意してください。

3−5.ペットボトル症候群にも注意

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ドリンク内の糖質量(アメリカにおける製品のもので、日本国内の同製品と異なる可能性があります)

ペットボトル症候群とは、スポーツドリンクなどの清涼飲料水の飲み過ぎで血糖値が上がり、急性の糖尿病になることです。吐き気や腹痛、意識がもうろうとする、といった症状が出現します。清涼飲料水を多量に飲みながら「夏バテかな、食欲がないな」と感じたり、体重減少が続いたら注意してください。若年層に多いことも特徴の一つです。

ノドの渇きを覚えると水分が足りないと思って清涼飲料水を飲みます。しかしすぐにまたノドが渇きます。そのサイクルが危険です。

お伝えした通り、スポーツドリンクにはかなりの糖分が含まれます。アイソトニック飲料ですと、500ccのペットボトルに大さじ3杯程度の糖質が入っています。

水分は汗として排出されますが、糖分は簡単には消費されません。運動をしないでいるとなおさらです。血糖値が上がり、余計にノドが渇きます。さらにドリンクを欲して飲み、ますます血糖値が上がるという悪循環を繰り返します。

重篤な場合は意識混濁や昏睡から死亡に至る事があるので、十分に気をつけてください。

運動や肉体労働をされる方ならアイソトニック飲料を一日500cc程度に加え、ハイポトニック飲料を1〜2リットル程度。そうでない方はスポーツドリンクは500ccをメドにして、それ以外は水やお茶でじゅうぶんな水分補給を行ってください。

4.まとめ

熱中症・脱水症状の概要とケア、また適切な水分補給についてお伝えしました。脱水症状を防ぐには、

・運動時はスポーツドリンクを利用して速やかな水分補給を行う

・平常時は水やお茶を意識的に多く飲み、作業環境を整える

・脱水症状の気配を感じたら早めにケアを行う

ことです。

お伝えしたポイントを参考に、じゅうぶんな対策をとってください。皆様のまわりでは脱水症状を完璧に予防されることを切に願っています。

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