アクセスのないファイルを削除しようと思い、昨夜、ほったらかしになっているbox.netのアカウントをチェックしました。それで、いくつか、ほほう、と思った点がありました。
まず、先月アップしたばかりの『浮雲』のテーマの変奏曲だけ、アクセスが非常に多いことです。この映画から切り出したほかの曲は、不人気ではないものの、ふつうのアクセス数です。どなたかおひとり、ヴァリアントのほうだけ気に入り、しばしばお聴きになっている、なんていうあたりでしょうか?
アップした当初から人気の高かった『ゴジラの逆襲』の挿入曲、星野みよ子の「湖畔のふたり」は、その後もアクセス数が伸びていて、低音質ヴァージョン(「丘のホテル」という仮題でアップした)と高音質ヴァージョンの両方を合わせると、圧倒的なトップです。

◆ 『狂った果実』のスコア ◆◆
「湖畔のふたり」同様、当家のお客様であるOさんに資料を提供していただいた『狂った果実』も人気が高いのですが、これはどういうわけか、映画から切り出し、わたしが勝手に命名した「ラヴ・テーマ」(「『狂った果実』その3」および「その4」の二度にわたってふれた)のほうが圧倒的にアクセス数が多く、その後アップした、高音質ヴァージョンのトラックはあまりアクセスがありません。
以下に『狂った果実』のトレイラーを貼りつけておきますが、例によってスケデュールに余裕がなく、スコアは未完成だったのでしょう、佐藤勝&武満徹のスコアは予告篇には登場しません。音楽はさまざまな曲の五目そば状態で、最後はワーグナーになっちゃいます。なかなか珍!
やはり、音楽にはイメージを喚起するタイトルが必要なのかもしれません。DB4-M4なんていうタイトルではそそられないのでしょう。もうひとつ、武満徹の盤にはわたしが「ラヴ・テーマ」と命名した、岩場で北原美枝と津川雅彦が甲羅干しをするシーンで流れる曲は収録されていなくて、高音質トラックのサンプルのなかには肝心の「ラヴ・テーマ」が入っていないことも影響したのかもしれません。
『武満徹全集』の第3巻には、「ラヴ・テーマ」に近いトラック(DB18-M19)が入っているのですが、ウクレレのコードが入っていない別テイクなのです(ないしはオーヴァーダブ以前のヴァージョン)。これをアップしてもいいのですが、ウクレレがないと大きく印象が変わるので、映画から切り出したトラックのほうがいいのではないかと思います。
◆ その他の「ヒット曲」 ◆◆
box.net上のすべてのトラックをチェックをチェックして、変だなあ、と思ったことがあります。マージョリー・ノエルの「そよ風に乗って」のアクセスがゼロだったことです。わたしなんか、数十年ぶりでこれを聴いたときはウハウハだったのですが、もはやだれも知らないシンガーなのかもしれないと思いました。
box.netが手狭になったとき、もうひとつアカウントをつくり、目的別に使い分けようなんて気を起こしたことを思いだしました。でも、FC2はdivshareのプレイヤーを貼りつけられることがわかり、boxの予備アカウントはその後使わなくなっていました。パスワードによる二つのアカウントの出入りが面倒なのです。
それで、不活発なほうのbox.netアカウントを見たら、なにを勘違いしたのか、「そよ風に乗って」をダブってアップしていたことがわかりました。こっちのファイルにリンクを張ったわけで、メインのアカウントはリンクが貼っていないのだから、アクセスはゼロに決まっています。大人気というほどではありませんが、やはり懐かしく感じる方も多いのでしょう、まずまずのアクセス数があります。
映画音楽以外では、ビーチボーイズのI Get AroundおよびバーズのMr. Tambourine Manのセッションや、ハニーズのHe's a Dollなどもおおいなる人気がありますが、このあたりは、さもあらんと思います。
あまり「さもあらん」ではないのは、たとえば、ボブ・トンプソンのOn the Street Where You Liveです。ボブ・トンプソンというアレンジャーをご存知の人は多くないはずで、どうしてアクセス数が多いのかよくわかりません。ひとりの方がしばしばお聴きになっている?

同じ『マイ・フェア・レイディー』からの曲である、I Could Have Danced All Nightのロビン・ウォードによるカヴァーも人気が高いのですが、これはウォードが一部で非常に人気があるからだろうと思います。On the Street Where You Liveはそれに引きずられたのかもしれません。
一般論として、当然ながら、有名な人のほうが、そうでない人よりも人気が高いのですが、この原則はつねに通用するわけではなく、ボブ・トンプソンが示すように、思わぬトラックの人気が高いこともあります。これが映画から切り出した「自家製OST」になると、まったく予想がたたないばかりでなく、じっさいの結果から、なにかの理屈を導きだすこともできません。

曲を紹介する際に、わたしがおおいに煽り立てたものがたくさんアクセスされることもありますが、志ん生が「いーーーーーい女!」というときのように、おおいに美点を強調したにもかかわらず、さっぱりアクセスの伸びないトラックもあります。つまり、わたしがなにをいおうと、それはサンプルのアクセス数には影響を与えない、ということです!
この世のあらゆることは、やはり「やってみなければわからない」のでしょうかね。
◆ 最近聴いた曲 ◆◆
枕のつもりだったのですが、おそろしく長くなってしまったし、例によってタイム・イズ・タイト、もはや木村威夫と『悪太郎』についてまとまったことを書くだけの余裕はありません。箇条書きのような本日の記事は最後まで箇条書きとします。
オマケとして、最近、「気が動いた」曲をどうぞ。
「ドッヒャー」以外の言葉は出ず。人の望みはさまざまで、他人があれこれ容喙するすることではありませんが、なんだって北極点に行くために体重を増やしたりしたのか……。よくそういう決断ができたものだと、その強さに感心もします。美少女の過去と意識的に訣別できる女性がいるというのは、驚異ですな。いや、むしろ、ご当人が女だからできるのでしょうか。はたの男としては、姫、ご乱心召さるるなかれ、ですぜ。
すぐ近くにあったクリップをもうひとつ。
当時も今も彼女に強い思い入れはないのですが、久しぶりにこの曲を聴いたら、やはり、曰く言い難い感懐がありました。サイケデリックの1967年、日本は内藤洋子の「白馬のルンナ」か……。子どものころ、日本に生まれた不幸を嘆きましたが、それを思いだしてしまいます。
今日はサンプルの話題だったので、せっかくだから、新しいサンプルをアップします。最近、いちばんビックリした曲。聴く前に、これが1946年のヒット曲だということを頭に入れておいてください。1946年はすなわち昭和21年、太平洋戦争終戦の翌年です。
サンプル ボブ・ウィルズの"Roly Poly"
まずイントロで、なんだこれは、と身が引き締まりました。1920年から順にヒット曲を聴いていき、プレイヤーはまだ1940年代なかばの曲をつぎつぎにかけていることはわかっていたので、そんな時代にこういうアレンジとプレイがあるのかと、あわててボブ・ウィルズのディスコグラフィーを確認しました。

まあ、これ以前にレス・ポールとチャーリー・クリスチャンがすでに活躍していて、エレクトリック・ギターをリード楽器に使った曲はそれなりに存在していましたが、このボブ・ウィルズのRoly Polyはアレンジ、サウンドのニュアンスが非常に現代的で、それで耳を引っ張られました。
この翌年、レス・ポールはLoverによって多重録音のギター・アンサンブルを実現するのですが、ボブ・ウィルズのバンドは、ノーマルな録音でギターとペダル・スティールのアンサンブルを実現しています。片方はペダル・スティールなのですが、それにしてもギター・アンサンブル。これはその最古の例なのではないかという気がしてきました。間奏でも2本のギターがからんでくれたら文句なしだったのですがねえ。
最後に、先日のdeepさんのコメントにあった『八月の濡れた砂』のトレイラー。冒頭に「ダイニチ映配」のロゴが出て、ああ、そうか、と思いました。経営難の大映と日活が配給を統合して生まれた会社です。短命でしたが。
この空撮を見ると、やはり『狂った果実』を想起します。藤田敏八監督もそれを意識していたのではないでしょうか。
ついでといっては申し訳ないのですが、ついつづけて見てしまったクリップ。
陽のあたる坂道オープニング・シークェンス
すごいクリップですねえ。映画館で手持ちで撮影した? ともあれ、このテーマは佐藤勝の曲のベスト3に入れます。視覚的にも、田園調布のアップダウンをうまく利用して、リズミカルな映像をつくっています。こういう画面と音の組み合わせには、ほんとうに心が躍ります。撮影監督は伊佐山三郎。
クレーンで撮ったか! このアパート内部のセット・デザインはなかなか興味深いものでした。美術監督は木村威夫です。やはり、いずれ取り上げなければいけない映画のようですが、テープしかもっていなくて……。
木村威夫『映画美術―擬景・借景・嘘百景』
