第二部前編
「Princesse Hortense Cécile de Royer-Tokugawa」大日本エゾシマ大公国第二部前編【余話】架空の登場人物はいるのか?という問いがありました。 主人公の
土方歳三を筆頭に九割がた実在した人物ばかりです。チョイ役と思われるような人物でも架空ではなく実在した人物というのは少なくありません。架空の人物は一割ほどいますが、これとて実在の人物がいろいろモデルとなっていて、全くの架空という訳ではありません。
架空人物の代表格は第二部前編の副題にもなっています、このシリーズ全般の「ヒロイン」でもある謎のフランス公女
オルタンス・セシル・ド・ロワイエ=トクガワです。
セディル エリダー氏作画の表紙で、
土方歳三と対峙する自信に満ちた笑みを浮かべる若い女性、エゾシマ大公妃として聖母のように君臨するも腹のうちに何か得体の知れない邪なモノを抱えていそうな人物です。
史実では日本国を代表してパリ万博に出席した徳川昭武は薩長政権の帰国命令に従ってしまいますが、物語世界では日本に帰国せず政治亡命します。亡命を手引きしたのが、ナポレオン三世の側近ド・ロワイエ公爵の令嬢
オルタンスです。昭武はそのまま
オルタンスと男女の仲となり、渋沢栄一ら側近は
オルタンスの父ド・ロワイエ公爵の仲介でフランス政財界と誼を通じる事になります。このエピソードは第一部前編の前日談に当たり、もし読者からの要望があれば「負極一部」として書きましょう。
この架空の人物オルタンスの存在が、物語世界にいる実在の人物たちの人生を大きく狂わせたと申しても過言ではありません。 オルタンスは史実を狂わせた異分子のような存在です。先ほども申し上げたように、オルタンスが存在する事で、史実では薩長新政府の命令に従って帰国した昭武は、物語世界では帰国せずにフランスへ政治亡命をします。そして昭武の側近渋沢栄一は史実以上に欧州の政財界とパイプをつくる事になります。
その昭武たちの存在に目を付けるのが箱館政権を樹立した榎本武揚です。ナポレオン三世と榎本武揚との間に密約がなされ、フランスは表向き局外中立を装いながら密かに箱館政権を支援するようになります。史実でも
土方歳三率いる陸軍は精強にして現代的な戦術で薩長軍を苦しめますが、物語世界では水面下のフランスの支援により無敵の活躍をする事になり、箱館政権が独立国へと話が進むにつれて、土方は陸軍のトップになり、陸軍を仕切っていた大鳥圭介は独立後の政局運営を睨んで内政へとシフト。
そしてシリーズ冒頭の建国祝賀会で、オルタンスは純真無垢な少女の体で少年の面影が色濃い昭武とともに登場するわけです。オルタンスの存在によって、実在する登場人物たちの人生が大きく変化します。大日本エゾシマ大公国はオルタンスそのものと申しても過言ではありません。
物語世界の
土方歳三はフランスという国を信用していません。疑惑と警戒心はオルタンスにも向けていましたが、当初は健気に政治謀略の駒を努めていて、むしろ背後にいるナポレオン三世とその間諜団らしき勢力を脅威と見ていたが、御所警護の八重からの報告で方針転換します。オルタンスという存在こそが要注意人物ではないかと。
第二部前編の副題、日本語変換しますと「大公妃オルタンス・セシル・ドロワイエ=トクガワ」です。
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