面会は是か非か?
2011/01/25 Tue
「しろちゃん、面会は行って良かった?」
うう~んとお……
手術の翌日のお話。
猫の入院とその面会ということに関して、女の子猫ちゃんのママパパさん達は、避妊手術で経験があることと思う。
しろちゃんの去勢手術は日帰りだったので、しろちゃんは今回が初めての入院だ。
私も猫飼い初心者なので、経験が無い。
昔、実家で飼っていた大型ワンちゃんも、入院などしたことがなかった。
最初、もちろん、毎日(といっても3日の入院だったが)会いに行く気満々だった。
「もちろん、行きますよ~ママは。」
ふと、あることに気づく。
しろちゃんには、面会に来たということがわかるの?
私の頭の中からは、NOという答えが出た。
しろちゃんの場合だが、きっと、迎えに来たとしか思えないだろう。
ママが来た=お家に帰る……だ。
それなのに、顔を見せておいて置いて帰れるのか?
自分にそれが出来るのか?
かつて、愛犬の脚を手術して1ヶ月恨まれたという茅ヶ崎に住む親友に聞いてみた。
「うちのタロチンはね、会いに行ってもいつも背中を向けてたのよ。
怒ってたのね。
でも私は毎日会いに行ったわよ、会いたいから。」
とある猫雑誌の獣医さんの電話相談に電話してみた。
「猫ちゃんは、面会という概念がわかりません。
あなたの言うとおり、ママが来た=お家に帰るです。
むしろ、じっと安静にさせておくという意味で、面会には行かないほうが賢明。
捨てられたような気持ちにならないかって?
猫ちゃんは待つ動物ですから、退院の日に、待ってた人が迎えに来てくれればそれで帳消し。」
んんん~どうしたものか…。
神経質なママはとても悩むのだ。
ううう~んとねえ………
しろちゃんの先生
「面会は、いいとも悪いともどっちとも言えないんですよね~。
まさに、猫ちゃんの個性による!です。
仰るとおり、飼い主さんが来ると里心がついて、一晩泣く猫ちゃんあり、喜んで興奮して困るほど動き回る猫ちゃんあり、『帰れないけど、会いに来てくれたんだね♪』とわかる猫ちゃんありです。
まずは会いに来てみて、遠くから見てみたらどうですか?」
翌日、しろパパさんと病院に行った。
初対面の看護士さんが、猫ちゃん専用病室まで案内してくれた。
「しろちゃんは、いい子ですよ~。」
「またまた~、お世辞はいいのよ~。」
「お世辞じゃないです。
おとなしくて、何も文句言いませんし、昨夜も泣きませんでしたよ。」
フムフム…それはいい子なんじゃないのよ。
見知らぬ状況に、心身ともに固まっているだけなの。
…しゃべっているうちに、遠くから見るの猶予もなく、するすると病室のドアの中に入ってしまった。
病室自体が細長い造り。
入り口の大きさに比して、奥行きの深い3階建てのステンレスのケージだった。
動物病院の病室ってものを実際に見たことが無い私は、ちょっと戸惑う。
もちろん、薄暗さと適度な狭さが猫ちゃんの安静のために不可欠であり、それは平均的な病室のありようだと後々に知るが、「差額ベッドは無いの?」と、質問したくなった。
薄暗い3段ケージの真ん中、奥のほうに白いものが居た。
ケージのドアを看護士さんが開け、「どうぞ」と場所を交代する。
思わずしろパパさんと顔を見合わせる。
想像していたような、「わあ~しろちゃん♪」と、再会のうれし涙っていう感じでは、全然ない。
なんというか、見てはいけないものを見てしまった感じ?
しろちゃんは、最奥の壁に張り付いたように座ったまま、いつもの高い声でか細く「ミャ~ン」と一声だけ泣いた。
胸が詰まって苦しくなる。
左手には点滴、そのチューブがしろちゃんの足元でグルグルしたあと、ケージの側面にぶら下がる点滴の袋につながっている。
点滴を固定するために巻いたバンデージが緑色でかわいいが、なんと細い手首なの!
点滴をする猫ちゃんの写真は見なれているが、実際目の前に愛猫のほっそ~い手首を見ると、涙腺が熱くなってくる。
ここで涙を出したら、ママとしては負けなのだ。
飼い主が悲しい顔をすることが、猫ちゃん達には何より悲しいことだもの。
「しろちゃん、がんばったじゃ~ん♪」とうそくさい明るさで呼びかけたが、前に出ては来ない。
看護士さん
「ずっとあそこから動かないんですよ」
私
「動けないの?」
看護士さん
「いえ、トイレは使ってるのでヨチヨチとは歩けます。」
しろちゃんはモジモジと手を踏み変えながら、じっと視線を私達からそらさない。
5分に1回くらい、点滴の刺さった左手を、小刻みに振る。
ステンレスのケージの床にベッドパッドのような敷物が全体的に敷いてあり、一部分に例の電気ホットマットが敷物の下にあって、ちょうど猫ちゃんの身体分、ポカポカと暖かい。
寒ければ、そこに移動すればいい状態になっている。
右半分にはペーパーチップを入れたトイレ、寝床のすぐ前にカリカリとお水があった。
そのカリカリに、ふりかけがどっさり。
看護士さん
「しろちゃん、全然食べてくれないんです。」
「しろちゃん、おいで~ママのとこに、おいで~」
しろパパさん。
「バカだな、痛いんだよ!
痛いから、できるだけ歩きたくないんだよ、歩かせるなよ!」
…2種類の親バカが交錯する。
お腹の傷がなかなか見えない。
私達に身体の左側だけを見せて、右側を見せない。
足元にグルグルになった点滴のチューブを、足の絡まないよう直してやってから、逃げるように病室を出た。
ママとしろパパさんの涙腺の蛇口にも、限界はある。
面会は是か非か。
猫ちゃんにとっての是非は私には判断できない。
飼い主さんにとっては是だと私は思う。
行くべきだ。
行って、あなたの愛する小さな身体の生き物が、痛みに耐え闘う姿を見るべきだ。
うれしかったよ、ママ
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