2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:06:16.22 ID:
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――白金家 燐子の部屋――
白金燐子「…………」カタカタ
燐子「…………」カチ、カチカチ
燐子「…………」カタカタカタ
燐子「……よし」
燐子「あこちゃん、トドメをお願い……!」
宇田川あこ『りょーかい! 闇より出でし魔物たちよ! この聖堕天使あこの……えーっと、グアーっとした闇の力に飲まれるがいい!』
燐子(闇から来たのに……闇の力に飲まれるのかな……?)
あこ『喰らえー!』
燐子「……一応、援護できるようにしておこうかな……」
あこ『……やったか!?』
燐子「あこちゃん……それはダメな時のセリフだよ」
燐子(……やっぱりまだ生き残ってそう)
あこ『あれぇー!? 倒しきれないの!?』
燐子「大丈夫、任せて……」カチ、カチ
燐子「これでおしまい……!」カタカタ、ターン!
あこ『おお! やったぁー! やっとこのボス倒せたよ~!』
燐子「ふふ……良かったね、あこちゃん」
燐子「でも、トドメ……わたしが差しちゃってごめんね……?」
あこ『ううん! りんりんが手伝ってくれなきゃ勝てなかったもん!』
あこ『やっぱりりんりんってすごいなー!』
燐子「そんなことないよ……えへへ」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:06:49.97 ID:
m6iylvtt0
あこ『あ、もうこんな時間!』
あこ『ごめんね、りんりん……このあとおねーちゃんと一緒にテレビ見る約束があるんだ』
燐子「……ううん、気にしないで。NFO……わたしも今日はここまでにしようって思ってたから……」
あこ『そっか、良かった!』
あこ『クエスト手伝ってくれてありがとね! それじゃあまた明日、りんりん!』
燐子「うん……また明日……」
燐子「…………」
燐子「……ボイスチャット、切れちゃった」
燐子「…………」
燐子「……はぁ……あこちゃん、今日も可愛いかったなぁ……」
燐子「宇田川さんが……羨ましいな……わたしもあこちゃんに『おねーちゃん』って呼ばれてみたいなぁ……」
燐子「なんて……言ってても仕方ない……よね」
燐子「明日の練習に備えて……早く寝よう……」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:07:18.43 ID:
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PC<ピコン
燐子「あれ、なんだろ……メール……?」
燐子「…………」
燐子「……また迷惑メール……最近多いなぁ」
燐子「タイトルも変なのばっかりだし……たまに面白いのもあるけど……」
燐子「このメールは……『催眠術で人を操ろう!』?」
燐子「物騒なメール……」
燐子「…………」
燐子「……催眠術、かぁ……」
燐子(もしも……もしもあこちゃんが催眠術にかかって……わたしをお姉ちゃんだと思ったら……)
燐子「…………」
燐子「ふふ……あこちゃん可愛い」
燐子「……ちょ、ちょっとだけ……調べてみようかな……」
燐子「調べるだけ……調べるだけだから……」
燐子「……!」
燐子「な、なるほど……これは……イケるかも……!」
――――――――――――
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:07:54.03 ID:
m6iylvtt0
――翌日 ファミレス――
今井リサ「今日も一日お疲れ様ー!」
湊友希那「なかなか有意義な練習が出来たわね。特にあこ。今日のあなたは良かったわよ」
あこ「えへへ、ありがとうございます! 昨日りんりんにNFO手伝って貰って、おねーちゃんと一緒に遊びましたからね!」
あこ「今日のあこは気力マックスですよ!」
氷川紗夜「そう。それで演奏にも気合が入るのなら、案外音楽にとって無駄なことなんてないのかもしれないわね」
あこ「はい! あ、紗夜さんも今度一緒にNFOやりませんか?」
紗夜「私は遠慮しておくわ。息抜きにたまに動かしてみる、というくらいでちょうどいいのよ」
あこ「そっかぁ~、残念だなぁ~」
燐子「…………」
リサ「……燐子?」
燐子「……え?」
リサ「大丈夫? なんだか練習中からちょっと疲れた顔してたけど」
燐子「あ、はい……大丈夫です……ちょっと昨日、勉強に熱が入ってしまって……」
リサ「ん、そっか。無理しないでね? 眠くなったら少し寝ちゃっててもヘーキだから」
燐子「はい……ありがとうございます、今井さん……」
燐子(でも……ここで眠る訳にはいきません……)
燐子(昨日の勉強の成果を……発揮するまでは……!)
……………………
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:09:00.82 ID:
m6iylvtt0
―食後―
友希那「……催眠術?」
燐子「はい……あこちゃんがこういうの、好きそうだなって思って……」
燐子「ちょっと調べてたら……寝る時間が遅くなってしまったんです」
あこ「うーん、あこ、催眠術ってあんまりピンと来ないなー」
紗夜「ああいうものはたまにテレビで見ますけど、ヤラセではないのかしら」
リサ「んーまぁ……確かにそんな風に見えなくもないよね」
燐子「大丈夫です……わたしが調べたところ……信頼関係がある仲ほどかかりやすい、という実例がいくつもありましたから……」
燐子「それに……あこちゃん」
燐子「術で人を操るって……ちょっとネクロマンサーみたいじゃない……?」
あこ「おー! 確かに言われてみれば!」
燐子「ね……? 興味、出てきたでしょ……?」
友希那「ねくろまんさー?」
紗夜「宇田川さんがゲームの中で就いている職業ですね。元の意味は霊を操る死霊使いですから、確かに催眠術と共通点もあるかしらね」
リサ「し、死霊……」
紗夜「今井さん? どうかしましたか?」
友希那「ああ、リサ、幽霊が駄目なのよ」
リサ「ちょ、友希那!?」
紗夜「そうなんですね。少し意外です」
リサ「あ、あはは……やっぱどうしてもさ、ああいうのって怖いじゃん? 紗夜は怖くないの?」
紗夜「私はあまり非科学的なことは信じないので」
紗夜「だから催眠術というものにも懐疑的ね」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:10:02.29 ID:
m6iylvtt0
燐子「大丈夫……です」
燐子「わたしがあこちゃんに、かけてみせますから……」
燐子(そして……悲願を達成させますから……!)
あこ「あれ、あこが受ける側なの?」
燐子「うん……最初はね……? 次はわたしに……かけていいから……」
あこ「それならいっか! それじゃありんりん、かけてみて!」
燐子「ありがとう……あこちゃん……。では、この五円玉に紐を通したものを……」
リサ「……漫画とかでよく見るアレだね」
燐子「王道には……王道の由縁があるんです」
燐子「それじゃああこちゃん……目の前で揺れるこの五円玉をしっかり見て……」
あこ「うん!」
燐子「あなたはだんだん眠くなる……あなたはだんだん……眠く……」
燐子(あ……いけない……昨日の勉強のせいで……なんだかわたしの方が……)
燐子「…………」
あこ「……? りんりん?」
燐子「…………」
友希那「……なんだか目が虚ろね」
リサ「これ……燐子が催眠にかかってない?」
紗夜「……そうみたいね」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:11:13.51 ID:
m6iylvtt0
あこ「おーい、りんりーん」ブンブン
燐子「…………」
リサ「目の前で手を振っても全然起きないね」
あこ「どうしよ、リサ姉……」
リサ「うーん……」
友希那「せっかくだし、あこが燐子に何か催眠をかけてみればいいんじゃないかしら?」
あこ「え?」
友希那「さっき燐子が言っていたじゃない。催眠術は信頼関係があるほどかかりやすいって」
友希那「ということは、それだけ燐子があこのことを大切に思ってるということよ」
あこ「そっか……りんりん、いつもあこのこと助けてくれるもんね」
あこ「よーし、分かりました! それじゃありんりんに催眠、かけてみます!」
あこ「あ、でもどうやればいいんだろ?」
紗夜「大丈夫よ、宇田川さん。たった今調べてみたから」
あこ「ホントですか!?」
リサ「行動早っ。ていうか、紗夜、催眠術信じてなかったんじゃ……」
紗夜「流石に私でも、目の前で実際に起こったことなら信じられるわ」
あこ「紗夜さん、どうやればいいんですか?」
紗夜「このサイトによると……催眠にかかった人に暗示をかけて、目の前で指を鳴らしたり手を叩けばいいそうよ」
あこ「暗示をかける?」
紗夜「あなたはこういう人間です、とまっすぐに伝えればいい……と書いてあるわね」
友希那「つまり、あこが燐子に望む姿を伝えればいいんじゃいかしら」
あこ「なるほど! えっとね、じゃあ、りんりんにはもっと積極的になって欲しいな!」
リサ「積極的に?」
あこ「うん! りんりん、すっごく強くてカッコいいのに、自信がなくて遠慮してるのってもったいないもん!」
あこ「だからね、りんりんがもっと素直に自分のことを話せるようになればいいなって、あこ、ずっと思ってるんだ!」
リサ「あこ……」
友希那「流石ね。燐子が催眠にかかるほど信頼を置くわけだわ」
紗夜「ええ。宇田川さんは優しいわね」
あこ「えへへ……それじゃありんりん! りんりんはもっと、自分に素直で、自分の気持ちをはっきり喋れる人になる!」
あこ「はい!」パチン
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:11:44.18 ID:
m6iylvtt0
燐子「……はっ」
友希那「地味に上手いわね、指を鳴らすの」
あこ「指パッチン、上手に出来るとカッコいいからずっと練習してました!」
リサ「あはは、あこはホントにあこだねぇ」
燐子「……あ、あれ……?」
紗夜「おはようございます、白金さん」
燐子「え、あ、おはようございます……」
燐子「わたし……どうしてたんだっけ……」
リサ「あこに催眠術かけるって言って、自分がかかっちゃってたんだよ」
燐子「あ……そうだった……んですね……」
あこ「ねーねーりんりん。何か変わったこととかない?」
燐子「変わったこと……?」
あこ「うん!」
燐子「変わったこと……特には……」
あこ「あれー?」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:12:29.03 ID:
m6iylvtt0
燐子「でも……そっか……失敗しちゃったんだ……あこちゃんにおねーちゃんって呼んでもらう作戦……」
リサ「ん?」
紗夜「え?」
友希那「……?」
あこ「りんりん、あこにおねーちゃんって呼んでもらいたいの?」
燐子「うん……あのね、いつも宇田川さんが羨ましいなって思ってて……」
燐子「わたしもあこちゃんに……おねーちゃんって呼ばれて、甘えられたいなぁって……ずっと考えてたんだ……」
リサ「……これ、燐子の素直な気持ちなのかな」
紗夜「恐らく……少し白金さんに対するイメージが変わりそうですが……」
あこ「それくらいだったらいつでも呼ぶよ、りんりん!」
燐子「ほ、ほんと……?」
あこ「あ、でもおねーちゃんはおねーちゃんしかいないから……呼ぶなら、燐子おねーちゃん!」
燐子「はぅ……」
あこ「どうしたの、燐子おねーちゃん?」
燐子「か、かわいい……あこちゃんかわいい……」
友希那「やっぱり仲がいいわね、2人は」
リサ「仲がいい、で片づけていいのかなぁ?」
燐子「もっと呼んで欲しいな……あこちゃん……」
あこ「いくらでも呼ぶよ、燐子おねーちゃん!」
燐子「はぁぁ……幸せ……」
紗夜「まぁ、姉妹のようで微笑ましいのでは?」
リサ「うん、そう……だよね。でもなんか燐子の目がちょっと危なく見えるって言うか……なんていうか……」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:13:21.71 ID:
m6iylvtt0
燐子「ふふ……りんこおねーちゃん……ということは、わたしとあこちゃんは姉妹……」
燐子「つまり……あこちゃんをお持ち帰りしてもいいってこと、ですよね……!!」
リサ「!?」
紗夜「!?」
友希那「?」
あこ「おもちかえり?」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:14:29.90 ID:
m6iylvtt0
リサ「ちょ、ちょっと待った燐子!」
燐子「大丈夫です……心配しないで下さい、今井さん」
燐子「これはそういうアレじゃないです……いわゆる姉妹の戯れですから……」ハァハァ
リサ「そんな息を荒げて言われても説得力ないからね!? あこに何するつもり!?」
燐子「それはもう……一緒に手を繋いで家まで帰って、それから朝まで……」
燐子(一緒にずっとゲームして……きっとあこちゃん、途中で寝落ちしちゃうんだろうなぁ……)
燐子(隣に座っているわたしの肩にもたれて……天使みたいな寝顔で……穏やかな息遣いと温もりを感じて……)
燐子「……えへへ」
リサ「ダメだ、この燐子ダメだ!! あこから離さないと……!」
友希那「ねぇ、リサ」
リサ「友希那も手伝って!」
友希那「ええ、それはやぶさかじゃないんだけど……あこをお持ち帰りするってどういう意味かしら?」
リサ「……えっ」
友希那「いえ……ファーストフード店でハンバーガーを持ち帰ることはあるんだけど……あこを持ち帰るっていうのがよく分からないのよ」
リサ「え、ええ?」
あこ「あこもよく分かんないだよね。教えて、リサ姉!」
リサ「え、ちょ、それは……その……」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:15:05.89 ID:
m6iylvtt0
燐子「あこちゃん、それはね……一緒にわたしのお家に帰るってことだよ……」
あこ「そうなの?」
リサ「り、燐子!?」
燐子「そうなの……だから何も怖いことじゃないんだよ……ふふふ……」
あこ「つまりあれだね! りんりんの――じゃなくて、燐子おねーちゃんの家にお泊りするってことだね!」
燐子「そうだよ……流石あこちゃん、理解が早いね」
あこ「えへへ、そっかぁ、お泊りすることなんだ! 本当に燐子おねーちゃんの家、泊ってもいいの?」
燐子「うん……わたしはいつでも大歓迎だから……」
リサ「だ、ダメ! 純粋なあこが毒牙にかけられちゃう! 友希那、早く燐子を止めないと……!」
友希那「どうして止める必要があるのかしら?」
リサ「え」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:16:22.64 ID:
m6iylvtt0
友希那「泊まるくらい、友達同士になら普通のことでしょう? 現にリサだって何度も私を部屋に招いているじゃない」
燐子「そうなんですね……友希那さんも……今井さんにお持ち帰りされてるんですね……」
友希那「そうね。燐子の言葉を借りるならそう表現されるわね」
燐子「言葉にして……言ってみてください……」
友希那「いいわよ。私はリサにお持ち帰りされてるわ」
リサ「え!?」
リサ(ア、アタシが友希那をお持ち帰りって……そんな……ええ……!?)
燐子「逆も……あるんじゃないですか……?」
友希那「あるわね。リサが私の部屋に泊まる……つまり、私がリサをお持ち帰りすることも」
リサ(友希那がアタシをっ!?)
友希那「リサ? 顔が赤いけど、どうかしたの?」
リサ「い、いやいや……そんな……ダ、ダメだよ」
リサ「……でも……友希那になら……」
友希那「……おかしなリサね」
紗夜「…………」
紗夜「……なるほど」
紗夜「催眠術……こういう使い方もあるのね」
その後、催眠が解けたりんりんが真っ赤になって小さくなったり耳年増なリサ姉が色々とアレになるのはまた別の話
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:17:13.28 ID:
m6iylvtt0
――翌日 羽沢珈琲店――
羽沢つぐみ「催眠術……ですか?」
紗夜「ええ。昨日、白金さんがそんな話題を持ちかけてきまして……」
つぐみ「へー。燐子さんって博識なんですね」
紗夜「それで、羽沢さん。相談があるのですが」
つぐみ「はい、なんでしょうか」
紗夜「催眠術を私にかけてくれませんか?」
つぐみ「え?」
紗夜「あ、かける振りだけで大丈夫ですから」
つぐみ「え、えっと……どうしてですか?」
紗夜「はい。やはり宇田川さんは……あ、巴さんの方ではないですよ?」
つぐみ「あこちゃんですよね」
紗夜「ええ。私はあまり信じていないのだけど、宇田川さんはこういうものが好きですから」
紗夜「私がかかった振りをして、少しでも楽しい気持ちになってもらえたら、きっとロゼリアの活動にもやる気を出してくれるでしょう」
紗夜「それに……昔、宇田川さんには怒鳴ってしまったこともありまして……」
紗夜「罪滅ぼし、と言ってはなんですが、今度は私の方から彼女に歩み寄りたいんです」
紗夜「だから、その練習に付き合ってもらいたいんです」
つぐみ「紗夜さん……」
つぐみ「分かりました! そういうことなら協力します!」
紗夜「ありがとうございます、羽沢さん」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:17:59.99 ID:
m6iylvtt0
紗夜(……計画通りね)
紗夜(こうして頼めば、天使な羽沢さんはきっと了承してくれるだろうと思っていたわ)
紗夜(あとは私が催眠にかかったという体で、素直な気持ちを口にすれば……)
紗夜(今日こそ羽沢さんのことを下の名前で呼べる……!)
紗夜「ふふ……完璧な作戦ね」
つぐみ「紗夜さん? 何か言いましたか?」
紗夜「いえ、何でもありません」
紗夜(セカイデ ヒトツノ タイセツナヒト)
紗夜(ツナゲ ココロ フカク ツナゲ ユメヲ シナヤカニ……)
紗夜(何度も呼ぼうとして、勇気がなくて結局出来なかった難題……それも今日で終わりよ)
紗夜(決意の調べが私の背中を押してくれるわ……!)
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:18:37.91 ID:
m6iylvtt0
つぐみ「それで、紗夜さん。どうすればいいんですか?」
紗夜「では……白金さんお手製のコレを」
つぐみ「あ、漫画でよく見るやつだ」
紗夜「これを私の目の前で、振り子のように振ってください」
つぐみ「分かりました」
紗夜「あ、白金さんは『あこちゃんはだんだん眠くなる』と言っていました。なので……」
つぐみ「はい。えっと、紗夜さんはだんだん眠くなる~、紗夜さんはだんだん眠くなる~」
紗夜「…………」
紗夜(羽沢さんがキリっとした眼差しで私を見つめて名前を呼んでくれる)
紗夜(幸せって……きっとこういうことを言うのね)
つぐみ「だんだん……眠く……」
つぐみ(あ、いけない……最近、バイトに生徒会の仕事にって忙しかったから……なんだか私の方が眠く……)
つぐみ「…………」
紗夜「……羽沢さん?」
つぐみ「…………」
紗夜「目が虚ろで反応がない……まさか羽沢さんが催眠術に……?」
紗夜「ど、どうすればいいのかしら」
紗夜「暗示をかける? いえ、でも羽沢さんの意思と関係なしにそんなこと出来ないわね……」
紗夜「……あっ」
紗夜(それよりも大変なことに気付いてしまったわ……)
紗夜(白金さん曰く、催眠術は信頼関係のある人ほどかかりやすい)
紗夜(ということはつまり、羽沢さんはそれだけ私のことを信頼してくれているということ……!)
紗夜(なんという僥倖なのかしら……これ以上を望むことなんて私には出来ない……!)
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:19:36.38 ID:
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――カランコロン
青葉モカ「つぐー、いる~?」
美竹蘭「ちょ、モカ……あんま大きい声出すと他のお客さんに迷惑でしょ」
モカ「ごめんごめんー。えーっとつぐは~……いたー」
モカ「おーい、つぐ~。それとこんちわっす、紗夜さ~ん」
紗夜「あ、ど、どうも……青葉さん、美竹さん。こんにちは」
紗夜(悪いことはしていない……わよね。なのに何故かイケナイことをしている場面を見られたような感覚が……)
蘭「こんにちは、紗夜さん。すいません、お邪魔しちゃって」
紗夜「いえ……」
モカ「あれ~? なんかつぐ、すっごくぼんやりしてるよ~?」
蘭「はぁ? 何言って――あ、ホントだ……珍しいね」
つぐみ「…………」
紗夜「あの、実は……」
―紗夜さんお話し中―
紗夜「……という次第でして、どうしたものかと悩んでいたんです」
モカ「ほうほう。では、つぐはとっぷり催眠術にかかっちゃった~って訳なんですね~」
蘭「ひまりならともかく……つぐみがかかるなんて意外だね」
モカ「だねぇ。ひーちゃんならこういうのにすーぐかかりそうだよね~」
紗夜「私は……どうすればいいんでしょう?」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:20:35.39 ID:
m6iylvtt0
蘭「って言われても……」
モカ「ん~そうですねぇ……よーし、せっかくだし、つぐに暗示かけちゃいましょーよー」
蘭「も、モカ?」
モカ「紗夜さんは分かるんですよね、暗示のかけ方?」
紗夜「ええ、まぁ」
モカ「じゃー、つぐに『もっとしっかり甘えられるようになる』って暗示、かけてくれませんかー?」
紗夜「もっとしっかり甘えられるように……?」
モカ「はい~。つぐは放っておくとすーぐツグり過ぎて倒れちゃうんです」
モカ「最近、バイトと生徒会の仕事が多くて大変だって言ってましたし、また知らないとこで倒れてたらどうしよう……って、あたしたちみーんなすごい心配してるんですよ~」
モカ「ね、蘭」
蘭「……そうだね。つぐみはもっとしっかり、色んな人に甘えるってことを覚えた方がいいと思う」
紗夜「みなさん……とても友達想いなんですね」
モカ「そりゃーもー。断金の交わりですよ~。まぁ蘭はこう言うと素直じゃないんで否定するんですけどねぇ。ほんとは嬉しいくせに、ツンデレなんだから~」
蘭「モカ、一言多い」
紗夜「ふふ……本当に仲が良いんですね」
紗夜「2人の気持ちは分かりました。そういう風に暗示をかけてみましょう」
モカ「おなしゃーす」
蘭「お願いします、紗夜さん」
紗夜「ええ。では、羽沢さん」
つぐみ「…………」
紗夜「あなたはもっとしっかりと、色々な人に甘えられる人間になります」
紗夜「はい」パン!
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:21:08.43 ID:
m6iylvtt0
つぐみ「はっ……」
つぐみ「あ、あれ……私……」
紗夜「羽沢さん、少し疲れていたみたいですね」
つぐみ「あ、そっか……催眠術の練習してて、私が寝ちゃったんだ」
モカ「もー、ツグり過ぎちゃダメだよ、つぐ~」
蘭「そうだよ。疲れた時は素直に言いなって」
つぐみ「モカちゃんに蘭ちゃん!? いつの間に……」
モカ「今来たばっかだよ~」
蘭「うん。今度のライブのことで少し話があったんだ」
つぐみ「あ、そう……だったんだ……」
モカ「あれあれ? なーんか残念そう。もしかしてぇ、モカちゃんたちお邪魔だったかなぁ?」
蘭「……モカ、茶化さないで」
紗夜「いえ、むしろ私の方がお邪魔でしょう。少し席を外し――」
つぐみ「だ、だめです!」
紗夜「え?」
蘭「え」
モカ「おー」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:21:56.48 ID:
m6iylvtt0
つぐみ「あ、えっと……ご、ごめんなさい……」
つぐみ「なんだか、その、無性に紗夜さんに……甘えたいなって思って……つい……」
紗夜「え……」
紗夜「え!?」
紗夜(……私は今、夢を見ているんだろうか。何かこう、羽沢さんの口からなんとも甘美な響きの言葉が繰り出されたような……)
つぐみ「あ、急に言われても迷惑……ですよね」
つぐみ「でも、その……前から思ってたんです。日菜先輩が紗夜さんに遠慮なく甘えてるの……羨ましいなって……」
モカ「……お邪魔虫はあたしたちみたいだね~」
蘭「そうだね。帰ろうか」
紗夜「ちょ、ちょっと、2人とも……!」
つぐみ「ごめんね、モカちゃん、蘭ちゃん」
蘭「いいって。ライブのことは後で連絡するから」
モカ「紗夜さんとごゆっくり~」
――カランコロン
紗夜「……行ってしまった」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:22:54.74 ID:
m6iylvtt0
つぐみ「紗夜さん……その、やっぱり嫌ですか? 私に甘えられるの……?」
紗夜「え、い、いえ……そんなことは……」
紗夜(むしろ嬉しすぎて心臓が大変なことになっていますが)
つぐみ「ほんとですか!? じゃ、じゃあ……甘えちゃってもいい……ですか?」
紗夜(くっ、可愛い)
紗夜(そんな風に言われたら……私は抗う術を持っていない……!)
紗夜「……ええ、どうぞ」
つぐみ「わぁ……! ありがとうございます、紗夜さ――あ」
紗夜「羽沢さん? どうかしましたか?」
つぐみ「あの……紗夜さんじゃなくて……おねーちゃんって呼んでも、いい……ですか?」
紗夜(くっ……可愛い……!)
紗夜(抗えない……抗えるわけがない……!)
紗夜「ええ。もちろん」
つぐみ「……えへへ、ありがと、おねーちゃん♪」
紗夜「可愛い」
つぐみ「ほんと? おねーちゃんに褒められるの、嬉しいな」
紗夜(つい本音が……。でも羽沢さんは嬉しそうにはにかんでいる……)
紗夜(…………)
紗夜(思っていた流れと違う……けれど、決して悪くはない)
紗夜(むしろ良い……!)
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:24:04.57 ID:
m6iylvtt0
紗夜「羽沢さんは私に何かして欲しいことはありますか?」
つぐみ「……むぅ」
紗夜「羽沢さん? どうかしまし――」
つぐみ「つぐみ」
紗夜「はい?」
つぐみ「おねーちゃんなのに名字で呼ばれるのは……私、寂しいよ」
つぐみ「だから……つぐみって呼んで欲しいな……?」
紗夜「っっ!?」
紗夜(少し拗ねたような表情で、上目遣いに私を見つめてワガママを言う羽沢さんが目の前にいる)
紗夜(これは本当は夢なのかもしれない)
紗夜(でも夢でもいい。例えこれが胡蝶の夢だとしても、今の私は間違いなく幸せなのだから……)
紗夜「そうですね、確かに名字で呼ぶのはおかしいですね」
つぐみ「敬語もヤだな……」
紗夜「……分かったわ、つぐみ」
つぐみ「えへへ、やっぱりおねーちゃんは優しいね」
紗夜「ふふ、そういうあなたはいつも可愛いわよ」
つぐみ「ありがと、おねーちゃん♪」
つぐみ「あ、そうだ。私ね、ケーキが食べたいんだ」
紗夜「もしかして、あーんしてほしいのかしら?」
つぐみ「……バレた?」
紗夜「仕方ない子ね。いいわよ、それくらいいつでもやってあげるから」
つぐみ「わーい、ありがとう、おねーちゃん!」
紗夜「ふふふ……」
つぐみ「えへへ……」
このあと催眠が解けるまでめちゃくちゃ甘やかした
その現場をうっかり日菜ちゃんに見られた紗夜さんが色々と大変な目に遭うのはまた別の話
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:24:32.27 ID:
m6iylvtt0
―― 翌日 やまぶきベーカリー ――
モカ「……ってことがあったんだよね~」
山吹沙綾「へ~」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:25:41.49 ID:
m6iylvtt0
――そのまた翌日 花咲川女子学園・中庭――
沙綾「……ってことがあったんだって」
戸山香澄「へ~! なんか面白そう!」
市ヶ谷有咲「ええ? 今の話のどこに面白そうって思えるポイントがあんだよ……」
香澄「だって楽しそうじゃない?」
有咲「いや別に」
花園たえ「有咲、唐翌揚げとハンバーグちょうだい。ブロッコリーあげるから」
有咲「おたえ……お前最近どんどん欲張りになってねーか?」
たえ「あ、レタスの方がよかった?」
有咲「そういう話じゃねーよ!」
牛込りみ「あ、あはは……おたえちゃんは本当にお肉が好きだよね」
たえ「お肉はね、無限のパワーを私にくれるんだ」
香澄「えぇっと……ここをこうして……」
沙綾「香澄? 何やってるの?」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:26:14.73 ID:
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香澄「んと……よし、完成!」
りみ「五円玉に紐を通した……漫画でよく見るアレ?」
香澄「うん! 楽しそうだから、催眠術やってみたいなって思って!」
沙綾「誰にかけるの、催眠術?」
香澄「有咲に!」
有咲「はぁ? なんで私にかけるんだよ」
たえ「一番かかりやすそうだからじゃない?」
有咲「はっ、そんな子供だましみたいなもんに私がかかる訳ねーだろ」
沙綾「…………」
りみ「…………」
香澄「じゃあやってみようよ! 有咲、勝負!」
有咲「なんの勝負だよ……まぁいいよ、やってやろうじゃん」
有咲「テレビとかの催眠術もどうせヤラセだろ? そんなもんに私が負ける訳ねーし」
沙綾(フラグかな)
りみ(フラグだよね……)
たえ「フラグだね」
香澄「行くよー有咲!」
有咲「はいはい。ったく、ガキっぽくてしょうがねーなぁ香澄は」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:27:15.00 ID:
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―10秒後―
有咲「…………」
沙綾「……見事にすんなりかかったね」
りみ「うん……予定調和だよね……」
たえ「流石だね、有咲。期待を裏切らない」
香澄「おーい、有咲~?」
有咲「…………」
沙綾「全然反応しないね」
りみ「このあと、どうするの?」
沙綾「紗夜先輩はつぐみに暗示をかけたってモカが言ってたけど……」
香澄「じゃあ私もかけてみる!」
たえ「どんな暗示にするの? お弁当のお肉、何でも交換してくれるとか?」
沙綾「ちょっとお肉から離れよっか、おたえ」
香澄「うーん、どうしよっかなぁ……」
りみ「あ、じゃあ、素直になる……とかどうかな……?」
香澄「おー! それいいね、りみりん!」
たえ「確かに有咲はもっと素直になるべきだよ」
沙綾「素直な有咲かぁ。あんまり想像できないね」
香澄「よーし、それじゃあ……有咲は素直になる~、すごーく素直な女の子になる~!」
香澄「はい!」パン!
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:28:05.84 ID:
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有咲「わっ」
有咲「あ、あれ……?」
香澄「有咲、おはよっ!」
有咲「あ、ああ、おはよ」
たえ「有咲、見事に催眠術にかかってたね」
有咲「あ、そっか……催眠術にかかるかかんないとか言って……」
たえ「ねぇねぇ、今どんな気持ち?」
有咲「……いや、その、なんつーか」
沙綾(どうなるんだろ……)
りみ(本当に素直になってるのかな……?)
たえ「ねぇねぇ有咲、香澄にあっさり負けた気持ちはどう?」
有咲「あーもーうっせー! 聞こえてるっつの!」
有咲「つか、香澄に勝てる訳ねーだろ! 正直ジッと見つめられた時点でほぼ落ちてたよ!」
沙綾「え」
りみ「え」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:28:35.21 ID:
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有咲「まったく……やめろよな、ほんと。親友にそんな見つめられたらもう私の負けでいいかなって思うに決まってんだろ……」
香澄「あ、有咲っ、今私のことなんて言った?」
有咲「はぁ? 親友だけど……それがどうかしたのかよ?」
香澄「有咲……」
有咲「なんでそんな感慨深い顔してんだよ。やめろよそういうの。ちょっと優しくしてあげたくなるだろ」
香澄「有咲ぁー!!」ガバ
有咲「ちょ、だからいきなり抱き着いてくんな! 嬉しいけど心の準備が必要なんだよ!」
香澄「えへへー、だって有咲がそう思ってくれてたのが嬉しくて」
有咲「あのなぁ……お前のおかげで、今の私は毎日が楽しいんだぞ」
有咲「強引に私の手をとってその気にさせて……そのくせおたえに夢中になったりして焦らしてきて……」
有咲「そんで色んな素晴らしい景色に出会って、私はお前のせいでなぁ、もう1人じゃ寂しくて生きていけなくなっちまったんだからな」
有咲「ったく、私をこんな風にして……責任とれよ」
香澄「うん、とるとる!」
有咲「聞いたかんな。ちゃんと覚えておくぞ、それ」
香澄「うん! 忘れそうになったら言ってね、いつでも言うから!」
有咲「ああ、ありがとな」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:29:49.68 ID:
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りみ「あ、あの……有咲ちゃん、色々大丈夫……?」
有咲「……心配してくれるのか、りみ。お前は本当にいつも優しいよな……」
りみ「えっ?」
有咲「出会った時はさ、オドオドしてて頼りないなって思ってたけど……全然そんなことなかった」
有咲「私なんかよりもずっと強くて優しい女の子だよ」
りみ「そ、そんなことは……」
有咲「そんなことあるっての。ほら、私がキーボード買ったばっかの時さ、ずっと一緒にいてくれたじゃん? 香澄が相手してくれなくて私は勝手にイライラしてたのにさ」
有咲「あれ、本当に嬉しかったんだ。誰かと一緒にいるのっていいものなんだな、って思ったんだ」
有咲「それに香澄にも蔵に来るよう言ってくれてたしさ。ありがとう、りみ」
りみ「え、う、うん……」
有咲「それなのに私はこの前あんなヒドイこと言って……本当にごめん! 償うために私に出来ることならなんでもするぞ!!」
りみ「えと……それはもう過ぎたことだから……私も悪かったなって思うし……」
りみ「それに、有咲ちゃんには勉強ノートも貰ったから……ね?」
有咲「あれだけじゃ私の気が済まねーんだって。本当にごめんな?」
りみ「う、ううん……」
有咲「あー本当にりみと仲直りが出来てよかったよ……」
有咲「私さ、りみの傍にいるのって大好きなんだ」
りみ「えっ!?」
有咲「すごく落ち着くんだよ、りみの隣。癒し系だよな、ホント。のんびりほんわかしてて……」
有咲「なんかさ、時間の流れが緩やかになるっていうか……口数は少ないけどさ、その空気が私を安心させてくれるんだ」
有咲「こんな優しい良い子と親友になれるだなんて、私は幸せ者だよ」
りみ「あ、有咲ちゃん……ちょっとそれは照れくさいかな……」
有咲「そういうところも可愛いよなぁ……正直妹にしたい」
りみ「うぅ……」
たえ「りみ、真っ赤になっちゃった」
有咲「そこがまたこう、庇護欲をそそるんだよ」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:30:36.23 ID:
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有咲「ていうか、おたえ。お前にも言いたいことがあるんだよ」
沙綾(これ、迂闊な発言するとこっちにも飛び火してきそうだなぁ)
沙綾(少し黙ってよ)
たえ「うん、なに?」
有咲「お前……ほんとスゴいよな」
有咲「いつもなーんも考えてないようでいて、本当は友達のことをすっげー大事に思っててさ……」
有咲「なんてーか、芯が強いよな」
たえ「私はギターやってるからね」
有咲「そう、ギターな。私、昔はおたえに嫉妬してたんだ」
たえ「そうなの?」
有咲「うん。ほら、香澄がずーっとおえたと一緒にギターの練習してたからさ……私よりもおたえの方がいいのかよって拗ねてたんだ」
たえ「ああ、居残りの時の」
有咲「そうそう、そん時の。まぁーでもさ、やっぱこうやって親友になると分かるよ。おたえには敵わねーって」
有咲「ふわふわしてるようでどんな時も自分の芯を崩さねーからさ、頼りになるんだよ」
有咲「それに、突拍子のないこと言うけどさ、案外それが正鵠を射ってたりすんだもん」
有咲「二重の虹(ダブルレインボウ)、作詞してた時も一番大切な場所はおたえの発言から香澄が思いつくし」
有咲「やっぱおたえってすげーよ」
たえ「えへ、褒められちゃった。私も有咲のこと、すごいっていつも思ってるよ」
有咲「どうせお前のすごいは『今日もお弁当にお肉がいっぱいですごい!』とかだろ」
たえ「……! すごい、よく分かったね」
有咲「当たり前だろ。親友のことなんだから」
有咲「あ、でも弁当に肉がいっぱい入ってんのはおたえの為だからな。おかず交換の為だかんな。私が食いしん坊だとか勘違いすんなよ」
たえ「親友にお肉……いい響きだ。私も有咲のこと、親友だと思ってるよ」
有咲「そっか……ありがとな、おたえ」
たえ「うん!」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:31:41.46 ID:
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沙綾「…………」
香澄「じゃあ次はさーやだね!」
たえ「そうだね」
沙綾「やっぱり逃げられないかぁ……」
有咲「沙綾……沙綾な。沙綾は本当、言うことがないよな」
沙綾「あ、あはは……言うことがないなら無理に言わなくても……」
有咲「何か勘違いしてねーか? 非の打ちどころがないって意味だぞ?」
沙綾「あ、そう……なんだ……」
有咲「そうなんだよ。なんなんだよ、そのお姉ちゃんオーラ。マジ有り得ねぇって」
有咲「いっつも色んな良い匂いするしさ、面倒見がよくて他人の気持ちがよく分かるから、辛い時は話聞いてくれるし楽しい時はからかってくるし」
沙綾「…………」
有咲「どんだけ私の心見透かしてんだよ。なんでして欲しいことをして欲しい時にピンポイントでしてくれるんだよ」
有咲「ふざけんなよ、私が男だったらもうとっくに惚れてるぞ」
有咲「あ、いや、親友って意味では惚れてるからな? その辺は勘違いしないでくれよな」
沙綾「あー、うん」
有咲「でもなぁ、やっぱ沙綾は抱え込みすぎるのがなぁ……」
有咲「玉にキズ……なんだけど、むしろだからこそ守りたくなるよな」
沙綾「えぇ……?」
有咲「いっつもみんなのこと気にかけてくれるお姉ちゃん的ポジションの沙綾」
有咲「そんな沙綾が落ち込んだ時こそ傍にいてあげたい」
有咲「そりゃ、私には沙綾みたいにさ、相手の気持ちを汲んで何かしてあげるっていうの、上手くできねーよ」
有咲「でもな、隣にいて、話を聞くくらいなら私だって出来るんだ」
有咲「沙綾だって1人じゃねーんだよ。私はかけがえのない親友の1人だって思ってるんだからさ」
有咲「もしまた、何かに悩んでヘコんだり迷うなら……私も頼ってくれよ」
有咲「いっつも沙綾には……いや、沙綾に限らずみんなには貰ってばっかなんだ。私にも少しはお返しさせてくれよな」
沙綾「えっと……機会があったらね?」
有咲「いつだっていいからな。頼りにしてくれよ?」
沙綾「まぁ……うん……そうだね……」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:33:02.52 ID:
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沙綾「…………」
りみ「…………」
沙綾(なんていうか、素直になった有咲……すごく絡みづらい! いつもの調子で素直だから余計に絡みづらい!)
りみ(有咲ちゃん……そんな風に思ってくれてたのは嬉しいけど、いつもの有咲ちゃんに戻ったらどんな顔でお話すればいいんだろ……?)
香澄「ねぇねぇ有咲。私たち、親友なんだよね?」
有咲「当たり前だろ。気が済むまで何度だって言ってやるからな」
香澄「えへへ、嬉しいな~! それじゃさ、私のことあだ名で呼んでよ!」
有咲「あだ名って……北沢さんが呼ぶみたいな?」
香澄「そうそう!」
有咲「じゃあ……かーくん?」
香澄「そしたら有咲は、あーちゃん!」
有咲「……へへ、なんかいいな、こういうのも」
香澄「えへへ、だよね~!」
たえ「ねぇ有咲、私もあだ名で呼んでみてよ」
有咲「いや……おたえはもうおたえじゃん」
たえ「あ、そっか。じゃあ普通に名前で呼んでみて?」
有咲「普通にって……たえ?」
たえ「おお……これはこれでなかなか……」
沙綾(まぁ……やっぱりあの2人はいつも通りだよね……)
りみ(すごいなぁ、香澄ちゃんとおたえちゃん……)
沙綾「はぁ……」
りみ「はぁ……」
沙綾&りみ(催眠術って、いつ解けるんだろ……?)
10分後、催眠が解けた有咲がテンパって色々と開き直るのはまた別の話
おわり
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/07/24(火) 12:33:58.22 ID:
m6iylvtt0
魔が差しました。すみませんでした。
正統派催眠系いちゃラブバンドリSSが読みたいです。
きっと誰かが書いてくれると切に信じています。
HTML化依頼出してきます。
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【バンドリ】白金燐子「催眠術……?」
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