0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評 『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』
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0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』



レア・トドロフ『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』、

マリア・モンテッソーリ(ジャスミン・トリンカ)はイタリアで最初に医師になった女性の一人で、障害児教育の教師養成研究所を設立する。

マリアは、子供たちを愛し、新たな学びを与え、潜在的能力を子供らの自由な行動から引き出していた。

だがマリアは無報酬で、パートナーは成功を自分の手柄にし、エリート科学者らは障害児教育を認めなかった。

その上マリアは仕事を辞めて結婚しなければ息子を持てず、パートナーとの間に出来た息子マリオとは、その誕生後から離れて暮らしていた。

身障児教育には母の愛が必要だと説きながら、自らが息子を育てられないことにマリアは悩みだす。

しかし、マリアに身障児の娘が世話になっているリリ・ダレンギ(レイラ・ベクティ)の勧めから、マリアは自ら自立して教育学を行うため、女性たちと連帯していく。




Amazon創業者ジェフ・ベゾス、Google創業者ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン、歌手のテイラー・スウィフト、将棋の藤井聡太などが受けたモンテッソーリ教育の生みの親であるマリア・モンテッソーリの、波乱に満ちた教育運動の人生を描いた映画。

冒頭から、ジャン・ルノワール映画のような流麗なカメラワークによる長回し撮影が素晴らしく、かなりルノワール的かつヌーヴェルヴァーグ的な流動感の美しい映像で幕を開ける。

そこからは明らかに男尊女卑の時代に、女性でイタリア初の医師となり、様々な困難を通過して波瀾万丈の道を邁進するマリア・モンテッソーリの人生が生々しく描かれていく。

特に、身障児の教育には母の愛が一番だと説きながら、マリア自らは自分の息子を育てることを犠牲にしなくてはならない苦しみと痛みがあまりに切ない。

だがマリアが、その上で自分の信じた教育の道を邁進する姿が、その生の息吹や呼吸がダイレクトに伝わってくるほどの生さで描かれていて実に素晴らしい。

身障児の娘を抱えたリリが、最初は娘に対して投げやりな態度を取りながらも、男たちと付き合って何とか金を工面し、実は娘をしっかりと成長させることを夢見つつ、マリアに娘を託していく描写が、マリアの人生描写の中で描かれていく。

それが最終的に、世間体や家の格式ばかり気にするパートナーに裏切られたマリアが、リリの助言で医師として女として自立していき、2人で女性同士のネットワークを築いていく発展に繋がっていき感慨深い。

本物の身障児達がドキュメンタリーのように、しかし俳優として演技しながら、徐々に色々なことが出来るようになり成長していく場面もとても秀逸である。

そんな見事な傑作である一篇。 2024/11/09(土) 00:05:21 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

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