ろぷろす_ぶろぐ 2020年07月
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クレイモア 幻影のミリア 漫画 第1巻~第27巻(全27巻)

漫画の「クレイモア(CLAYMORE)」が終わってから5年半ほどになります。
で、なぜ今クレイモアかというと、終わった時点で何点か腑に落ちないことがありました。
特に、「幻影のミリア」に関してのことが大きかったです。
その幻影のミリアのことに関して、わたしなりに納得することもあったので、ここに書きたいと思います。


ミリアは組織を壊滅するために単身で組織に乗り込のだが、そのミリアはナンバー10のラフテラの妖気操作もあって、組織を守る新世代の戦士たちに惨殺されます。(第19巻)
ところが、そのミリアは致命傷を受けておらず生きており新世代の者たちと共に組織に対して蜂起します。(第20巻)

ここでわたしが最も腑に落ちないと思っているのは、ミリアに誰も致命傷を与えることもなく惨殺を装ったことです。
これは、ミリアに太刀を浴びせた者たちがあること(ミリアの死を組織に対して偽装すること)に対して同じ意識を持っていなければなしえないことです。
でも、この状況でそのような同じ意識を持てるとはとても思えないです。
新世代の戦士たちにとって、ミリアの組織への襲撃は予想外であっただろうから、ミリアとの戦いにおいてもその思いはばらばらだと思われます。
ミリアの襲撃を予想して作戦を練っていても現実的にはなかなか歩調を合わせることは難しいです。
その歩調を合わせるには相当の訓練を必要とすると思います。
そんな訓練などしていないのは火を見るよりも明らかです。

だから、ここがずっとひっかかっていました。
それがいまわたしなりに納得することになりました。
なぜ、太刀を浴びせた者たちが、みんな一致してミリアに致命傷を与えずかつその死を組織に対して偽装したかということです。

それは、ミリアには物理的な幻想だけではなく精神的な幻想もあると思われることです。
まぁ、幻想というより願望をかなえるというべきでしょうか。
ミリアは相手の願望を具現化する能力があると思われます。
ただ、その能力はミリアが瀕死の状態でないと発動しないように思われます。あるいは瀕死の状態だとその能力が最大限になるといえそうです。
ミリアがその能力の発動を意識しているのか無意識なのかは分かりません。おそらく無意識でミリア自身もこの能力を知らないように見受けられますが・・・

なぜ、このような能力に思い至ったかという実例をここから示していきます。

まず、最初はパブロ山での謎の男の覚醒者との戦いです。
この謎の男の覚醒者には、ミリアをリーダーとするクレア,デネヴ,ヘレンの4人で戦いを臨むのであるが、男の覚醒者の強さのために、ミリアの幻影でも優位に立てずミリアは男の覚醒者に捕まりまさになぶり殺しにされそうになります。
ところがここで、窮地を脱することを望みクレアが妖気を読む力を最大限に具現化してミリアと共にこの男の覚醒者を倒します。(第5巻~第6巻)

ふたつ目は、ピエタの町での「獅子王(の)リガルド」との戦いです。
ミリア隊の連携の前に覚醒者が倒されるのに業を煮やしたリガルドが隊のリーダー5人を抹殺するために覚醒します。
リガルドは4人を瞬殺し、残るミリアをも瞬殺しようとするがこれに対してミリアは幻影で何とかしのぐものの力の差は歴然としていて、まさにリガルドに首をはねられようとした時、もっと速くもっと力をと望んだクレアが四肢の覚醒を具現化してリガルトを倒します。(第11巻~第12巻)

みっつ目は、ピエタの町での最後の戦いです。
リガルドを倒したとはいえ、もともとこの覚醒者の群れとの戦いで生き残る確率はほぼゼロであったので必然のように全員討ち死にということになります。
しかし、ミリアと共に残った最後の7人は生き残ります。
ミリアの説明によると、半分に割った妖気消しの薬を飲んで意識を失うと死んだふりができるということであり、7人は生き残りたいという願望を具現化したということです。(第12巻)

そして、よっつ目がすでに書いた組織での新世代の惨殺です。
おそらく、新世代の者たちはミリアのことはオードリーからそれなりに聞いており、北の戦乱などミリアから色々と聞きたいことがあるという願望を持っていてミリアを生かしたいということを具現化したということです。

この4つに共通しているのは、ミリアが瀕死の状態になった時に、誰かあるいは何人かが望んでいたことが具現化していることです。
この具現化は偶然というより、ミリアにそのような能力があると想定した方が納得します。
この能力があるからこそ、ミリアは生き残れたといえそうです。

ミリアはとても特殊です。それはリーダー的資質があることです。
組織にとっては、こういうリーダー的資質を持ったものが最も危険といえるでしょう。
だからこそ組織は戦士たちが反目するようなことを助長したりして適当なとこで抹殺していたということでしょう。
その抹殺の例が、パブロ山での謎の男の覚醒者やピエタの町での男の覚醒者の群れ(北の戦乱)との戦いといえるでしょう。
おそらく、ミリアはこのような組織の抹殺の企みに何度か遭遇しては、この能力で生き残ってきたと思われます。

というようなことで、その能力で新世代の戦士たちの願望をかなえて生き残ったミリアだが、その後の蜂起まで持っていくのにまだまだ困難があります。
しかし、ここらへん(ミリアが生きているということ)の秘密は始めは上位ナンバーだけが知っていることであるから漏洩することはないだろう。
そして、ミリアの話を聞きそこから蜂起へと話が進み、その準備は当然ながらとても慎重に行ったと思われるが、それでもかってのプリシラやディートリヒのように組織を正義だと信じて疑わない者もいると思われます。
しかし、そこらへんは上位でなければ詳細が分からないので密告までは出来ないだろうし、またルヴルやダーエなどはそのことを察知してもおそらく握りつぶしたであろうから漏洩する可能性はとても小さかったと思われます。

ということで、長い間、気にかかっていたことがこれでわたしなりに解釈できたということです。

ともかく、ミリアはこの物語の中でイースレイを除けば唯一といってもいいほどのリーダー型タイプなのでその言動には裏表があるといえるでしょう。
リーダーというからには、複数の部下(従属者)を持っているので、その言動は常に慎重にならざるをえないでしょう。
ある言動をしても、部下(従属者)には色んな感性や思考の者がいるから、いつも真実を言えばいいということにはなりません。
そういうことでは嘘を真実とする能力も必要です。また逆に真実を嘘とすることも必要です。
そこらへんからどうしても裏表があるということになります。
だから、この物語では、ミリアの人格(あるいは言動)が一番分かりずらいです。

ちなみに、プリシラとの戦いでクレアからテレサが覚醒したのもミリアの願望の能力によるものだといえないこともないと思う。
あのままプリシラと戦っていたら、その内全員皆殺しになっていただろうから、ミリアがそれを自覚した時点でクレアの願望を具現化したといっても縁なきことではないでしょう。


さてさて、ひょんなことでパソコンが壊れたので、その期間にこのミリアの件も含めて「クレイモア」全27巻を改めて読んでみました。
新鮮味ということでは落ちても、面白さということではまったく遜色なかったです。
もう、こんなに惹かれる漫画に出会うことはないと思われます。

連載中に感じたことと改めて全巻を読んで感じたことに大きな相違はありません。
変わらず、西のリフル、ジーン、神眼のガラテア、羽根持ちのアナスタシア、愛憎のロクサーヌ、獅子王(の)リガルドが特に好きです。
この好きな者たちに共通しているのは、自分があるということです。
自分が何を感じ何を考えているかということを第一義としているということです。
自分の生き方があっての他者の生き方があるということです。
だから組織や常識や法(しきたり)などより、自分が見て触って感じた考えたことの方が先なのです。

その他にもデネヴやヘレンを筆頭に魅力的な者もたくさんいます。というより魅力的でない者はいないと言った方が当を得ている気もします。
こんなに多くのお気に入りの者が登場するのはこのクレイモア以外にはないです。
これがこのクレイモアを読んでいて楽しく飽きない一番の要因です。

人は感情があるから客観化(論理化)を完璧にしようとしてもどこかに主観(感情)が残ります。
もし、完璧に客観化(論理化)できるなら、誰の言葉であろうがそれが論理的であれば了解できることになります。
が、実際は完璧に客観化は出来ないので、同じ言葉でも誰が言ったかということでその人に与える重みは違います。
よく例えで使われる、泥棒が「泥棒してはいけない」という言葉なんかはそのいい例だと思います。
「泥棒してはいけない」という言葉の論理は同じでもその重みは、泥棒が言うのと普通の人が言うのでは違ってくるでしょう。
ようするに好きな人から言われる言葉は重いからこころにより響いてきます。
ということで、好きなキャラクター(登場人物)の多いこの「クレイモア」は当然、わたしの心により響いてくるということです。
では、何故に好きになったのかというとよく分かりません。
ある言葉を発したから好きになったのか、好きだからその言葉に重みを感じるのかは、鶏が先か卵が先かのように堂々巡りになってしまいます。
何かを好きになるって、その論理はほんと分からないです。いまのところ不思議としかいいようがないです。

なんてたって一番好きな場面(章)はリフルが初めて登場したとこです。
それは第8巻の「SCENE41 魔女の顎門Ⅰ」から第9巻の「SCENE46 深き淵の煉獄Ⅳ」までです。
なんと、ここではわたしの特に好きなリフル,ジーン,ガラテアの3人が一堂に会しているのだから。
もうこんな場面は二度と起こらないです。
リフルは、プリシラを得たイースレイが勢力を伸ばし始めたのでそれに対抗するための手駒を確保するためにジーンたちを捕らえ覚醒させて仲間にしようとします。
そのことをひょんなことで知ったクレアが仲間を助けようとし、そのクレアを組織に連れ戻すためにガラテアがまたやってくるということで、この3者が揃うことになります。

その中で、リフルと囚われたジーンが化物(覚醒者)について語るとこがあります。
リフル曰く、覚醒者とクレイモアはどちらも人間にとっては化物であって、そしてその化物は人間に対して上位者だから人間を捕食するのは自然であり道理であり摂理であると、するとジーンはその論理は認めつつも、自分は人として生まれた以上人のために生きたいと言う。
そうすると、リフルはジーンをより気にいってぜひ仲間にしたいと言う。
わたしにとって最も琴線に触れるのがこのリフルとジーンのやり取りです。
まさにこのやり取りには首肯してしまいます。
リフルもジーンもまさに己の生き方をしており、そしてお互いが相手の生き方を認めているということです。

そんなことで、攻防の末に、リフルは相手を認めて無理強いすることなくここは立ち去るのであるが、この後ガラテアはクレアを組織に連れて行こうとすると、そのガラテアにジーンが刃(やいば)を向けます。
そうすると、ガラテアは二人が死んだことにして、またガラテアもこの場を去ります。
ガラテアがこの場を去ったのはジーンの義を知っていたからでしょう。

なお、この戦いを秘かにアリシアがリフルの力量を探るために見ているのだが、こういうことからもアリシアがリフルを倒したのも納得できるといえます。
同じ力量なら相手を知っている方が戦いを有利に進めることが出来ます。
アリシアとは必然的に対リフルに特化した戦士といえます。
だから、アリシアはリフルの戦い方をすべて熟知しその傾向と対策が万全なのです。
これではリフルは勝てません。
リフルが勝つためには、アリシアとの初戦を何としても逃れてアリシアを分析しそこから自分の力の底上げをしなければならなかったのだが、愛人のダフを見捨てることが出来なく敗れてしまう。
こういうのはテレサがクレアの愛を知って戦士としては弱くなったのと似ているといえよう。
戦う(勝つ)ことに躊躇が生まれて集中力が落ちるということでしょう。ようするに気をとられるということ。相手を倒すことだけに集中できないということ。


今回改めて全巻読んで、この物語は大きく4つに分けられると感じました。
1.クレイモア 対 妖魔あるいは人間
  始まりの「SCENE1 銀眼の斬殺者」から覚醒したオフィーリアを倒す「SCENE40 闘う資格Ⅳ」まで(第1巻~第8巻)
2.クレイモア 対 覚醒者
  西のリフルが登場する「SCENE41 魔女の顎門Ⅰ」から北の戦乱の終結する「SCENE64 楽園の血族Ⅲ」まで(第8巻~第12巻)
3.クレイモア 対 組織
  北の戦乱から7年後の「SCENE64 魂と共にⅠ」から組織が壊滅する「SCENE127 深淵の爪と牙Ⅷ」まで(第12巻~第23巻)
4.クレイモア 対 プリシラ
  プリシラが復活する「SECEN128 戦士の刻印Ⅰ」からプリシラが塵となる「LAST SCENE(155) 銀眼の戦士たちⅥ」まで(第23巻~第27巻)(注)

「クレイモア 対 妖魔あるいは人間」では、クレイモアが登場し、そのクレイモアが人間に禍をもたらす妖魔を倒すということが主題だと思われます。
だから、クレイモアの妖魔や人間との関わりや人間と妖魔の関わりが多く語られます。
そして、ここでのクレイモアとは主にクレアのことです。
クレアとのくくりでラキや微笑のテレサや高速剣のイレーネやプリシラやオフィーリアなどが登場して、テレサと盗賊の関係や盗賊という人間同士の争いも語られます。
これ以降はこのようなクレイモアと人間が争うような場面は登場しないです。

「クレイモア 対 覚醒者」では、西のリフルと白銀の王(北の)イースレイと南のルシエラという3人の深淵の者が登場してクレイモアの相手が妖魔から覚醒者相手となります。
そして、北の戦乱でミリアをリーダーとするクレイモア24名がイースレイ傘下のリガルドに率いられた男の覚醒者群によって全滅させられます。
クレイモアとしてはクレアから少しずつ比重がミリアに移っていきます。

「クレイモア 対 組織」では、ミリアの口から組織の正体が語られ、すべての源は組織であるとしてクレイモアの標的が組織となります。が、クレアの標的は変わらずプリシラです。
クレイモアとしてはミリアが中心となります。

「クレイモア 対 プリシラ」では、融合体からプリシラとクレアが脱してプリシラとの最終決戦となります。
クレイモアと覚醒者とプリシラの三つ巴の戦いとなり、最後にクレアからテレサが覚醒してプリシラを塵と化します。
クレイモアとしては再びクレア(テレサ)が中心となります。

この4つの構成では、3つ目の「クレイモア 対 組織」が一番面白いと思います。
次々と予期しないことが起こり、視点がめまぐるしく変わり、滅びへと突き進んでいきます。
ミリアが大きな謎である大陸のことを語り、深淵喰いが現れてイースレイを喰い、リフルはルシエラとラファエラの融合体の目覚めのきっかけを作り、そのリフルをアリシアとベスの双子が襲い、記憶を取り戻したプリシラがアリシアとベスとリフルを食い、ルシエラとラファエラとクレアの融合体がそのプリシラを捕捉し、ミリア(たち)が蜂起によって組織を潰し、それに乗じたダーエが深淵3体(流麗のヒステリア,愛憎のロクサーヌ,塵喰いのカサンドラ)を蘇らせます。
なんという目まぐるしさでしょうか。息つく暇もないくらい次々と新たなことが起こります。

組織を潰したことにより新たな妖魔や覚醒者は生まれないということで、この大陸の既存の妖魔や覚醒者を討伐することがクレイモアの最終任務となります。
その覚醒者として史上最強のプリシラを倒すことがクレアを始めとするクレイモアの至上命題となります。
そのプリシラにはまずリフル2世が立ち向かい善戦するも敗れ、その後クレイモアや覚醒者が立ちはだかるもプリシラの牙城は崩せず、もはや打つ手がないという状況になった時に、クレアからテレサが覚醒してプリシラを塵にしてしまいます。
図らずしも、この戦いで上位の覚醒者は都合よくすべて倒れてしまいました。
そして、のちには妖魔も覚醒者もいなくなります。
この展開になると、人間の出る幕などなくなってしまいます。
それでも、ラキや聖都ラボナの兵士たちはそれなりに健闘しますが・・・

(注)(2020.7.22.水)
物語の構成を3つから4つにしました。
3.クレイモア 対 組織
  北の戦乱から7年後の「SCENE64 魂と共にⅠ」からプリシラが塵となる「LAST SCENE(155) 銀眼の戦士たちⅥ」まで(第12巻~第27巻)
における第23巻から第27巻までを、
4.クレイモア 対 プリシラ
  プリシラが復活する「SECEN128 戦士の刻印Ⅰ」からプリシラが塵となる「LAST SCENE(155) 銀眼の戦士たちⅥ」まで(第23巻~第27巻)
としました。
こうすれば、物語の構成の基本である「起承転結」に美しくはまり、4つにわける方が理にかなっているといえます。

ということで、妖魔や覚醒者がいなくなると残るのは人間とクレイモアということになります。
クレイモアは成長しても老化しないということで、このままではクレイモアが人間の上位者として残ることになるかと思います。
ここも疑問でした。
妖魔や覚醒者がいなくなったらクレイモアたちがどのように人間との社会的関係を作っていくのかと。
確か、クレイモアは妖魔と戦うことが存在理由でした。(第1巻186~187頁)
つまり、妖魔や覚醒者がいなくなったらその存在理由はかなり希薄になるということです。
戦争をしない軍隊がその存在理由が希薄なのと同じようなものです。

しかも、2014年の終わった時点では、クレイモアには寿命がないと思っていたので余計にその思いがありました。
しかし、今回改めて読むと、クレイモア(半人半妖)は成長はするが老化はしないとは言っているが寿命がないとはいっていないのです。(第7巻130頁)
そして、組織の長のリムトによれば、龍の末裔と言われるアサラカムは約200年の寿命とのことです。(第23巻16~17頁)
クレイモアはこのアサラカムから何らかの方法で作られているとしたらともかく寿命はあるということになると思います。
かってのクレイモアはある時点で組織によって意図的に抹殺されるということでおそらく天寿を全(まっと)うした者をいないと思うのでどれくらい生きるか分からないがいずれは寿命が尽きると考えていいでしょう。
それが真実なら、何百年後か先のこの大陸にはクレイモアもいなくなるといえそうです。
そういうことなら、クレイモアが妖魔や覚醒者をこの大陸から掃討することで、この物語は終わっても問題ないと思われます。
天寿を全うするまで、人間と共存してもいいしどこかでクレイモアだけで共同生活してもいいと思う。
組織が壊滅した以上、東の地は余っていると考えていいだろう。

この2つの生き方の原型みたいのが、ガラテアとイレーネでしょう。
どちらも組織から逃れるという事情があったが、ガラテアは銀眼の目を潰し尼僧として聖都ラボナで人間と普通に生活し、イレーネは未開の地で一人で生活するということ。
つまり、個々によってどちらも可能ということ。

この物語では多くのクレイモアがその命を落とすのだが、わたしにとって意外な死はルネとタバサでした。
ルネはリフルに殺されます。(第17巻100~101頁)
リフルは妖気読みに優れたルネを拉致するのですが、これはルシエラとラファエラの融合体を覚醒させるためであり、なにも命まで取ろうということではないです。
というかリフルの性格からいえば、自分の意を汲んでくれた者には礼すらするでしょう。
だから、ルネはリフルに事実をありのままに述べていたら死ぬこともなかったかも知れないと思います。
というようなことをリフル自身も言っているが・・・
リフル自身がクレイモアを意図的に殺すのはこのルネが最初で最後です。
先に新世代のクレイモアをクレアたちが救ったことでクレアにこけにされていたのに、ルネにもこけにされたということで頭に血が上っていたのだろう。
いままでは、クレイモア殺しはすべてダフに任せていました。
そういうことはイースレイも同じような感じです。クレイモア殺しは部下(従属者)に任せていました。
ここらへんはリガルドではないが、雑魚相手では興が醒めるということでもあるでしょう。
自分が出るほどの相手ではないということです。だから、イースレイは部下(従属者)では勝てないプリシラやルシエラには自分が出て戦っています。

ところで、クレアが侵入してきたことを知ったリフルはクレアを捕えようと直ぐに覚醒体になるのであるが、この時着替えが少ないと言ってワンピースを脱いで覚醒体になります。(第17巻52頁)
確かに覚醒体になったら服はぼろぼろになってしまいますが、これが変にリアルなのでちょっと笑ってしまいます。
これはたぶんお気に入りの服だったのでしょう(笑)
ところが、この脱いだ服があとで色々と関わりを持つことになるから世の中何がどうなるかはほんと分からないです。

タバサはプリシアに斬られて殺されます。(第26巻112~115頁)
覚醒者たちと共闘してクレイモアたちはプリシラを倒そうとします。そして、この中で唯一妖気の消えているタバサが背後から忍び寄ってプリシラを斬ろうとするが、返り討ちにあってしまいます。
プリシラはタバサの妖気が消えていることを知っていて、めんどうなので始末しようと思っていたとのことです。
また、タバサは不意打ちが成功すると思いその攻撃に全精力を使っており防御が手薄となり取返しのつかない深手を負ったものと思われます。
こういう不意打ちでなければ、タバサも死なずに済んだと思われます。これなどはプリシラを甘くみた結果といえます。

ルネにしてもタバサにしても相手をもっと良く知っていれば死なずにすんだかもしれません。
天才は凡人のことを知っても凡人は天才のことを知らないということでしょう。
そういうことでは無駄死にともいえるので、わたしにとっては釈然としない予想もしない死でした。

あと、クレアだが、クレアは「十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人」の典型のようでした。
比類なき強さと賢さで世界が見えているために常に醒めているテレサは、ニヒリスト(虚無主義者)といえるだろう。虚しい限りの孤高をその胸に宿しているといえよう。
そんな誰とも打ち解けることもないテレサを少女のクレアは蹴られても無視されてもついて行き、その心を開かせ溶かし、生きる意味を見出させます。
これは神童というよりテレサにとっては神の使いといってもいいでしょう。
これほどのクレアも大人になったら最下位ナンバーの47という実力しか持てないクレイモアとなってしまった。
しかし、クレアの能力は戦闘力というよりこのテレサに対したように恩寵を与える存在といえよう。
だからこそ、そのお礼としてテレサの血肉、イレーネの右腕、ジーンの心、ラファエラの記憶(感情)そしてラキの愛を始めとして多くの仲間を得たのだろう。

ただ、ここでクレアとラファエラの接点がいまいちよく分からないといえます。
クレアとラファエラが会ったのは、クレア(とジーン)を北のピエタに送るためにルヴルの命でクレア(とジーン)を探し出した時だけです。(第9巻)
ラファエラはクレアと会ったのは一度だけでも、もしかしたらイレーネからクレアのことを聞いていたかもしれないし、また妖気読みに優れているのでクレアの中にテレサをみていたのかもしれません。
それでも、クレアに記憶(感情)を託したのは偶然でしょう。
ルシエラとラファエラの融合体が覚醒する時にたまたまクレアが近くにいたということでしょう。
それとも、ガラテアがミアータを呼び寄せたようにクレアを呼び寄せたということなのか。

これでわたしの気にかかっていたことはかなり晴れたので、あとはミリアの語った2大勢力が拮抗するというあの大陸が気になります。
あの大陸のことを知る機会があればいいのですが・・・


ところで、今回このクレイモアを読んでいて、変にうなずいたのは現在のコロナ禍とこの妖魔禍が変にだぶって見えたことです。
コロナにかかっている人も妖魔になっている人も見た目では分かりません。
コロナはPCR検査で妖魔はクレイモアでということで、一般の人にはその判別は出来ません。
そうすると人は疑心暗鬼になって、噂やデマが飛び交うことになります。
コロナに関係した人を差別するなんてのは、ラキのような妖魔が出た家の人間を差別するということでよく分かります。
ともかく、ある種の人にとっては見えないものには恐怖しか抱くことができないといえそうです。
視覚化というのはとても大切です。

15世帯しかない山奥の小さな村に妖魔が住み着き住民を餌とします。
しかし、こんな小さな村ではクレイモアに妖魔討伐を依頼するほどの金はありません。
そこで村の長老は考えます。
妖魔が餌を狩るのがほぼ2週間毎ということで、5世帯ずつ2週間自宅に閉じ込めその間にどこに妖魔が出現するかを見ることによって妖魔を見分けようとします。
そして、妖魔はある家族に出現します。プリシラの父親が妖魔でプリシラ以外を餌とします。(第24巻)
クレイモアをPCR検査に置き換えたならばどこかの国の状況と似ていると思います。
PCR検査を受けさせなくて自宅待機させるということ。そして家族に感染させるということ。


クレイモア 全27巻 著者 八木教広
”古より人が「妖魔」に喰われる存在であったこの世界。
人は長く「妖魔」に対抗する手段を持てずにいた・・・。
だが、人は半人半妖の女性戦士を生み出した・・・。
「妖魔」の正体を見極める銀眼と、背負いし大剣を武器に人々にあだなす「妖魔」と戦い続ける「クレイモア」と呼ばれる女戦士たち・・・。”
第1巻 銀眼の斬殺者(192頁) 2002年1月10日
    SCENE1~4 「銀眼の斬殺者」「天空の爪」「魔女の記憶」「黒の書」
第2巻 まほろぼの闇(192頁) 2002年5月6日
    SCENE5~9 「まほろばの闇Ⅰ~Ⅴ」
第3巻 微笑のテレサ(192頁) 2002年11月6日
    SCENE10~15 「まほろばの闇Ⅵ~Ⅶ」「微笑のテレサⅠ~Ⅳ」
第4巻 死者の刻印(192頁) 2003年5月6日
    SCENE16~21 「微笑のテレサⅤ~Ⅵ」「死者の烙印Ⅰ~Ⅳ」
第5巻 斬り裂く者たち(200頁) 2003年11月9日
    SCENE22~27 「死者の烙印Ⅴ~Ⅶ」「斬り裂く者たちⅠ~Ⅲ」
第6巻 果てなき墓標(192頁) 2004年5月5日
    SCENE28~33 「斬り裂く者たちⅣ~Ⅵ」「果てなき墓標Ⅰ~Ⅲ」
第7巻 闘う資格(192頁) 2004年11月9日
    SCENE34~39 「果てなき墓標Ⅳ~Ⅵ」「闘う資格Ⅰ~Ⅲ」
第8巻 魔女の顎門(192頁) 2005年4月30日
    SCENE40~45 「闘う資格Ⅳ」「魔女の顎門(あぎと)Ⅰ~Ⅴ」
第9巻 深き淵の煉獄(192頁) 2005年11月9日
    SCENE46~51 「深き淵の煉獄(れんごく)Ⅰ~Ⅳ」「北の戦乱Ⅰ~Ⅱ」
第10巻 北の戦乱(192頁) 2006年5月7日
     SCENE52~57 「北の戦乱Ⅲ~Ⅶ」「ピエタ侵攻Ⅰ」
第11巻 楽園の血族(192頁) 2006年11月7日
     SCENE58~63 「ピエタ侵攻Ⅱ~Ⅴ」「楽園の血族Ⅰ~Ⅱ」
第12巻 魂と共に(192頁) 2007年4月9日
     SCENE64~69 「楽園の血族Ⅲ」「魂と共にⅠ~Ⅲ」「抗しうる者Ⅰ~Ⅱ」
第13巻 抗しうる者(192頁) 2007年10月9日
     SCENE70~73 「抗しうる者Ⅲ~Ⅴ」「幼き凶刃Ⅰ」
     EXTRA SCENE1~2 「戦士の矜持(きょうじ)」「幻影と狂戦士」
第14巻 幼き凶刃(192頁) 2008年5月7日
     SCENE74~77 「幼き凶刃Ⅱ~Ⅴ」
     EXTRA SCENE3~4 「北の邂逅(かいこう)」「錆なき覚悟」
第15巻 戦いの履歴(200頁) 2008年12月9日
     SCENE78~83 「戦いの履歴Ⅰ~Ⅴ」「大地の鬼哭(きこく)Ⅰ」
第16巻 大地の鬼哭(192頁) 2009年5月6日
     SCENE84~89 「大地の鬼哭Ⅱ~Ⅶ」
第17巻 記憶の爪牙(192頁) 2009年11月9日
     SCENE90~95 「記憶の爪牙Ⅰ~Ⅵ」
第18巻 ロートレクの灰燼(192頁) 2010年7月7日
     SCENE96~101 「ロートレクの灰燼(かいじん)Ⅰ~Ⅵ」
第19巻 幻影を胸に(192頁) 2010年10月8日
     SCENE102~107 「ロートレクの灰燼Ⅶ~Ⅹ」「幻影を胸にⅠ~Ⅱ」
第20巻 魔爪の残滓(192頁) 2011年6月8日
     SCENE108~113 「幻影を胸にⅢ~Ⅳ」「魔爪の残滓(ざんし)Ⅰ~Ⅳ」
第21巻 魔女の屍(200頁) 2011年12月7日
     SCENE114~119 「魔女の屍Ⅰ~Ⅵ」
第22巻 深淵の爪と牙(192頁) 2012年6月9日
     SCENE120~125 「深淵の爪と牙Ⅰ~Ⅵ」
第23巻 戦士の刻印(200頁) 2012年12月9日
     SCENE126~131 「深淵の爪と牙Ⅶ~Ⅷ」「戦士の刻印Ⅰ~Ⅳ」
第24巻 冥府の軍勢(192頁) 2013年6月9日
     SCENE132~137 「戦士の刻印Ⅴ」「冥府の軍勢Ⅰ~Ⅴ」
第25巻 やみわだの剣(192頁) 2013年12月9日
     SCENE138~143 「冥府の軍勢Ⅵ」「やみわだの剣(つるぎ)Ⅰ~Ⅴ」
第26巻 彼方からの刃(192頁) 2014年6月9日
     SCENE144~149 「彼方(かなた)からの刃Ⅰ~Ⅵ」
第27巻 銀眼の戦士たち(192頁) 2014年12月9日
     SCENE150~155(LAST SCENE) 「銀眼の戦士たちⅠ~Ⅵ」


ウィキペディアから
 クレイモア(CLAYMORE);https://ja.wikipedia.org/wiki/CLAYMORE
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20200508金 臨むもの


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