漱石・読んだふり 『吾輩は猫である』 各論⑧ 八
漱石
漱石・読んだふり 『吾輩は猫である』 各論⑧ 八
時期
明治38年
時季を表す記述なし
登場人物(登場順)
・吾輩
・学校の小使
・落雲館の書生
・主人(苦沙味)
・迷亭(吾輩の夢の中で)
・落雲館の倫理の教師
・鈴木藤十郎
・金田
・甘木先生
・八木独仙
ストーリー
・主人の家の周囲の説明。
・主人の家に接する空き地に落雲館の学生が入って騒ぎ始め、それが度を増す。
・主人が空き地に入ってきた学生に文句を言う。
・主人が落雲館の校長に文句の書を送ると、校長が空き地との境に四つ目垣を造らせる。
・「からかう」ことについての吾輩の説。
・落雲館の学生が主人をからかった経緯。
・「逆上」についての吾輩の説。
・小事件の説明。
・落雲館の倫理の教師の講話。
・大事件の説明。
・鈴木藤十郎が主人が困っている様子を確認しに来る。
・甘木先生が主人に催眠術をかけるが、失敗する。
・八木独仙が主人に消極主義を論じる。
言及される歴史上の人物・事項
・張世尊
「この竹を以て組み合せたる四寸角の穴をぬける事は、清国の奇術師張世尊その人といえども六ずかしい。」p290
・ゲーレン、パラセルサス、扁鵲
「逆上とは読んで字の如く逆かさに上るのである、この点に関してはゲーレンもパラセルサスも旧弊なる扁鵲も異議を唱うる者は一人もいない。」p293
・『傷寒論』
「頭寒足熱は延命息災の徴と『傷寒論』にも出ている通り、濡れ手拭は長寿法において一日も欠くべからざる者である。」p293
・プレートー
「プレートーは彼らの肩を持ってこの種の逆上を神聖なる狂気と号したが、いくら神聖でも狂気では人が相手にしない。」p294
・ユーゴー
「聞くところによればユーゴーは快走船の上へ寝転んで文章の趣向を考えたそうだから、船へ乗って青空を見詰めていれば必ず逆上受合である。」p295
・スチーヴンソン
「スチーヴンソンは腹這に寝て小説を書いたそうだから、打つ伏しになって筆を持てばきっと血が逆かさに上ってくる。」p295
・イスキラス
「昔し希臘にイスキラスという作家があったそうだ。」p297
・『唐詩選』
「であるからして自分が『唐詩選』でも高声に吟じたら気分が晴々してよかろうと思う時ですら、もし自分のように迷惑がる人が隣家に住んでおって、知らず知らずその人の邪魔をするような事があっては済まんと思うて、そういう時はいつでも控えるのである。」p301
・アキリス、ヘクトー、燕ぴ、張飛、長坂橋、曹操
「少し詩がかった野蛮人になると、アキリスがヘクトーの死骸を引きずって、トロイの城壁を三匝したとか、燕ぴと張飛が長坂橋に丈八の蛇矛を横えて、曹操の軍百万人を睨め返したとか大袈裟な事ばかり連想する。」p303
・左氏、鄢陵の戦
「左氏が鄢陵の戦を記するに当っても先ず敵の陣勢から述べている。」p303
・ニュートン
「ニュートンの運動律第一に曰くもし他の力を加うるにあらざれば、一度び動き出したる物体は均一の速度を以て直線に動くものとす。」p306
・ライプニッツ
「ライプニッツの定義によると空間は出来得べき同在現象の秩序である。」p306
・柳宗元、韓退之(かんたいし)
「柳宗元は韓退之の文を読むごとに薔薇(しょうび)の水で手を清めたという位だから、吾輩の文に対してもせめて自腹で雑誌を買って来て、友人の御余りを借りて間に合わすという不始末だけはない事に致したい。」p313
・クリシッパス
「「昔し希臘にクリシッパスという哲学者があったが、君は知るまい。」」p317
・ナポレオン、アレキサンダー
「ナポレオンでも、アレキサンダーでも勝って満足したものは一人もないんだよ。」p326
語句・表現
・江湖:もとは中国の揚子江と洞庭湖。都から遠く離れた地。
・玉を抱いて罪あり:『春秋左伝』の「桓公10年」にある言葉。身分不相応のものを持ったり、不相応のことをしたりすると、とかくわざわいを招きやすいことをたとえていう。
・逆茂木:敵の侵入を防ぐために、先端を鋭くとがらせた木の枝を外に向けて並べ、結び合わせた柵。逆虎落(さかもがり)、鹿砦(ろくさい)とも言う。
・梁上の君子:『後漢書』「陳寔伝」にある言葉。盗賊。どろぼう。 陳寔ちんしよくが梁上にひそんでいる盗賊をさしていった語。
・折助・雲助・三助:折助;近世、武家で使われた下男の異称。 雲助;江戸時代に、宿場や街道において荷物運搬や川渡し、駕籠かきに携わった人足。 三助;近世では、商家や町家の下男の通り名。江戸時代中頃以降は風呂屋の男の使用人に用いられるようになった。
・女媧氏:中国古代神話上の女神。
・吞舟の魚:舟をのみ込むほどの大魚。転じて、大物。『荘子』
・遊弋(ゆうよく):定まったルートをもたず徘徊すること。特に、軍艦が敵に備えて徘徊・航行すること。
・奔命に疲れる:忙しく活動して疲れ果てる。
・沙門:僧となって仏法を修める人。サンスクリットのシュラマナの音写。
・雲水:中国・朝鮮・日本における修行僧の呼称。師をたずね道を求めて各地をめぐり、あたかも行雲流水のように一ヵ所にとどまらずに修行する僧。
・衲僧:衲衣(のうえ)を着ている者の意で、主として禅宗の僧をさす。
・六祖:米をつく職人。中国禅宗の第六祖、慧能が、幼少のころ米をついて貧しい家計を助けたという故事に基づく。
・弊竇(へいとう):弊害となる点。欠陥。「竇」は穴の意。
・ダムダム弾:小銃・拳銃弾の一種。着弾の衝撃で鉛が露出し傷口が拡大する。イギリスがインドで植民地反乱を鎮圧するために用いた。インドのダムダム工場で製造した。
・鬼殻焼:伊勢えびや車えびを殻つきのまま背開きにし、たれをつけながら焼いた料理。
・竜騰虎闘:力の伯仲する二者が、力を尽くして激しく戦うこと。
・帆木綿: 帆布などに用いる、地が厚くて丈夫な綿布。
・強弩の末勢:勢力のあったものが衰えて無力になるたとえ。『漢書』「韓安国伝」の「強弩の末魯縞に入る能わず」から。
・瑣談繊話:日記、雑記のような内容の文章。
・窮措大:貧乏な学者や書生。
・天稟(てんぴん):天から授かった資質。生まれつき備わっているすぐれた才能。天賦。
・電光影裏に春風を斬る:人生は束の間であるが、人生を悟った者は永久に滅びることがなく、存在するというたとえ。中国宋の僧祖元を元の兵士が襲って殺そうとしたとき、祖元が唱えた経文の一句。
読みづらい漢字
・抛げる(な・げる)
・踰ゆる(こ・ゆる)
・膃肭臍(おっとせい)
・睹やすき(み・やすき)
今日にも通用する内容
・「昔しからからかうという娯楽に耽るものは人の気を知らない馬鹿大名のような退屈の多い者、もしくは自分のなぐさみ以外は考うるに暇なきほど頭の発達が幼稚で、しかも活気の使い道に窮する少年かに限っている。」p288
・「多少人を傷つけなければ自己のえらい事は事実の上に証拠だてられない。事実になって出て来ないと、頭のうちで安心していても存外快楽のうすいものである。人間は自己を恃むものである。否恃みがたい場合でも恃みたいものである。それだから事故はこれだけ恃める者だ、これなら安心だという事を、人に対して実地に応用して見ないと気が済まない。しかも理屈のわからない俗物や、あまり事故が恃みになりそうもなくて落ち着きのない者は、あらゆる機会を利用して、この証券を握ろうとする。柔術使が時々人を投げて見たくなるのと同じ事である。柔術の怪しいものは、どうか自分より弱い奴に、ただの一返でいいから出逢って見たい、素人でも構わないから抛げて見たいと至極危険な了見を抱いて町内をあるくのもこれがためである。」p289
・「地球が地軸を廻転するのは何の作用かわからないが、世の中を動かすものは慥かに金である。この金の功力を心得て、この金の威光を自由に発揮するものは実業家諸君を置いて外に一人もいない。
面白い表現、言い換えを畳み込む表現
・「主人の理論には大なる穴がある。この垣よりも大いなる穴がある。吞舟の魚をも洩すべき大穴がある。
・「蒲鉾の種が山芋である如く、観音の像が朽木である如く、鴨南蛮の材料が烏である如く、下宿屋の牛鍋が馬肉である如くインスピレーションも実は逆上である。」p294
・「なお二週間の砲撃を食えば金柑は潰れるに相違ない。薬缶は洩るに相違ない。銅壺ならひびが入るにきまっている。」p299
・「ポカーンと擂粉木が団子に中るや否やわー、ぱちぱちと、わめく、てを拍つ、やれやれという。中ったろうという。これでも利かねえかという。恐れ入らねえかという。降参かという。」p305
・「さっき座敷のうちから倫理の講義をきいてにやにやしていた主人は奮然として立ち上がった。猛然として駆け出した。驀然として敵の一人を生捕った。」p307
参考図書
『漱石全集』第一巻、第二巻 岩波書店 1978年
『吾輩は猫である』 岩波文庫
『漱石大全』Kindle版 第3版 古典教養文庫
『カラー版新国語便覧』 第一学習者 1990年
『漱石とその時代』1~3 江藤淳 著 新潮選書
『決定版 夏目漱石』 江藤淳 著 新潮文庫
『夏目漱石を読む』 吉本隆明 著 ちくま文庫
『特講 漱石の美術世界』 古田亮 著 岩波現代全書
日本大百科全書 小学館
世界大百科事典 平凡社
デジタル大辞泉 小学館
ブリタニカ国際大百科事典 ブリタニカ・ジャパン
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明治38年
時季を表す記述なし
登場人物(登場順)
・吾輩
・学校の小使
・落雲館の書生
・主人(苦沙味)
・迷亭(吾輩の夢の中で)
・落雲館の倫理の教師
・鈴木藤十郎
・金田
・甘木先生
・八木独仙
ストーリー
・主人の家の周囲の説明。
・主人の家に接する空き地に落雲館の学生が入って騒ぎ始め、それが度を増す。
・主人が空き地に入ってきた学生に文句を言う。
・主人が落雲館の校長に文句の書を送ると、校長が空き地との境に四つ目垣を造らせる。
・「からかう」ことについての吾輩の説。
・落雲館の学生が主人をからかった経緯。
・「逆上」についての吾輩の説。
・小事件の説明。
・落雲館の倫理の教師の講話。
・大事件の説明。
・鈴木藤十郎が主人が困っている様子を確認しに来る。
・甘木先生が主人に催眠術をかけるが、失敗する。
・八木独仙が主人に消極主義を論じる。
言及される歴史上の人物・事項
・張世尊
「この竹を以て組み合せたる四寸角の穴をぬける事は、清国の奇術師張世尊その人といえども六ずかしい。」p290
・ゲーレン、パラセルサス、扁鵲
「逆上とは読んで字の如く逆かさに上るのである、この点に関してはゲーレンもパラセルサスも旧弊なる扁鵲も異議を唱うる者は一人もいない。」p293
・『傷寒論』
「頭寒足熱は延命息災の徴と『傷寒論』にも出ている通り、濡れ手拭は長寿法において一日も欠くべからざる者である。」p293
・プレートー
「プレートーは彼らの肩を持ってこの種の逆上を神聖なる狂気と号したが、いくら神聖でも狂気では人が相手にしない。」p294
・ユーゴー
「聞くところによればユーゴーは快走船の上へ寝転んで文章の趣向を考えたそうだから、船へ乗って青空を見詰めていれば必ず逆上受合である。」p295
・スチーヴンソン
「スチーヴンソンは腹這に寝て小説を書いたそうだから、打つ伏しになって筆を持てばきっと血が逆かさに上ってくる。」p295
・イスキラス
「昔し希臘にイスキラスという作家があったそうだ。」p297
・『唐詩選』
「であるからして自分が『唐詩選』でも高声に吟じたら気分が晴々してよかろうと思う時ですら、もし自分のように迷惑がる人が隣家に住んでおって、知らず知らずその人の邪魔をするような事があっては済まんと思うて、そういう時はいつでも控えるのである。」p301
・アキリス、ヘクトー、燕ぴ、張飛、長坂橋、曹操
「少し詩がかった野蛮人になると、アキリスがヘクトーの死骸を引きずって、トロイの城壁を三匝したとか、燕ぴと張飛が長坂橋に丈八の蛇矛を横えて、曹操の軍百万人を睨め返したとか大袈裟な事ばかり連想する。」p303
・左氏、鄢陵の戦
「左氏が鄢陵の戦を記するに当っても先ず敵の陣勢から述べている。」p303
・ニュートン
「ニュートンの運動律第一に曰くもし他の力を加うるにあらざれば、一度び動き出したる物体は均一の速度を以て直線に動くものとす。」p306
・ライプニッツ
「ライプニッツの定義によると空間は出来得べき同在現象の秩序である。」p306
・柳宗元、韓退之(かんたいし)
「柳宗元は韓退之の文を読むごとに薔薇(しょうび)の水で手を清めたという位だから、吾輩の文に対してもせめて自腹で雑誌を買って来て、友人の御余りを借りて間に合わすという不始末だけはない事に致したい。」p313
・クリシッパス
「「昔し希臘にクリシッパスという哲学者があったが、君は知るまい。」」p317
・ナポレオン、アレキサンダー
「ナポレオンでも、アレキサンダーでも勝って満足したものは一人もないんだよ。」p326
語句・表現
・江湖:もとは中国の揚子江と洞庭湖。都から遠く離れた地。
・玉を抱いて罪あり:『春秋左伝』の「桓公10年」にある言葉。身分不相応のものを持ったり、不相応のことをしたりすると、とかくわざわいを招きやすいことをたとえていう。
・逆茂木:敵の侵入を防ぐために、先端を鋭くとがらせた木の枝を外に向けて並べ、結び合わせた柵。逆虎落(さかもがり)、鹿砦(ろくさい)とも言う。
・梁上の君子:『後漢書』「陳寔伝」にある言葉。盗賊。どろぼう。 陳寔ちんしよくが梁上にひそんでいる盗賊をさしていった語。
・折助・雲助・三助:折助;近世、武家で使われた下男の異称。 雲助;江戸時代に、宿場や街道において荷物運搬や川渡し、駕籠かきに携わった人足。 三助;近世では、商家や町家の下男の通り名。江戸時代中頃以降は風呂屋の男の使用人に用いられるようになった。
・女媧氏:中国古代神話上の女神。
・吞舟の魚:舟をのみ込むほどの大魚。転じて、大物。『荘子』
・遊弋(ゆうよく):定まったルートをもたず徘徊すること。特に、軍艦が敵に備えて徘徊・航行すること。
・奔命に疲れる:忙しく活動して疲れ果てる。
・沙門:僧となって仏法を修める人。サンスクリットのシュラマナの音写。
・雲水:中国・朝鮮・日本における修行僧の呼称。師をたずね道を求めて各地をめぐり、あたかも行雲流水のように一ヵ所にとどまらずに修行する僧。
・衲僧:衲衣(のうえ)を着ている者の意で、主として禅宗の僧をさす。
・六祖:米をつく職人。中国禅宗の第六祖、慧能が、幼少のころ米をついて貧しい家計を助けたという故事に基づく。
・弊竇(へいとう):弊害となる点。欠陥。「竇」は穴の意。
・ダムダム弾:小銃・拳銃弾の一種。着弾の衝撃で鉛が露出し傷口が拡大する。イギリスがインドで植民地反乱を鎮圧するために用いた。インドのダムダム工場で製造した。
・鬼殻焼:伊勢えびや車えびを殻つきのまま背開きにし、たれをつけながら焼いた料理。
・竜騰虎闘:力の伯仲する二者が、力を尽くして激しく戦うこと。
・帆木綿: 帆布などに用いる、地が厚くて丈夫な綿布。
・強弩の末勢:勢力のあったものが衰えて無力になるたとえ。『漢書』「韓安国伝」の「強弩の末魯縞に入る能わず」から。
・瑣談繊話:日記、雑記のような内容の文章。
・窮措大:貧乏な学者や書生。
・天稟(てんぴん):天から授かった資質。生まれつき備わっているすぐれた才能。天賦。
・電光影裏に春風を斬る:人生は束の間であるが、人生を悟った者は永久に滅びることがなく、存在するというたとえ。中国宋の僧祖元を元の兵士が襲って殺そうとしたとき、祖元が唱えた経文の一句。
読みづらい漢字
・抛げる(な・げる)
・踰ゆる(こ・ゆる)
・膃肭臍(おっとせい)
・睹やすき(み・やすき)
今日にも通用する内容
・「昔しからからかうという娯楽に耽るものは人の気を知らない馬鹿大名のような退屈の多い者、もしくは自分のなぐさみ以外は考うるに暇なきほど頭の発達が幼稚で、しかも活気の使い道に窮する少年かに限っている。」p288
・「多少人を傷つけなければ自己のえらい事は事実の上に証拠だてられない。事実になって出て来ないと、頭のうちで安心していても存外快楽のうすいものである。人間は自己を恃むものである。否恃みがたい場合でも恃みたいものである。それだから事故はこれだけ恃める者だ、これなら安心だという事を、人に対して実地に応用して見ないと気が済まない。しかも理屈のわからない俗物や、あまり事故が恃みになりそうもなくて落ち着きのない者は、あらゆる機会を利用して、この証券を握ろうとする。柔術使が時々人を投げて見たくなるのと同じ事である。柔術の怪しいものは、どうか自分より弱い奴に、ただの一返でいいから出逢って見たい、素人でも構わないから抛げて見たいと至極危険な了見を抱いて町内をあるくのもこれがためである。」p289
・「地球が地軸を廻転するのは何の作用かわからないが、世の中を動かすものは慥かに金である。この金の功力を心得て、この金の威光を自由に発揮するものは実業家諸君を置いて外に一人もいない。
面白い表現、言い換えを畳み込む表現
・「主人の理論には大なる穴がある。この垣よりも大いなる穴がある。吞舟の魚をも洩すべき大穴がある。
・「蒲鉾の種が山芋である如く、観音の像が朽木である如く、鴨南蛮の材料が烏である如く、下宿屋の牛鍋が馬肉である如くインスピレーションも実は逆上である。」p294
・「なお二週間の砲撃を食えば金柑は潰れるに相違ない。薬缶は洩るに相違ない。銅壺ならひびが入るにきまっている。」p299
・「ポカーンと擂粉木が団子に中るや否やわー、ぱちぱちと、わめく、てを拍つ、やれやれという。中ったろうという。これでも利かねえかという。恐れ入らねえかという。降参かという。」p305
・「さっき座敷のうちから倫理の講義をきいてにやにやしていた主人は奮然として立ち上がった。猛然として駆け出した。驀然として敵の一人を生捕った。」p307
参考図書
『漱石全集』第一巻、第二巻 岩波書店 1978年
『吾輩は猫である』 岩波文庫
『漱石大全』Kindle版 第3版 古典教養文庫
『カラー版新国語便覧』 第一学習者 1990年
『漱石とその時代』1~3 江藤淳 著 新潮選書
『決定版 夏目漱石』 江藤淳 著 新潮文庫
『夏目漱石を読む』 吉本隆明 著 ちくま文庫
『特講 漱石の美術世界』 古田亮 著 岩波現代全書
日本大百科全書 小学館
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デジタル大辞泉 小学館
ブリタニカ国際大百科事典 ブリタニカ・ジャパン
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