「
おおきく振りかぶって 」アニメ版の今回は、第19話から第25話までと特別編1話について書きます。
西浦は桐青に2-0とリードするが、これで桐青が西浦の力を認め本気になって攻撃してくる。
桐青は
三橋廉 と
阿部隆也 のバッテリーの配球を見極め、カーブに的を絞りまず2-2の同点にする。
その後も攻撃の手を緩めず、遂に桐青は3-2と逆転する。
これで流れは桐青かとなったが、西浦も反撃し3-3の同点にし試合を再び振り出しに戻す。
しかし、三橋はもはや限界点を超えているので踏ん張りきれず、またしても桐青が4-3と先行し9回の表を迎える。
なんとしても勝ちたいと先頭打者の阿部が執念で塁に出ると、流れが西浦になり、チャンスで4番の田島悠一郎に回る。
ここまでチャンスで凡退している田島はみんながあっと驚くような打法で高瀬準太の決め球のシンカーを打ち、走者2人が帰り2点を入れ、土壇場で5-4と逆転する。
そして、迎えた最終回の守りで西浦はピンチを迎えるが、三橋の渾身の1球は青木毅彦にフライを打ち上げさせ、それを泉孝介がスライデングでキャッチし、その球を花井梓がホームに矢のような送球をし、阿部がホームで真柴迅を刺してアウトにしゲームセットとなる。
西浦は誰しも予想しなかったであろうシードの桐青を倒し初戦を突破する。
初戦を突破したので西浦の夏の戦いは続く。
各話の題名は
第19話「桐青の実力」(DVD第7巻)
第20話「逆転」(DVD第7巻)
第21話「もう1点」(DVD第8巻)
第22話「防げ!」(DVD第8巻)
第23話「ゲンミツに」(DVD第8巻)
第24話「決着」(DVD第9巻)
第25話「ひとつ勝って」(DVD第9巻)
特別編1話「基本のキホン」(DVD第9巻)
です。
この「
おおきく振りかぶって 」アニメ版が5月3日(木)現在、GYAO!(
https://gyao.yahoo.co.jp/ )で第1話と第19話~第24話まで無料視聴できます。
第25話は5月4日(金)に配信されます。
URLは
https://gyao.yahoo.co.jp/p/00908/v14289/ です。
「PLAY」が赤になっていれば視聴可能です。
☆あらすじ
(19)
はずされた球をスクイズバントしたので栄口勇人(さかえぐちゆうと)はみんなからナイスバントと賞賛される。
巣山尚治(すやましょうじ)は三振に終わったが、5回表終了で西浦はシードの桐青相手に2-0とリードしている。
三橋廉 (みはしれん)は点が入ったということで勢い良くマウンドに行くがランナーだった
阿部隆也 (あべたかや)は準備中でまだホームベースにいなく戸惑う。
そこで田島悠一郎(たじまゆういちろう)がキャッチボールの相手をするが、田島も今日の三橋のテンションに違和感を抱く。
スタンドでは三橋母は三橋が笑っていると言う。
三橋瑠里(みはしるり)は三橋が笑っているということで、これまた違和感を持つ。
6番の本山裕史(もとやまゆうじ)は、カーブをうまくセンター前に打ったので、桐青の監督はカーブを決め球と見てカーブ狙いとさせる。
阿部はカーブをうまく打たれたがヒットは出るもんだと割り切る。
7番の高瀬準太(たかせじゅんた)は送りバントをし、ランナーは2塁に進む。
8番の山ノ井圭輔(やまのいけいすけ)はこれまたカーブをうまく打ってランナーは1・3塁となり桐青の攻撃パターンとなる。
阿部はカーブを打たれたということで、ここから真っ直ぐ(ストレート)を混ぜようと思う。
9番の前川俊彦(まえかわとしひこ)は2球ストレートを見逃す。
それでも桐青の監督はカーブ待ちを指示したので、カーブを待っていたらストレートが来たので当てなきゃと軽く振ったらフライとなって外野まで飛んでいった。
そのため3塁ランナーがタッチアップしてホームを踏んだので、桐青にやっと1点が入る。
1点取ったので桐青の応援は盛り上がる。
西浦ナインは桐青が簡単に外野フライで1点を取ったのでちょっと呆然とする。
でも、犠牲フライを打った前川は、上げたので監督にゴロを打てと怒られる。
河合和己(かわいかずき)は前川があのストレートをきれいに打ったと思い、阿部は振り切ってなかったから凡フライになったがきちっり捉えられたと思い、それぞれがこれからのストレートの攻防に思いをはせる。
1番の真柴迅(ましばじん)は足を生かしてまたしてもセーフティバント(セーフティーバント)を試みるが、ここは三橋のストレートを打ち上げてしまい、ピッチャーフライに終わる。
上げてしまったので、真柴は監督に怒られると青くなる。
三橋は1点取られたとちょっと弱気になるが、ナインからナイスピッチングといわれてまた元気を取り戻すが、何か鼻がむずむずすると思って手で触ると手に血が付いてきた。
そこへ花井がナイスフォローで三橋の鼻を帽子で隠してベンチまで連れて行く。
阿部がベンチに戻ってくると、篠岡千代(しのおかちよ)の氷嚢という声が聞こえ、何事かとベンチ内を見ると三橋が横になって団扇(うちわ)で扇がれていたので、「ああっ、これで夏が終わった」と血の気が引いてしまった。
それを見て百枝まりあ(ももえまりあ)は「鼻血を出したから寝かしているだけだよ」と言って安心さす。
ちょうど5回が終わったとこなのでグランド整備があり、砂入れなどで時間がかかるのでその間にのぼせは直ると読んで、「三橋君はまだ投げられるよ」と言う。
桐青のベンチでは高瀬が河合にボールが湿っているのでフォークは怖いと言う。
阿部が三橋を見ながらあれこれ心配していると、三橋がすくっと起き上がり、「俺、大丈夫だよ」と言う。
そして、阿部に後半も頼むぞといわれて元気な笑顔になる。
6回の表、西浦の攻撃は4番の田島からで田島は初球のストレートをレフト前に打ち1塁に出る。
すかさず高瀬のモーションを盗み2盗する。
花井梓(はないあすざ)は2塁ライナーで討ち取られる。
続く沖一利(おきかずとし)も水谷文貴(みずたにふみき)も三振で終わりチャンスを生かせなかった。
応援団の浜田良郎(はまだよしろう)この攻撃を見て、流れが桐青の方に移っていると思う。
桐青の2番の松永雅也(まつながまさや)に対してはストレートで三振に仕留める。
阿部は桐青がカーブ待ちということで3番の島崎慎吾(しまざきしんご)にボール球のカーブを打たせようとしたが、島崎は泳ぎながらもセンター前に運んだ。
4番の青木毅彦(あおきたけひこ)はバントの構えなので阿部はバントと読んで内にシュートを要求するが、青木はすかさずバスターに切り替えて打つと外野を越える打球となり、ランナーは2塁3塁となる。
阿部は拙攻と思い桐青の4番がバスターなんかするなよなぁと愚痴る。
ここで桐青が点取りにくるということで、阿部はタイムをとってマウンドで守りを話し合う。
百枝は西広辰太郎(にしひろしんたろう)を伝令に出し、スクイズ警戒しろと伝える。
阿部は河合に打ち上げさせるためにまっすぐで勝負すると言う。
河合はストレートということでともかく(勢いを)殺してスクイズバントをしたために上がりはしたが田島の手前で落ち、そのボールを田島がホームの阿部に送るが間一髪島崎はセーフとなり、桐青に同点となる2点目が入る。
桐青の応援はいやがうえにも盛り上がる。
桐青の監督はやっと同点かと思いながら、西浦の落ち着いたプレーに感心する。
阿部は欲張った為に点取られたと気落ちしていると、三橋が「バッター勝負!」と叫んだので我に帰り、「三橋は元気だ」と気合が入る。
(20)
元気な三橋は阿部の要求した通りのとこにストレートを決め、6番の本山を三球三振に仕留めてこのピンチを1点で切り抜ける。
この戦いに浜田はびびり、瑠里は三橋が三振を量産するので用意してきた「K」の旗を振る。
そんな瑠里に弟の三橋琉(みはしりゅう)から叶修悟(かのうしゅうご)が試合に出ているとのメールが入る。
7回表の西浦は、三橋は三振するが阿部はヒットで出てすかさず2盗をするが、後続の泉孝介(いずみこうすけ)は内野ゴロ、栄口は三振に打ち取られ無得点に終わる。
阿部が準備できるまでまで待っている三橋を見て、阿部は三橋がどんどん消耗しているのに自分は何もしてやれないともどかしく思う。
そんな三橋が「勝とう!」といったので阿部はそれに答えて「頼んだぞ!」というと三橋は「うん!」という。
バッテリーは7番の高瀬もストレートで三球三振に仕留める。
高瀬は狙い球のカーブでなかったのでカットにいったのだが、それを見ていた8番の山ノ井に泳いでいると物真似されてしまう。
阿部は阿部で高瀬がカットしにいったのを打ちにいったと思い、狙い球を変えたかもしれないと試しに山ノ井にボール球のカーブを投げさすが、これを山ノ井が振り切るとラッキーな内野安打となる。
阿部は次の9番の前川は先に三橋のまっすぐを打っていると警戒すると前川はバントの構えなので素直に送りバントさせる。
阿部が三橋にナイスピッチングと声をかけるが、その三橋は遂に肩で息をし始める。
そんな三橋をみて阿部は、なんとか終りまでもってくれと祈りに近い思いを持つ。
1番の真柴はカーブで打たせて取ろうとしたが、これまたラッキーな内野安打になりランナー1・3塁となって、また西浦はピンチを迎える。
このラッキーな安打に百枝は嫌な感じを覚える。
ここで少し雨足が強くなる。
一方、河合は三橋のストレートに感じている違和感を3番の島崎に話して浮いているというと島崎は思わず噴出すが、とりあえず見てみるという。
2番の松永に対しては1球目はストレートでストライクを取り、2球目はカーブで打たせようとするが、この2球目の時に、三橋の足が滑って暴投(ワイルドピッチ)となり、3塁の山ノ井がホームを踏み、遂に3-2と桐青がリードする。
桐青側は大いに盛り上がり、西浦側はあのコントロールのいい三橋が暴投したので呆然となる。
バッテリーが呆けているので、栄口が三橋のフォローに行く。
阿部がタイムを要求して三橋の元にくると三橋は自分のせいだとばかりにオロオロする。
阿部は三橋は悪くなく雨のせいだといい、三橋の手を触ると冷たくなっている上に震えていた。
そこで阿部は松永を敬遠して間を取ることにする。
しかし、三橋は自分が頼りないから敬遠するんだと思ってうじうじしていると、阿部は怒って三橋に喝を入れる。
それを見て栄口はやり過ぎだと思って、三橋に阿部のいうことを説明する。
阿部は三橋に「お前しかいねぇんだから、しっかりしてくれ」と切願すると、三橋はやっと阿部が三橋の為と思って敬遠するんだと分かって俄然やる気になる。
この四球(フォアボール)を見て瑠里も弱気になってしまう。そこにまたしてもメールが届く。
この敬遠の間で三橋は手の震えも止まり落ち着きを取り戻し、まだ投げられると実感する。
3番の島崎は河合からいわれたストレートを見るために球をカットする。
そこで阿部は早めに打ち取ろうと速い方のストレートを投げさせ目くらましをしてからくせ球のストレートを投げさせるとそれをファールする。その島崎を見て河合は泳いでいると思う。
もう1球くせ球のストレートを投げると島崎のバットは空を切ると共に、バットが飛んでしまう。
それを見て雨で手が滑ったと思ったのか審判が集まって試合を続行するか協議を始めた。
百枝は桐青と互角に戦っているのだから最後までやらせてと強く思う。
三橋がトイレに行くのを見た阿部は何か違和感を感じて、トイレに行くとそこで三橋が頭からシャワーを浴びていた。
阿部はひでぇと思い三橋の右手を取り、三橋に思い切り握らせてみると、三橋の握力はもうなくなっていた。
阿部があまりのことに絶句していると、こともあろうかそこに瑠里が来て、「レンレン」と呼びかけ叶が勝ったと言う。
三星は7回コールドで勝ち、叶も最終回に投げ3人で抑えたと興奮して伝える。
そこに職員の人が来たので、瑠里はごめんなさいといって一目散に逃げ帰る。
それを聞いた三橋は顔つきが変る。
しかし、そんな三橋と瑠里の会話を秘かに聞いていた西浦のナインはレンレンといって噴出す。
田島が手を出し三橋に握らすと握力が戻っており、阿部が再度確認するとやはり握力が戻っていた。
そこに、花井が試合が再開されることをナインに告げる。
みんなはまた逆転して俺たちが勝つんだと思う。
(21)
中止とはならず試合が再開されたので浜田はよかったぁと安堵する。
河合は島崎の情報から三橋の決め球はカーブではなくくせ球のストレートではないかと思う。
そして、決め球がカーブだと思ったのは阿部の1試合を通しての組み立てにはめられており、こちらが調べられている分、相手に一日の長があると思う。
試合再開になったので河合はナインに改めて気合を入れる。
3番の巣山は自分が打てるのはストレートしかないとストレート狙いで打つが、その当りそこねの球はふらふらと落ちたため野手のお見合いとなって1塁に出る。
河合はここはランナー(走者)が当然走ってくると思う。
河合は4番の田島はシンカーに手を出す楽な4番だと思うが、その田島がどこにも力が入っていない自然なフォームなのでどんな球でも打てると思う。
田島は初球を打つがファールになる。それは河合がその田島の自然なフォームから危険を感じ様子を見るためシュートをかけていたためバットの芯から少しずれてためである。
それを見て高瀬も田島には気合を入れて投げようと思う。
百枝も田島もスライダーが来ると読むがストレートだったので田島は振り遅れファールとなる。
そこで再度百枝は田島にサインを送るが田島は集中しているために百枝のサインを見ない。
百枝はイラッとするが、バッテリーが田島用の投球をしているということで田島の読みにまかす。
バッテリーのストレート勝負に田島でもとらえ切れなく両者の競り合いか続く。
これに桐青も西浦を共に熱い応援を送る。
田島が一歩を引かないので、河合は高瀬が先につぶれると思い、シンカーで揺さぶりをかけてくる。
河合は田島の集中力を見て、ストレートやスライダーでは打ち取れないということで、高瀬の決め球のシンカーをストライクゾーンに要求する。
その高瀬の渾身を込めたシンカーを田島はまたしても打てず空振りの三振に終わる。
こうしてこの勝負はまたしてもバッテリーの勝ちとなる。
高瀬は雄叫びを挙げる。
田島はストライクのシンカーさえも打てなかったのでこれが高校野球のレベルかと悔しがる。
百枝は田島が落ちていると心配するが、田島は「すんませんでした」と謝りコーチにいったのでとりあえず安心する。
高瀬は対田島でエネルギーを使いすぎて、5番の花井に2ボールとなる。
田島がコーチに立ったので、巣山はすかさず2盗する。
これに対して、いままでなぜ走らなかったのだとバッテリーも監督も不思議に思う。
巣山は3盗までしてしまう。
そこで監督はそんなわけのわからん作戦などないと思って、はっと気づく。田島だと。
田島だけが高瀬のモーションを盗んでいると。
花井は四球(フォアボール)で出塁し、ランナー1・3塁となり西浦のチャンスとなる。
花井はすかさず2盗したので、監督は田島だけがモーションを盗めると確信する。
ランナー2・3塁になったので、桐青は6番の沖を敬遠して満塁として7番の水谷と勝負しようとする。
水谷は一死(ワンナウト)満塁で俺かよとびびる。
百枝は水谷ではスクイズは危険が高いと判断して打てのサインを出す。
水谷はますますびびるが、そんな水谷を三橋が励まそうとすると、水谷は瑠里のレンレンという呼び名を思い出して噴出したため緊張が少しは解ける。
桐青はスクイズ警戒で1球目をはずすが水谷は思わず振ってしまう。
巣山は水谷にサードランナーと声かけをし、水谷はスライダーに的を絞る。
そのスライダーを打つが1・2塁間のゴロとなり万事休すかと思われたが、2塁手の島崎がグランドに足をとられてスタートが遅れたために、球は外野に抜け、巣山がホームを踏み、再び3-3の同点となる。
花井はこの期に一挙に逆転を狙いホームに突っ込むが、外野から良い球が返ってきてホームタッチアウトとなる。
西浦の応援にはナイバッテング水谷が響き渡る。
水谷は「や。やったぁ」と雄叫びをあげる。
次打者の三橋は三振に終わる。
田島が落ち込んでいると、ナインは9回に田島まで打順を回すという。
それで、田島は俄然やる気が蘇る。
そして、8回裏桐青の攻撃は4番の青木からなので阿部はここを抑えれば勝ちが見えると気合を入れる。
(22)
河合は7回あたりから決め球がカーブからストレートになっていると読む。
そして、河合は4番の青木なら三橋のストレートを捉えられると期待を寄せる。
阿部はここからは全員最後の打席とするために三橋のまっすぐで逃げ切りの体勢に入る。
青木は最初のストレートをボールだと思って見送るがストライクになったので驚く。2球目はともかくバットを振る。3球目は高めのボールを見送り、次は変化球で来ると読んだがストレートが来たので見送りの三振となる。
青木に4球ストレートなので河合は決め球がストレートだと確信を持つ。
そこでベンチの島崎に合図を送って、監督に決め球がストレートだと進言させる
河合は1球目はストレートをじっくり見て、予想の軌道に落ちてこないと見抜くがどういう風に落ちてくるかまでは分からないので、2球目はカット感覚で振るが空振りをする。
河合はカーブだと思って振ると打球が上がらずファールとなる。
それを見て阿部は河合がストレートに対して何かをしていると思い、次の球はストレートでなくカーブを投げさせる。
河合はカーブに対して体が泳ぐがカーブを打つ感覚になっていたのでなんとかヒットにする。
結局、最後はカーブになったので、桐青の監督は島崎にやはりカーブが決め球という。
しかし、桐青の監督は三橋のストレートはフライになりやっかいな球だと思う。
河合はカーブが来たので、阿部を性格が悪くまったく捕手向きの奴だと感心するが、結果的に打ったから俺の勝ちだと悦に入る。
百枝は8番は今日2本打っているということで6・7番でアウト取りを指示する。
6番の本山はバンドの構えをしたので、阿部は素直にバンドをさせて1死(ワンナウト)を取ろうとカーブを投げさすと、本山はバスターに切り替えてヒットエンドランを成功させ、ランナー1・2塁となる。
この博打的な積極的な攻撃に百枝も阿部も驚く。
7番の高瀬もバンドの構えをしたので、百枝はストレート勝負と思うが阿部はまたしても1死を取ろうとカーブを投げさせるとまたしてもバスターで田島の横を抜かれる。
2塁ランナーの河合はこの打球で3塁を蹴ってホームに向かってきたので、水谷から田島へ田島から阿部へと送球しホームでクロスプレーになるが阿部が河合に弾き飛ばされて、河合はホームインする。
土壇場で再び桐青が4-3とリードし桐青の応援は大いに盛り上がる。
桐青の監督は博打が当たって1点取ったが1点では安全圏ではないのでこのチャンスにもう1点取ろうとする。
8番の山ノ井もバントの構えなので阿部はあきれるが、ランナー1・3塁なので今度こそはスクイズがあると思う。百枝もスクイズ警戒して1球目は外すサインを出す。
スクイズだと思って沖をダッシュさせたらまたしてもバスターで打ってきた。
その球は三橋めがけて飛び三橋のグローブに当たる。
三橋は球を見失うが栄口の後ろと言う声で拾い、阿部がバックホームと言うが三橋は一瞬躊躇する。
それでもホームに投げて間一髪3塁走者の本山をホームでタッチアウトにする。
しかし、阿部は三橋がホームに投げるのを躊躇したので激怒してマウンドの三橋に詰め寄り、襟首をつかんで叱責する。
直ぐに栄口が行って阿部をなだめ、三橋は田島にその理由を言う。
三橋はサードランナーによって阿部が吹っ飛ぶと思って躊躇したとのこと。
それを聞いた阿部はますます激怒して、俺は怪我しないといっただろう、二度と逆らうなというと、三橋は怯えて従う。
田島が阿部はもう怒ってないというと、阿部が怪我しない約束を覚えていたということで気持ちを持ち直す。
次はこの試合唯一三橋のまっすぐを外野まで打っている前川なので阿部は用心するが、前川はストレートで3球三振に終わる。
河合はストレートを誰も打てなかったのは残念だが次の回を守ればこの試合は終りだと思う。
阿部は前川に惑わされたけど前川のあの打席はまぐれだったと思う。
1点差のビハインドで迎える9回表の西浦の攻撃は9番の阿部から。
河合は先頭を切る、阿部は×(ばつ)ゲームになんかさせねぇとお互い意気込む。
(23)
阿部が雄叫びを上げて打席に立つと、浜田は阿部が気合が入っているということで、トランペット担当の松田佳之(まつだよしゆき)と大太鼓担当の深見智花(ふかみちか)に頑張れよと声かけをして、隆也コールをする。
阿部はぜってい出ると集中力を高める。
初球は高めのストレートを空振る。2球目は低めのストレートを見送る。
それを見て花井はちぇ振れよいい球と舌打ちするとそれを聞いた栄口はびっくりして花井は勝つ気だと改めて思い、あと10回やったら10回ぼろ負けかもしれないけどこの試合は1点差だここで欲張らなきゃ嘘だということで阿部に打て打てとみんなで声援を送る。
3球目は高めのストレートのボールとなり、ボールカウント2ストライク-1ボールとなる。
ここまでストレートだけなので、阿部は速球に的を絞る。
4球目のストレートを打った球は球速に押されて3塁前に転がるが必死に走った阿部の足の方が間一髪早く内野安打になる。
阿部が出たので西浦の応援は大いに盛り上げる。
河合は田島がコーチに立っているので1球目から走ってくると予想してクイックで投げさすが、1番の泉は初球からセーフティバントを試み上手くピッチャーの横に転がし内野安打としてランナー1・2塁となる。
西浦の応援はますます盛り上がる。
この続いたラッキー性のヒットで高瀬は西浦の勢いに押されていると感じる。
高瀬は格下が勝つことがあるがあれはミラクルでもなんでもなくやられている方が自滅しているだけだと思い、俺は食われないぞと集中力を高める。
2番の栄口なので田島のコーチはここまでということで桐青の監督と河合はここで走ってくると読んで、1球外し3塁に力強い球を投げて3塁で刺すぞという牽制をする。
これを見て田島も百枝も3盗は難しいと思う。
そういうことで栄口にバントをさせてランナー2・3塁にしようとするが、それを読んだ河合は簡単に栄口にバントさせないような速いストレートを投げさせボールカウント2-1とする。
それでも百枝はスリーバント失敗も辞さず栄口に速球打ちのバントのサインを出す。
栄口はここはフォークが来ると思っていたのでびっくりするが次打者の巣山がフォークはないと説明する。
そこで納得した栄口は巣山に気合を入れてもらってストレート1本に絞り、見事にバントを成功させ、ランナーは2・3塁となる。
西浦の応援はどんどん盛り上げる。
巣山はこの試合は田島がマークされているので、何とか自分で1点を取ろうと気合を入れるが高瀬のストレートの速さに押された上に最後はシンカーを見逃し3球三振に終わる。
桐青は高瀬を讃える応援で盛り上がる。
そして、田島の4度目のチャンスでの打席となる。
場面は2死(ツーアウト)2・3塁である。4度目の正直となるか?
田島はナインの声援を受けるとそれにサムズアップで答える。
それをみてナインはうっとりする。
田島コールが球場に響き渡る。
高瀬はあと1死だということで、終わったあとのことを考える。
田島は1球目のストレートをファールする。
ストレートはもうめいっぱいということで、田島にはいままでシンカーで仕留めているのでシンカーで打ち取りにくる。
そのシンカーがストライクになり、バッテリーは2ストライクと田島を追い込む。
両陣営とも思いが交差する。
そして、運命の1球が投じられる。
なんと誰しもが唖然とするようなことを田島はやってのける。
シンカーにバットが届かないと見た田島はバットを振る瞬間になんと指をずらして右手を親指3本でつかみバットを長くしたのである。
体勢は崩れるのであるがそこは天才の田島、バットコントロールでセンターの頭を超し、走者を一掃する。
阿部と泉が帰り、この試合初めて複数点である2点を入れてこの土壇場で5-4と再度逆転する。
田島は雄叫びを上げ、西浦はこれ以上ない盛り上がりを見せる。田島コールが鳴り止まない。
百枝は身震いをする。
この打撃に河合は信じられないと唖然とする。
桐青の監督は、「バッテリーのせいじゃない、あのバッターを敬遠させなかった俺の責任だ」と心の中で呟く。
河合は高瀬に歩み寄り、また逆転してやるといって高瀬をフォローする。
田島は2盗する。
花井は1球目のシンカーにびっくりしてそのあとのストレートに対応出来ず、3球三振に終わる。
阿部は1点差ではきついと思いながらも三橋に気合をいれる。
三橋は俺が打たれなければ勝てると思いが募る。
(24)
1点リードでいよいよ9回裏の守備である。
ここを0点に押さえると西浦は勝つ。
河合は1点差で負けているということで、ます1点を確実に取りにいくとナインに気合を入れる。延長になればこちらが有利なので同点にさえすれば九分九厘勝ちが見えるということである。
桐青のナインはそれに答えて声を上げる。
三橋はマウンドで緊張のあまり震えがくるが、この回を押さえればみんなで勝てるんだ思い、自分を奮い立たせる。
そして、お互いの思いをかけて1番の真柴が打席に立つ。
真柴は球を良く見るためにバントの構えをする。
真柴は1球目のストレートを見送る。それを見て阿部は2球目もストレートを要求すると三橋はストレートに不安を持ちながらも投げるが、またしても真柴は見送る。
三橋がストレートに不安を持っているのを見破った阿部は、三橋にストレートの良さを教えるためにあえてシュートを投げさせるが、それが甘く入ったため真柴はセーフティバンドを試みる。
三橋がその球を取りに行こうとするが足がついていかずこけたので、田島が取って1塁に投げるが間一髪でセーフになる。
桐青の応援は盛り上がる。
桐青の監督は変化球に逃げる甘さがあるならそこからつけこめるとほくそ笑む。
シュートが甘く入ったので阿部も三橋も百枝もここが限界かとうろたえる。
それで、阿部は「三橋、投げられないなら代わってくれ、ここは三星学園じゃねぇからな、投げられないのなら沖にでも花井にでもマウンドを譲れ」と大芝居を打つ。
三橋は百枝の方を見ると百枝も交代に同意する仕草なのだが、それでも三橋は投げたいのでよろよろと立ち上がる。
そんな阿部と三橋を見て百枝は「阿部くん、役者だわ、代える気なんてないくせにぃ」と思う。
三橋は1塁の沖を見て、球をもらう。
沖はこんな場面で投げるなんて嫌すぎるから、自分なら喜んで交代するのに、それでも投げたがるなんて三橋は投球中毒でしかないけど、そういう後ろはすごくやる気が出ると気合を入れる。
三橋は怖い降りたくないと心が揺れ動くがそれでもここを誰にも譲りたくないと肝が据わる。
それを見て阿部は「よし目が定まった、勝っている試合で堅くなるのは欲の出てきた証拠だぜ。お前にとっちゃ良い傾向なんだ、そのプレッシャー受け入れろよ」と少し安心する。
2番の松永へのストレートの1球目に真柴は2盗をする。
百枝はランナーに振り回されずバッター(打者)をひとりずつ切るようにとサインを出す。
三橋は阿部を信じてまっすぐで松永を三球三振に仕留め1死(ワンナウト)を取る。
松永は3番の島崎に普通の球なのになんで当たらないのか分からないと嘆く。
阿部は島崎に前打席でストレートを3球投げたが空振ったのでまだストレートが通用すると見る。
島崎はバントの構えで球を良く見ようとするが、まだバットが球の下を叩くので上がってファールとなる。
2球目の時は、阿部へのファールとなるがそれを阿部は取れなくて悔しさの為に右手でグラウンドを叩くと三橋は自分のストレートが遅くなっているから阿部が怒っているだとうろたえる。が、阿部が悪いと謝ったので怒ってないと安心する(笑)
阿部がバント警戒の指示を出したので、島崎はともかく打てばなんとかなるだろと振り切る。
その打ち上げた打球はバント警戒で前に出てきた田島の頭を越えて落ち、それを巣山が取って1塁に投げるが握りが悪く1塁暴投になり、それを見た2塁ランナーの真柴は3塁へ走り、カバーに入った阿部の送球も間に合わず、ランナー(走者)は1・3塁オールセーフとなる。
桐青の応援は盛り上がり、監督はご満悦である。
百枝は遂にミスが出てまずいと思う。
この状況で次のバッターは4番の青木である。
桐青にとっては願ってもないチャンスであり、西浦にとっては絶体絶命のピンチである。
このチャンスに桐青の応援は盛りに盛り上がる。
青木はたとえストレートできても、1死で3塁ランナーが足の速い真柴なので、これで点を入れなければ4番じゃないと意気込む。
ネクストバッターズサークルにいる次打者の河合は、青木に1点入れろ、その後は俺が1点入れて勝つとこれまた意気込む。
阿部は三橋にストレートを要求する。
三橋はストレートは怖いと思い変化球も打たれているので、もう俺は桐青に攻略されたんだと弱気になるが、それでも投球中毒だからマウンドだけは降りたくないと執着する。
そんな三橋を見て、ナインは三橋に励ましの声援を送り、主将の花井はライト(右翼)から「三橋ぃ、あとのことはまかして、お前の一番いい球を投げろ。お前の投げる球なら誰も文句ねぇから」と叫び、みんなも同意の声を上げる。
それを聞いて三橋はへろへろの自分が降りずに投げている嫌な奴なのになぜ信頼するのかわけ分からないという感じになるが、なんて優しいこといってくれるんだと、阿部のミットめがけて渾身のストレートを投げる。
青木は読みのストレートということで振る切る。
が、その球はやはり球の下を叩いているので浅いフライとなる。
センターの泉は「投げ勝っている、取ってやるぜ三橋」と走りに走ってダイビングキャッチをすると、球はグラブの先端に入っており、それを花井にトスすると、花井は強肩を生かしてホームの阿部に矢のような送球をする。
阿部とタッチアップした真柴がホーム上でクロスするが、みんなが固唾を飲んで主審を見ると、主審はアウトの宣告をする。
西浦は勝った。
西浦のナインは大喜びをし、田島は三橋に勝った勝ったと飛びつく。
阿部は勝ったと呆けたまま呟く。
河合は黙ってネクストバッターズサークルを離れる。
整列した両校のナインに主審が5-4西浦高校、ゲームといって試合は正式に終了する。
ナインが援団に「応援ありがとうございました」とお礼の挨拶をすると、拍手で讃え浜田は「こっちこそだ、感動をありがとう」と答える。
それを見ていた河合はバッグから家族の思いのこもったお守りを取り出しそっと握りしめる。
泣いているナインに出るぞといってベンチをあとにする。
高瀬は河合に「かずさん・・・・・すんませんでした、すんませんでした」と嘆くと、河合は「お前が謝ることはいっこもない」といって、高瀬の肩を抱き涙を流す。
こうして、桐青の今年の夏は終わった。
百枝はこのあとも練習をして今日の反省会をするというと、応援に来ていた母親たちは驚く。
百枝がタクシーを呼ぶというと、花井母は車で来ているので自分たちでナインを学校まで送ると申し出ると百枝は感謝する。
そこへ桐青の河合(たち)が来て、花井のバックホームを褒め、この強さなら甲子園を狙って欲しいとマネージャーたちが折った千羽鶴を託す。
花井(たち)はお礼をいい、河合たちが目が赤かったので泣いたと思い、改めてこの勝ちの重さを噛みしめる。
三橋は別場所で志賀剛司(しがつよし)の身体チェックを受けていた。
志賀の見立てでは三橋に特に異常は認められなかった。
そこでダウンしようと阿部と田島が三橋に声をかけると三橋は眠っていた。
阿部は田島に三橋が今日はなんかおかしくなかったかと聞くと田島はいつもの三橋ではなかったという。
阿部はこの三橋のハイテンションがあったからこそ今日の勝ちはあったと思い、ぶったおれて道理だと思う。
そこに桐青の1年の仲沢利央(なかざわりおう)が通りかかり、眠っている三橋を見て訳を聞く。
その時、田島と目があって田島だと分かりその凄さに色々聞きたいと思ったが、時間がないのでメルアド交換をする。
田島は仲沢の手にメルアドを書く。
仲沢は田島(たち)に声援を送って去る。
田島が誰だよというと、阿部が桐青の控え捕手だと教える。
阿部と田島が百枝のとこに三橋を連れてきて、田島が三橋がつぶれたことを言うと、百枝は三橋母に連れて帰るように言う。
三橋母は三橋がどろんこなのでユニフォームを脱がせて車に乗せる。
百枝母は初めて生で野球みたけど面白かったと言い、瑠里は三橋のあどけない顔を見ながら、今日来て良かったと思う。
(25)
戦い済んで日が暮れまた明ける。
三橋は叶に埼玉に行っても野球やめるなと言われたことを思い出し、野球はやめなかったが阿部にマウンドを降りろといわれても降りなかったので三星時代と何も変わってないと悶々としながら床に就く。
学校で阿部は泉に声をかけ、三橋のことを聞くと三橋は今日は休みとのこと。
それを聞いて阿部はサッカーは負けたので花井と三橋家(みはしんち)に行くと言う。
そこに田島が来て俺たちも三橋家にカレーを食べに行くと言う。
田島は女子に4番の人だといわれる。
3人で浜田のバスケットの応援に行っていると、浜田も女子に団長の人だといわれる。
それを聞いて阿部は、三橋も明日から色んな人に褒めてもらえてちょっとは自信持つかな、と思うが、三橋のことを思い返すと、いやいつも通りきもくびくつくだけかぁ、あれ無性に腹立つよなぁ、田島には普通に話すのに、と結論づける。
阿部は三橋が田島にはメールを返したのに自分に返してこないので嫌われているのかと思うが、三橋にはそんな度胸はないと思って三橋はよくわかんねぇということで納得する(笑)
三橋が熱出して寝ているとメールが届く。
それは瑠里からで叶に勝ったことを言ってないのなら自分が言ってもいいというものだった。
三橋は瑠里に自分で言うといって昨日はありがとうと返信する。
そうしたら、またメールが来て瑠里からの返信かと思っていると、
阿部隆也 だったので100%びくつく。
おそるおそるメールを見ると、昼に俺と花井も行くということだったので、今度は100%死に体になる。
三橋はマウンドを降りなかったことで阿部が怒りにくると思っているので雲隠れしようとすると玄関のチャイムが鳴る。
もう逃げられないと諦めた三橋はへろへろした青い顔で玄関に出てくる。
それを見て阿部はすげぇ具合悪そうだと言う。
恐怖の期末テストは今日返って来て、みんなで勉強した甲斐があってか三橋も田島も赤点はなかった。
阿部が三橋に体重を測れとかなんとか指示しているのを見て泉は阿部はえばってるなと思う。
田島は桐青戦の最後の打席でグリップをずらしてシンカーを打ったので右手の手首を負傷していた。
三橋が体重を50キロというと、阿部は怒って3キロも減っているじゃないかというが、こうやって怒鳴るから俺は嫌われるのではないかと思い直して普通に話すことを心がける。
が、やはり三橋はきもいのでキレかかるが我慢する。
そして、あいつ見てるとたまにぶん殴りたくなるのは俺だけと言うと、花井がいいやと賛同する。
うまそうといって、三橋と田島と泉はカレーを阿部と花井は自分の弁当を食べる。
花井が三橋親に持ってきたDVDを見ていて榛名が出てくると三橋は感激するが阿部はあっさりと別に順当だろうと言う。
それに内心意義ありの三橋はどもりながら、俺たちも勝ったでしょうと言うと、みんなにんまりとする。
阿部が三橋になんで俺たち勝てたかと聞くと、三橋は自分はマウンドを降りなかったということで昔と変ってないと落ち込んでしまう。
そんな三橋を睨(にら)んでいる阿部を花井は、不憫だと言う。
花井は弁当を食べ終わってカレーを食べようとして三橋のことを思う。
花井は昨日の試合で9回裏に三橋が4番に対した時、三橋が投げるなら精一杯の球だと思ってそれで打たれるなら文句ないとどなったのは当たり前のことなのに、三橋はいちいち特別なことのようにびっくりする、そういうのがすごくむかつくし色々むかつくので阿部がキレなければ俺がキレていた場面は一杯あった、中学の時出会っていたら間違いなくいじめ側に入っていたな、出会が高校でよかったと思う。
田島が唐突に三橋になんで西浦に来たのかと問うと、三橋はお母さんの学校だからと答える。
今度は阿部が田島に西浦に来たのは尋ねると、田島はひいじいさんが倒れて家に誰もいなく怖かったので実家に一番近い学校にしたとのこと。
これを聞いて阿部は大家族ありがとうと感謝する。
花井はレベルと通いやすさでというと、泉はグランドを見てからと言う。
そうすると阿部もグランドと言い、泉が春休み栄口と来てただろうというと、春休みには栄口を誘ったけど下見はひとりで来たと言う。
テレビで昨日の桐青戦のニュースがあり三橋の名前が呼ばれると、三橋はまたしてもびびり今日はみんな自分が降板しなかったのを怒りに来たと思って、みんなの楽しみを壊したくないと泣き先に謝ろうと思って、「昨日は勝手してすみませんでした」と正座で頭を下げる。
みんながきょとんとするので、三橋は代われと言われてというと、阿部はカレーを食べながら「あれは嘘だよ」とこともなげに言う。
今度は三橋がきょとんとする。嘘と聞いて一気に力が抜ける。
阿部はそれよりもバックホームを躊躇したことの方を問題視してもう絶対にするなと言う。
泉が昨日の反省会の総評を渡すと、そこには三橋が頑張ったということが書かれていた。
それを泉も花井も普通のことだというと三橋は叶の言葉「お前のやっているのは違うんだ、ここで止めちゃだめだから」を思い出す。
みんなが帰ると、三橋は「こんなに嬉しいのが普通なのか」と思いこのことを叶に言いたい気になる。
そうすると折り良く叶から「勝ったぞ」とメールが来たので、「俺も勝ったよ、俺もみんなで勝ったよ、野球やってて良かった、修ちゃんありがとう」と返信する。
叶は修ちゃんの愛称にガキん頃に戻ったみたいだとにんまりして、次ぎも頑張れよ廉と呟く。
三橋は左手にボールを持って心地よい眠りに入る。
(特別編1話)
この話は阿部たちがまだ中学3年生の時に、1年先輩の榛名元希(はるなもとき)が武蔵野第一高校の野球部に入部して体験したある一齣(エピソード)である。
武蔵野第一高校の2年生エースの加具山直人(かぐやまなおと)は3回で交代した1年生の榛名の投球の凄さを見て己の無力を感じやる気をなくす。
そんなある日加具山と榛名はマネージャーの宮下涼音(みやしたすずね)に呼び止められて立ち話をする。榛名はけっこう恐縮する。
香具山は榛名の凄さを知るために榛名の自主練に参加するが、その筋トレに音を上げてしまう。
榛名は主将の大河浩宣(おおかわひろのり)から2年の春から正捕手の町田祐樹(まちだゆうき)と組むように言われる。が、榛名がエースになっても1試合80球しか投げないというと、大河はカッとなって榛名を蹴り飛ばす。
榛名は宮下と秋丸恭平(あきまるきょうへい)にかかえられてベンチに戻る。
大河は怒りが収まらず、香具山にお前がエースで投げろと言う。
香具山は大河の件を榛名にフォローする過程で榛名が80球しか投げない訳を知る。
それは成長線が閉じない間は無理したくないということだった。
そこで香具山はそのことを大河に話せば大河も納得すると言う。
香具山は榛名の身体を見てますますやる気をなくし、榛名に部活をやめると言う。
一方、宮下は大河に電話して、昼間のことで一言いいたいから裏門当たりで落ち合う約束をする。
榛名は香具山が部活をやめるというので驚く。
榛名がなんでやめるのかと聞くと香具山は投手なんかやりたくない、やめて勉強するんだと言う。
それを偶然裏門に来た大河が聞いていて、宮下にキャンセルの連絡を入れるが宮下はもう来ていたので2人で盗み聞きすることにする。
香具山はなんで榛名みたいな優秀な投手がうちみたいな弱小チームに入って来たんだ、甲子園に行きたいならもっと強いチームに行けがいいじゃないか、お前はここでは浮いていると愚痴を言う。
それを聞いて榛名はこいつ何言っているんだとばかりに唖然とする。
どうして最初から諦めるのかと聞くと、香具山は試合に勝ったことがないそんな自分が努力るのは恥ずかしいと言う。
それを聞いて榛名はますます唖然とする。
そして、夜具山が皮肉を込めて目標を聞くと、榛名はこともなげに「プロ」と言う。
それを聞いた香具山は自嘲気味に天命だとか才能だとか言い出したので、榛名は切れかかるがはっと気づく。
香具山はいま始めて野球に対して気持ちがぐらついているんだと思い、自分の中2の時の体験を門外不出で話すと言う。
門外不出ということなので盗み聞きすることは出来ないと思った大河と宮下は名乗り出てくる。
それを見た榛名と香具山は凍りつく。
大河がなぜ榛名がここに来たのか知りたいと言うと榛名は話す気はないと突っぱねるが、宮下が可愛くお願いすると榛名は転びバテレンになってしまう。
榛名がこの学校を選らんだ理由は、学校の側にグランドがあることある程度のトレーニング設備があること監督がなるべく不熱心なことに合致したからと言う。
ここから中2の時の榛名の原体験が話される。
それによると、榛名は監督のお気に入りの為に過酷に使われて肘痛になったが成長痛ということでそのまま投げさせられた。しかし榛名は心配でこっそり大きな病院に行ってMRIを撮ると半月板を損傷していたのだが、そうすると監督は榛名は使い物にならないということでほったらかしにしたという。
なんとか自分でリハビリして治したのだが、直っても監督は榛名を無視いて使わなかったいう。
それで榛名は野球をやめたいと思うがそんな時に中学の仲間がシニアに行けといってくれシニアの経験で立ち直れたという。
その話を聞いても香具山は自慢にしか聞こえないといってうじうじしていると、大河が切れて香具山に文句をいう。
そこで榛名は香具山に自信を持たせる為に50m走を提案する。
榛名は香具山がやる気が出すように宮下に口添えをさせた上で、50m走をすると香具山を榛名に勝てると思い込んで全力疾走したので、7秒5から6秒8へ記録が上がった。
そこで榛名が本当に野球をやめたいのかと聞くと、香具山は俺はやめたいのではなく勝ちたいのだと言う。
榛名はそれを聞いて、「勝ちぃつうエサなしでこの重労働を続けてきたなんてねぇ、あんた相当野球が好きだっつうの」と言う。
そんなことで時間が遅くなったので、大河は宮下を送っていくことになった。
香具山が逢引のお邪魔でしたというのを聞いて、榛名は初めて宮下と大河が付き合っていることを知って体中を秋風が通り抜けていった。
香具山はここぞとばかりに榛名をいじめる(笑)
榛名と分かれた香具山は明日から思い切り力いっぱい勝利を目指すんだと自分に誓う。
こうして武蔵野第1高校は香具山が3回まで全力投球をしその後を榛名が締めるという勝利の方程式が確立する。
「勝利はたまらない味だった」(香具山直人)
☆所感
こうして西浦高校は、去年の埼玉大会優勝校の桐青高校に勝ってしまうのであるが、この勝ちを呼び込んだ要因は3つほどあると思います。
それは
1.データ
2.メンタル
3.練習
です。
データは、桐青が事前に西浦のデータをまったくといっていいほど持っていなかったのに対して、西浦は百枝まりあ(ももえまりあ)が春の県大会での桐青をビデオに取っていたのでそれを参考に出来た。
そこから篠岡千代(しのおかちよ)が各打者の打撃の傾向をデータベース化した。
そしてそのデータを活用するだけの力を持つ者が西浦にはいた。
いくらデータが豊富にあってもそれを戦いの中で活用できなければ宝の持ち腐れである。
攻撃においては、高瀬準太(たかせじゅんた)と河合和己(かわいかずき)のバッテリーの配球を百枝が分析して傾向と対策を各打者に伝達した。
守備においては、
阿部隆也 (あべたかや)が各打者の打撃を分析して傾向と対策としての配球をした。
その配球に見事なコントロールで答える
三橋廉 (みはしれん)がいた。
そして田島悠一郎(たじまゆいちろう)はビデオから高瀬の投球と牽制の時の癖を見抜いた。
さすがに桐青もこれらのデータを的確に活用できる優秀な人材がいるとは思わなかっただろう。
メンタルは、もうお馴染みの志賀剛司(しがつよし)のメンタルトレーニングで、モチベーションの維持、試合で練習の成果を普段通り出すリラックス、そして各々がこのチームで何をすれば勝てるかという一体感である。
これが見事にはまって、データとそれに基づく練習を実戦で生かした野球がやれたということである。
どんなデータがあろうがどんな厳しく激しい練習をしていても本番でそれを生かせなかったならほとんど意味を持たなくそこには後悔しか生まれないだろう。
やるべきことをやってこそそこに反省もあるといえよう。
練習は、時間とグランドの占有の制約のある中で、あれもこれもしなくてデータに基づきこの期間でやれる最も効果のあるものに絞って集中的に行なったということである。
それが泉孝介(いずみこうすけ)がスライダーをヒットしたり巣山尚治(すやましょうじ)がストレートをヒットしたり栄口勇人(さかえぐちゆうと)がスクイズバントを横っ飛びで成功したり、また花井梓(はないあずさ)は後ろ向きでファールをダイビングキャッチしたり須山が鋭い打球を横っ飛びで好捕したりしたことに表れているといえよう。
ようするにターゲットを決めてそれに関しては確実にレベルアップしたといえよう。
いわゆる量より質の練習である。
高瀬が最も多く投げる球がストレートとスライダーであると分析してそれを確実に打てるように練習したのである。
普通に考えれば、決め球のシンカーやフォークはそんなに投げないといえる。
やはり通常は決め球は高い集中力を要するためにエネルギーの消耗が激しいので多くは投げないだろう。
守備もここではそんなに描かれてはいないがおそらく各打者の打球の方向などもデータから分析していてそういうシフト的なことも意識にはあると思われるから好プレーにつながっているのだろう。
練習でやるべきことはいくらでもあるが、それを全部やるとなるとどれくらいの時間がかかるか分からない。
対桐青ということを考えるとそこまでの時間にやれることをやるしかない。
ではなにをやるかということである。
そこで生きるのがデータである。
データを分析して、もっとも頻繁に出現するもの特徴的なものを見出しそれに対して確実に対応するということである。
そういう最も効率的なことを行なうためにもデータは重要である。
そして、そのデータを分析しそれを活用できる能力のある者がまた必要である。
データがあってもそれを有効に活用できなくては何の意味もないのである。
一応、この3つを掲げたが、もうひとつのびっくりする要因は、この試合のラッキーボーイともいえる三橋であった。
たまたまなのかどうかは分からないが、この試合で野球人生最高といえるほどのピッチングをした。
阿部の要求するとこに寸分の狂いもないコントロールはもちろん球に気持ちが乗っていて切れがあった。
それが桐青の打者が三振したひとつの要因だろう。
こういう気持ちがなぜ起こったのかはよく分からないが、わたしが思うに榛名元希(はるなもとき)の存在があると思われる。
春の大会で偶然榛名を見て、阿部と榛名の関係を阿部から聞いて、阿部の根っこに榛名がいると知って、阿部の気持ちを確実に自分の方に向けようとしての快投だと思われる。
あの時、三橋は誓ったのだ。
「阿部君には俺が投げる」と。
あそらくこの試合でそれを証明したいという気持ちが無意識的にあったと思われる。
しかし、それも7回までで限界であった。
まったく握力がなくなり投げることができないような状態だった。
ところが、三橋のいとこの三橋瑠里(みはしるり)が掟破りの選手のロッカールームまで侵入してきて、叶修悟(かのうしゅうご)が投げたことを聞いたら、再び力が湧いてきた(エネルギーの充填)。
これは瑠里の大ヒットというよりホームランといっていいくらいの殊勲打であるが、こういうこともあるもんだなと思う。
この奇跡はいまのとこわたしにはよく分からない。
それは三橋と叶の関係がまだよく分からないからです。
阿部が自分の価値を見出してくれた恩人だからその恩人の為に投げようという起動原理(モチベーション)よりも叶が投げて勝ったという起動原理(モチベーション)の方が強いということである。
確かに、阿部との付き合いはまだ4ヶ月ほどであるが叶との付き合いは数年になるだろうから期間からいったら叶の方が断然上だが。
とはいっても、起動原理(モチベーション)は年数に比例するものではないだろう。
ここらへんは、おそらく三橋が最も負けたくない相手が叶なのだろう。
阿部の最も負けたくない相手が榛名のように。
中学の時も、マウンドを譲らなかったひとつの要素に叶に負けたくないというのもあったのかもしれない。
一度でも叶にマウンドを譲れば負けてしまうということで。
だから、叶が投げて勝ったので、自分も負けたくないということで力が蘇ってきたのかもしれない。
ここらへんは、阿部が9回に先頭打者になって絶対に出塁してこの試合を勝つと気合を入れたのは、三橋に勝たせてやりたいというのもあるが、やはり榛名はシードということもあって初戦を突破するということがほぼ確実なので絶対この試合を勝ち取るということなのだろう。
勝てる試合を負けたらまた榛名との差が出来てしまう、というのが大いなる起動原理(モチベーション)であろう。
この快投の方はそれなりに説明も付くが、打撃の方がまったく奇跡というしかない。
正に、ラッキーボーイという神がかりとしか思えない。
最初の2点は三橋がもたらしたといっても的外れではないだろう。
しかも田島にチャンスが巡って来ている時に、その田島が打ち取られているだけにこの三橋のラッキーな活躍がなかったらこの試合の展開も大いに変わっていたかもしれない。
最初の打席では、花井が2塁にいる時に打席に立ち、ともかくバットを振ったらそれが打ち損じのぼてぼてのゴロになるのであるが、転がったとこが良くて、花井は3塁に行き三橋も1塁ベースを踏んだ後に勢いあまって転んでしまうがセーフとなり、ランナー1・3塁となる。
そして、この後三橋のリードが大きくて1・2塁間に挟まれるのであるが、必死に逃げ惑っている間に花井がホームを踏んで待望の先取点が入るのである。
これをラッキーといわず何をラッキーというかというくらのプレーである。
しかも三橋の打撃ではこれだけに止(とど)まらず、2回目の先頭の打席ではストレートを2球ファールしたせいで高瀬が仕留めようと決め球のフォークを投げるが指のひっかかりが悪く、臀部に当たってしまい、死球(デットボール)として1塁に出るのである。
そして、田島の合図で2盗し、阿部のバントヒットで1・3塁となり、百枝と桐青の監督の読み合いからの栄口の横っ飛びのスクイズバントで2点目のホームすら踏むのである。
どちらも痛い思いをしての2点であった。
とはいっても本当に痛かったのは2点を取られた桐青であったのだが。
この2点がなければ、桐青が勝っていただろう、とすら思えるのだが。
それにしても、こういう三橋のプレーで一体阿部は何回青ざめたことか。
ちょっと見てみると
1.2回表に三橋がぼてぼてのゴロで1塁に駆け込んで2転3転と転んだ時
2.4回裏に三橋がマウンドから引き上げ中に、よろけて河合に支えてもらった時
3.5回表に三橋が高瀬から臀部に死球(デッドボール)くらった時
4 5回裏にマウンドから引き上げ中に鼻血を出して仰向けになって休んでいる時
ということになる。
鼻血を出した時などは、この夏は終わったとすら思ったわけだから。
こういうのを見ると、阿部ってけっこう苦労性かもしれませんね(笑)
もしかしたら三橋は普段阿部にいじめられているからその仕返しに阿部をいじめていたりして(笑)
それでも、三橋の握力がなくなってからは阿部も三橋が限界を超えて投げているということで、ひたすら三橋を鼓舞することに切り替えたということになったのだが。
そういうことで、三橋は不思議な子、神の子かもしれないな(笑)
その性格と同じく体格もふにゃふにゃしていてとらえどころのない柔らかさを持っているのかもしれない、ぞ(笑)
対して、桐青のデータやメンタルや練習はどうかというと、
データは、打者一巡してからは西浦のデータも少しずつ入ってくることになるが、そのデータも体系的ではないので、データ戦争では最後まで西浦の優位は動かなかったといえる。
メンタルは、西浦に1点取られたということで高瀬が緊張から解放されて本来のピッチングをするようになり、また西浦がこちらを知っているということで、あなどれない相手だと悟り勝って当たり前という気はなくなり、五分五分というところでしょう。
練習は、明らかに桐青の方が上といっていいでしょう。
しかし、その練習の成果を西浦のデータがない故に効率的に発揮出来なかったということで、これまた五分五分ということでしょう。
そういうことで5回以降は五分五分の戦いになったが故に、西浦のデータ野球とラッキーボーイの三橋で手に入れた2点が最後まで効いたといえそうです。
当然、桐青も西浦のデータを手に入れていたら、初回から対西浦の試合をしていたので桐青が勝っていただろう。
そういうことでは、栄口がこの後10回やったら10回ともぼろ負けすると思うのも頷(うなず)けるだろう。
しかし、現実的には西浦のデータは手に入れることは出来なかったといえるでしょう。
なんたって西浦はこの桐青戦が公式初戦なのだから。
練習試合を見てのデータなどは、お互いいろいろ試しでやっているのでそれがどれくらい参考になるのかは定かではないといえる。
プロ野球のオープン戦での結果か公式戦で違ってきたりするのでもそれは分かるといえます。
そういうことで、どんなにしても桐青が西浦のデータを手に入れるのは直接対戦してしかなかったといえる。
だから、この試合は西浦が桐青のデータを分析して傾向と対策をしっかり見極めて練習し、実戦でもその練習の成果を見事に生かしての勝利といっていいと思います。
もちろん、三橋のラッキーボーイ的なことのような勝負の大きな綾があったことも確かですが。。
ところで、応援であれっと思ったことがあったのだが、浜田の応援では田島にしても三橋にしても性の方を呼ぶのであるが、9回の阿部の時は、「隆也」と名の方で呼んで応援していることです。
これはどういうことなのか。
浜田が練習に参加して、三橋と阿部のバッテリーを見ていて、三橋がその力を出せているのが阿部のリードによるものが大きいということで、阿部に親近感というか感謝のようなものを感じているのだろうか。
どう見ても、阿部は名で呼ばれるほどのアイドル性はないと思うのだが。
かなりびっくりです。
その阿部だが現状の野球センスとしては、並の上くらいといっていいだろう。
捕手の肩も三橋の球が遅いということを考慮しても、ランナーを刺した場面がないということで特に強肩ということではなく普通なのだろう。
打者としてもホームランを打てるような強打者でもなくまたどんな球でも打てる好打者でもないだろう。
また、走者としても時に足が速く塁に出たら盗塁が出来るということではないだろうから普通なのだろう。
シニア時代にもクリーンナップを打っていたというような記述もないので、打力も普通なのだろう。
キャッチングも榛名の速球を取るのに半年もかかったり、三橋がコントロールがいいということで油断があったとしても三橋の緩い球の暴投(ワイルドピッチ)を取れなかったということで、ものすごく上手いということではないだろう。
キャッチングといえば今年(2018年)のセンバツを見ていて、キャッチャーが打者の背中を通る球をキャッチングしていたのには感心しました。
背中を通る球ということになると、球が打者の影に入って一瞬見えなくなるのにそれをキャッチングするということは、ピッチャーが投げた時点で球がどういう軌道を描くか分かっているということになる。
ここらへんは、このピッチャーはそういう球を投げるということが分かっているから捕れるのか、あるいはそういう球を要求したのか、ともかくよく捕れるなと思ってしまいました。
ということで、阿部は特に秀でたものがないといえよう。
だから、百枝が阿部を中学時代共に4番を打っていた田島(好打者)と花井(強打者)の次ぎと言ったのは野球センスということでは当たっているということだろう。
例えば肩でもおそらく田島や花井の方が強肩だろう。
だが、逆にいうと阿部はすべてそれなりのものを持っているともいえよう。
普通に野球をやる分には特に穴のある選手ではないということになる。
しかし、これだけではあまり目立たない地味な選手ということになるだろう。
例えば、そんな選手がこの西浦で3番を打っている巣山尚治(すやましょうじ)であろう。
では、なぜ百枝は阿部に特別な期待をしているのだろうか。
それは阿部がこの年代の者にはないといっていいほどのメンタルの強さを持っているからであろう。
そのメンタルの強さは確固たる勝ちの理論に支えているから崩れるということはない。
阿部には負けるという思想がないといっていいだろう。
どんな相手に対しても勝ちしかないといっていいだろう。
それはつまり、どんな相手でも弱点のない相手はいないということである。
弱点をつけば勝てるということである。
そのためには自分は常に100%の力を出して、相手には100%の力を出させないということである。
相手が自分より上回っていても、相手を最低でも自分の100%の力まで引き摺(ず)り下ろす、あわよくば自分以下の力に落す。
相手に100%の力を出させないようにするのは、どうするかというと相手の嫌がることをとことんして相手のやる気をどんどん奪うことである。
相手を落ち込ますことである。
これはめちゃくちゃずる賢く性格が悪いとできないことです(笑)
阿部は誰しもが知っているようにずる賢く性格が悪いです(笑)
これは弱い者が強い者に勝つための秘策です。
これをすれば弱い者が強い者に勝ちます。
弱い者が強い者に勝つには頭を使わなければ勝てません。
そのためには、弱い者は常に100%の力を出せるようにしておかなければなりません。
この弱い者が常に100%の力を出すということは勝つための必要条件です。
そして強い者に100%の力を出させないというのは勝つための十分条件となります。
この必要十分条件が整えば勝ちにつながります。
これの反対が「獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす」ということで、たとえ強い者であっても常に100%の力を出さなければ足元をすくわれるということでしょう。
とはいってもここでの100%とは常に相手よりも上回った力で臨めということでしょうが。
この弱い者が100%の力を出すということでは、阿部はともかく走攻守それなりに揃っているので十分自分をコントロールできます。
そこらへんが、三橋が死球で出て盗塁して2塁にいる時、百枝からバントのサインが出て、バントするのであるが、ここでも状況を見てへこみのとこにバントするのである。
しかも、バントの構えからバスターに代えそこからバントをするのである。
バンドの構えのままだと、投手と1塁手がダッシュしてくるが、バスターにすると両者ともそこで止まってしまう。
つまりそれだけバント処理が遅れるということになって、阿部は1塁に生き無死1・3塁となるのである。
阿部は走攻守が特に優れてもいないが劣ってもいないので、こうやって臨機応変に常に自分の力を状況に応じて出せるのである。
しかし、野球は1人でやるものではない。
いくら阿部のメンタルが強くても勝つ理論があってもそれだけでは勝てない。
チームが常に100%の力は発揮しなければならない。
しかし、この西浦には、百枝と志賀という類希(たぐいまれ)な指導者がいるのである。
百枝の人心掌握術と志賀のメンタルトレーニングによって、このチームは常に自分の今持っている100%の力を出せる方向性を持っているのである。
それが栄口がはずされた球をスクイズしたことででも分かるということである。
こういうのは自分の力を100%出せるから出来ることである。緊張していたらとても出来ないであろう。
その百枝の人心掌握術のスキンシップもよくよく注意して見れば、田島にも手をつかんで話をしているんだ。
ただし、捕手を指名した後、田島に専用ミットを与えてミット越しにわしづかみにしてではあるが。
思えば花井にも手をつかむのが花井ではなく夏みかんなのだがその潰して出来たジュースを飲ませている訳だ。
もっといえば、三橋にはけつバットの一撃で統制下に置いた(笑)
阿部には優しく、浜田には硬軟で、田島と花井と三橋にはある意味怖さでというところか。
主要な人物にはすべて何らかのアクションをしているということか。
しかし、この阿部に比べて三橋は投げることしか知らないといってもいい。
勝ち方も自分のこともあまり知らないといえる。
だから、阿部は三橋にこの100%の力を常に出させるために姑のように三橋にあれこれいって見張っているということです。
三橋が常に100%の力を出せるように自分をコントロールできれば阿部も口うるさくいわなくてもいいのだが。
さて、そんな阿部が選手としてどのポジションにいればいいかということである。
野球は相手に1点も与えなければ負けることはない。
そういうことでは投手ということになる。
しかし、三橋みたいに投手中毒でもなければ全試合に投げることは不可能だろうし、投げても全試合100%の投球をすることはこれこそ不可能だろう。
ということは、投手と同じような事をして、相手に1点も与えなく全試合に出場して常に100%の力を出すということでは捕手以外にないだろう。
そういうことでも捕手は守りの扇の要(おうぎのかなめ)といえるだろう。
では、相手に1点も与えないためにはどうすればいいか。
面白いことに、ストライクゾーンというのは、ここに球が来たら打者が打てるという領域である。
思えば、打者が打てるという領域に球を投げて、打者を打ち取らなければならないということでは、投手というのはほんと大変なポジションである。
だから野球の勝敗というのは投手の出来次第で70%決まるというのもある程度道理だろう。
そんなストライクゾーンに打ってくださいと球を投げて打者を打ち取るには4つほどの方法があるだろう。
1.ボール球
2.広角
3.速球
4.外し
ボール球とは、ストライクゾーンでない球を振らせる(打たせる)ということである。
ストライクゾーンから外れた球を打ってもそれがヒットになる確率はストライクゾーンの球を打つよりずっと低いであろう。
とはいってもボール球を振る打者なんてのは、そんなのは単なるへたくそだからそんな打者はほとんどいないだろう。
ここでボール球を振らせるとは、ストライクからボールになる球とボールからストライクになる球を放るということである。
いわゆる、変化球である。
ストライクだと思ってもボールが左右や上下(といっても上にはいかないだろうが)に逃げれば、バットの芯には当たらないので空振りなり凡打になるだろう。
ボールからストライクになる球は、打者はボールだと思っているので打つ体勢にはなく手元でストライクになって慌てて振ってもこれまたバットの芯には当たらず空振りなり凡打になるだろう。
広角とは、ストライクゾーンといってもピンポイントではなく結構広いので隅から隅まで使えば、これまたバットの芯には当たらないだろう。
インハイに投げてそれを意識した打者がアウトローに投げられたらおそらくまともには手が出ないだろう。
ここまで極端でなくても外を意識していたら内は打てないだろう。
ここらへんのことは三星学園の織田裕行(おだひろゆき)が言っていたであろう。
速球とは、文字通り速い球である。
速ければ、あっという間に球が通り過ぎたということになり、ストライクかボールかも判断できないだろう。
速い球は原則、球を見ることが出来ないので1・2・3などの決めたタイミングで打つしかないだろう。
とはいってもいくら速い球でも、その球だけならばそれなりに慣れれば、投手のモーションからのタイミングで打つことができるということになる。
だから、打者を確実に打ち取るためには、速球というのは緩急と言った方がいいかもしれない。
150キロの球でも緩急を付ければ、160キロになるということである。
遅い球のあとの速い球は、感覚的には物理的な速さ以上になるだろう。
当然、速い球に的を絞っていて、遅い球がくればタイミングが確実にずれるだろう。
外しとは、上記の3つから打者は球がストライクゾーンに来ても必ずしも打てる(ヒットになる)とは限らないので、この球なら打てるということで、打つ球を決めて打つということが多い。
そこで、その打者が打つのを決めた球を外すような球を投げると打者は打てないということになる。
田島がシンカーを2球続けられて、次のシンカーを見極めようとしていたら、ストレートが来て見逃しの三振に終わったのはそのいい例である。
これはまた、相手の弱点を突くということにもつながる。
大雑把にいって、ボール球は変化球、広角はコントロール、速球はストレート、外しは配球といえるだろう。
この四つがあれば、ほとんどの打者を抑えることが出来るであろう。
最初の3つ(変化球とコントロールとストレート)は投手に関わり、最後の一つ(配球)は捕手に関わるといっていいだろう。
もちろん、投手が全部やってもいいけどそれでは負担があまりにも大きすぎるだろう。
基本的には投手は投げることに専念すべきだろう。
配球によって、野手の守る位置も変わってくるからである。
逆にシフトをしいたらその方向に打球が飛ぶように配球しなければならない。
そういうことを考えたら配球は捕手が行うのが妥当だろう。
捕手は投手を含めて野手全員を見れるのだから。扇の要。
そこで、阿部の関わった投手の榛名と三橋を見てみると、榛名はストレート、三橋は変化球とコントロールということになり、一長一短といえる。
榛名と三橋が合体したら一流の投手ということになる。
まぁ、合体は出来ないので、一流の投手になるためには三橋はストレートを榛名は変化球とコントロールをということになる。
どっちが先にこの課題をクリアできるだろうか。
というようなことでストライクゾーンに球を投げても打者を打ち取れるということになる。
三橋はその絶妙のコントロールと多様な変化球で「ボール球」と「広角」の2つを満たしており、また阿部自身は外す配球ができるので三橋で完封できるといっているのだろう。
そういうことで、三橋は榛名に対抗できる投手ということなのだろう。
榛名が勝ち上がれるレベルなら三橋で勝ち上がれるということなのだろう。
それにしても三橋のコントロールは絶妙である。
左右(横)の変化は、ホームベースが固定なので、ある程度コントロールできるのは分かるが、上下(縦)の変化は打者の身長によって変るので、それに合わせてコントロールしなければいけないので、かなり難しいといえる。
まぁ、ここらへんで三星学園時代の三橋は打たれていたのかもしれない。
今の三橋はともかく阿倍の構えたとこにどんな球でもきっちり投げるということで、打者云々ではないということなのだろう。
阿部の構えたとこなら速球以外のどんな球(ストレートでも変化球でも)でも投げれるということなのだろう。
そういうことで、個々の打者への配球(ストライクゾーンの見極め)は阿部がしているということなのだろう。
阿部としては、この配球をすれば迷わせたり考えさせたりして打者のやる気を減退させることができるというのが分かっているので、そこに投げてくれる三橋は宝物だろう。
自分の思った通りの勝つ野球ができるということ。
ともかく、阿部は性格が悪いので(笑)、相手を出し抜いたり裏をかいたりする事が大好きだといえます。
こういうのは好きでないと相手を落し込めるアイデアが次から次へとは出てこないです。
こういう性格の悪い奴はそんなにいないので、普通は強い奴が勝つといえます(笑)
まぁ、そういうこともあって、阿部はやる気をなくさせることは得意でもやる気を出させることはあまり得意ではなかったということなのだろう。
そこらへんが、榛名も三橋もあまりうまくコントロール出来なく、百枝に阿部は捕手を分かってないとかいわれたりしたんだろう。
とはいっても、今の三橋の110キロくらいの球速では百枝がいうようにいずれ限界があるだろう。
やはり、全国区(甲子園)で戦うには、130キロ台は欲しいところだろう。
130キロ台の速球があって、100キロ前後の変化球がきたら、速球は140キロ台に見える場合もあるだろう。
あと、ここまでで思うには阿部にはほとんど無い物強請り(ないものねだり)がないっていうこと。
自分の打撃でも肩でも捕球でも走塁でももっと自分に力があったらよかったのにというようなこと。
特に打撃では自分がホームランを打てるようならもっと点を入れられるのにとかいうこと。
こういうのは阿部にはほとんどマイナス思考がないからなのか。
現状の力で100%を出そうということに集中しているのか。
だから、三橋に対しても特に速球を要求しない。
通常は速い球が基本である。
百枝がいうように、いくらコントロールが良くて変化球があっても速い球がなければいずれ限界がくる。
コントロールも変化球も速いストレートがあるからこそ生きるということである。
だから、百枝は三橋に速い球というないものねだりをする。
でも、阿部は今のままでいいと言う。
ないものねだりは下手すればマイナス思考であるが、良く言えば欲である。
欲があるから向上するともいえよう。
もっと高みに昇りたいということである。
こういうないものねだりは、西浦ナインにもあまりない。
ここらへんはメンタルトレーニングによって、今出来ることをしようということで、マイナス思考にもなるないものねだりをしないということなのか。
それよりは今目の前にあるやるべきことで手一杯ということなのだろう。
まだ、一人一人が自分の長所や短所をしっかり自覚してそれを課題にするまでにはいたっていないということなのだろう。
この西浦ナインでも花井だけはないものねだりをしているといっていいだろう。
田島のようにどんな球でも打ちたいというないものねだり。
それ故、時々マイナス思考になるが、その田島に近づくための努力は惜しまないだろう。
阿部のないものねだりがないのは、そういう課題をしっかり持っているということなのか。
影で秘かに努力しているのか。
それとも阿部にとっては宇宙人の三橋相手で手一杯というとこなのか(笑)
補足:第2期 「
おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」
これで、「
おおきく振りかぶって 」アニメ版は終了となります。
しかし、初戦(2回戦)で前年優勝校でシードの桐青高校に勝ったということで、西浦高校の夏はまだ続きます。
それが、アニメ版では「
おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」としてこの夏の大会が描かれています。
ということで、この「
おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」も続けてこのブログに書きたいと思います。
なお、最初の「おおきく振りかぶって」全25話はアニメ版第1期、「おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」全14話はアニメ版第2期として表記する場合もあります。
また、「おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」は放送分は全13話ということらしいのですが、特別編の1話は、第1期の特別編と比べても唐突な感じはなく話の流れに沿ったものなので、わたしは全14話としました。
おそらくそういうこともあって、特別編は12.5話という風になっているのだと思います。(*1)
(*1)
おおきく振りかぶって COMPLETE Blu-ray Disc BOX;
http://www.oofuri.com/ また、原作の漫画の方は、3月23日(金)に第29巻が発行(発売)されました。
当日に買って(キンドル版)、一気に読んでしまいました。
ほんと、引き込まれてしまいます。
これで、原作は現在までの全29巻を手に入れました。
おおきく振りかぶっての
HPは
http://www.oofuri.com/1st/ 放送のHPは
http://www.tbs.co.jp/anime/oofuri/1st/ ウィキペディアは
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6 おおきく振りかぶっての登場人物;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9 です。
YouTube(
https://www.youtube.com/ )から
Ookiku Furikabutte (TV 2007) Opening 1 【OP1】 『Dramatic』 by Base Ball Bear - YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=3_545HwqH8A )
VIDEO Ookiku Furikabutte 1 - YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=xWfKZgTsBeA )
VIDEO Ookiku Furikabutte Ending 1 [Sub Español] - YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=flY3bTuEWoI )
Ookiku Furikabutte - Ending 2 (Thai Sub) - YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=1mQLUXRlqk8 )
ウィキペディア(
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8 )から
タッチアップ(タッグアップ);
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97 ネクストバッターズサークル;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AB 少年野球;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E9%87%8E%E7%90%83 リトルシニア;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2 ボーイズリーグ;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0 リトルリーグ;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0 桜咲く
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