セキレイの午後2007年11月
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オススメの本 (1)  萩原浩「明日の記録」

明日の記憶 (光文社文庫)明日の記憶 (光文社文庫)
(2007/11/08)
荻原 浩

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彼の小説を初めて読んだのはデビュー作の「オロロ畑でつかまえて(集英社文庫)」。
彼の前歴が同業というのもあって興味を持ったのが始まりだ。


デビュー作は楽しいだけが印象だった。
それが第二作の「なかよし小鳩組」を読んで以来、すっかりファンである。
これも前作と同じくエンターテイメントに徹した本なのだが、
不用意に読んでいると、ラストで心を鷲掴みにされる。
ただのユーモア作家ではなかったと、それ以降の作品を読むたびに感じている。


さて、映画化されて非常にメジャーになった「明日の記憶」だが
多彩を極める萩原浩の作品の中でも異彩を発する。
映画はまだ見てない。失敗したなあ。
どちらも楽しみたい人は映画を先に見たほうがいい。
映画に感情移入できなくなるからね。コレ定説です(^^;)

         ・ ・ ・

この物語は、若年性アルツハイマーにかかった50代の男が主人公だ。
積み上げた努力や自信が、大切な人との時間が、
まるで無かったことのように消え失せていく。
自分が、自分の存在価値が、溶けて無くなるその怖さ。


アルツハイマーに関して、僕らはどれだけ無知で、
どれだけ恐ろしい病気か、この本を読んで正直思い知らされた。
数年後には死に至る病だなんて…ウソでしょって感じ。
読んだ人は冗談でさえ「アルツ」なんて言えなくなる。


死は言うまでもなく、生命の終わりとしての客観的な死であり、
取り巻く人々が突きつけられる事実としての死なのだろう。
でも、ここに描かれている「記憶の死」は自分の終わり。
これも死ぬことなんだなと気づかされた。


人間は過去に生きているのではないことは、理屈では分かる。
でも、何だろう・・・。
自分たちは現在より過去を大事にしているのかなあ。
この死を迎える人と、死を受け入れる人の物語を読んでいると、
現在という時間の大切さが染みてくる。


死んだっていいじゃないか。死ぬまで今があるんだから・・・。

これ以上書くのはやめます。読む人が感じればいいことだし。
ただひとつ、伝えないといけないことはコレ。

電車の中で,ラストシーンを読むのはやめた方がいいということ。


・・・謹んで申し上げます。

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)
(2001/10)
荻原 浩

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「セキレイの午後」について

PHOTO : セキ<br>レイの午後

この写真に写っているのは、ハクセキレイ。
郊外などいろんな場所でよく見かける野鳥です。

スタスタっと歩いては立ち止まり、
まるでタクトで2拍子を刻むように
尾を振る動作が特長です。
河原でよく見かけるキセキレイや
セグロセキレイも、この鳥の仲間。
同じような仕草で、愛嬌を振りまきます。

もう3年か4年前になるでしょうか。
近所の公園を散歩した時に撮った1枚です。
まだ春先で、色のない枯れた畑の上を
盛んに餌を探してまわる白と黒だけのシルエット。
モノクロームのような風景の中に、
まぶしいエネルギーを感じました。

ブログのタイトル、「セキレイの午後」は
写真につけた名前でもあります。
この小さなセキレイのように真っすぐ
毎日を迷いなく生きてみたいと思っています。