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おおきく振りかぶって 夏の大会編 アニメ 第1話~第13話(全14話)

おおきく振りかぶって 夏の大会編」はアニメ版の第2期であり、その全14話(第1話~第13話)について書きます。

夏の大会2回戦で強豪の桐青に勝ち大番狂わせを演じた西浦は、その後の3回戦、4回戦を勝ちベスト8(準々決勝)をかけて、美丞大狭山と対戦します。
しかし、美丞大狭山の西浦に対する傾向と対策や捕手の阿部隆也の負傷退場などもあって6対11で負け西浦の夏の大会は終わります。

なお、2020年8月13日現在、「おおきく振りかぶって」のアニメ版の第1期が、GYAO!で期間限定だが無料にて見れます。
 おおきく振りかぶってhttps://gyao.yahoo.co.jp/p/00908/v14289/
順次、配信されるようです。


☆あらすじ

美丞大狭山(びじょうだいさやま)のコーチである仲沢呂佳(なかざわろか)は、西浦に敗れた桐青(とうせい)の後輩にあたる前主将の河合和己(かわいかずき)から西浦の情報を収集するために、ファミレスで食事をおごる。
河合和己は、投手の三橋廉(みはしれん)は球は遅いが曲球(くせだま)がありかつコンロトールが絶妙で、田島悠一郎(たじまゆういちろう)は投手の癖を盗むくらいの野球センスの持ち主であり、捕手の阿部隆也(あべたかや)は細かいサインを出して組み立て、監督の百枝まりあ(ももえまりあ)は選手を良く掌握し豊富なサインで選手を動かし、打撃が良くて桐青を打ち込んできたと言う。
仲沢呂佳は最後に河合和己にもう一度西浦と戦うならばどこ攻めるかと聞くと、河合和己は呂佳さんと同じ考えだと言う。
西浦ナインは、3回戦の相手となる岩槻西-崎玉戦を偵察に行く。そこで、監督の百枝まりあは桐青戦で手首を負傷した田島悠一郎を1番にする新オーダーを発表する。(第1話 次は?)

岩槻西-崎玉戦は、延長10回に崎玉(さきたま)の1年生の捕手で5番の佐倉大地(さくらだいち)が場外サヨナラホームランを打って、崎玉が8-7で勝ち、西浦の3回戦の相手となる。
この試合を見て阿部隆也は、怖いのは佐倉大地だけなので、次の3回戦は三橋廉を休ませるということでコールドゲームを提案する。
その為には相手に点をやらないように、一発のある佐倉大地を基本的に敬遠で歩かせることによって相手の士気をそぐことにする。(第2話 崎玉)

崎玉との3回戦が始まり、西浦は1回表を3者凡退で退けるとその裏で2点を入れコールドに向けて幸先良いスタートを切る。
2回の表の崎玉の5番の佐倉大地を走者なしで敬遠するとヤジが飛ぶが、阿部隆也は目論見通りとほくそ笑む。三橋廉もヤジには耐性があり気にしない。(第3話 3回戦)

西浦は2回裏と3回裏にも1点を入れ優位に試合を進める。この展開に崎玉は焦りを覚え動揺を見せるがなんとか最小失点で切り抜ける。
しかし、崎玉の攻撃は4回表のランナー1塁・2塁でも佐倉大地が敬遠されて点を入れることが出来ない。
その4回裏にも西浦は2点を入れどんどんコールドに近づいていく。(第4話 野球シンドイ)

4回裏の西浦は2点取った後も、ランナー2塁で4番の花井梓(はないあずさ)だったので得点追加のチャンスであったがその花井梓は4番の重圧で三振に終わってしまう。
5回は両軍とも0点で、6回の裏にランナー1塁・3塁で再び花井梓に回ってき、ここで花井梓は開き直って長打(3塁を狙ってアウト)を打ち2走者を返して8点目を入れる。やっと4番らしい活躍を見せる。
6回までで8点なので7回を1点以下に抑えればコールドということで、捕手の阿部隆也は佐倉大地との勝負を試みる。佐倉大地の打球は大飛球となりホームランかと思えたがフェンス際で失速してアウトとなり、その結果、3回戦は8-0で西浦が勝つ。
この試合を美丞大狭山のコーチである仲沢呂佳が偵察に来ており、守備の要は阿部隆也とみて崩すなら捕手からとうそぶく。(第5話 野球やりたい)

投手の三橋廉は、捕手の阿部隆也がいてこそ自分がエースでいられると思っているので、阿部隆也がいつでもずっと自分の球を受けてくれるということで安心する。
阿部隆也は三橋廉と少しずつであるがコミュニケーションが取れるようになったのでこちらも安心する。
4回戦は美丞大狭山の戦いを偵察した後に港南と戦うことになる。また、ダンス部の志願の2人のチアガールも初デビューとなる。(第6話 大事)

西浦は港南に6-3で勝ち5回戦(ベスト16)に進出する。
この試合を美丞大狭山が偵察に来ており、監督の滝井朋也(たきいともや)とコーチの仲沢呂佳(なかざわろか)は阿部隆也が要であり阿部隆也のリードのパターンを読めれば勝てると踏む。
阿部隆也は父親に三橋廉との関係を問われ、友だちがいないだろうといわれ思わずキレる。
また、ベスト16になったことで、埼京スポーツの取材を受ける。
そして、美丞大狭山との5回戦の日が来る。三橋廉は阿部隆也を信頼して阿部隆也の言う通りに投げると言う。(第7話 ゆるやかな変化)

美丞大狭山は西浦の傾向と対策をばっちりやっているので、1回表では阿部隆也の配球パターンを読み4番の和田誠(わだまこと)の2ランなどで3点を先取する。西浦も1回裏で手首の治った4番の田島悠一郎がシフトを抜いてヒットを打つも外野からの好返球で泉孝介(いずみこうすけ)がホームアウトとなり無得点に終わる。
配球を読まれているバッテリーは2回表でも1点を失う。ここで三橋廉が美丞大狭山の各打者が逆コースを打っていることに気づき、そのことを阿部隆也や監督の百枝まりあにおどおどしながら告げる。
そのことから、百枝まりあは美丞大狭山が自分たちをばっちり研究してその傾向と対策をしていることに気づき各自にその場の判断で対応するように通達する。
阿部隆也は相手を攪乱(かくらん)するために三橋廉が首を振るサインを出すことにする。(第8話 5回戦)

西浦は相手の手の内が分かれば対処のしようもあるということで、秘かに配球を変え3回と4回の表を無失点に抑えると、3回と4回の裏で1点ずつ返して2-4とするが、5回の表には配球を変えたのを気づかれ2連打と犠牲フライで1点を取られるがその後は首ふりサインなどでなんとか抑える。
スタンドで見ている美丞大狭山のコーチの仲沢呂佳のところに桐青の河合和己がきて、一緒に観戦する。そこで河合和己は捕手の倉田岳史(くらたたけし)が時々仲沢呂佳の方を見ているのに気づき少なからず疑念を抱く。(第9話 研究されてる)

西浦は5回裏に美丞大狭山の投手が竹之内善斗(たけのうちよしと)から鹿島匠(かしまたくみ)に代わったので、その立ち上がりを攻め2点を取り、4-5と追い上げる。
6回は両軍とも無失点で、運命の7回表となる。
この回先頭の8番の倉田岳史はラフプレーで怪我させた選手のことを思いこの試合が終わったら野球を辞める覚悟で打席に立ち、2塁打を放つ。川島公(かわしまこう)のセーフティバンドで1塁・3塁となり、石川哲郎(いしかわてつろう)のスクイズで倉田岳史がホームに突っ込むと、1塁の沖一利(おきかずとし)からの送球がやや逸れ、阿部隆也は倉田岳史の左腕を踏みそうになったので不本意に体を捻り左膝を捻挫してしまう。倉田岳史は左腕に軽い負傷を負うもホームを踏み1点を追加する。
阿部隆也は出場を願望するも交代となり、田島悠一郎が捕手、西広辰太郎(にしひろしんたろう)がレフト、水谷文貴(みずたにふみき)が三塁の新布陣で臨むこととなった。(第10話 5回裏、2対5)

三橋廉と田島悠一郎は一度も試合で組んだことがないバッテリーなので、ストライク・ボールのサインは監督の百枝まりあが出すことにする。急造バッテリーであったがこの回(7回表)は最少失点の1点で抑える。
ただ、田島悠一郎は配球パターンを覚えるのに四苦八苦しており、7回裏のチャンスでは打撃に集中できず三振に終わってしまう。
それでも、8回表は倉田岳史が1塁ベース前でラフプレーを怖れて立ち往生したため無失点で切り抜け、8回裏には1点を返し5-7として逆転に望みをつなぐ。(第11話 エースだから)

9回表は百枝まりあのサインが盗まれたこともあって、4番の和田誠にこの試合2本目のホームランである3ランなどで駄目押しの4点を取られる。
9回裏では投手が竹之内善斗に代わり田島悠一郎の2塁打で1点を返すも、途中出場の西広辰太郎が3球三振に倒れ6-11でゲームセットとなる。
ナインは悔し涙にくれるが、百枝まりあは次の新人戦や秋季大会を見据えて早速練習することを告げる。
阿部隆也と三橋廉はバッテリーを外れたことで、お互いの関係がいびつであったことに気づく。(第12話 9回)

桐青の河合和己は倉田岳史と仲沢呂佳が試合中に何らかのコンタクトを取っていたのではないかと疑い、それとなく倉田岳史にアンフェアプレーはしない方がいいと言う。
その倉田岳史は病院で仲沢呂佳に自分はもう試合には出たくないと言い、そしてラフプレーで相手を怪我させるようなことは二度としないで欲しいと懇願する。
花井梓と田島悠一郎は、埼京スポーツからインタビューを受けたことをきっかけにチームの目標を設定することを考える。
そして、みんなの意見を聞くとバラバラであった。
阿部隆也の膝の怪我は2度なので少なくとも2週間、試合に支障なく出られるには1か月半くらいかかることとなった。(第12.5話 目標)

チームとしての目標は田島悠一郎と三橋廉が全国制覇で後の者は甲子園出場以上だった。
そこで、統一するために、明日改めて目標を話し合うこととなった。
三橋廉が阿部隆也から話し合いたいとのメールをもらっていたのを見て、マネージャーの篠岡千代(しのおかちよ)は三橋廉に阿部隆也のお見舞いに行くことを提案する。
そうすると、栄口勇人(さかえぐちゆうと)と田島悠一郎も一緒に行くとのことなので三橋廉は安心する。
阿部家に着くと、阿部隆也の弟のボーイズの阿部旬(あべしゅん)が田島悠一郎が来たので大喜びしてバッティングを教えてもらう。
田島悠一郎は阿部隆也の怪我の状態を聞いて、自分が新人戦も秋大も捕手をするからしっかりと直せと言うと阿部隆也もその意見に従う。
阿部隆也は三橋廉からチームの目標の話を聞いて、田島悠一郎や三橋廉や百枝まりあが全国制覇を目指すなら自分も全国制覇を目指すと言う。
阿部隆也と三橋廉は、お互いが相手を尊重して共に戦うことを誓う。
こうして、ナインはまた新たな戦いに臨む。(第13話 また始まる)


☆所感

桐青戦で見せた阿部隆也(あべたかや)の緻密なデータに基づく配球などの戦術は健在で、3回戦の崎玉戦では5番の佐倉大地(さくらだいち)以外は十分抑えられると見るや、佐倉大地を敬遠して埼玉打線を封じ込めると打線も呼応して8-0の7回コールドで勝利します。
4回戦の港南も無難に6-3で勝ちます。
このまま阿部隆也の配球と三橋廉のコントロールで快進撃が続くかと思われたが、好事魔多しということで、5回戦の美丞大狭山でつまずきます。

美丞大狭山にも阿部隆也と同じようにデータ野球を行う者がいて、阿部隆也の配球パターンを読まれて打ち込まれてしまいます。
普通に考えれば、どこかで相手も阿部隆也がやったように、データを集めて傾向と対策を行ってくることは十分考えられることであるが、阿部隆也は自分の戦術に自信があって驕(おご)っていたのかあるいは単に経験が不足していたのか分からないが、どうも相手が研究してくるということを想定していなかったようで、パニックに陥ります。
そのパニックを救ったのは皮肉にも直観派の三橋廉(みはしれん)でした。
三橋廉が阿部隆也の配球パターンが相手に読まれていることを告げたのでした。

阿部隆也のような論理派は、自分の論理通り進むととても効果的に進めることが出来るが、どこかでその論理の枠から外れた想定外のことが起こると、弱いといえます。
起こりえないことが起こったということで、すべての論理が破綻してしまうのです。
それは、先の崎玉戦でも分かるように、その時だけを考えているのではなく、県大優勝すなわち甲子園出場から逆算してこの試合をどういう戦いにするかということを考えているのです。だからひとつの試合でも勝ちから逆算してこの打者にはどういう攻めをするかということを考えているのです。
それがどこかで崩れると、そこから先のすべてが狂ってくるので、再構築しなければなりません。
それを再構築するには時間がかかります。

だから、阿部隆也が相手が自分たちを研究しているのが分かって五分五分だと思っても、五分五分ではなくて4:6くらいで不利になっているのです。
理想的には何通りかのパターンをあらかじめ想定しておけば、再構築する必要はないので五分五分あるいは6:4くらいにはなるでしょうが、それは野球のようなチーム戦ではかなり難しいでしょう。
美丞大狭山の監督の滝井朋也(たきいともや)がいうように一人が考えることなどたかが知れているということでしょう。
そういうことでは、三橋廉が阿部隆也の操り人形でなかったら少なくとも考えが2つ否、考え方が違えば3つ4つとなるでしょう。
同じ考えの人間だけだと、うまく行っている時は良いが、想定外のことが起こると見えるものが全部同じになって全く対処できなくなるということです。
どこかの国のお友達内閣がコロナ禍でこの状態に陥っているといえそうです。
普段、異分子というのはやっかいだが、想定外が起こった時にはその異分子がそれこそ想定外の働きをすることもあるでしょう。
この試合での三橋廉の直観などはそれに相当するといっていいでしょう。

そんなことで、動揺したままでプレーしている阿部隆也に魔が7回表に忍び寄ってきます。
ホーム上での倉田岳史(くらたたけし)とのクロスプレーで左膝を捻挫してしまいます。
この怪我などは、動揺がなければ起こらなかったでしょう。
しっかりとした論理のないなかで迷いながらプレーしているので、集中力が落ちていたということです。だから走者の進行方向に立っていたのでしょう。
起こるべくして起こった怪我といってもあながち間違いとはいえないでしょう。

ということで、この敗戦で阿部隆也にも三橋廉にもナインにも新たなことが見えたということです。
野村克也さんの「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」ということです。
負けたことからは多くのことが学べます。なぜって、負けにはちゃんとした理由があるからです。

とはいっても、頭で分かっていても人間には感情があるから、「はい、分かりました、そうします」って口でいっても心身はそう簡単にはついてこないということです。
阿部隆也の性格も三橋廉の性格も今日明日に変わるものではないので、当分主従関係は続きそうです。

っていうか、三橋廉の性格が変わったら、この「おおきく振りかぶって」は普通のスポ根物になってしまうのですが・・・(笑)

性格って家庭環境もあるし、阿部家は野球一家でみんな物怖じしなくて自分の思ったことを言い合うけど、三橋家は野球をあまり知らなくみんなおとなしくて相手に気遣いしながら接している感じです。
花井家は好奇心の塊みたいで、百枝まりあのことが気になるようです。

思っていることを言い合う阿部家だから、阿部隆也は父親に友だちがいないだろうと言われてキレてしまうが、まぁ、これは当たっているといえます。
同世代の者より考えが先に進んでいるので、あまり話が合わないということだろう。
阿部隆也がこういう野球をしたいと言っても、それを理解できる者はそんなにいないだろう。
そして、それをあえて説明しないから、ますます友だちがいないということになるのでしょう。
まぁ、とても極端にいうと、ナインは自分の野球理論を証明する駒という感じかな。

敗戦後の埼京スポーツのインタビューで、田島悠一郎(たじまそういちろう)が必死さが足りないということを言っていたが、これは現時点ではしかたないだろう。
1年生だけの1年目で部員が10人だからどちらかというと仲良しのグラブ活動という雰囲気でうわついたとこもあるといえるでしょう。
特に、桐青や美丞大狭山の選手のようにきっちりと自分の役割を自覚してプレーすることが出来ていないといえるでしょう。
こういうとこは、2年生になって後輩ができ、その後輩がライバルになるようになればおのずと身に付いてくるでしょう。
だって、現状ではレギュラーが約束されているのだから、相当に自己意識がなければ必死にはならないでしょう。
そいうこともあっての現時点での目標作りともいえるでしょう。目標を作ることにより自己意識を変革するということ。

さて、この夏の大会編での主役は、西浦ナインというより美丞大狭山のコーチの仲沢呂佳(なかざわろか)という感じもします。
ということでこの仲沢呂佳の2つほどの言動について書きたいと思います。

まず、一つ目は、桐青の元主将の河合和己(かわいかずき)をファミレスに呼んで西浦の情報を得た後、別れ際に言う「野球部なんて馬鹿ばっかじゃん」って言葉だけど、これは当たらずといえども遠からずって感じです。

スポーツや芸能の世界は、相対的に馬鹿が多いと思われます。
では、わたしの馬鹿の定義をしておきます。
わたしの定義では教養の度合いとなり、教養が少ないのが馬鹿ということなります。
教養が多ければ多いほど、他者ともコミュニケーションが取りやすく、教養が少なければ他者のいうことが分からないということになり、馬鹿といわれる所以(ゆえん)となります。

ちなみに、わたしは「知」というものを4段階に分けています。
1.無知
2.教養
3.専門
4.創造

無知とは、その名の通りそのことを知らないということです。
教養とは、自分でそのことを詳細に語ることは出来ないが、相手が語っていることは理解できるということです。
この教養が多くあれば、相手の語っていることが分かるということで、相手とのコミュニケーションがとれるということになります。
この教養がなく無知であれば、相手と通じないということになります。
専門とは、相手にそのことについて詳細に語ることが出来るということです。
創造とは、新しい知を作ることです。

ではなぜ、スポーツや芸能には相対的に馬鹿が多いと思われるかと言うと、ふたつほど理由が考えられます。

ひとつにはその者たちの出身の階級が非知識階級(貧困階級,下流階級,隷属階級)だからです。
知識階級(金持階級,上流階級,支配階級)の者たちは、社会の上流を形成する為に、ほぼスポーツや芸能を特別には行わないでしょう。
同じ能力を持った者では、その環境によってその能力の良し悪しが決まってくることが多いでしょう。
非知識階級の者は、知識階級の者に比べてどうしても知を得る機会は少ないでしょう。
その機会が少なければ、おのずとその能力に差が出てくるということで、社会の上流には進出できないということになります。
例えば、両親が読み書き出来なければ、その子が読み書き出来る機会はほとんどないだろう。反対に両親が読み書き出来れば、その子は自然と読み書きが出来るようになるだろう。
この差はとてつもなく大きいといえるでしょう。
そうなると、残る道は知識階級の者が進出しない分野で生きるということになります。
その分野がスポーツや芸能です。
だからスポーツや芸能でいくら有名になったからといっても必ずしも社会の上流を形成できないのです。

ただ、これらのことは長年に渡って国民皆義務教育が行われている国では、あまり言えないと思われます。
わたしが思う義務教育では、教養と自己発見をその大きな目的としているからです。
義務教育をそれなりにマスターしたならば、教養という点ではまず問題ないからです。

だから、最近の野球は頭を使ったID野球とかデータ野球とかがやれるようになったのです。
ほとんどの選手に最低限の教養があるから、野球に関連する他の知識も吸収できるようになったのです。

もうひとつは、「専門馬鹿」といわれることです。
たとえば、野球馬鹿とかいうことです。
これは逆に考えると、「専門賢(せんもんかしこ)」ということです。
その専門のことに関しては人並み外れて能力はあるが、それ以外はからっきしダメということで、いわゆる教養がないということになります。
この物語でいうと、田島悠一郎や三橋廉がそれに相当すると思います。
三橋廉は気弱なので置いといても、田島悠一郎なんかは野球に関して天才といわれるほどの能力があります。
ところがこの二人は野球以外はダメで勉強は赤点すれすれだし、顧問の志賀剛司(しがつよし)の講話にも全然ついていけないということで、部員からは野球以外では馬鹿と言われたりしています。

スポーツや芸能で専門馬鹿が多くなる理由としては、身体を使うものであるからそれを認識しやすいといえます。
つまり、早い時期(幼い時)にその人たちを見てあの人のようになりたいという目標を持てるということです。
この時点でもう自己発見が出来ているのです。
そうなると、そのことに集中してそれ以外のことがおろそかになるのはある意味しかたないことです。

そんなことで、仲沢呂佳の言う「野球部なんて馬鹿ばっかじゃん」というのは当たらずといえども遠からずってことです。

ふたつ目は、仲沢呂佳が勝つ為に手段を選ばないということです。
仲沢呂佳は、勝つには主力の選手を封じ込めばいいということで、ある選手に試合中に意図的にラフプレーをさせて相手に怪我を負わせて出場不能にします。
ここでは、レギュラーを与えることを餌に倉田岳史にそのラフプレーをさせます。
勝つ為に、あらゆることをするということは肯定できますが、相手に怪我をさせて出場不能にするというのは肯定できません。
人道的(道義的)に肯定できないのではなく論理的に肯定できないのです。
わたしには、仲沢呂佳が何をしたいのかよく分からないということです。
仲沢呂佳は野球をしたいのか野球という名の戦争をしたいのかということです。
仲沢呂佳が野球という名の戦争をしたいのなら相手を殲滅(せんめつ)することに何ら問題はないでしょう。
でも、どうもそういうことではないようです。
この物語では、野球をして野球で勝ちたいようです。
それなら論理的に矛盾しています。
野球という競技には相手を怪我させるという行為は含まれていません。
ところが、仲沢呂佳の論理にはどういうわけかこれが含まれているのです。
野球という競技でこれが含まれるとなると、お互い相手を怪我させて、最後には誰もいなくなるということになります。
これは野球ではなく戦争です。
仲沢呂佳のやっていることは、どう贔屓目に見ても戦争としか思えないです。
仲沢呂佳が愚かなのは、この自己矛盾に気が付いていないことです。
勝つためにあらゆることをやるという努力は認めるとしても、野球に野球以外のものを持ち込む行為は認めることは出来ません。
これは野球以外のとこで、例えば交通事故を装って怪我させて出場不能にするというようなことと同じです。


補足:アニメ版の終了

これで、アニメ版の「おおきく振りかぶって」は終了となります。
アニメ版は、
 おおきく振りかぶて 第1期 全25話+1話(DVD 全9巻)
 おおきく振りかぶって 夏の大会編 第2期 全14話(DVD 全7巻)
となっています。

よって以後、おおきく振りかぶってで記事を書く場合は、すべて漫画版(原作)に準拠するということになります。
漫画版で、このアニメ版に相当する部分は第1巻から第15巻途中までです。
すなわちこれからの記事では、ここまでも準拠するのはアニメ版ではなく第1巻から第15巻までの漫画版の方になります。

アニメ版と漫画版では、大筋では同じであっても個々の部分は当然ながら違っています。
漫画版は現在進行形なので、その話が進行している時にはその先の話は草案はあってもまだ目の前にあるものではありません。
だから、話に若干不自然なことがあったりするかも知れません。
しかし、アニメ版ではアニメにする部分はすでに目の前にあるので、それによって不自然なものを修正したりより興味の湧く方向に持っていったりすることができます。
そんなことから同じになることはないと思われます。
極端にいえば、漫画版(原作)とアニメ版は別物といえます。
それゆえに、アニメ版が終了した時点で、以後はすべて漫画版(原作)に準拠するということになります。

どうしてもアニメ版から入る度合いが高いのは、アニメ版は無料のことが多いからです。
だから、アニメ版から入って、特に興味を惹かれたものは有料の漫画版(原作)ということになります。

漫画版はすでに第33巻(2020年7月20日発行)まで行っています。
ともかく、早くこの第33巻まで追いつかないといけません(笑)

最新の第33巻では、今期のすべての公式の試合は終了して、来期へ向けての準備となります。
それで、新部員を迎えるためにコネを使ってのスカウトとなっています。
よって、第33巻では西浦の部員がすべて登場するわけではないです。
ここらへんは、来期では新部員の何人かがレギュラーになることを暗示しているのかも知れません。
わたしとしては三橋廉のライバルになる投手が入ってくることを願いたいです。
そうなれば、阿部隆也はもう三橋廉だけにかまっているわけにはいきません。
三橋廉としてはとても複雑な感情を抱かずにはいられないでしょう。
チーム内にライバルがいればより成長が出来るというのを三橋廉は体現できるのでしょうか。
まぁ、誰が入って来ても、超高校級とは言わなくとも高校生としては一流の田島悠一郎と花井梓と阿部隆也は不動のレギュラーでしょう。

いずれにしても、どんな新部員が入ってくるのかいまから楽しみです。
新マネージャーも入るかもしれませんし、チアリーダーも増えるかもしれません(笑)


おおきく振りかぶっての
アニメ版のHPは
 https://www.oofuri.com/
放送のHP(TBSから)は
 http://www.tbs.co.jp/anime/oofuri/
漫画版のHP(アフタヌーン公式サイトから)は
 https://afternoon.kodansha.co.jp/c/oofuri.html
ウィキペディアは
 おおきく振りかぶって;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6
 おおきく振りかぶっての登場人物;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9
です。

YouTubeから
Ookiku Furikabutte: Natsu no Taikai-hen Opening 1 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=o0zCyYRETto
 
Big Windup (Ookiku Furikabutte) Season 2 Opening - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=9ZKOON3HX4k

ウィキペディアから
 野村克也;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E6%9D%91%E5%85%8B%E4%B9%9F
 ID野球;https://ja.wikipedia.org/wiki/ID%E9%87%8E%E7%90%83
 日本の高校野球;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%AB%98%E6%A0%A1%E9%87%8E%E7%90%83
 日本高等学校野球連盟;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E9%87%8E%E7%90%83%E9%80%A3%E7%9B%9F
 少年野球;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E9%87%8E%E7%90%83
 リトルシニア;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2
 ボーイズリーグ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0
 クラブチーム;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0
 スポーツ少年団;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E5%B0%91%E5%B9%B4%E5%9B%A3


余談:コロナ金の行方

コロナ金が10万円入ったと喜んでいる人もいるかもですが、これはただではないですよ。
借金と同じようなもので後で返さなければならないということです。

国は国営企業とかを持っていないので、すべてのお金は国民から巻き上げなければ調達できません。
だから、この金も打ち出の小槌のようにどこからか出たものではありません。
国の信用で先払いしただけです。
コロナが落ち着いたら返さなければなりません。
しかも、利子付きで・・・

とはいっても、露骨に10万円+利子で返せとはいいません。
たとえば、コロナ復興金とかいって秘かに集めると思われます。
もしかしたら、消費税をコロナ復興の為に期間限定で12%とかにしておいて、結局12%にする策だったりするかも知れません。
そんなことになったら、思わず笑ってしまいますが・・・

その為にも、コロナが蔓延しなくてはいけないので、PCR検査を抑圧したり、Go To トラベル キャンペーンまたの名Go!Go!コロナ キャンペーンで、コロナを全国に拡散しているのかもしれません(笑)

ともかく、コロナ後の政府の資金回収を楽しみにしたいと思います。


本記事の参考HP一覧
ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
TBSテレビ(https://www.tbs.co.jp/
アフタヌーン公式サイト - 講談社の青年漫画誌(https://afternoon.kodansha.co.jp/
YouTube(https://www.youtube.com/
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遥かなる
20200511月 遥かなる


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おおきく振りかぶって その5 アニメ 第19話~第25話(全25話)+α

おおきく振りかぶって」アニメ版の今回は、第19話から第25話までと特別編1話について書きます。

西浦は桐青に2-0とリードするが、これで桐青が西浦の力を認め本気になって攻撃してくる。
桐青は三橋廉阿部隆也のバッテリーの配球を見極め、カーブに的を絞りまず2-2の同点にする。
その後も攻撃の手を緩めず、遂に桐青は3-2と逆転する。
これで流れは桐青かとなったが、西浦も反撃し3-3の同点にし試合を再び振り出しに戻す。
しかし、三橋はもはや限界点を超えているので踏ん張りきれず、またしても桐青が4-3と先行し9回の表を迎える。
なんとしても勝ちたいと先頭打者の阿部が執念で塁に出ると、流れが西浦になり、チャンスで4番の田島悠一郎に回る。
ここまでチャンスで凡退している田島はみんながあっと驚くような打法で高瀬準太の決め球のシンカーを打ち、走者2人が帰り2点を入れ、土壇場で5-4と逆転する。
そして、迎えた最終回の守りで西浦はピンチを迎えるが、三橋の渾身の1球は青木毅彦にフライを打ち上げさせ、それを泉孝介がスライデングでキャッチし、その球を花井梓がホームに矢のような送球をし、阿部がホームで真柴迅を刺してアウトにしゲームセットとなる。
西浦は誰しも予想しなかったであろうシードの桐青を倒し初戦を突破する。

初戦を突破したので西浦の夏の戦いは続く。

各話の題名は
第19話「桐青の実力」(DVD第7巻)
第20話「逆転」(DVD第7巻)
第21話「もう1点」(DVD第8巻)
第22話「防げ!」(DVD第8巻)
第23話「ゲンミツに」(DVD第8巻)
第24話「決着」(DVD第9巻)
第25話「ひとつ勝って」(DVD第9巻)
特別編1話「基本のキホン」(DVD第9巻)
です。

この「おおきく振りかぶって」アニメ版が5月3日(木)現在、GYAO!(https://gyao.yahoo.co.jp/)で第1話と第19話~第24話まで無料視聴できます。
第25話は5月4日(金)に配信されます。
URLは
 https://gyao.yahoo.co.jp/p/00908/v14289/
です。
「PLAY」が赤になっていれば視聴可能です。


☆あらすじ

(19)
はずされた球をスクイズバントしたので栄口勇人(さかえぐちゆうと)はみんなからナイスバントと賞賛される。
巣山尚治(すやましょうじ)は三振に終わったが、5回表終了で西浦はシードの桐青相手に2-0とリードしている。

三橋廉(みはしれん)は点が入ったということで勢い良くマウンドに行くがランナーだった阿部隆也(あべたかや)は準備中でまだホームベースにいなく戸惑う。
そこで田島悠一郎(たじまゆういちろう)がキャッチボールの相手をするが、田島も今日の三橋のテンションに違和感を抱く。
スタンドでは三橋母は三橋が笑っていると言う。
三橋瑠里(みはしるり)は三橋が笑っているということで、これまた違和感を持つ。

6番の本山裕史(もとやまゆうじ)は、カーブをうまくセンター前に打ったので、桐青の監督はカーブを決め球と見てカーブ狙いとさせる。
阿部はカーブをうまく打たれたがヒットは出るもんだと割り切る。
7番の高瀬準太(たかせじゅんた)は送りバントをし、ランナーは2塁に進む。
8番の山ノ井圭輔(やまのいけいすけ)はこれまたカーブをうまく打ってランナーは1・3塁となり桐青の攻撃パターンとなる。
阿部はカーブを打たれたということで、ここから真っ直ぐ(ストレート)を混ぜようと思う。
9番の前川俊彦(まえかわとしひこ)は2球ストレートを見逃す。
それでも桐青の監督はカーブ待ちを指示したので、カーブを待っていたらストレートが来たので当てなきゃと軽く振ったらフライとなって外野まで飛んでいった。
そのため3塁ランナーがタッチアップしてホームを踏んだので、桐青にやっと1点が入る。
1点取ったので桐青の応援は盛り上がる。

西浦ナインは桐青が簡単に外野フライで1点を取ったのでちょっと呆然とする。
でも、犠牲フライを打った前川は、上げたので監督にゴロを打てと怒られる。
河合和己(かわいかずき)は前川があのストレートをきれいに打ったと思い、阿部は振り切ってなかったから凡フライになったがきちっり捉えられたと思い、それぞれがこれからのストレートの攻防に思いをはせる。
1番の真柴迅(ましばじん)は足を生かしてまたしてもセーフティバント(セーフティーバント)を試みるが、ここは三橋のストレートを打ち上げてしまい、ピッチャーフライに終わる。
上げてしまったので、真柴は監督に怒られると青くなる。

三橋は1点取られたとちょっと弱気になるが、ナインからナイスピッチングといわれてまた元気を取り戻すが、何か鼻がむずむずすると思って手で触ると手に血が付いてきた。
そこへ花井がナイスフォローで三橋の鼻を帽子で隠してベンチまで連れて行く。

阿部がベンチに戻ってくると、篠岡千代(しのおかちよ)の氷嚢という声が聞こえ、何事かとベンチ内を見ると三橋が横になって団扇(うちわ)で扇がれていたので、「ああっ、これで夏が終わった」と血の気が引いてしまった。
それを見て百枝まりあ(ももえまりあ)は「鼻血を出したから寝かしているだけだよ」と言って安心さす。
ちょうど5回が終わったとこなのでグランド整備があり、砂入れなどで時間がかかるのでその間にのぼせは直ると読んで、「三橋君はまだ投げられるよ」と言う。

桐青のベンチでは高瀬が河合にボールが湿っているのでフォークは怖いと言う。
阿部が三橋を見ながらあれこれ心配していると、三橋がすくっと起き上がり、「俺、大丈夫だよ」と言う。
そして、阿部に後半も頼むぞといわれて元気な笑顔になる。

6回の表、西浦の攻撃は4番の田島からで田島は初球のストレートをレフト前に打ち1塁に出る。
すかさず高瀬のモーションを盗み2盗する。
花井梓(はないあすざ)は2塁ライナーで討ち取られる。
続く沖一利(おきかずとし)も水谷文貴(みずたにふみき)も三振で終わりチャンスを生かせなかった。
応援団の浜田良郎(はまだよしろう)この攻撃を見て、流れが桐青の方に移っていると思う。

桐青の2番の松永雅也(まつながまさや)に対してはストレートで三振に仕留める。
阿部は桐青がカーブ待ちということで3番の島崎慎吾(しまざきしんご)にボール球のカーブを打たせようとしたが、島崎は泳ぎながらもセンター前に運んだ。
4番の青木毅彦(あおきたけひこ)はバントの構えなので阿部はバントと読んで内にシュートを要求するが、青木はすかさずバスターに切り替えて打つと外野を越える打球となり、ランナーは2塁3塁となる。
阿部は拙攻と思い桐青の4番がバスターなんかするなよなぁと愚痴る。

ここで桐青が点取りにくるということで、阿部はタイムをとってマウンドで守りを話し合う。
百枝は西広辰太郎(にしひろしんたろう)を伝令に出し、スクイズ警戒しろと伝える。
阿部は河合に打ち上げさせるためにまっすぐで勝負すると言う。

河合はストレートということでともかく(勢いを)殺してスクイズバントをしたために上がりはしたが田島の手前で落ち、そのボールを田島がホームの阿部に送るが間一髪島崎はセーフとなり、桐青に同点となる2点目が入る。
桐青の応援はいやがうえにも盛り上がる。
桐青の監督はやっと同点かと思いながら、西浦の落ち着いたプレーに感心する。

阿部は欲張った為に点取られたと気落ちしていると、三橋が「バッター勝負!」と叫んだので我に帰り、「三橋は元気だ」と気合が入る。

(20)
元気な三橋は阿部の要求した通りのとこにストレートを決め、6番の本山を三球三振に仕留めてこのピンチを1点で切り抜ける。

この戦いに浜田はびびり、瑠里は三橋が三振を量産するので用意してきた「K」の旗を振る。
そんな瑠里に弟の三橋琉(みはしりゅう)から叶修悟(かのうしゅうご)が試合に出ているとのメールが入る。

7回表の西浦は、三橋は三振するが阿部はヒットで出てすかさず2盗をするが、後続の泉孝介(いずみこうすけ)は内野ゴロ、栄口は三振に打ち取られ無得点に終わる。

阿部が準備できるまでまで待っている三橋を見て、阿部は三橋がどんどん消耗しているのに自分は何もしてやれないともどかしく思う。
そんな三橋が「勝とう!」といったので阿部はそれに答えて「頼んだぞ!」というと三橋は「うん!」という。

バッテリーは7番の高瀬もストレートで三球三振に仕留める。
高瀬は狙い球のカーブでなかったのでカットにいったのだが、それを見ていた8番の山ノ井に泳いでいると物真似されてしまう。

阿部は阿部で高瀬がカットしにいったのを打ちにいったと思い、狙い球を変えたかもしれないと試しに山ノ井にボール球のカーブを投げさすが、これを山ノ井が振り切るとラッキーな内野安打となる。
阿部は次の9番の前川は先に三橋のまっすぐを打っていると警戒すると前川はバントの構えなので素直に送りバントさせる。
阿部が三橋にナイスピッチングと声をかけるが、その三橋は遂に肩で息をし始める。
そんな三橋をみて阿部は、なんとか終りまでもってくれと祈りに近い思いを持つ。

1番の真柴はカーブで打たせて取ろうとしたが、これまたラッキーな内野安打になりランナー1・3塁となって、また西浦はピンチを迎える。
このラッキーな安打に百枝は嫌な感じを覚える。
ここで少し雨足が強くなる。

一方、河合は三橋のストレートに感じている違和感を3番の島崎に話して浮いているというと島崎は思わず噴出すが、とりあえず見てみるという。

2番の松永に対しては1球目はストレートでストライクを取り、2球目はカーブで打たせようとするが、この2球目の時に、三橋の足が滑って暴投(ワイルドピッチ)となり、3塁の山ノ井がホームを踏み、遂に3-2と桐青がリードする。

桐青側は大いに盛り上がり、西浦側はあのコントロールのいい三橋が暴投したので呆然となる。
バッテリーが呆けているので、栄口が三橋のフォローに行く。
阿部がタイムを要求して三橋の元にくると三橋は自分のせいだとばかりにオロオロする。
阿部は三橋は悪くなく雨のせいだといい、三橋の手を触ると冷たくなっている上に震えていた。
そこで阿部は松永を敬遠して間を取ることにする。
しかし、三橋は自分が頼りないから敬遠するんだと思ってうじうじしていると、阿部は怒って三橋に喝を入れる。
それを見て栄口はやり過ぎだと思って、三橋に阿部のいうことを説明する。
阿部は三橋に「お前しかいねぇんだから、しっかりしてくれ」と切願すると、三橋はやっと阿部が三橋の為と思って敬遠するんだと分かって俄然やる気になる。
この四球(フォアボール)を見て瑠里も弱気になってしまう。そこにまたしてもメールが届く。

この敬遠の間で三橋は手の震えも止まり落ち着きを取り戻し、まだ投げられると実感する。
3番の島崎は河合からいわれたストレートを見るために球をカットする。
そこで阿部は早めに打ち取ろうと速い方のストレートを投げさせ目くらましをしてからくせ球のストレートを投げさせるとそれをファールする。その島崎を見て河合は泳いでいると思う。
もう1球くせ球のストレートを投げると島崎のバットは空を切ると共に、バットが飛んでしまう。

それを見て雨で手が滑ったと思ったのか審判が集まって試合を続行するか協議を始めた。
百枝は桐青と互角に戦っているのだから最後までやらせてと強く思う。

三橋がトイレに行くのを見た阿部は何か違和感を感じて、トイレに行くとそこで三橋が頭からシャワーを浴びていた。
阿部はひでぇと思い三橋の右手を取り、三橋に思い切り握らせてみると、三橋の握力はもうなくなっていた。

阿部があまりのことに絶句していると、こともあろうかそこに瑠里が来て、「レンレン」と呼びかけ叶が勝ったと言う。
三星は7回コールドで勝ち、叶も最終回に投げ3人で抑えたと興奮して伝える。
そこに職員の人が来たので、瑠里はごめんなさいといって一目散に逃げ帰る。
それを聞いた三橋は顔つきが変る。
しかし、そんな三橋と瑠里の会話を秘かに聞いていた西浦のナインはレンレンといって噴出す。
田島が手を出し三橋に握らすと握力が戻っており、阿部が再度確認するとやはり握力が戻っていた。
そこに、花井が試合が再開されることをナインに告げる。
みんなはまた逆転して俺たちが勝つんだと思う。

(21)
中止とはならず試合が再開されたので浜田はよかったぁと安堵する。
河合は島崎の情報から三橋の決め球はカーブではなくくせ球のストレートではないかと思う。
そして、決め球がカーブだと思ったのは阿部の1試合を通しての組み立てにはめられており、こちらが調べられている分、相手に一日の長があると思う。
試合再開になったので河合はナインに改めて気合を入れる。

3番の巣山は自分が打てるのはストレートしかないとストレート狙いで打つが、その当りそこねの球はふらふらと落ちたため野手のお見合いとなって1塁に出る。
河合はここはランナー(走者)が当然走ってくると思う。
河合は4番の田島はシンカーに手を出す楽な4番だと思うが、その田島がどこにも力が入っていない自然なフォームなのでどんな球でも打てると思う。
田島は初球を打つがファールになる。それは河合がその田島の自然なフォームから危険を感じ様子を見るためシュートをかけていたためバットの芯から少しずれてためである。
それを見て高瀬も田島には気合を入れて投げようと思う。
百枝も田島もスライダーが来ると読むがストレートだったので田島は振り遅れファールとなる。
そこで再度百枝は田島にサインを送るが田島は集中しているために百枝のサインを見ない。
百枝はイラッとするが、バッテリーが田島用の投球をしているということで田島の読みにまかす。
バッテリーのストレート勝負に田島でもとらえ切れなく両者の競り合いか続く。
これに桐青も西浦を共に熱い応援を送る。

田島が一歩を引かないので、河合は高瀬が先につぶれると思い、シンカーで揺さぶりをかけてくる。
河合は田島の集中力を見て、ストレートやスライダーでは打ち取れないということで、高瀬の決め球のシンカーをストライクゾーンに要求する。
その高瀬の渾身を込めたシンカーを田島はまたしても打てず空振りの三振に終わる。
こうしてこの勝負はまたしてもバッテリーの勝ちとなる。
高瀬は雄叫びを挙げる。
田島はストライクのシンカーさえも打てなかったのでこれが高校野球のレベルかと悔しがる。
百枝は田島が落ちていると心配するが、田島は「すんませんでした」と謝りコーチにいったのでとりあえず安心する。

高瀬は対田島でエネルギーを使いすぎて、5番の花井に2ボールとなる。
田島がコーチに立ったので、巣山はすかさず2盗する。
これに対して、いままでなぜ走らなかったのだとバッテリーも監督も不思議に思う。
巣山は3盗までしてしまう。
そこで監督はそんなわけのわからん作戦などないと思って、はっと気づく。田島だと。
田島だけが高瀬のモーションを盗んでいると。
花井は四球(フォアボール)で出塁し、ランナー1・3塁となり西浦のチャンスとなる。

花井はすかさず2盗したので、監督は田島だけがモーションを盗めると確信する。
ランナー2・3塁になったので、桐青は6番の沖を敬遠して満塁として7番の水谷と勝負しようとする。
水谷は一死(ワンナウト)満塁で俺かよとびびる。
百枝は水谷ではスクイズは危険が高いと判断して打てのサインを出す。
水谷はますますびびるが、そんな水谷を三橋が励まそうとすると、水谷は瑠里のレンレンという呼び名を思い出して噴出したため緊張が少しは解ける。
桐青はスクイズ警戒で1球目をはずすが水谷は思わず振ってしまう。
巣山は水谷にサードランナーと声かけをし、水谷はスライダーに的を絞る。
そのスライダーを打つが1・2塁間のゴロとなり万事休すかと思われたが、2塁手の島崎がグランドに足をとられてスタートが遅れたために、球は外野に抜け、巣山がホームを踏み、再び3-3の同点となる。
花井はこの期に一挙に逆転を狙いホームに突っ込むが、外野から良い球が返ってきてホームタッチアウトとなる。
西浦の応援にはナイバッテング水谷が響き渡る。
水谷は「や。やったぁ」と雄叫びをあげる。
次打者の三橋は三振に終わる。

田島が落ち込んでいると、ナインは9回に田島まで打順を回すという。
それで、田島は俄然やる気が蘇る。

そして、8回裏桐青の攻撃は4番の青木からなので阿部はここを抑えれば勝ちが見えると気合を入れる。

(22)
河合は7回あたりから決め球がカーブからストレートになっていると読む。
そして、河合は4番の青木なら三橋のストレートを捉えられると期待を寄せる。
阿部はここからは全員最後の打席とするために三橋のまっすぐで逃げ切りの体勢に入る。
青木は最初のストレートをボールだと思って見送るがストライクになったので驚く。2球目はともかくバットを振る。3球目は高めのボールを見送り、次は変化球で来ると読んだがストレートが来たので見送りの三振となる。

青木に4球ストレートなので河合は決め球がストレートだと確信を持つ。
そこでベンチの島崎に合図を送って、監督に決め球がストレートだと進言させる
河合は1球目はストレートをじっくり見て、予想の軌道に落ちてこないと見抜くがどういう風に落ちてくるかまでは分からないので、2球目はカット感覚で振るが空振りをする。
河合はカーブだと思って振ると打球が上がらずファールとなる。
それを見て阿部は河合がストレートに対して何かをしていると思い、次の球はストレートでなくカーブを投げさせる。
河合はカーブに対して体が泳ぐがカーブを打つ感覚になっていたのでなんとかヒットにする。
結局、最後はカーブになったので、桐青の監督は島崎にやはりカーブが決め球という。
しかし、桐青の監督は三橋のストレートはフライになりやっかいな球だと思う。
河合はカーブが来たので、阿部を性格が悪くまったく捕手向きの奴だと感心するが、結果的に打ったから俺の勝ちだと悦に入る。

百枝は8番は今日2本打っているということで6・7番でアウト取りを指示する。
6番の本山はバンドの構えをしたので、阿部は素直にバンドをさせて1死(ワンナウト)を取ろうとカーブを投げさすと、本山はバスターに切り替えてヒットエンドランを成功させ、ランナー1・2塁となる。
この博打的な積極的な攻撃に百枝も阿部も驚く。
7番の高瀬もバンドの構えをしたので、百枝はストレート勝負と思うが阿部はまたしても1死を取ろうとカーブを投げさせるとまたしてもバスターで田島の横を抜かれる。
2塁ランナーの河合はこの打球で3塁を蹴ってホームに向かってきたので、水谷から田島へ田島から阿部へと送球しホームでクロスプレーになるが阿部が河合に弾き飛ばされて、河合はホームインする。
土壇場で再び桐青が4-3とリードし桐青の応援は大いに盛り上がる。
桐青の監督は博打が当たって1点取ったが1点では安全圏ではないのでこのチャンスにもう1点取ろうとする。

8番の山ノ井もバントの構えなので阿部はあきれるが、ランナー1・3塁なので今度こそはスクイズがあると思う。百枝もスクイズ警戒して1球目は外すサインを出す。
スクイズだと思って沖をダッシュさせたらまたしてもバスターで打ってきた。
その球は三橋めがけて飛び三橋のグローブに当たる。
三橋は球を見失うが栄口の後ろと言う声で拾い、阿部がバックホームと言うが三橋は一瞬躊躇する。
それでもホームに投げて間一髪3塁走者の本山をホームでタッチアウトにする。

しかし、阿部は三橋がホームに投げるのを躊躇したので激怒してマウンドの三橋に詰め寄り、襟首をつかんで叱責する。
直ぐに栄口が行って阿部をなだめ、三橋は田島にその理由を言う。
三橋はサードランナーによって阿部が吹っ飛ぶと思って躊躇したとのこと。
それを聞いた阿部はますます激怒して、俺は怪我しないといっただろう、二度と逆らうなというと、三橋は怯えて従う。
田島が阿部はもう怒ってないというと、阿部が怪我しない約束を覚えていたということで気持ちを持ち直す。

次はこの試合唯一三橋のまっすぐを外野まで打っている前川なので阿部は用心するが、前川はストレートで3球三振に終わる。
河合はストレートを誰も打てなかったのは残念だが次の回を守ればこの試合は終りだと思う。
阿部は前川に惑わされたけど前川のあの打席はまぐれだったと思う。

1点差のビハインドで迎える9回表の西浦の攻撃は9番の阿部から。
河合は先頭を切る、阿部は×(ばつ)ゲームになんかさせねぇとお互い意気込む。

(23)
阿部が雄叫びを上げて打席に立つと、浜田は阿部が気合が入っているということで、トランペット担当の松田佳之(まつだよしゆき)と大太鼓担当の深見智花(ふかみちか)に頑張れよと声かけをして、隆也コールをする。
阿部はぜってい出ると集中力を高める。
初球は高めのストレートを空振る。2球目は低めのストレートを見送る。
それを見て花井はちぇ振れよいい球と舌打ちするとそれを聞いた栄口はびっくりして花井は勝つ気だと改めて思い、あと10回やったら10回ぼろ負けかもしれないけどこの試合は1点差だここで欲張らなきゃ嘘だということで阿部に打て打てとみんなで声援を送る。
3球目は高めのストレートのボールとなり、ボールカウント2ストライク-1ボールとなる。
ここまでストレートだけなので、阿部は速球に的を絞る。
4球目のストレートを打った球は球速に押されて3塁前に転がるが必死に走った阿部の足の方が間一髪早く内野安打になる。

阿部が出たので西浦の応援は大いに盛り上げる。
河合は田島がコーチに立っているので1球目から走ってくると予想してクイックで投げさすが、1番の泉は初球からセーフティバントを試み上手くピッチャーの横に転がし内野安打としてランナー1・2塁となる。
西浦の応援はますます盛り上がる。
この続いたラッキー性のヒットで高瀬は西浦の勢いに押されていると感じる。
高瀬は格下が勝つことがあるがあれはミラクルでもなんでもなくやられている方が自滅しているだけだと思い、俺は食われないぞと集中力を高める。

2番の栄口なので田島のコーチはここまでということで桐青の監督と河合はここで走ってくると読んで、1球外し3塁に力強い球を投げて3塁で刺すぞという牽制をする。
これを見て田島も百枝も3盗は難しいと思う。
そういうことで栄口にバントをさせてランナー2・3塁にしようとするが、それを読んだ河合は簡単に栄口にバントさせないような速いストレートを投げさせボールカウント2-1とする。
それでも百枝はスリーバント失敗も辞さず栄口に速球打ちのバントのサインを出す。
栄口はここはフォークが来ると思っていたのでびっくりするが次打者の巣山がフォークはないと説明する。
そこで納得した栄口は巣山に気合を入れてもらってストレート1本に絞り、見事にバントを成功させ、ランナーは2・3塁となる。
西浦の応援はどんどん盛り上げる。
巣山はこの試合は田島がマークされているので、何とか自分で1点を取ろうと気合を入れるが高瀬のストレートの速さに押された上に最後はシンカーを見逃し3球三振に終わる。
桐青は高瀬を讃える応援で盛り上がる。

そして、田島の4度目のチャンスでの打席となる。
場面は2死(ツーアウト)2・3塁である。4度目の正直となるか?
田島はナインの声援を受けるとそれにサムズアップで答える。
それをみてナインはうっとりする。
田島コールが球場に響き渡る。
高瀬はあと1死だということで、終わったあとのことを考える。
田島は1球目のストレートをファールする。
ストレートはもうめいっぱいということで、田島にはいままでシンカーで仕留めているのでシンカーで打ち取りにくる。
そのシンカーがストライクになり、バッテリーは2ストライクと田島を追い込む。
両陣営とも思いが交差する。
そして、運命の1球が投じられる。

なんと誰しもが唖然とするようなことを田島はやってのける。
シンカーにバットが届かないと見た田島はバットを振る瞬間になんと指をずらして右手を親指3本でつかみバットを長くしたのである。
体勢は崩れるのであるがそこは天才の田島、バットコントロールでセンターの頭を超し、走者を一掃する。
阿部と泉が帰り、この試合初めて複数点である2点を入れてこの土壇場で5-4と再度逆転する。
田島は雄叫びを上げ、西浦はこれ以上ない盛り上がりを見せる。田島コールが鳴り止まない。
百枝は身震いをする。

この打撃に河合は信じられないと唖然とする。
桐青の監督は、「バッテリーのせいじゃない、あのバッターを敬遠させなかった俺の責任だ」と心の中で呟く。
河合は高瀬に歩み寄り、また逆転してやるといって高瀬をフォローする。
田島は2盗する。
花井は1球目のシンカーにびっくりしてそのあとのストレートに対応出来ず、3球三振に終わる。

阿部は1点差ではきついと思いながらも三橋に気合をいれる。
三橋は俺が打たれなければ勝てると思いが募る。

(24)
1点リードでいよいよ9回裏の守備である。
ここを0点に押さえると西浦は勝つ。

河合は1点差で負けているということで、ます1点を確実に取りにいくとナインに気合を入れる。延長になればこちらが有利なので同点にさえすれば九分九厘勝ちが見えるということである。
桐青のナインはそれに答えて声を上げる。
三橋はマウンドで緊張のあまり震えがくるが、この回を押さえればみんなで勝てるんだ思い、自分を奮い立たせる。

そして、お互いの思いをかけて1番の真柴が打席に立つ。
真柴は球を良く見るためにバントの構えをする。
真柴は1球目のストレートを見送る。それを見て阿部は2球目もストレートを要求すると三橋はストレートに不安を持ちながらも投げるが、またしても真柴は見送る。
三橋がストレートに不安を持っているのを見破った阿部は、三橋にストレートの良さを教えるためにあえてシュートを投げさせるが、それが甘く入ったため真柴はセーフティバンドを試みる。
三橋がその球を取りに行こうとするが足がついていかずこけたので、田島が取って1塁に投げるが間一髪でセーフになる。
桐青の応援は盛り上がる。
桐青の監督は変化球に逃げる甘さがあるならそこからつけこめるとほくそ笑む。

シュートが甘く入ったので阿部も三橋も百枝もここが限界かとうろたえる。
それで、阿部は「三橋、投げられないなら代わってくれ、ここは三星学園じゃねぇからな、投げられないのなら沖にでも花井にでもマウンドを譲れ」と大芝居を打つ。
三橋は百枝の方を見ると百枝も交代に同意する仕草なのだが、それでも三橋は投げたいのでよろよろと立ち上がる。
そんな阿部と三橋を見て百枝は「阿部くん、役者だわ、代える気なんてないくせにぃ」と思う。
三橋は1塁の沖を見て、球をもらう。
沖はこんな場面で投げるなんて嫌すぎるから、自分なら喜んで交代するのに、それでも投げたがるなんて三橋は投球中毒でしかないけど、そういう後ろはすごくやる気が出ると気合を入れる。

三橋は怖い降りたくないと心が揺れ動くがそれでもここを誰にも譲りたくないと肝が据わる。
それを見て阿部は「よし目が定まった、勝っている試合で堅くなるのは欲の出てきた証拠だぜ。お前にとっちゃ良い傾向なんだ、そのプレッシャー受け入れろよ」と少し安心する。

2番の松永へのストレートの1球目に真柴は2盗をする。
百枝はランナーに振り回されずバッター(打者)をひとりずつ切るようにとサインを出す。
三橋は阿部を信じてまっすぐで松永を三球三振に仕留め1死(ワンナウト)を取る。
松永は3番の島崎に普通の球なのになんで当たらないのか分からないと嘆く。
阿部は島崎に前打席でストレートを3球投げたが空振ったのでまだストレートが通用すると見る。
島崎はバントの構えで球を良く見ようとするが、まだバットが球の下を叩くので上がってファールとなる。
2球目の時は、阿部へのファールとなるがそれを阿部は取れなくて悔しさの為に右手でグラウンドを叩くと三橋は自分のストレートが遅くなっているから阿部が怒っているだとうろたえる。が、阿部が悪いと謝ったので怒ってないと安心する(笑)

阿部がバント警戒の指示を出したので、島崎はともかく打てばなんとかなるだろと振り切る。
その打ち上げた打球はバント警戒で前に出てきた田島の頭を越えて落ち、それを巣山が取って1塁に投げるが握りが悪く1塁暴投になり、それを見た2塁ランナーの真柴は3塁へ走り、カバーに入った阿部の送球も間に合わず、ランナー(走者)は1・3塁オールセーフとなる。
桐青の応援は盛り上がり、監督はご満悦である。
百枝は遂にミスが出てまずいと思う。

この状況で次のバッターは4番の青木である。
桐青にとっては願ってもないチャンスであり、西浦にとっては絶体絶命のピンチである。
このチャンスに桐青の応援は盛りに盛り上がる。
青木はたとえストレートできても、1死で3塁ランナーが足の速い真柴なので、これで点を入れなければ4番じゃないと意気込む。
ネクストバッターズサークルにいる次打者の河合は、青木に1点入れろ、その後は俺が1点入れて勝つとこれまた意気込む。

阿部は三橋にストレートを要求する。
三橋はストレートは怖いと思い変化球も打たれているので、もう俺は桐青に攻略されたんだと弱気になるが、それでも投球中毒だからマウンドだけは降りたくないと執着する。
そんな三橋を見て、ナインは三橋に励ましの声援を送り、主将の花井はライト(右翼)から「三橋ぃ、あとのことはまかして、お前の一番いい球を投げろ。お前の投げる球なら誰も文句ねぇから」と叫び、みんなも同意の声を上げる。
それを聞いて三橋はへろへろの自分が降りずに投げている嫌な奴なのになぜ信頼するのかわけ分からないという感じになるが、なんて優しいこといってくれるんだと、阿部のミットめがけて渾身のストレートを投げる。
青木は読みのストレートということで振る切る。
が、その球はやはり球の下を叩いているので浅いフライとなる。
センターの泉は「投げ勝っている、取ってやるぜ三橋」と走りに走ってダイビングキャッチをすると、球はグラブの先端に入っており、それを花井にトスすると、花井は強肩を生かしてホームの阿部に矢のような送球をする。
阿部とタッチアップした真柴がホーム上でクロスするが、みんなが固唾を飲んで主審を見ると、主審はアウトの宣告をする。

西浦は勝った。
西浦のナインは大喜びをし、田島は三橋に勝った勝ったと飛びつく。
阿部は勝ったと呆けたまま呟く。
河合は黙ってネクストバッターズサークルを離れる。
整列した両校のナインに主審が5-4西浦高校、ゲームといって試合は正式に終了する。

ナインが援団に「応援ありがとうございました」とお礼の挨拶をすると、拍手で讃え浜田は「こっちこそだ、感動をありがとう」と答える。

それを見ていた河合はバッグから家族の思いのこもったお守りを取り出しそっと握りしめる。
泣いているナインに出るぞといってベンチをあとにする。
高瀬は河合に「かずさん・・・・・すんませんでした、すんませんでした」と嘆くと、河合は「お前が謝ることはいっこもない」といって、高瀬の肩を抱き涙を流す。
こうして、桐青の今年の夏は終わった。

百枝はこのあとも練習をして今日の反省会をするというと、応援に来ていた母親たちは驚く。
百枝がタクシーを呼ぶというと、花井母は車で来ているので自分たちでナインを学校まで送ると申し出ると百枝は感謝する。
そこへ桐青の河合(たち)が来て、花井のバックホームを褒め、この強さなら甲子園を狙って欲しいとマネージャーたちが折った千羽鶴を託す。
花井(たち)はお礼をいい、河合たちが目が赤かったので泣いたと思い、改めてこの勝ちの重さを噛みしめる。

三橋は別場所で志賀剛司(しがつよし)の身体チェックを受けていた。
志賀の見立てでは三橋に特に異常は認められなかった。
そこでダウンしようと阿部と田島が三橋に声をかけると三橋は眠っていた。
阿部は田島に三橋が今日はなんかおかしくなかったかと聞くと田島はいつもの三橋ではなかったという。
阿部はこの三橋のハイテンションがあったからこそ今日の勝ちはあったと思い、ぶったおれて道理だと思う。

そこに桐青の1年の仲沢利央(なかざわりおう)が通りかかり、眠っている三橋を見て訳を聞く。
その時、田島と目があって田島だと分かりその凄さに色々聞きたいと思ったが、時間がないのでメルアド交換をする。
田島は仲沢の手にメルアドを書く。
仲沢は田島(たち)に声援を送って去る。
田島が誰だよというと、阿部が桐青の控え捕手だと教える。

阿部と田島が百枝のとこに三橋を連れてきて、田島が三橋がつぶれたことを言うと、百枝は三橋母に連れて帰るように言う。
三橋母は三橋がどろんこなのでユニフォームを脱がせて車に乗せる。
百枝母は初めて生で野球みたけど面白かったと言い、瑠里は三橋のあどけない顔を見ながら、今日来て良かったと思う。

(25)
戦い済んで日が暮れまた明ける。

三橋は叶に埼玉に行っても野球やめるなと言われたことを思い出し、野球はやめなかったが阿部にマウンドを降りろといわれても降りなかったので三星時代と何も変わってないと悶々としながら床に就く。

学校で阿部は泉に声をかけ、三橋のことを聞くと三橋は今日は休みとのこと。
それを聞いて阿部はサッカーは負けたので花井と三橋家(みはしんち)に行くと言う。
そこに田島が来て俺たちも三橋家にカレーを食べに行くと言う。
田島は女子に4番の人だといわれる。

3人で浜田のバスケットの応援に行っていると、浜田も女子に団長の人だといわれる。
それを聞いて阿部は、三橋も明日から色んな人に褒めてもらえてちょっとは自信持つかな、と思うが、三橋のことを思い返すと、いやいつも通りきもくびくつくだけかぁ、あれ無性に腹立つよなぁ、田島には普通に話すのに、と結論づける。
阿部は三橋が田島にはメールを返したのに自分に返してこないので嫌われているのかと思うが、三橋にはそんな度胸はないと思って三橋はよくわかんねぇということで納得する(笑)

三橋が熱出して寝ているとメールが届く。
それは瑠里からで叶に勝ったことを言ってないのなら自分が言ってもいいというものだった。
三橋は瑠里に自分で言うといって昨日はありがとうと返信する。

そうしたら、またメールが来て瑠里からの返信かと思っていると、阿部隆也だったので100%びくつく。
おそるおそるメールを見ると、昼に俺と花井も行くということだったので、今度は100%死に体になる。
三橋はマウンドを降りなかったことで阿部が怒りにくると思っているので雲隠れしようとすると玄関のチャイムが鳴る。
もう逃げられないと諦めた三橋はへろへろした青い顔で玄関に出てくる。
それを見て阿部はすげぇ具合悪そうだと言う。
恐怖の期末テストは今日返って来て、みんなで勉強した甲斐があってか三橋も田島も赤点はなかった。
阿部が三橋に体重を測れとかなんとか指示しているのを見て泉は阿部はえばってるなと思う。
田島は桐青戦の最後の打席でグリップをずらしてシンカーを打ったので右手の手首を負傷していた。
三橋が体重を50キロというと、阿部は怒って3キロも減っているじゃないかというが、こうやって怒鳴るから俺は嫌われるのではないかと思い直して普通に話すことを心がける。
が、やはり三橋はきもいのでキレかかるが我慢する。
そして、あいつ見てるとたまにぶん殴りたくなるのは俺だけと言うと、花井がいいやと賛同する。

うまそうといって、三橋と田島と泉はカレーを阿部と花井は自分の弁当を食べる。
花井が三橋親に持ってきたDVDを見ていて榛名が出てくると三橋は感激するが阿部はあっさりと別に順当だろうと言う。
それに内心意義ありの三橋はどもりながら、俺たちも勝ったでしょうと言うと、みんなにんまりとする。

阿部が三橋になんで俺たち勝てたかと聞くと、三橋は自分はマウンドを降りなかったということで昔と変ってないと落ち込んでしまう。
そんな三橋を睨(にら)んでいる阿部を花井は、不憫だと言う。
花井は弁当を食べ終わってカレーを食べようとして三橋のことを思う。
花井は昨日の試合で9回裏に三橋が4番に対した時、三橋が投げるなら精一杯の球だと思ってそれで打たれるなら文句ないとどなったのは当たり前のことなのに、三橋はいちいち特別なことのようにびっくりする、そういうのがすごくむかつくし色々むかつくので阿部がキレなければ俺がキレていた場面は一杯あった、中学の時出会っていたら間違いなくいじめ側に入っていたな、出会が高校でよかったと思う。

田島が唐突に三橋になんで西浦に来たのかと問うと、三橋はお母さんの学校だからと答える。
今度は阿部が田島に西浦に来たのは尋ねると、田島はひいじいさんが倒れて家に誰もいなく怖かったので実家に一番近い学校にしたとのこと。
これを聞いて阿部は大家族ありがとうと感謝する。
花井はレベルと通いやすさでというと、泉はグランドを見てからと言う。
そうすると阿部もグランドと言い、泉が春休み栄口と来てただろうというと、春休みには栄口を誘ったけど下見はひとりで来たと言う。

テレビで昨日の桐青戦のニュースがあり三橋の名前が呼ばれると、三橋はまたしてもびびり今日はみんな自分が降板しなかったのを怒りに来たと思って、みんなの楽しみを壊したくないと泣き先に謝ろうと思って、「昨日は勝手してすみませんでした」と正座で頭を下げる。
みんながきょとんとするので、三橋は代われと言われてというと、阿部はカレーを食べながら「あれは嘘だよ」とこともなげに言う。
今度は三橋がきょとんとする。嘘と聞いて一気に力が抜ける。
阿部はそれよりもバックホームを躊躇したことの方を問題視してもう絶対にするなと言う。

泉が昨日の反省会の総評を渡すと、そこには三橋が頑張ったということが書かれていた。
それを泉も花井も普通のことだというと三橋は叶の言葉「お前のやっているのは違うんだ、ここで止めちゃだめだから」を思い出す。

みんなが帰ると、三橋は「こんなに嬉しいのが普通なのか」と思いこのことを叶に言いたい気になる。
そうすると折り良く叶から「勝ったぞ」とメールが来たので、「俺も勝ったよ、俺もみんなで勝ったよ、野球やってて良かった、修ちゃんありがとう」と返信する。
叶は修ちゃんの愛称にガキん頃に戻ったみたいだとにんまりして、次ぎも頑張れよ廉と呟く。

三橋は左手にボールを持って心地よい眠りに入る。

(特別編1話)
この話は阿部たちがまだ中学3年生の時に、1年先輩の榛名元希(はるなもとき)が武蔵野第一高校の野球部に入部して体験したある一齣(エピソード)である。

武蔵野第一高校の2年生エースの加具山直人(かぐやまなおと)は3回で交代した1年生の榛名の投球の凄さを見て己の無力を感じやる気をなくす。

そんなある日加具山と榛名はマネージャーの宮下涼音(みやしたすずね)に呼び止められて立ち話をする。榛名はけっこう恐縮する。
香具山は榛名の凄さを知るために榛名の自主練に参加するが、その筋トレに音を上げてしまう。

榛名は主将の大河浩宣(おおかわひろのり)から2年の春から正捕手の町田祐樹(まちだゆうき)と組むように言われる。が、榛名がエースになっても1試合80球しか投げないというと、大河はカッとなって榛名を蹴り飛ばす。
榛名は宮下と秋丸恭平(あきまるきょうへい)にかかえられてベンチに戻る。
大河は怒りが収まらず、香具山にお前がエースで投げろと言う。

香具山は大河の件を榛名にフォローする過程で榛名が80球しか投げない訳を知る。
それは成長線が閉じない間は無理したくないということだった。
そこで香具山はそのことを大河に話せば大河も納得すると言う。
香具山は榛名の身体を見てますますやる気をなくし、榛名に部活をやめると言う。
一方、宮下は大河に電話して、昼間のことで一言いいたいから裏門当たりで落ち合う約束をする。

榛名は香具山が部活をやめるというので驚く。
榛名がなんでやめるのかと聞くと香具山は投手なんかやりたくない、やめて勉強するんだと言う。
それを偶然裏門に来た大河が聞いていて、宮下にキャンセルの連絡を入れるが宮下はもう来ていたので2人で盗み聞きすることにする。
香具山はなんで榛名みたいな優秀な投手がうちみたいな弱小チームに入って来たんだ、甲子園に行きたいならもっと強いチームに行けがいいじゃないか、お前はここでは浮いていると愚痴を言う。

それを聞いて榛名はこいつ何言っているんだとばかりに唖然とする。
どうして最初から諦めるのかと聞くと、香具山は試合に勝ったことがないそんな自分が努力るのは恥ずかしいと言う。
それを聞いて榛名はますます唖然とする。
そして、夜具山が皮肉を込めて目標を聞くと、榛名はこともなげに「プロ」と言う。
それを聞いた香具山は自嘲気味に天命だとか才能だとか言い出したので、榛名は切れかかるがはっと気づく。
香具山はいま始めて野球に対して気持ちがぐらついているんだと思い、自分の中2の時の体験を門外不出で話すと言う。

門外不出ということなので盗み聞きすることは出来ないと思った大河と宮下は名乗り出てくる。
それを見た榛名と香具山は凍りつく。
大河がなぜ榛名がここに来たのか知りたいと言うと榛名は話す気はないと突っぱねるが、宮下が可愛くお願いすると榛名は転びバテレンになってしまう。

榛名がこの学校を選らんだ理由は、学校の側にグランドがあることある程度のトレーニング設備があること監督がなるべく不熱心なことに合致したからと言う。
ここから中2の時の榛名の原体験が話される。
それによると、榛名は監督のお気に入りの為に過酷に使われて肘痛になったが成長痛ということでそのまま投げさせられた。しかし榛名は心配でこっそり大きな病院に行ってMRIを撮ると半月板を損傷していたのだが、そうすると監督は榛名は使い物にならないということでほったらかしにしたという。
なんとか自分でリハビリして治したのだが、直っても監督は榛名を無視いて使わなかったいう。
それで榛名は野球をやめたいと思うがそんな時に中学の仲間がシニアに行けといってくれシニアの経験で立ち直れたという。

その話を聞いても香具山は自慢にしか聞こえないといってうじうじしていると、大河が切れて香具山に文句をいう。
そこで榛名は香具山に自信を持たせる為に50m走を提案する。
榛名は香具山がやる気が出すように宮下に口添えをさせた上で、50m走をすると香具山を榛名に勝てると思い込んで全力疾走したので、7秒5から6秒8へ記録が上がった。

そこで榛名が本当に野球をやめたいのかと聞くと、香具山は俺はやめたいのではなく勝ちたいのだと言う。
榛名はそれを聞いて、「勝ちぃつうエサなしでこの重労働を続けてきたなんてねぇ、あんた相当野球が好きだっつうの」と言う。

そんなことで時間が遅くなったので、大河は宮下を送っていくことになった。
香具山が逢引のお邪魔でしたというのを聞いて、榛名は初めて宮下と大河が付き合っていることを知って体中を秋風が通り抜けていった。
香具山はここぞとばかりに榛名をいじめる(笑)

榛名と分かれた香具山は明日から思い切り力いっぱい勝利を目指すんだと自分に誓う。

こうして武蔵野第1高校は香具山が3回まで全力投球をしその後を榛名が締めるという勝利の方程式が確立する。

「勝利はたまらない味だった」(香具山直人)


☆所感

こうして西浦高校は、去年の埼玉大会優勝校の桐青高校に勝ってしまうのであるが、この勝ちを呼び込んだ要因は3つほどあると思います。
それは
1.データ
2.メンタル
3.練習
です。

データは、桐青が事前に西浦のデータをまったくといっていいほど持っていなかったのに対して、西浦は百枝まりあ(ももえまりあ)が春の県大会での桐青をビデオに取っていたのでそれを参考に出来た。
そこから篠岡千代(しのおかちよ)が各打者の打撃の傾向をデータベース化した。
そしてそのデータを活用するだけの力を持つ者が西浦にはいた。
いくらデータが豊富にあってもそれを戦いの中で活用できなければ宝の持ち腐れである。

攻撃においては、高瀬準太(たかせじゅんた)と河合和己(かわいかずき)のバッテリーの配球を百枝が分析して傾向と対策を各打者に伝達した。
守備においては、阿部隆也(あべたかや)が各打者の打撃を分析して傾向と対策としての配球をした。
その配球に見事なコントロールで答える三橋廉(みはしれん)がいた。
そして田島悠一郎(たじまゆいちろう)はビデオから高瀬の投球と牽制の時の癖を見抜いた。

さすがに桐青もこれらのデータを的確に活用できる優秀な人材がいるとは思わなかっただろう。

メンタルは、もうお馴染みの志賀剛司(しがつよし)のメンタルトレーニングで、モチベーションの維持、試合で練習の成果を普段通り出すリラックス、そして各々がこのチームで何をすれば勝てるかという一体感である。
これが見事にはまって、データとそれに基づく練習を実戦で生かした野球がやれたということである。
どんなデータがあろうがどんな厳しく激しい練習をしていても本番でそれを生かせなかったならほとんど意味を持たなくそこには後悔しか生まれないだろう。
やるべきことをやってこそそこに反省もあるといえよう。

練習は、時間とグランドの占有の制約のある中で、あれもこれもしなくてデータに基づきこの期間でやれる最も効果のあるものに絞って集中的に行なったということである。
それが泉孝介(いずみこうすけ)がスライダーをヒットしたり巣山尚治(すやましょうじ)がストレートをヒットしたり栄口勇人(さかえぐちゆうと)がスクイズバントを横っ飛びで成功したり、また花井梓(はないあずさ)は後ろ向きでファールをダイビングキャッチしたり須山が鋭い打球を横っ飛びで好捕したりしたことに表れているといえよう。

ようするにターゲットを決めてそれに関しては確実にレベルアップしたといえよう。
いわゆる量より質の練習である。
高瀬が最も多く投げる球がストレートとスライダーであると分析してそれを確実に打てるように練習したのである。
普通に考えれば、決め球のシンカーやフォークはそんなに投げないといえる。
やはり通常は決め球は高い集中力を要するためにエネルギーの消耗が激しいので多くは投げないだろう。

守備もここではそんなに描かれてはいないがおそらく各打者の打球の方向などもデータから分析していてそういうシフト的なことも意識にはあると思われるから好プレーにつながっているのだろう。

練習でやるべきことはいくらでもあるが、それを全部やるとなるとどれくらいの時間がかかるか分からない。
対桐青ということを考えるとそこまでの時間にやれることをやるしかない。
ではなにをやるかということである。
そこで生きるのがデータである。
データを分析して、もっとも頻繁に出現するもの特徴的なものを見出しそれに対して確実に対応するということである。
そういう最も効率的なことを行なうためにもデータは重要である。
そして、そのデータを分析しそれを活用できる能力のある者がまた必要である。
データがあってもそれを有効に活用できなくては何の意味もないのである。

一応、この3つを掲げたが、もうひとつのびっくりする要因は、この試合のラッキーボーイともいえる三橋であった。
たまたまなのかどうかは分からないが、この試合で野球人生最高といえるほどのピッチングをした。
阿部の要求するとこに寸分の狂いもないコントロールはもちろん球に気持ちが乗っていて切れがあった。
それが桐青の打者が三振したひとつの要因だろう。
こういう気持ちがなぜ起こったのかはよく分からないが、わたしが思うに榛名元希(はるなもとき)の存在があると思われる。
春の大会で偶然榛名を見て、阿部と榛名の関係を阿部から聞いて、阿部の根っこに榛名がいると知って、阿部の気持ちを確実に自分の方に向けようとしての快投だと思われる。

あの時、三橋は誓ったのだ。
「阿部君には俺が投げる」と。
あそらくこの試合でそれを証明したいという気持ちが無意識的にあったと思われる。

しかし、それも7回までで限界であった。
まったく握力がなくなり投げることができないような状態だった。
ところが、三橋のいとこの三橋瑠里(みはしるり)が掟破りの選手のロッカールームまで侵入してきて、叶修悟(かのうしゅうご)が投げたことを聞いたら、再び力が湧いてきた(エネルギーの充填)。
これは瑠里の大ヒットというよりホームランといっていいくらいの殊勲打であるが、こういうこともあるもんだなと思う。

この奇跡はいまのとこわたしにはよく分からない。
それは三橋と叶の関係がまだよく分からないからです。
阿部が自分の価値を見出してくれた恩人だからその恩人の為に投げようという起動原理(モチベーション)よりも叶が投げて勝ったという起動原理(モチベーション)の方が強いということである。
確かに、阿部との付き合いはまだ4ヶ月ほどであるが叶との付き合いは数年になるだろうから期間からいったら叶の方が断然上だが。
とはいっても、起動原理(モチベーション)は年数に比例するものではないだろう。
ここらへんは、おそらく三橋が最も負けたくない相手が叶なのだろう。
阿部の最も負けたくない相手が榛名のように。
中学の時も、マウンドを譲らなかったひとつの要素に叶に負けたくないというのもあったのかもしれない。
一度でも叶にマウンドを譲れば負けてしまうということで。
だから、叶が投げて勝ったので、自分も負けたくないということで力が蘇ってきたのかもしれない。

ここらへんは、阿部が9回に先頭打者になって絶対に出塁してこの試合を勝つと気合を入れたのは、三橋に勝たせてやりたいというのもあるが、やはり榛名はシードということもあって初戦を突破するということがほぼ確実なので絶対この試合を勝ち取るということなのだろう。
勝てる試合を負けたらまた榛名との差が出来てしまう、というのが大いなる起動原理(モチベーション)であろう。

この快投の方はそれなりに説明も付くが、打撃の方がまったく奇跡というしかない。
正に、ラッキーボーイという神がかりとしか思えない。
最初の2点は三橋がもたらしたといっても的外れではないだろう。
しかも田島にチャンスが巡って来ている時に、その田島が打ち取られているだけにこの三橋のラッキーな活躍がなかったらこの試合の展開も大いに変わっていたかもしれない。
最初の打席では、花井が2塁にいる時に打席に立ち、ともかくバットを振ったらそれが打ち損じのぼてぼてのゴロになるのであるが、転がったとこが良くて、花井は3塁に行き三橋も1塁ベースを踏んだ後に勢いあまって転んでしまうがセーフとなり、ランナー1・3塁となる。
そして、この後三橋のリードが大きくて1・2塁間に挟まれるのであるが、必死に逃げ惑っている間に花井がホームを踏んで待望の先取点が入るのである。
これをラッキーといわず何をラッキーというかというくらのプレーである。

しかも三橋の打撃ではこれだけに止(とど)まらず、2回目の先頭の打席ではストレートを2球ファールしたせいで高瀬が仕留めようと決め球のフォークを投げるが指のひっかかりが悪く、臀部に当たってしまい、死球(デットボール)として1塁に出るのである。
そして、田島の合図で2盗し、阿部のバントヒットで1・3塁となり、百枝と桐青の監督の読み合いからの栄口の横っ飛びのスクイズバントで2点目のホームすら踏むのである。

どちらも痛い思いをしての2点であった。
とはいっても本当に痛かったのは2点を取られた桐青であったのだが。
この2点がなければ、桐青が勝っていただろう、とすら思えるのだが。

それにしても、こういう三橋のプレーで一体阿部は何回青ざめたことか。
ちょっと見てみると
1.2回表に三橋がぼてぼてのゴロで1塁に駆け込んで2転3転と転んだ時
2.4回裏に三橋がマウンドから引き上げ中に、よろけて河合に支えてもらった時
3.5回表に三橋が高瀬から臀部に死球(デッドボール)くらった時
4 5回裏にマウンドから引き上げ中に鼻血を出して仰向けになって休んでいる時
ということになる。

鼻血を出した時などは、この夏は終わったとすら思ったわけだから。
こういうのを見ると、阿部ってけっこう苦労性かもしれませんね(笑)
もしかしたら三橋は普段阿部にいじめられているからその仕返しに阿部をいじめていたりして(笑)
それでも、三橋の握力がなくなってからは阿部も三橋が限界を超えて投げているということで、ひたすら三橋を鼓舞することに切り替えたということになったのだが。

そういうことで、三橋は不思議な子、神の子かもしれないな(笑)
その性格と同じく体格もふにゃふにゃしていてとらえどころのない柔らかさを持っているのかもしれない、ぞ(笑)

対して、桐青のデータやメンタルや練習はどうかというと、
データは、打者一巡してからは西浦のデータも少しずつ入ってくることになるが、そのデータも体系的ではないので、データ戦争では最後まで西浦の優位は動かなかったといえる。
メンタルは、西浦に1点取られたということで高瀬が緊張から解放されて本来のピッチングをするようになり、また西浦がこちらを知っているということで、あなどれない相手だと悟り勝って当たり前という気はなくなり、五分五分というところでしょう。
練習は、明らかに桐青の方が上といっていいでしょう。
しかし、その練習の成果を西浦のデータがない故に効率的に発揮出来なかったということで、これまた五分五分ということでしょう。

そういうことで5回以降は五分五分の戦いになったが故に、西浦のデータ野球とラッキーボーイの三橋で手に入れた2点が最後まで効いたといえそうです。

当然、桐青も西浦のデータを手に入れていたら、初回から対西浦の試合をしていたので桐青が勝っていただろう。
そういうことでは、栄口がこの後10回やったら10回ともぼろ負けすると思うのも頷(うなず)けるだろう。
しかし、現実的には西浦のデータは手に入れることは出来なかったといえるでしょう。
なんたって西浦はこの桐青戦が公式初戦なのだから。
練習試合を見てのデータなどは、お互いいろいろ試しでやっているのでそれがどれくらい参考になるのかは定かではないといえる。
プロ野球のオープン戦での結果か公式戦で違ってきたりするのでもそれは分かるといえます。

そういうことで、どんなにしても桐青が西浦のデータを手に入れるのは直接対戦してしかなかったといえる。
だから、この試合は西浦が桐青のデータを分析して傾向と対策をしっかり見極めて練習し、実戦でもその練習の成果を見事に生かしての勝利といっていいと思います。
もちろん、三橋のラッキーボーイ的なことのような勝負の大きな綾があったことも確かですが。。

ところで、応援であれっと思ったことがあったのだが、浜田の応援では田島にしても三橋にしても性の方を呼ぶのであるが、9回の阿部の時は、「隆也」と名の方で呼んで応援していることです。
これはどういうことなのか。
浜田が練習に参加して、三橋と阿部のバッテリーを見ていて、三橋がその力を出せているのが阿部のリードによるものが大きいということで、阿部に親近感というか感謝のようなものを感じているのだろうか。
どう見ても、阿部は名で呼ばれるほどのアイドル性はないと思うのだが。
かなりびっくりです。

その阿部だが現状の野球センスとしては、並の上くらいといっていいだろう。
捕手の肩も三橋の球が遅いということを考慮しても、ランナーを刺した場面がないということで特に強肩ということではなく普通なのだろう。
打者としてもホームランを打てるような強打者でもなくまたどんな球でも打てる好打者でもないだろう。
また、走者としても時に足が速く塁に出たら盗塁が出来るということではないだろうから普通なのだろう。
シニア時代にもクリーンナップを打っていたというような記述もないので、打力も普通なのだろう。
キャッチングも榛名の速球を取るのに半年もかかったり、三橋がコントロールがいいということで油断があったとしても三橋の緩い球の暴投(ワイルドピッチ)を取れなかったということで、ものすごく上手いということではないだろう。

キャッチングといえば今年(2018年)のセンバツを見ていて、キャッチャーが打者の背中を通る球をキャッチングしていたのには感心しました。
背中を通る球ということになると、球が打者の影に入って一瞬見えなくなるのにそれをキャッチングするということは、ピッチャーが投げた時点で球がどういう軌道を描くか分かっているということになる。
ここらへんは、このピッチャーはそういう球を投げるということが分かっているから捕れるのか、あるいはそういう球を要求したのか、ともかくよく捕れるなと思ってしまいました。

ということで、阿部は特に秀でたものがないといえよう。
だから、百枝が阿部を中学時代共に4番を打っていた田島(好打者)と花井(強打者)の次ぎと言ったのは野球センスということでは当たっているということだろう。
例えば肩でもおそらく田島や花井の方が強肩だろう。

だが、逆にいうと阿部はすべてそれなりのものを持っているともいえよう。
普通に野球をやる分には特に穴のある選手ではないということになる。
しかし、これだけではあまり目立たない地味な選手ということになるだろう。
例えば、そんな選手がこの西浦で3番を打っている巣山尚治(すやましょうじ)であろう。

では、なぜ百枝は阿部に特別な期待をしているのだろうか。
それは阿部がこの年代の者にはないといっていいほどのメンタルの強さを持っているからであろう。
そのメンタルの強さは確固たる勝ちの理論に支えているから崩れるということはない。
阿部には負けるという思想がないといっていいだろう。
どんな相手に対しても勝ちしかないといっていいだろう。
それはつまり、どんな相手でも弱点のない相手はいないということである。
弱点をつけば勝てるということである。

そのためには自分は常に100%の力を出して、相手には100%の力を出させないということである。
相手が自分より上回っていても、相手を最低でも自分の100%の力まで引き摺(ず)り下ろす、あわよくば自分以下の力に落す。
相手に100%の力を出させないようにするのは、どうするかというと相手の嫌がることをとことんして相手のやる気をどんどん奪うことである。
相手を落ち込ますことである。
これはめちゃくちゃずる賢く性格が悪いとできないことです(笑)
阿部は誰しもが知っているようにずる賢く性格が悪いです(笑)

これは弱い者が強い者に勝つための秘策です。
これをすれば弱い者が強い者に勝ちます。
弱い者が強い者に勝つには頭を使わなければ勝てません。
そのためには、弱い者は常に100%の力を出せるようにしておかなければなりません。
この弱い者が常に100%の力を出すということは勝つための必要条件です。
そして強い者に100%の力を出させないというのは勝つための十分条件となります。
この必要十分条件が整えば勝ちにつながります。

これの反対が「獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす」ということで、たとえ強い者であっても常に100%の力を出さなければ足元をすくわれるということでしょう。
とはいってもここでの100%とは常に相手よりも上回った力で臨めということでしょうが。

この弱い者が100%の力を出すということでは、阿部はともかく走攻守それなりに揃っているので十分自分をコントロールできます。
そこらへんが、三橋が死球で出て盗塁して2塁にいる時、百枝からバントのサインが出て、バントするのであるが、ここでも状況を見てへこみのとこにバントするのである。
しかも、バントの構えからバスターに代えそこからバントをするのである。
バンドの構えのままだと、投手と1塁手がダッシュしてくるが、バスターにすると両者ともそこで止まってしまう。
つまりそれだけバント処理が遅れるということになって、阿部は1塁に生き無死1・3塁となるのである。
阿部は走攻守が特に優れてもいないが劣ってもいないので、こうやって臨機応変に常に自分の力を状況に応じて出せるのである。

しかし、野球は1人でやるものではない。
いくら阿部のメンタルが強くても勝つ理論があってもそれだけでは勝てない。
チームが常に100%の力は発揮しなければならない。
しかし、この西浦には、百枝と志賀という類希(たぐいまれ)な指導者がいるのである。
百枝の人心掌握術と志賀のメンタルトレーニングによって、このチームは常に自分の今持っている100%の力を出せる方向性を持っているのである。
それが栄口がはずされた球をスクイズしたことででも分かるということである。
こういうのは自分の力を100%出せるから出来ることである。緊張していたらとても出来ないであろう。

その百枝の人心掌握術のスキンシップもよくよく注意して見れば、田島にも手をつかんで話をしているんだ。
ただし、捕手を指名した後、田島に専用ミットを与えてミット越しにわしづかみにしてではあるが。
思えば花井にも手をつかむのが花井ではなく夏みかんなのだがその潰して出来たジュースを飲ませている訳だ。
もっといえば、三橋にはけつバットの一撃で統制下に置いた(笑)
阿部には優しく、浜田には硬軟で、田島と花井と三橋にはある意味怖さでというところか。
主要な人物にはすべて何らかのアクションをしているということか。

しかし、この阿部に比べて三橋は投げることしか知らないといってもいい。
勝ち方も自分のこともあまり知らないといえる。
だから、阿部は三橋にこの100%の力を常に出させるために姑のように三橋にあれこれいって見張っているということです。
三橋が常に100%の力を出せるように自分をコントロールできれば阿部も口うるさくいわなくてもいいのだが。

さて、そんな阿部が選手としてどのポジションにいればいいかということである。
野球は相手に1点も与えなければ負けることはない。
そういうことでは投手ということになる。
しかし、三橋みたいに投手中毒でもなければ全試合に投げることは不可能だろうし、投げても全試合100%の投球をすることはこれこそ不可能だろう。
ということは、投手と同じような事をして、相手に1点も与えなく全試合に出場して常に100%の力を出すということでは捕手以外にないだろう。
そういうことでも捕手は守りの扇の要(おうぎのかなめ)といえるだろう。

では、相手に1点も与えないためにはどうすればいいか。
面白いことに、ストライクゾーンというのは、ここに球が来たら打者が打てるという領域である。
思えば、打者が打てるという領域に球を投げて、打者を打ち取らなければならないということでは、投手というのはほんと大変なポジションである。
だから野球の勝敗というのは投手の出来次第で70%決まるというのもある程度道理だろう。

そんなストライクゾーンに打ってくださいと球を投げて打者を打ち取るには4つほどの方法があるだろう。
1.ボール球
2.広角
3.速球
4.外し

ボール球とは、ストライクゾーンでない球を振らせる(打たせる)ということである。
ストライクゾーンから外れた球を打ってもそれがヒットになる確率はストライクゾーンの球を打つよりずっと低いであろう。
とはいってもボール球を振る打者なんてのは、そんなのは単なるへたくそだからそんな打者はほとんどいないだろう。
ここでボール球を振らせるとは、ストライクからボールになる球とボールからストライクになる球を放るということである。
いわゆる、変化球である。
ストライクだと思ってもボールが左右や上下(といっても上にはいかないだろうが)に逃げれば、バットの芯には当たらないので空振りなり凡打になるだろう。
ボールからストライクになる球は、打者はボールだと思っているので打つ体勢にはなく手元でストライクになって慌てて振ってもこれまたバットの芯には当たらず空振りなり凡打になるだろう。

広角とは、ストライクゾーンといってもピンポイントではなく結構広いので隅から隅まで使えば、これまたバットの芯には当たらないだろう。
インハイに投げてそれを意識した打者がアウトローに投げられたらおそらくまともには手が出ないだろう。
ここまで極端でなくても外を意識していたら内は打てないだろう。
ここらへんのことは三星学園の織田裕行(おだひろゆき)が言っていたであろう。

速球とは、文字通り速い球である。
速ければ、あっという間に球が通り過ぎたということになり、ストライクかボールかも判断できないだろう。
速い球は原則、球を見ることが出来ないので1・2・3などの決めたタイミングで打つしかないだろう。
とはいってもいくら速い球でも、その球だけならばそれなりに慣れれば、投手のモーションからのタイミングで打つことができるということになる。
だから、打者を確実に打ち取るためには、速球というのは緩急と言った方がいいかもしれない。
150キロの球でも緩急を付ければ、160キロになるということである。
遅い球のあとの速い球は、感覚的には物理的な速さ以上になるだろう。
当然、速い球に的を絞っていて、遅い球がくればタイミングが確実にずれるだろう。

外しとは、上記の3つから打者は球がストライクゾーンに来ても必ずしも打てる(ヒットになる)とは限らないので、この球なら打てるということで、打つ球を決めて打つということが多い。
そこで、その打者が打つのを決めた球を外すような球を投げると打者は打てないということになる。
田島がシンカーを2球続けられて、次のシンカーを見極めようとしていたら、ストレートが来て見逃しの三振に終わったのはそのいい例である。
これはまた、相手の弱点を突くということにもつながる。

大雑把にいって、ボール球は変化球、広角はコントロール、速球はストレート、外しは配球といえるだろう。
この四つがあれば、ほとんどの打者を抑えることが出来るであろう。
最初の3つ(変化球とコントロールとストレート)は投手に関わり、最後の一つ(配球)は捕手に関わるといっていいだろう。
もちろん、投手が全部やってもいいけどそれでは負担があまりにも大きすぎるだろう。
基本的には投手は投げることに専念すべきだろう。
配球によって、野手の守る位置も変わってくるからである。
逆にシフトをしいたらその方向に打球が飛ぶように配球しなければならない。
そういうことを考えたら配球は捕手が行うのが妥当だろう。
捕手は投手を含めて野手全員を見れるのだから。扇の要。

そこで、阿部の関わった投手の榛名と三橋を見てみると、榛名はストレート、三橋は変化球とコントロールということになり、一長一短といえる。
榛名と三橋が合体したら一流の投手ということになる。
まぁ、合体は出来ないので、一流の投手になるためには三橋はストレートを榛名は変化球とコントロールをということになる。
どっちが先にこの課題をクリアできるだろうか。

というようなことでストライクゾーンに球を投げても打者を打ち取れるということになる。
三橋はその絶妙のコントロールと多様な変化球で「ボール球」と「広角」の2つを満たしており、また阿部自身は外す配球ができるので三橋で完封できるといっているのだろう。
そういうことで、三橋は榛名に対抗できる投手ということなのだろう。
榛名が勝ち上がれるレベルなら三橋で勝ち上がれるということなのだろう。

それにしても三橋のコントロールは絶妙である。
左右(横)の変化は、ホームベースが固定なので、ある程度コントロールできるのは分かるが、上下(縦)の変化は打者の身長によって変るので、それに合わせてコントロールしなければいけないので、かなり難しいといえる。
まぁ、ここらへんで三星学園時代の三橋は打たれていたのかもしれない。
今の三橋はともかく阿倍の構えたとこにどんな球でもきっちり投げるということで、打者云々ではないということなのだろう。
阿部の構えたとこなら速球以外のどんな球(ストレートでも変化球でも)でも投げれるということなのだろう。
そういうことで、個々の打者への配球(ストライクゾーンの見極め)は阿部がしているということなのだろう。
阿部としては、この配球をすれば迷わせたり考えさせたりして打者のやる気を減退させることができるというのが分かっているので、そこに投げてくれる三橋は宝物だろう。

自分の思った通りの勝つ野球ができるということ。
ともかく、阿部は性格が悪いので(笑)、相手を出し抜いたり裏をかいたりする事が大好きだといえます。
こういうのは好きでないと相手を落し込めるアイデアが次から次へとは出てこないです。
こういう性格の悪い奴はそんなにいないので、普通は強い奴が勝つといえます(笑)

まぁ、そういうこともあって、阿部はやる気をなくさせることは得意でもやる気を出させることはあまり得意ではなかったということなのだろう。
そこらへんが、榛名も三橋もあまりうまくコントロール出来なく、百枝に阿部は捕手を分かってないとかいわれたりしたんだろう。

とはいっても、今の三橋の110キロくらいの球速では百枝がいうようにいずれ限界があるだろう。
やはり、全国区(甲子園)で戦うには、130キロ台は欲しいところだろう。
130キロ台の速球があって、100キロ前後の変化球がきたら、速球は140キロ台に見える場合もあるだろう。

あと、ここまでで思うには阿部にはほとんど無い物強請り(ないものねだり)がないっていうこと。
自分の打撃でも肩でも捕球でも走塁でももっと自分に力があったらよかったのにというようなこと。
特に打撃では自分がホームランを打てるようならもっと点を入れられるのにとかいうこと。
こういうのは阿部にはほとんどマイナス思考がないからなのか。
現状の力で100%を出そうということに集中しているのか。

だから、三橋に対しても特に速球を要求しない。
通常は速い球が基本である。
百枝がいうように、いくらコントロールが良くて変化球があっても速い球がなければいずれ限界がくる。
コントロールも変化球も速いストレートがあるからこそ生きるということである。
だから、百枝は三橋に速い球というないものねだりをする。
でも、阿部は今のままでいいと言う。

ないものねだりは下手すればマイナス思考であるが、良く言えば欲である。
欲があるから向上するともいえよう。
もっと高みに昇りたいということである。

こういうないものねだりは、西浦ナインにもあまりない。
ここらへんはメンタルトレーニングによって、今出来ることをしようということで、マイナス思考にもなるないものねだりをしないということなのか。
それよりは今目の前にあるやるべきことで手一杯ということなのだろう。
まだ、一人一人が自分の長所や短所をしっかり自覚してそれを課題にするまでにはいたっていないということなのだろう。

この西浦ナインでも花井だけはないものねだりをしているといっていいだろう。
田島のようにどんな球でも打ちたいというないものねだり。
それ故、時々マイナス思考になるが、その田島に近づくための努力は惜しまないだろう。

阿部のないものねだりがないのは、そういう課題をしっかり持っているということなのか。
影で秘かに努力しているのか。
それとも阿部にとっては宇宙人の三橋相手で手一杯というとこなのか(笑)


補足:第2期 「おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」

これで、「おおきく振りかぶって」アニメ版は終了となります。
しかし、初戦(2回戦)で前年優勝校でシードの桐青高校に勝ったということで、西浦高校の夏はまだ続きます。

それが、アニメ版では「おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」としてこの夏の大会が描かれています。
ということで、この「おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」も続けてこのブログに書きたいと思います。
なお、最初の「おおきく振りかぶって」全25話はアニメ版第1期、「おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」全14話はアニメ版第2期として表記する場合もあります。

また、「おおきく振りかぶって ~夏の大会編~」は放送分は全13話ということらしいのですが、特別編の1話は、第1期の特別編と比べても唐突な感じはなく話の流れに沿ったものなので、わたしは全14話としました。
おそらくそういうこともあって、特別編は12.5話という風になっているのだと思います。(*1)

(*1)
おおきく振りかぶって COMPLETE Blu-ray Disc BOX;http://www.oofuri.com/

また、原作の漫画の方は、3月23日(金)に第29巻が発行(発売)されました。
当日に買って(キンドル版)、一気に読んでしまいました。
ほんと、引き込まれてしまいます。
これで、原作は現在までの全29巻を手に入れました。


おおきく振りかぶっての
HPは
 http://www.oofuri.com/1st/
放送のHPは
 http://www.tbs.co.jp/anime/oofuri/1st/
ウィキペディアは
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6
 おおきく振りかぶっての登場人物;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9
です。

YouTube(https://www.youtube.com/)から
Ookiku Furikabutte (TV 2007) Opening 1 【OP1】 『Dramatic』 by Base Ball Bear - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=3_545HwqH8A
 
Ookiku Furikabutte 1 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=xWfKZgTsBeA
 
Ookiku Furikabutte Ending 1 [Sub Español] - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=flY3bTuEWoI
Ookiku Furikabutte - Ending 2 (Thai Sub) - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=1mQLUXRlqk8

ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)から
 タッチアップ(タッグアップ);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97
 ネクストバッターズサークル;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AB
 少年野球;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E9%87%8E%E7%90%83
 リトルシニア;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%8B%E3%82%A2
 ボーイズリーグ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0
 リトルリーグ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0
 

桜咲く
20180328水 桜咲く


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おおきく振りかぶって その4 アニメ 第11話~第18話(全25話)

今回の「おおきく振りかぶって」アニメ版は、第11話から第18話までについて書きます。

高校野球夏の選手権の地区予選(埼玉大会)の組み合わせが決まり、西浦は2回戦(初戦)で去年の地区予選で優勝した(つまり甲子園の全国大会に出場した)桐青高校となった。
この強豪に対して、百枝まりあと阿部隆也と田島悠一郎は勝つ気満々で激しい練習と情報収集を行なう。
また、三橋廉の幼馴染の浜田良郎が応援団を作るという思わぬ味方も出来た。
いよいよ、桐青との試合が始まり、阿部のデータを生かした配球とそれに答える三橋の絶妙のコントロールで序盤は桐青を翻弄する。
対して打線は、桐青の投手の高瀬準太の隙をついて2点を先取する。

各話の題名は
第11話「夏がはじまる」(DVD第4巻)
第12話「応援団」(DVD第5巻)
第13話「夏大開始」(DVD第5巻)
第14話「挑め!」(DVD第5巻)
第15話「先取点」(DVD第6巻)
第16話「あなどるな」(DVD第6巻)
第17話「サードランナー」(DVD第6巻)
第18話「追加点」(DVD第7巻)
です。

この「おおきく振りかぶって」アニメ版が3月19日(月)現在、GYAO!(https://gyao.yahoo.co.jp/)で第1話から第5話まで無料視聴できます。
第6話以降も順次配信されていきます。配信日は月・水・金です。
URLは
 https://gyao.yahoo.co.jp/p/00908/v14289/
です。
「PLAY」が赤になっていれば視聴可能です。

第2話の配信終了日は2018年3月25日(日)になっています。
第2話は3月12日(月)に配信されたので、第2話以降の各話は配信されてから2週間無料で見れるようです。


☆あらすじ

(11)
高校野球夏の選手権大会の埼玉県地区予選(埼玉大会)の組み合わせを決める日となった。
西浦ナインは全員会場へ足を運んだ。
緊張のあまり栄口勇人(さかえぐちゆうと)と三橋廉(みはしれん)はみんなより先に会場のトイレに行き、そこではからずも三橋は秋丸恭平(あきまるきょうへい)を伴った榛名元希(はるなもとき)に出会った。
榛名は三橋が西浦の投手だと知って「勝った」と思い、三橋にお互い頑張ろうなと言う。
その言葉を聞いて、三橋は有頂天になり、榛名を良い人だと思う。
そのことを阿部隆也(あべたかや)に言うと、阿部は見下されているのが分からないのかと思い、80球しか投げない榛名なら大して勝ち上がれないとみて、お前が見下した投手で勝ち上がってやるからみてろ、と敵愾心を露(あらわ)にする。

組み合わせのくじ引きは主将の役目であり、花井梓(はないあずさ)は阿部にからかわれながらもくじを引くと、なんと対戦相手は去年の(埼玉)優勝校でシードの桐青高校となり、花井は青ざめる。
西浦のナインの何人かは勝てないと思い意気消沈するが、百枝まりあ(ももえまりあ)と田島悠一郎(たじまゆういちろう)と阿部は勝つ気満々である。
阿部は「きちんと打順を組んで田島を使えば1点くらい取れるだろう」と言い、桐青は露出が多いのでそのデータを分析すれば、「あとは守備で変なミスさえしなければこいつが完封してくれる」と三橋をつかんで言う。
百枝も阿部の案に賛成する。
そして、百枝は夏太までに対桐青の準備をするために練習時間が必要ということで、朝5時から夜9時まで練習することをみんなに伝える。

桐青ナインは西浦と当たることになってややうかれていて半レギュラーで十分とかいっていたが、そこを主将が全員レギュラーで西浦と対戦するんだといって引き締める。

夏大の組み合わせの帰りに、三橋は同級生の浜田良郎(はまだよしろう)に呼び止められる。
その浜田が三橋に俺のこと覚えてないかと聞いて、山岸荘の名を出すと、三橋はギシギシ荘と叫ぶ。
そこでお互いギシギシ荘での幼馴染だと分かる。
そうすると、浜田はその馴染みもあって応援団を作りたいと言う。

(12)
三橋は、ギシギシ荘で浜ちゃん(浜田)にグローブをもらった夢から目覚め、浜田君は浜ちゃんだったんだと喜びに浸る。
その浜田は志賀剛司(しがつよし)から朝練に参加するようにいわれて寝ぼけ眼でグラウンドに来る。
浜田が来たのを見た三橋はそわそわするので阿部が三橋を浜田のとこに引っ張っていく。
改めて浜ちゃんだと見知った三橋は感涙し、浜田はいっこ上だと思っていたというと、浜田は留年して三橋と同じ学年になったと言う。

志賀の瞑想の時間が始まり浜田も参加することになった。
この1ヶ月で5分かければみんなはリラックスできるようになったとのことである。
そこで瞬時にリラックスするために、いよいよリラックスの条件付けが始まる。
志賀はみんなから条件付けのアイテムを考えさせて、そこから導かれたのがピンチでもチャンスでも最も緊張するのがサードランナーがいる時だということになった。
そうすると、サードランナーとして既に百枝が立っていた。
そのサードランナーの百枝をイメージしながら瞑想を行なう。

浜田はいっしょにやって意味あったのか思っていると、百枝が浜田に声をかける。
百枝は応援団の重要性を語り、ぱっと浜田の手を握り、スタンドを選手以上に前向きな状態にして欲しいという。
浜田は俄然やる気が出る。

こうして本戦までの毎日、激しい練習が続く。
浜田の「挑め!」と書かれた横断幕も出来上がった。

(13)
篠岡千代(しのおかちよ)がふらふらしながらグランドにやって来る。
それは桐青の各打者のデータを徹夜でまとめたからである。
百枝はそのデータを見て感激する。
早速、そのデータを元に、阿部と花井を呼んで対桐青用の対策を練ることにする。
そうすると、その前に三橋が阿部に見て欲しいことがあると言う。
それは角材の上に軸足で立つことであった。
その努力を見て阿部は、「絶対桐青に勝ってこいつを有名にしてやる」と思う。

三橋家の三橋母に花井母から電話がかかってくる。
それは開会式を見に行く誘いであった。
あまりにも長話であったので、三橋は電話している母の前で寝てしまう。

そして、遂に開会式の日がやってくる。
篠岡は先輩といっしょに開会式を見る。
その先輩から(恋の)本命を聞かれて照れる。

「ただいまから全国高等学校野球選手権埼玉大会の開会式を行ないます」「選手入場」のアナウンスがあって始まる。
ナインは桐青にびびりもなく堂々と元気良く行進して入場する。
花井母と三橋母はスタンドで感激しながらビデオ撮影している。
篠岡はいままでの思いも蘇って感涙する。
「どうか、どうか、みんながひとつでも多く、勝てますように」と思う。

開会式が終わって西浦ナインが球場の外にいると、花井母は花井のことを「花井、花井」と性の方で呼ぶので三橋母が怪訝になんで名前で呼ばないの聞くと、花井母は「梓(あずさ)」という名の方で呼ぶと怒ると言う。
花井母は百枝を見つけると寄って行き挨拶をする。
百枝は花井母に花井が主将としてしっかりやってくれていると褒める。
花井母は三橋母を百枝に紹介する。
三橋母が三橋が1番などもらっていいのかとおどおどしていると、百枝は三橋はかっこいいと褒める。
花井母は百枝にお礼がいいたいと言って、花井が監督(百枝)や先生(志賀)のことを褒めておりとても楽しくやっていると話す。
そこで、花井母は三橋母とも相談し、ちゃんと父母会を作ってお手伝いをしたいと申し出る。
百枝は感激して、「はい、ありがとうございます」と申し出に感謝する。

西浦のグランドでは浜田が冬の学生服を着て二人の応援団員をも連れてナインに挨拶に来た。
浜田は応援の人を200人も確保して明日応援すると言う。
また話のはずみで、浜田がリトルリーグ肘になって野球を断念したことが明らかになった。
そんな浜田を見て、花井は「浜田さん、援団やってくれてありがとう、応援よろしくお願いします」と礼をする。
浜田は感涙するが、援団の二人は花井たちをだましているとちゃかす。

阿部は三橋と桐青の各打者との配球の打ち合わせをしようとするが三橋が全然覚えていないので切れる。
三橋は阿部の要求しているとこに投げるから、覚える必要はないと言う。
阿部はそんな三橋をみて、さすがにコントロールには自信があるんだなと思い、それが俺(阿部)への信頼からならそれはそれで嬉しいけど責任重大だと思う。

一方、桐青では主将の河合和己(かわいかずき)がナインに気合を入れていた。

そして、桐青との試合の日がやって来た。

(14)
空は今にも泣きそうな曇り空である。
西浦のオーダーは、1番センター泉・2番セカンド栄口・3番ショート須山・4番サード田島・5番ライト花井・6番ファースト沖・7番レフト水谷・8番ピッチャー三橋・9番キャッチャー阿部である。
浜田たち応援団も入場することになり、浜田が誘導していたらそこに母親たちがやって来て、浜田は目ざとく三橋母を見つけて懐かしく声をかける。

河合は百枝を見て女の監督だということを意識してしまい、また選手が1年生だけということにもやりにくさを感じる。
三橋は応援の人の多さに勝負の責任を感じてびびってしまう。
そこで阿部は声かけしようかと思っていたら、スタンドから浜田と三橋母が声かけをしたので、阿部は「浜田とおばさんナイス!」と思う。
三橋は、浜田が三橋母と会ったことや三橋母が1番をもらって来て嬉しかったことなどを話したので、びびりもなくなりリラックスした。
西浦が先攻となり、百枝は桐青の守備のウォーミングアップを見ながら、桐青がレギュラーで臨んできたことに感謝してやる気満々になる。

1番の泉孝介(いずみこうすけ)が打席に立つと、桐青のバッテリーはノーデータなので警戒しすぎて2ボールとなる。
そこで泉は次はカウントを整える為にスライダーが来ると予想して、見事にピッチャー返しでセンターに抜けるヒットを打つ。
2番栄口は初球をきれいにバントして泉を2塁に進塁させる。
4番田島で1点を取るため百枝は3番巣山尚治(すやましょうじ)にもバントの指示を出す。
桐青のバッテリーは須山にはバントフライでアウトを取ろうと画策するが、投手の高瀬が思った以上にあがっているので、素直にバントしてもらってワンナウト(1死)を取ることにする。
そのため、須山もきれいにバントをして泉は3塁に行く。
その須山を見てスタンドでは母親たちの話が花盛りになって、最後は田島の賛美に終わった。

ランナー3塁ということで真打ちの田島が登場する。
百枝は特に指示もせず田島のバッテングセンスに託す。
桐青のバッテリーは1球目は小さな変化のフォークで田島に見送らせてストライクを取り、2球目は高瀬の決め球のシンカーで空振りのストライクを取る。
ここで、西浦の応援席から田島コールが起こる。
田島はシンカーを予想するがその球を追いきれなくて空振りの三振となる。
田島が空振り三振したので本人も百枝も花井も高瀬のシンカーのきれに驚く。
田島は花井に左打者用の決め球のシンカーは難しいので右打者用の決め球のフォークを花井に打つように言う。

西浦の守備となったので、阿部は「うちのエースのお披露目だぜ」と思う。
桐青の応援は、ベンチに入れなかった部員の踊りつきの応援で大いに盛り上がる。
本当の1番の背番号で晴れのマウンドに立った三橋は、俺は一生懸命投げるぞと思う。

そして桐青の1番サード真柴迅(ましばじん)が打席に立ち、三橋は第1球を投げる。

(15)
阿部は真柴が桐青で唯一の1年生なのでここが穴だと思う。
真柴は西浦のみんなが1年生でしかも三橋が一番ひ弱そうなのでさっさとけりをつけようと大振りする。
そんな真柴を見透かしたように阿部はストレートを要求し三球三振に仕留める。
百枝はこの立ち上がりに満足するが、三橋がつかまったらそこで勝負がつくのでくれぐれも慎重にと思う。
真柴はベンチで同期の仲沢利央(なかざわりおう)に大振りをちゃかされる。
真柴が反論していると監督にも同じように大振りを指摘され仲沢と変わるかといわれる。
真柴は1番の仕事をちゃんとすると言う。
そんなやりとりを見ていた河合は高瀬に話しかけるが相変わらず高瀬がまだかたいので、ほんと投手は微妙な生き物だと思う。そして、それでもまるで負ける気がしないとも思う。

2番はサードファールフライに仕留める。
3番になると桐青の応援は盛り上がる。
阿部は3番の島崎慎吾(しまざきしんご)は1球目は見てくるとみてボールで入り、その島崎が足場をならしたので、打ち気になったとみて、カーブを要求する。
そのカーブに泳いだ島崎の打球はライトファールフライとなるが、花井は後向きのままダイビングキャッチをして見事にアウトにする。
打ち上げての三者凡退に終わったので、桐青の三人とも監督に怒られる。
1回はたった6球で終わった。

三橋が呆然としていると、阿部が三橋に濡れるぞという。
ここで、曇り空から小雨の雨空となった。
阿部が三橋に今日は調子いいなといって三橋を見ると顔が真っ赤で汗もかいているのでちょっと違和感を感じる。
三橋は阿部や田島や花井がいれば俺は桐青からアウト取れるんだ、早く投げたい、今日はいままでで最高のピッチングが出来ると思う。

5番の花井は球が見えるということで積極的に打つと狙い通りセンター前ヒットとなった。
6番の沖一利(おきかずとし)の時、高瀬が1塁へ牽制をしたので百枝は待てのサインを出す。
2度目の牽制で田島は高瀬のモーションを盗み、花井に俺の合図で走れと言う。
田島のGOの合図で花井は走り2盗に成功する。
花井も百枝も沖も田島の独断だったので驚きびびる。
花井は田島が投手のモーションを盗んだことにただただあきれ驚く。
それに動揺したのか高瀬は沖に四球を与えてランナーは1・2塁となる。
7番の水谷文貴(みずたにふみき)は次の打者が三橋ということで百枝の指示でスライダー待ちのヒッティングに行く。
読み通りのスライダーを打った打球はセンターに抜けるかというライナー性の打球だったが、セカンドがそれを横っ飛びで好捕する。飛び出した沖もアウトになる。

8番の三橋には百枝は策をさずけてもそんな技量はないからとともかく好球必打を指示する。
三橋の打った球はボテボテのゴロになるが転がったとこが良くて内野安打になる。
三橋は1塁に走りこんだ勢いで2転3転と転げる。
阿部は真っ青になるが三橋は体が柔らかいのかどこも怪我はないようだった。

9番阿部の打席になったが、この時三橋のリードが大きく三橋が1・2塁間にはさまれてしまった。
三橋が逃げまどっている間に、花井が3塁からホームベースに走りこむが、三橋がタッチアウトになるのとどっちが早かったということになった。
両者、主審(球審)の判定を待つ。

(16)
主審は「スコアザラン」と告げて、花井のホームインの方が早かったとして、西浦に待望の先取点が入る。
西浦の応援は盛り上げる。

高瀬は呆然となるが、この1点を取られたことで、自分が緊張していたことに気づく。
河合は高瀬にチェンジなのでベンチに引き上げるように言って、引き上げながら高瀬のモチベーションをどうやって上げようかと思っていると、後(うしろ)から高瀬の笑い声が聞こえてくる。
すると、高瀬は三橋の逃げるときの顔が変だったので思い出し笑いをしていた。
高瀬はベンチに帰っても笑いが止まらず、河合が「点取られて力抜けたか」というと「はい、やっと目が開きました」と答える。
高瀬はまた河合にモーションを盗まれたようだとも言う。

三橋は1塁に駆け込んだ時に転んだので、志賀は三橋をチェックするが特に問題はない。
三橋がマウンドに行くとまた西浦の応援が盛り上がる。
篠岡が耳温計で三橋の体温を図ると7度8分あったので、やや高いため三橋の体調を注意しておく必要があると百枝は言う。
阿部も三橋を心配して楽させてやりたいと思うが、桐青は4番ショート青木毅彦(あおきたけひこ)からなのでそうもいかないと思う。
阿部は青木が桐青の打線の軸ということから、ヒットならしかたないということで、甘い球だけは投げさせないようにするが、それでもファールボールを場外まで飛ばす打力に驚く。
2ストライクとなったがヒットなら御の字と欲を出さずひっかけさせようとして内角にシュートを投げさせると青木は見送るがストライクとなって三球三振に仕留める。
これをみて阿部は俺のリードが桐青に通用すると思い、また三橋の調子が良いのでヒット用に組み立てた配球で三振が取れるとも思う。

5番の河合もスライダー、カーブ、シュートで三球三振に討ち取る。
河合も監督に呼ばれて叱られる。
6番も三振に討ち取る。
桐青の監督も選手からの情報だけではなぜ遅い球の三橋に抑えられているのか分からないので、もう1イニング(1回)様子を見てからとし、仕掛けるのは中盤以降の腹積もりにする。

3回の表の西浦の攻撃は阿部からで、阿部は今の内に点を入れたいと思っていたが、高瀬が本来のピッチングを取り戻したのでストレートだけの三球三振に終わる。
この阿部の三振を見て、百枝は高瀬の調子が戻ったとみる。
ベンチに戻った阿部に三橋は三振を4つも取れたのは、阿部のおかげだといって、「ありがとう」と言う。
それを聞いて阿部は、うるるんとなる。が、阿部は冷静に戻って考えると今日の三橋はテンションがおかしいと思う。どうも三橋は飛ばしに飛ばしていて自分の力を制御できていないようでどこかでパンクすると思う。

1番の泉がヒットを打ち、2番の沖はキャッチャーフライで送りバント失敗に終わるが、3番の須山はライト前に打ち返し、ランナー1・2塁となって、このチャンスに再び4番の田島の出番となる。
この須山のヒットで河合は西浦をあなどれないチームと感じ、持っている力の全部を出さないと勝てないと思う。
そこで田島に対しては始めから決め球のシンカーを投げてくる。
田島はシンカーを2つ空振りするのであるが、こういう風にシンカーを空振りしていたら最後までシンカーがくるだろうから楽しいと思う。しかし、それではチームが勝てないと思い、次のシンカーはじっくり見ようとするが、桐青のバッテリーはその裏をかいてストレートで田島を見逃しの三球三振に仕留める。

その頃、三橋のいとこの三橋瑠里(みはしるり)が三橋の応援の為にわざわざ群馬からくる。
瑠里は三橋母に挨拶をして、母親たちといっしょに応援する。
三橋は3回裏も好調で三者三振で終える。

(17)
三橋の快投に瑠里はびっくりし、ナインは頼もしく思い祝福を送る。
阿部は3回裏の桐青の打者はみんなボールを見てきておりその後長々と監督に報告していたので、勝負はこれからだなと思っていると、百枝が阿部に声かけをしてきて桐青の打者はボールを見ていたね、と言う。
そして三橋の調子を聞いてくるので、良すぎだと言うと、百枝も三橋は飛ばしすぎだと言う。
阿部と百枝は同じような状況判断をしている。
そこで、百枝は阿部に阿部の裁量で相手に1点を与えてもいいからそれでリードしなさいと言う。
阿部は「はい」と答える。

花井は三振に終わる。
6番の沖もストレートを当てたので、河合はストレートに絞って打ってくるということから、前の打席で沖が四球を選んだのは監督指示とみて百枝のその統制力に驚く。
そこで改めて百枝を見ると、その女の魅力に顔が赤くなる。しかし、相手の監督の仕草を見るのは自分の仕事だと自分に言い聞かせる。
沖も三振に終わる。
百枝は2ストライクになったら決め球で手玉に取られるから、それまでに打たないと手がないと思う。
7番の水谷にはそういうことでスライダー待ちを指示するが、水谷もバッテリーに翻弄されて三振に終わる。
それでも百枝は2球までなら勝負できるとこまでよく伸びたと感心し、またチャンスがあると読む。

打順が一巡したので、桐青の監督はみんなに渇を入れる。
ゴロを打て、ボール球は振るな、基本の野球をしろと言う。
そして、選手に目に付いたことはないかと聞くと、コーチスボックスに立っていた一人の選手が三橋のコントロールが抜群だと言う。
河合は百枝が打者に1球ごとにサインを出していたので、バッテリーの配球を呼んでいる可能性があると言う。
高瀬はモーションを盗まれたと言う。
それらの話から監督は、西浦はこちらの投打を研究してきてそれに対応しているのだと気づく。
監督は高瀬にモーションが盗まれたのは気にするな、三橋は球が遅く球種が多くコントロールの良い投手ということでバッターボックスの前に立ち変化する前に打てと指示する。
そして、雨でグランドも面白いことになっているのでかき回せと言う。

1番の真柴が2順目の打席に立つと、阿部は振り回す奴ならいくらでも討ち取れると思う。が、真柴は意表をついてバントをし1塁を駆け抜ける。
この真柴を見て百枝は速いしバントしてから1塁への走り方を知っている子だと思い、阿部はこの足があっての1番起用かと納得し、まじいな仕掛けてくるなと思う。
真柴はすかざす2盗をする。百枝はこの盗塁を見て、相手を褒めるしかないと思う。
阿部は打者勝負で一死を取るとナインに指示する。
百枝はこの阿部の指示に1点上げてもいいとはそういうことよと得心する。
阿部は2番にフライを打ち上げさせようとするが、2番も送りバントを成功させ、ランナーは3塁となる。

阿部はサードランナーは気にせず、島崎を確実にアウトにしようとする。
三橋はサードランナーを見て投球する。真柴は三橋に見られたのでなんだと思う。
島崎は待っていた変化球が来たので、レフトに抜けるような良い当たりだったが須山が好捕し内野安打止まりとなる。しかし、ランナーは1・3塁となり桐青の攻撃パターンになる。
百枝も桐青の攻撃パターンに感心し、「がつがつしてなくてやになっちゃう」と思う。
このチャンスに桐青の応援は大いに盛り上がる。

阿部は3塁ランナーがホームをつくこともあるからと1塁ランナーが盗塁するのは見送ることにする。
阿部は2・3塁になったので、守りやすくはなったが1点ならいいから1点で抑えるに変わってきたということで、青木にはけっして甘い球は投げさせないと思う。
三橋が投球ごとにサードランナーを見るので真柴は気持ち悪いと思う。

ここで青木が意表をついてかセオリー通りか分からないがスクイズバントをするがそれがピッチャーゴロとなり阿部はしめたと思う。
しかし、その球は雨で濡れたグランドで投手と捕手の真ん中くらいで止まってしまった。
サードの田島では間に合わないので、阿部は取りに行こうかとも思うがそれではホームがあいて2塁ランナーまでもが帰ってくると思っていると、三橋が「はいっ」と声かけしてボールを取りに行こうとする。
それを見て田島は右手で取れ、ホームで刺せるぞと叫ぶ。

三橋が倒れこみながらも右手でボールを阿部に送球すると、間一髪、島崎をホームでタッチアウトにする。
これを見て百枝は身震いをし、西浦の応援はいやがうえにも盛り上がる。

(18)
次打者の河合は、このタッチプレイに関して三橋と阿部のバッテリーに感心する。
ツーアウト(2死)にはなったが、ランナーは3塁にいて、5番の河合だから西浦のピンチはまだ続く。
阿部は内角を要求して河合にサードフライを打たせるが、この打球が伸びず田島は飛びついてなんとか取る。
これを見て河合はボールの下を思い切し叩いていると思う。
その河合の前を三橋と田島が引きあげてくるのだが、三橋がよろけるとその三橋を河合がつかんで支えた。
三橋も田島もそんな河合にとても好感を持つ。
阿部は三橋がこけたのを見て青ざめる。

西浦の攻撃は8番の三橋からだが、三橋がこけたのを見た阿部は三橋に打つなと言う。
それを聞いて三橋はきょとんとなったので、言っても無駄と悟り、嘘だと言う。
それで、どんどん振ってさっさと三振してこいと思う。
一方西浦のベンチでは、田島が高瀬のモーションの癖を説明するのだが、誰もその投球と牽制の微妙な差が分からない。
そこで、百枝は田島に出られる間はずっと1塁ベースコーチに出るよう指示する。
百枝は、そんな田島を見て「田島君ってほんとに凄い子!」と思う。

三橋はバッテングが良くなっていて、高瀬のストレートを2球ファールしたので、バッテリーは決め球のフォークで仕留めようとしたが、指のひっかかりが悪く、三橋の臀部(でんぶ)に当ててしまう。
西浦のベンチも応援団もどよめきたつが、三橋は阿部の心配をよそに痛くないと言う。
そんな三橋と阿部を見ていて、高瀬はまた笑い出しそうになるが必死に我慢する。

百枝は三橋に盗塁のサインを出す。
それを見て阿部は、こけたことを百枝に言うべきだったと思う。
高瀬のモーションを盗んだ田島のGOの掛け声で三橋はなんなく2盗に成功する。
河合はマジで盗まれていると分かり、ヒットは全部2ベース以上かと、やや気落ちする。
百枝は阿部にバンドのサインを出す。
阿部はバンドをしようと思ってグランドを見ると土が軟らかくなってへこんでいるとこがあり、そこを狙うことにする。
河合は阿部を打撃が駄目なキャッチャーと見て、そこからバントは3塁側にすると予想し、三橋をアウトにしようと思う。
高瀬がストレートを投げてきたので、阿部はバスターのふりをしてからバントをし球をへこんでいるとこに転がす。
阿部の頭脳的なプレーでノーアウト(無死)1・3塁と西浦は絶好の得点チャンスを迎える。
河合も桐青の監督も阿部のプレーに驚く。

桐青の監督は次の打者は今日2安打の泉なのでこの打者で勝負にくるだろうと見、また3塁ランナーが投手の三橋なので、ランナーは動かずスクイズもないと見る。
桐青の監督の指示はバッター勝負なので、バッテリーは泉に力勝負をして三振に仕留める。
桐青の監督は次の打者栄口には1球目からのスクイズありと見る。

栄口はリラックスする為に、サードランナーの三橋を見るが三橋は栄口に見られておどおどする。
そこで3塁コーチの西広が三橋に瞑想・サードランナー、三橋がサードランナーと言って三橋を落ち着かせる。
栄口は条件反射的にリラックスはないが、朝の瞑想を思い出し力が抜けた気になる。
バッテリーはスクイズと見て、2球はずすがその素振り(そぶり)がないので、桐青の監督は試しにスライダーを投げるようサインを出す。
これでも動きがないので、桐青の監督はスクイズなしと判断する。
2球ストライクが続き、ファーストとサードがダッシュしてこなかったので、百枝は桐青がスクイズ警戒を解いたと見る。
百枝はここでやるしかないとサインを出す。

田島のGOの声でランナーが走ると高瀬は器用にはずすが、栄口が横っ飛びでこのはずした球をバントする。
栄口が三橋にノースライと叫び、三橋はホームを駆け抜け2点目と歓喜の声をあげる。
西浦の応援は太鼓がドンドンとなりまたまた盛り上げる。
阿部はほっとし、桐青の監督は「読み負けかよ、ちっ」と悔しがる。
瑠里は三橋の活躍に「レンレンが」「レンレンのチームが勝っているんだ」と興奮する。


☆所感

桐青高校は、去年の埼玉大会の優勝校ということだがここらへんの実力は微妙といえる。
それは高校野球だからである。
去年優勝した時のレギュラーがどういう構成だったかということである。
大半が3年生であったならば、今年はそのメンバーはいないということになる。
逆に、1・2年生が半数以上であったなら、連覇も十分考えられるということである。

この桐青の場合は、去年は3年生がレギュラーの中心であったと思われる。
それは、投手の高瀬準太(たかせじゅんた)が2年生ということである。
ということは、去年は3年生の投手が投げていたといっていいだろう。
まさか、1年生の高瀬が投げていたということはないだろう。
そうすると捕手の河合和己(かわいかずき)も今年からレギュラーになった可能性が高い。
2年生の時から主将ということはないだろう。
また、この2人以外は1年生の仲沢利央(なかざわりおう)くらいしか名が出てこないということでもそれほどの選手(いわゆる全国区クラスの選手)はいないといえる。武蔵野第一の偵察の時もこの3人であった。

そういうことでは、去年の優勝校ということはかなりのプレッシャーになっていると思われる。
その上に大会初出場で全員1年生で10人しかいないチームということで、勝って当たり前という雰囲気があるのでそれもまたプレッシャーになるだろう。
実際、見た目(ランキング的に)勝って当たり前という相手で、しかもその相手がどういうチームか分からないというのはとてもやりにくいといえるだろう。
油断が生じたり、逆に力んだりするだろう。

以下の会話など聞くと、そこらへんの不気味さみたいなものが河合になんとなくあったのかもしれない。
河合和己(かわい かずき)(捕手)
「あぁ、準太」
高瀬準太(たかせじゅんた)(投手)
「はい」
河合
「あのなあ、明日試合、朝一だろう」
高瀬
「はい」
河合
「あぁ、ブルペン寄らずに行くだろうから、一応言っとく、一応な」
「お前とも長い付き合いだけど、特にこの1年はバッテリーで世話になった
 ふっ、ありがとな」
高瀬
「なんでいま言うんすか」
河合
「えっ、やっぱりブルペンで一番多く受けたし、明日はここじゃ投げないから」
高瀬
「明後日(あさって)投げるでしょ」
河合
「ふっ、そっか
 明後日投げるか」
高瀬
「そうすっよ」
{ナインが集まってくる}
河合
「分かった、こういやいいんだ
 今日で練習は終わりだ
 色々厳しいことも言ったけど
 ここまで付き合ってくれて、ありがとう」
「明日から本番だ、よろしくな」
全員
「はい」

そんなことからか、投手の高瀬は抑えてやろうと力んで、棒球になったのだろう。
しかし、桐青にそういうプレッシャーがあって普段の野球が出来なかったとしても、相手(西浦)も去年の優勝校だということでびびっていれば同じような状態なのでそういうことなら地力に差がある桐青が勝つだろう。
しかし、この西浦は百枝まりあ(ももえまりあ)や阿部隆也(あべたかや)の相手を見たデータに基ずく戦術や志賀剛司(しがつよし)のメンタルトレーニングの戦略で、桐青にほとんどびびらずに普段の野球をしたのである。
そういうことになると、最初はどっちの方が本来の力を出すかといえば、西浦である。
それがここまで、桐青を無得点に抑え、桐青から2点を先取したのである。

それなりの条件とか要因があってなかなか本来の力を出せないということが往々にしてあります。
その中でなかなかその実態を捉えられないのがメンタル(精神)といえる。
そういうことでは、メンタルを常にある方向に向けておくというのもひとつの方法であろう。
そういうメンタルコントロールを志賀は行なっているといえよう。

その志賀のリラックスの条件付けは、サードランナーということになった。
ピンチやチャンスで緊張した場合、一度リラックス(その緊張をリセット)して、あるターゲットに集中するための条件反射の要素がサードランナーである。
パブロフの犬でいうと、サードランナーが鈴である。

しかし、思うにパブロフの犬の条件反射は生理的現象でしょう。
生理的現象というのは一意的とまではいわないが、個体差はあまりないといえるでしょう。
しかし、精神面しかも人間の精神面はいまだにほとんど解明されていないといっていいくらいの個体差のある複雑な系でしょう。
それがパブロフの犬みたいに簡単に条件反射されるとはとても思えない。
おそらく、これは「信じる者は救われる」という一種のおまじない(ジンクス)といっていいものだろう。

緊張すると、よく手の平に人の字を書いて飲み込むといいとか言われるのと同じではないかと思うのだが。
これはそれを信じている者には、これで緊張が解けたと自分に思い込ますことができるのでしばしば緊張が解けることもあるだろう。
しかし、それを信じていないものにはほとんど効果がないだろう。

だから、志賀の理論もそれを信じている者にはおそらくリラックス効果をもたらしているだろう。
三橋などは単純に信じているようなので、おそらく効果はあるだろう。
一般的には、栄口のような感じのプロセスでリラックスの効果を信じていくということなのだろう。
「ランナーを見ていきなりリラックスはないな。でも思い出せ。朝のグランド、靄(もや)と緑の匂い、まだ低い気温、鳥の声、隣の奴の手の温度。よし、力抜けた気がする。」

そもそもピンチやチャンスに緊張しない者や反対にピンチやチャンスになる燃えてくる者には不要なことといえよう。
例えば、田島や阿部である。

では、そういうピンチやチャンスに緊張する者だけがこの志賀の理論を行なえばいいということにもなる。
それなのに全員がこの志賀のメンタルトレーニングを行なうというのは、単なるメンタルトレーニングだけではない目的があるといっていいだろう。
それは、これを全員で行なうことによるチームとしての一体感である。

野球は直接的に9人で行なうスポーツであるが、各々ポジションが違うのでこの9人がチームとして同じような意識を持っているかというと必ずしもそうではない。
そういうことで、何か全員が同じようなことを行なうということは一体感の形成に役立つと思われる。

その上に、西浦高校は今年から新設の野球部なので一体感はより薄いと思われる。
有名校や名門校や伝統校ならば、それなりの実績があるので、そこの野球部に入ろうと思う者はそれなりに監督や先輩を慕ってとか優勝するとか何らかの一体感を持って入部してくるだろう。
しかし、この西浦の場合は、ここまでの物語を見る限りでは、阿部を除いてこの学校のこの野球部でこういう野球をやりたいと思って入部してきたものはいないといえる。
三橋のように誘拐されたり田島のように家庭の事情でたまたまだったり花井のように入部を拒否したりでこの野球部での一体感などはかなり乏しい感じである。

そういうことで、そういう10人の一体感を生み出すために考えられたのがこのメンタルトレーニングなのであろう。
食事という共通のことで同じ思念の元に食事をして一体感を醸し出す。
また、瞑想はお互い手をつないで、相手の心をもらったりあげたりすることで一体感を生み出す。
それは瞑想中に志賀の言う言葉(リスム)がそれを表しているといっていいだろう。
「さぁ、目をつぶって」
「いいかい、心臓から指の先まで血液が流れていくのをイメージしてみて
 自分の手の温度が隣の人より暖かければ自分の体温を分けてあげる
 自分の方が冷たければ相手に分けてもらうイメージだ」
「呼吸はなるべく長く吐く
 長く吐くのは筋肉の緊張をほぐすのを助けるためだよ」
「さぁ、呼吸をそろえようか」
「吸って、ちょっと溜(た)める、ゆっくり吐いて、
 吸って、ちょっと溜める
 朝御飯が消化されて吸った空気で燃えて体温になるのを想像する」
「ゆっくり吐いて上がった体温を隣の人にも分けてあげる
 もらう人は遠慮なくもらう」
「僕らはチームになったんだ」
「吸って吐いて、吸って吐いて」
正に、この「僕らはチームになったんだ」というのが、この一体感をよく表していると思う。

また、手をつないでいるというのも一体感を生む効果があるだろう。
相手と接触しながらの言動というのは好悪はあっても、接触しない場合よりもその言動の印象が強く残ることは多いであろう。
だからこそ、百枝は阿部や浜田に肝心なとこで手をつかんで話をしたといえるだろう。

浜田良郎(はまだよしろう)が応援団を作るということで、百枝が応援団の心構えとして、(親の)溜息を禁止するというのであるが、これはこの場合は適切といえると思います。

というのは一般的に球児は高校生ということで、まだ未成年で親の庇護(保護)の元にいるからです。
つまり、親の顔色をうかがって生活しているということです。
また、自我も発達途上のため他人の言動に左右されることも多いからです。

その親としては当然自分の子には期待しています。
当然打席に立てば塁に出ることを、打球が飛んでくればそれを処理してアウトにすることを願っています。
打席に立ってもアウトになれとか打球が飛んできてもエラーしろなんて思っている親は絶対的にいないでしょう。
そうすると、期待が高ければ高いほど、その期待と違うプレーをすると思わず、溜息も出るでしょう。
それを聞いた気の弱い子なら、親の期待を裏切った親の期待に答えられなかったということで、親の顔も見れないほどに落ち込むこともあるでしょう。
それなれば、もう試合どころではなくなることもあるでしょう。

そういうことで、(親の)溜息はその子のやる気を削ぐ最も効果的な手段となるでしょう。

とはいっても、これはアマチュアで自我の確立期で親の庇護(保護)の元にあるという特殊状況のことである。

これがプロ(プロフェッショナル)ということになれば話は別である。
プロということでは、プレーはもちろん他者に自分を知ってもらうということも大切な仕事である。
賞賛であろうが野次であろうが溜息であろうが(もっといえば誹謗中傷であろうが)それは相手が自分に関心を持っている(知っている)ということである。
だから、相手が自分に関心を持っているということなので、それを最大限に利用すべきである。
自分を好きは維持し自分を嫌いは好きにさせるようにすればいいのである。
自分が何をしても相手が何も関心を持たないという無視よりはだいぶましなのである。
そもそも賞賛だけを受けていたら、それ以上の発展もないといえる。
毀誉褒貶(きよほうへん)があるからこそ、人は進化発展できるのである。
プロなら、どんなことでも自分に関心を持ってくれているということで、それをプラスにするくらいの力量は必要であろう。

そういうのが嫌なら、生涯アマチュアでいるべきだろう。

とはいっても、同じ高校生でも阿部や田島悠一郎(たじまゆういちろう)や榛名元希(はるなもとき)は賞賛であろうが野次であろうが溜息であろうがもしかしたら誹謗中傷ですらそれをプラスの方向にもっていくであろう。
現に榛名など阿部から「最低の投手」というある意味誹謗中傷といえるようなことすらそれを力にしているように見受けられる。
誹謗中傷というのは、ある程度その誹謗中傷を受ける側の説明不足という面もあるだろう。強(し)いて言えば説明責任を果たしていない時に起こるともいえよう。
現在の状況をちゃんと相手に説明しておれば、そういうこともないといえる。
榛名も阿部に自分の現在の状況をちゃんと説明しておれば、80球降板というのも納得していたであろう。
それに阿部にしても珍しく論理的思考を欠いて感情的になっているといえよう。
本来の阿部ならばなぜ榛名がそういうことをするのかデータ(あるいは情報)を元に分析するのであるが。
通常、結果には原因があるものなのに、その原因を探求せずに自分の思い込みで榛名を「最低の投手」と決め付けているわけだ。
まぁ、そのくらい榛名はこの時の阿部にとって大きな思い入れのある存在だったということなのだろう。自分の論理的思考を壊すくらいの存在ということなのだろう。可愛さ余って憎さ百倍というところか?
ここらへんは若気の過ちともいえるだろう。
大概、誹謗中傷というのは情報不足から誤解が誤解を生んで起こるともいえよう。

ともかく、阿部や田島や榛名は年齢が高校生というだけで、もうプロ向きの選手といえよう。
榛名などは阿部に言わせると、プロになることを前提に高校野球をしているということなのだから、

というようなことだが、ここで百枝が浜田に溜息禁止といったのは、そういうこともあるがどちらかというと、浜田を百枝の統制下に置きたいと言う趣旨が強くて、応援団の方針というようなことを言ったのだろう。
というのは、百枝は野球部の監督だから当然球児を百枝の統制下におけるのは当たり前だろう。
しかし、応援団は必ずしも百枝の統制下におけるとはいえない。
特に今回は百枝が誰か意中の者に頼んで応援団を作るのではなく、浜田が勝手に私設応援団を作りたいということである。
これはほとんど百枝の統制外といえるだろう。
つまり、浜田が自分勝手に応援することもありうるということである。
そこで、百枝は浜田を自分の統制下に置こうと画策してのこの発言である。
そこらへんは、浜田に朝練に参加させていることでもうかがえよう。
そうすることによって、浜田にこの野球部の方針や個々の選手の傾向を知ってもらい、それに適した応援をしてもらうということであろう。
これが大人数の野球部なら、ベンチ入りの選手以外はスタンドからの応援に回れば、おのずと応援団は監督の統制下に入り、また部員はともに練習しているのでどの場面でどのような応援をすれば、プレーしている者のモチベーションが上がったりやる気が出たり冷静になったりすることが出来るのかかなり分かっているので、戦っている選手はベンチ入りの選手だけではなくスタンドにいる選手もということになる。

いかんせん、部員が10人の西浦ではそういう芸当は出来ないので浜田にそういう役割をやってもらわなければならない。
そういうことで浜田を野球部のすなわち百枝の統制下におきたいということである。
そのためにこの発言の後に、女の武器を使って浜田の手を握ってお願いするのである。
こういうのは阿部に対しても使った手である。

阿部はこのことに直接的な意識はなかったが、浜田の場合はもっと直截に「わぁ、俺、変な感じに楽しいぞ」と思ってしまう。
これで浜田はおそらくこの女の為に人肌脱ごうとまで行かなくても、百枝の意向に沿った応援をしようと思うだろう。

百枝がこういう女の武器を使ったのは、ここまででは阿部とこの浜田だけである。
ということで、なぜ百枝が阿部に使ったのかということをここで改めて考えてみる。

あるプロジェクトを実行しようとして複数人を招集すると、大体3種の人が集まってくると考えられる。
1.優秀な人
2.普通の人
3.劣っている人
である。
このような人が集まってくるとそれを束ねるリーダーはこれらの人に合った対応をする必要がある。
優秀な人に対しては、叱る(しかる)。
普通の人に対しては、褒める(ほめる)。
劣っている人に対しては、無視する。
ある仕事を与える場合、
優秀な人にはそれが出きるという前提で与えているので、それが出来なかったならばなんらかのことで手を抜いたと思われるので、そのことに対して叱る。
普通の人には成長することを前提で与えているので、それが出来たら褒める。
劣っている人には出来なくてしかたないという前提で与えているので、それが出来なくても特に問題にしない。

例えば、西浦の攻撃の打順ならば、田島はここぞというところでヒットを打って欲しいということで4番にしている。
花井はその体力で本塁打を打てる可能性があるので将来の4番を期待して5番を打たせている。
三橋は打てる可能性がとても小さいので8ないし9番にしている。
田島がチャンスで好球を見逃して三振したり凡打ならおこられるだろう。
花井はその体力を生かして長打を打ったなら褒められる。
三橋はたとえ三振したり凡打だっても特になにもいわれない。塁に出たりしたらもうけものである。
阿部にしたら三橋に三振してこいとかいったり、百枝にしたら三橋はマイナスくらいがちょうどいいということになる。

ただし、このことはあるプロジェクトの話であって、その人の全ての才能や人格をいっているものではない。
打撃では劣っている三橋は投手としてはチームの要なのである。
阿部にしたらコントロールの良い理想の投手であり、百枝にしたら三橋が崩れたらこのチームは終わりなのである。

そういうことで優秀な者はものすごく頼りになるがまた危険なのである。
つまり、チーム(プロジェクト)の命運を左右する存在なのである。
そういう存在が、リーダーの手中にあればこれほど力強いことはないが、リーダーの意向と違うことをしだしたらチーム(プロジェクト)は瓦解してしまうだろう。

この西浦の優秀な者はそういうことでは、阿部と田島と三橋とカッコつきで花井といえるだろう。
百枝にとって三橋は安全パイであり、花井は現時点では田島の存在がありまた主将ということにしているのでその責任感から良き協力者となるだろう。
そうすると後は阿部と田島である。
田島は野球センスの塊のような天才であるが、基本的に自由人であり、その自由度を許容さえすれば百枝の方針の障害になるようなことはない。

危険なのは阿部である。阿部は勝ちの理論を持っているので、その勝ちの理論が百枝の戦いの理論と衝突するようなことがあれば、直接的にか間接的にかは分からないが造反することは十分考えられる。
つまり、チーム内に百枝との不協和音を起こす可能性があるのである。

その勝ちの理論で榛名と衝突したように百枝と衝突しないとはいえないだろう。

百枝としては、三橋を生かすためにもチームを勝ちに持っていくためにも阿部はかかすことのできない存在なので、阿部の造反を抑えて自分の手中に収めておかなくてはならない。
そのための、ひとつの手段が女の武器を使うことだったといってもいい。

初戦(2回戦)で桐青高校との対戦が決まった時にも、田島は感覚的に勝てるといったのでナインはなぜ勝てるのかを理解できなかったが、阿部が論理的に説明したのでナインはそれなりに納得しまた百枝もその案を支持した。
ここらへんに、阿部と田島の他者(ナイン)に対しての訴求力の違いがあるのである。
阿部にはナインを納得させるだけの理論(方法)があるが田島にはない。
田島が何かを主張しても田島だから出来るということで必ずしもナインが田島につくということにはならないが、阿部はその主張を相手に納得させるだけの理論があるのでナインが阿部につくということもあるだろう。
ただ、この西浦は百枝は当然ながら部長の志賀もメンタルの理論を持っていたりして、ナインを納得させて行動させることができるので、阿部もそれほどの論理的な違和感はないといっていいだろう。
百枝が阿部の性格を良く知っていてコントロールしているということだろう。


☆会話(引用)

志賀剛司がリラックスを条件付けする。(12)
志賀剛司(しがつよし)(部長)
「時間だよ、集合しょう」
「今日も瞑想から始めるよ」
「浜田、訳わかんないだろうけどいっしょにやってみてくれ」
浜田良郎(はまだよしろう)(応援団長)
「あっ、はい」
志賀
「この前はリラックスと集中は同じって話をしたんだよね」
「緊張している時、意識的にリラックスするのはすごく難しそうだろ
 だけど実は君らはもう自分の意志でリラックスすることが出来るんだよ」
「君らは1ヶ月間で体感瞑想して5分かければ手が暖かくなるようになった
 手が暖かいってのはリラックスしている証拠
 つまり君らは5分かければ意識的にリラックス出来るようになったんだ」
栄口勇人(さかえぐちゆうと)(2塁手)
「いまの話聞いていて思ったんですけど」
志賀
「何かな」
栄口
「あっ、リラックス出来たのはいいんですけど5分も時間がかかったら意味ないんじゃ」
志賀
「いいところに気がついたね
 そう、5分もかかっちゃ実用的じゃない」
「リラックスは反射で出来なければ意味がないんだ」
「さぁて、どうすりゃいんだろう」
花井梓(はないあずさ)(外野手)
「じゃ、リラックスは条件付け出来るって言っていましたよね」
志賀
「うん」
花井
「いや、でもさすがに無理か」
志賀
「ほうら言って言って、無駄な意見はないよ」
花井
「うん、え~とですね
 俺が考えたのはピンチの状況とリラックスを条件付けられないかってことです」
ナイン
「おっ」
志賀
「おおっ」
花井
「あっ、いや、その、さすがに無理すっね」
志賀
「いやぁ、花井の発想力は凄いね」
{花井、照れる}
「いや、ちょっと不自然な感じするだろうけど条件付けってそういうもんなんだ」
{浜田、訳わかんなくてヘロヘロになる}
「いっぺん整理しょうか
 梅干食べれば唾液が出る、これは体が元々持っている反射だ」
浜田
「あっ、全然、わかんないよ」
泉孝介(いずみこうすけ)(外野手)
「後で解説してやっから」
浜田
「ありがとう」
志賀
「では、梅干を食べる時、必ず鈴を鳴らすようにしたらどうなるか
 1週間続けると鈴の音を聞くだけで唾液が出るようになる
 つまり条件付けは一見なんの関係ないもの同士でも起こるところがミソ(味噌)なんだ」
水谷文貴(みずたにふみき)(外野手)
「あのう、その理屈でいくとピンチとがちがちって条件付けされちゃってないすかね」
ナイン
「えっ」
水谷
「だから、え~と野球のピンチに手足ががちがちになるのは生まれつきのもんじゃあない、でしょう」
志賀
「なるほど、確かに生まれ持っている反射じゃないね
 つまり条件付けの塗り直しは出来るのかって質問だね」
水谷
「まぁ、そうかな」
{田島、難しくなってへろへろになりそう}
志賀
「結論だけいえば、出来るよ」
「例えば、マラソンランナーなら1番苦しい35キロ付近の風景とリラックスを条件付けるって具合だ
 ただし、唾液の条件付けよりリラックスの条件付けの方が難しい」
「なんでだと思う」
栄口
「それなら分かる
 リラックスには梅干みたいなアイテムがないからだ」
志賀
「その通り、いままでの1ヶ月の瞑想で君たちはそのアイテム作りをしてたんだ
 梅干みたいな強烈な奴は無理だけど
 手をつないで5分でリラックスっていうアイテム作りは出来たはずだよ
 さぁ、初戦までに反射でリラックス出来るように仕上げていくよ」
ナイン
「はい」
志賀
「ところで、何とリラックスを条件付けようか」

「なにとって」
志賀
「なるたけ具体的なものがいいね
 見えるか聞こえるか触れるか
 リラックスしなければならない場面に必ずあるものがいいだろうね」
巣山尚治(すやましょうじ)(遊撃手)
「え~と、野球場?」
志賀
「広すぎるね、色んな球場があるし」

「そうか、緊張する場面を塗り変えるんだったな
 ピンチに必ずあるもの、ってなんだ」
栄口
「あのさ、緊張すんのってピンチ?、チャンスの方がやばいのって俺だけ?」
須山
「ああっ、俺もそっちだ
 ランナーがスコアリングポジションへ行くと凄えドキドキする」
水谷
「いや、そりゃピンチも同じでしょう
 やっぱランナーがスコアリングポジションに」
ナイン
「あっ、あっ」
水谷
「そうか、ピンチとチャンスってグランドの状況は同じなんだ」
栄口
「じゃ、ドキドキするのはとにかくランナーが2塁以降に行った時ってことか」
沖一利(おきかずとし)(一塁手)
「いや、やっぱ手足が縮こまるのはランナー3塁だよ」
ナイン
「怖いよねぇ」
志賀
「よお~し、いいかな
 じゃ、一丁ランナー3塁でやってみようか」
ナイン
「はい」
志賀
「では、今日はチャンスを想定してやってみよう」
「サードを見てごらん」
{サードに百枝が立っている}
ナイン
「おおっ、うえっ」

「いつの間に」
志賀
「今日はここで瞑想するよ
 サードランナーの見える位置に立って適当に近くの人と手をつないで」
「始めはうまくイメージ出来ないはずだよ
 まず監督をしっかり見て、それから目をつぶってみよう」
{みんな目をつぶる}
「さぁ、サードランナーを思い浮かべてみよう
 ベースにスパイクの乗っている場面
 ベースから2~3歩リードして構える場面
 リラックスしたままイメージ出来るようならそのまま続けて」
「サードランナーとリラックスを強く結びつけよう
 呼吸はいつもの通りだよ
 深く吸って、ちょっと止めて、ゆっくり吐いて」
   ・
   ・
{志賀、柏手を打つ}
「はい、終わり」
百枝まりあ(ももえまりあ)(監督)
「さぁ、アップはじめましょう」
「体内時計はまだ寝てる時間だからね
 いつもより丁寧に体を暖めってね」
ナイン
「はい」

応援について百枝まりあと浜田良郎の会話(12)
浜田良郎(はまだよしろう)(応援団長)
「よ、終わったのか」
「選手でもない俺がここにいる意味あったのかなぁ」
百枝まりあ(ももえまりあ)(監督)
「浜田くん」
浜田
「どうああぁ、はい」
百枝
「うふ、初めまして
 私、監督をやらせてもらってます、百枝です」
浜田
「ひえあっ」
「は、浜田です」
「援団、やらせてもらいます」
「か、監督」
百枝
「うん」
浜田
「さ、さっきのメントレですよね
 俺いっしょにやっちゃったけどよかったんすか」
百枝
「浜田くん」
浜田
「はい」
百枝
「志賀先生にも言われたと思うけど応援団ってすごっく大事なんだよ」
浜田
「あ、はい」
百枝
「応援団は選手を元気にも出来るけど、選手のやる気を一気に奪うことも出来るの」
浜田
「な、そんなことしないすよ」
百枝
「浜田くんはしないかもねぇ」
浜田
「じゃ、誰すか」
百枝
「あの子らの親、かな」
浜田
「親?」
百枝
「浜田くん、スタンドの何が選手のやる気を奪うんだと思う」
浜田
「て、敵の応援?」
百枝
「違う」
浜田
「野次?」
百枝
「違うな」
浜田
「じゃ、味方の溜息?」
百枝
「当たり」
「応援団は溜息ついちゃいけないの
 溜息つくのってどんな時」
浜田
「がっかりした時すね」
百枝
「そうね
 そしてがっかりするのは一生懸命応援している人なのよね」
浜田
{浜田、合点の手を打つ}
「あぁ、一番熱心に応援しているのは親だから
 親が一番溜息ついちゃうのか」
百枝
「そういうことなの
 浜田くんは溜息ついている親を見つけたら、スタンドから叩きだしてちょうだい」
{百枝、鬼の顔から仏の顔になって}
「なんちゃって、冗談だよ、冗談」
{百枝、浜田の手を取って}
「そうじゃなくてね
 浜田くんには選手以上のポジテブシンキングを身に着けてもらって
 スタンドを常に前向きにしといて欲しいの」
「そのためにメントレに参加してもらったんだ」
浜田
(この女、去年の優勝校と当たるってのに勝とうとしてる)
百枝
「わたしの言う事、分かる」
浜田
(うわぁ、なんか俺、変な感じに楽しいぞぉ)
「はい、頑張ります」
   ・
浜田
「木製バットを使ってるんすか」
百枝
「バットの芯で打つ訓練にね
 って、でもそれが全然飛ばなくて、止めちゃった」
浜田
「えへっ」
{浜田、ピッチングマシンを見て}
「これ130くらい出てないすか」
百枝
「うん、130」
浜田
「ああぁ」
{浜田、百枝とバッテング練習を見る}
浜田
「俺、球拾い手伝います」
百枝
「あぁ、ほんと、ありがとう」
「ある球打ち切ったら全員で拾いにいくから出来るだけでいいよ」
浜田
「あ、はい」


おおきく振りかぶって
HPは
 http://www.oofuri.com/1st/
放送のHPは
 http://www.tbs.co.jp/anime/oofuri/1st/
ウィキペディアは
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6
 おおきく振りかぶっての登場人物;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9
です。

YouTube(https://www.youtube.com/)から
Ookiku Furikabutte (TV 2007) Opening 1 【OP1】 『Dramatic』 by Base Ball Bear - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=3_545HwqH8A
 
Ookiku Furikabutte 1 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=xWfKZgTsBeA
 
Ookiku Furikabutte Ending 1 [Sub Español] - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=flY3bTuEWoI
Ookiku Furikabutte - Ending 2 (Thai Sub) - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=1mQLUXRlqk8

ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)から
 条件反射;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E5%8F%8D%E5%B0%84
 全国高等学校野球選手権大会;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E9%87%8E%E7%90%83%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9%E5%A4%A7%E4%BC%9A
 全国高等学校野球選手権地方大会;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E9%87%8E%E7%90%83%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9%E5%9C%B0%E6%96%B9%E5%A4%A7%E4%BC%9A
 野球用語一覧;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E7%90%83%E7%94%A8%E8%AA%9E%E4%B8%80%E8%A6%A7
 バスター;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC
 ピッチングマシン;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3
 球種 (野球);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%83%E7%A8%AE_(%E9%87%8E%E7%90%83)
 ベースコーチ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%81
 反則打球;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E5%89%87%E6%89%93%E7%90%83
 スクイズプレイ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4
 バント;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%88
 犠牲バント;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%A0%E7%89%B2%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%88
 スコアリングポジション(得点圏);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%97%E7%82%B9%E5%9C%8F
 死球;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E7%90%83
 公認野球規則;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E8%AA%8D%E9%87%8E%E7%90%83%E8%A6%8F%E5%89%87

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黎明
20171230土 黎明


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おおきく振りかぶって その3 アニメ 第8話~第10話(全25話)

今回は「おおきく振りかぶって」アニメ版の第8話から第10話までについて書きます。

春の大会を見学に行った西浦ナインであるが、阿部隆也はそこでシニア時代にバッテリーを組んでいた投手の榛名元希と出会い、阿部の原体験が語られる。
夏を戦い抜くために、西浦ナインは花井梓を主将とし、第2・第3の投手として花井と沖一利、第2の捕手として田島悠一郎を選抜する。

各話の題名は
第8話「スゴイ投手?」(DVD第3巻)
第9話「過去」(DVD第4巻)
第10話「ちゃくちゃくと」(DVD第4巻)
です。


☆あらすじ

(8)
三星学園との練習試合に勝った三橋廉(みはしれん)は、みんなから祝福を受けている夢から目覚める。
練習のため学校のグラウンドに行く途中で口勇人(さかえぐちゆうと)と出会い、お互いのことを話しながらいっしょに行く。その話の中で三橋は阿部隆也(あべたかや)がバッテリーを組んでいた凄い投手のことを聞いて少なからず動揺する。

グラウンドではまず部長の志賀剛司(しがつよし)が次のメンタルトレーニングをみんなに提唱する。
それは瞑想によるアルファ波の効用である。
志賀はみんなにアルファ波を実感してもらうために、マネージャーの篠岡千代(しのおかちよ)に蛇がいると叫ぶ。
それで篠岡が驚くと、いま篠岡はアルファ波がもの凄く出ていると言う。
そこで志賀はリラックスとは集中して余計な力を抜くってことだと説明する。
そのリラックスを志賀は条件付けの反射でできると言う。
リラックスしているのがわかるのは手の平であり、その手の平を暖かくする(つまりリラックスする)ために体感瞑想というのを行なうと言う。
それはみんなで手をつないで目を閉じゆっくり呼吸することで、リラックスを導き出すというものであった。
これを練習前に毎回5分間行なう。

それが終わると監督の百枝まりあ(ももえまりあ)は練習後に春の県大会の試合を見に行くと言う。
田島悠一郎(たじまゆういちろう)がどの対戦かと聞くと、百枝は浦和総合と武蔵野第一と答える。
それを聞いて、阿部は「武蔵野第一だって」と意味深になる。

球場にて、巣山尚治(すやましょうじ)が百枝に何回戦かと聞くと、百枝はこれに勝つとベスト8だと答える。
それを聞いて阿部が「微妙」と呟くと、その呟きを耳にした百枝は「大きすぎる目標は目標にならない場合があってね」と言う。

スタンドで西浦ナインの何人かが武蔵野はサッカーは有名だが野球は大した事ないとか話していると、武蔵野の選手が西浦ナインのいるスタンドに来たので、少しびびるがその選手は「隆也、隆也」と叫ぶ。
みんなは隆也って誰って思っていると、篠岡が阿部にあの人が呼んでいると教える。
そこで阿部はその選手が呼んでいるということで舌打ちしながらもそちらの方へ行く。
そしたら栄口が三橋にあの選手が朝言っていた凄い投手の榛名だと教える。

榛名元希(はるなもとき)は阿部にどこの高校に行ったんだと聞くと、阿部は西浦と答えるが、榛名は?マークになる。
そうすると、武蔵野の捕手が来て、榛名に教える。
西浦が今年軟式から硬式になって1年生だけと知った榛名は阿部に「おまえもつくづく人に従えない性格だな」と言う。
榛名は阿部に俺の球を捕れる様になるまで半年かかったなと挑発するような言い方をする。
そして、また捕れなくなってるぜ、よく見とけと更に挑発する。
それを見ていて百枝は阿部が言った微妙という意味を分かった気になる。

阿部が戻ってくると栄口は阿部が榛名と同じ学校に行くと思っていたというと、阿部は絶対嫌だと言って、更に「あいつは最低の投手だ」とも言う。
榛名がライトのポジションにつくと、西浦ナインは阿部にピッチャーじゃなのかと聞く。
すると、阿部はやや馬鹿にしたような感じで4回から投げると言って、阿部と組んでいたシニアでは厳密に80球の球数制限をしていて、それをどんなことがあっても守っていたと語気が荒くなる。

この試合は次の対戦相手を始めとして各校が偵察に来ていた。偵察の目的は榛名ということのようである。

榛名は4回の登板のためにプルペンで投球練習をし出すが、そこで球の威力を阿部に見せるために捕手を座らせる。
その球速を見た三橋は完全にびびってしまい、阿部が自分を褒めてくれたのは自分に自信をつけさせるためで、自分など榛名の足元にもおよばないと思ってしまう。
逆にそれを見た田島は榛名との対戦が楽しみになり、ゲンミツに打ちそして勝つと言う。
それで三橋は少し元気が出たのか、「投げさせてもらえるなら、俺は一生懸命投げよう」と思う。

(9)
いよいよ榛名が4回から登板する。
その榛名を見て阿部は出会った頃を思い出す。
「榛名元希(はるなもとき)、あいつの前に座ると体が震えた」と、そしてこの速い球を捕れば確実にレギュラーにも成れると。
栄口がノーコンなのが最低の投手ってことと聞いてきたので、阿部の回想は更に続く。
阿部が1年生の時のシニアで監督から榛名を紹介されバッテリーを組むことになった。
榛名が捕球のことで阿部を馬鹿にしたようなことを言ったので、阿部はむっとして反論したが、榛名の球があまりにも速すぎて榛名のいうように捕れない。
それから時は流れ、榛名が阿部の体を見て痣(あざ)だらけなのでまたしても馬鹿にするが、そんな榛名が言った「お前、怖がらないからな」という褒め言葉で阿部は少しは認められたと思い気合が入る。

そうすると、栄口が三橋を呼び、榛名がなぜ最低の投手か気になるだろうと言って、三橋も聞くことになる。
阿部しか榛名の球を捕れなかったので阿部は2年生の時からレギュラーになれた。
栄口がそんな凄い榛名とバッテリーなのにその相手を最低の投手とか言うと、今組んでいる三橋だって良い気持ちはしないというと阿部は榛名がなぜ最低の投手かということを話し出す。

阿部に言わせると、榛名はプロを目指していて絶対に1試合80球までしか投げないと言う。
榛名は俺様の性格の上に中学で故障したことで防衛本能に火がついたということである。
榛名は阿部のリードを無視するようなこともしばしばあったが阿部はそれでも榛名と組めたことを幸運だと思っていた。
しかし、関東ベスト8をかけた試合で阿部のチームが初回に5点も取られたということで、榛名は全力投球はしないと言う。
阿部が1球だけでも全力で投げて欲しいというが榛名はそれも無視する。
しかも、自分のノーコンで無死満塁にしておきながら、80球ということで降板する。
「俺、何のためにここにいるんだ。何のためにあいつの球捕っていたんだ。」と阿部は呆然自失となる。
この試合は7-21で阿部のチームが負ける。

阿部は一人トイレで悔し涙を流していると、そこへ榛名が偶然やってくる。
その阿部を見て、榛名が「泣くほどのことか」というと阿部はついに切れて、榛名の胸倉(むなぐら)を掴(つか)んで壁に押し付ける。
それでも阿部は最後まで榛名と組んだが、榛名の実力や信念を認めつつも、チームのエースとしては最低で二度と組みたくないと言う。

それを聞いて三橋は、挙動不審になり阿部が三橋を認めているのは榛名のことがあったからだと思い、また阿部が榛名を最低の投手だというのは、阿部が榛名とちゃんとバッテリーとして野球がやれなかったからだと思う。
そんな挙動不審の三橋をみた阿部は、バックは安心するし相手はむかつくということで笑顔が良いといって、三橋に笑顔をさせる。
その三橋の笑顔を見て、栄口と阿部は腹をかかえて笑う。
三橋は「阿部君には俺が投げる」と心の中で誓う。
その阿部と榛名との話を栄口がみんなに話していいかと阿部に聞くと、みんなはびくっとする。

そして試合は最終回になり、榛名は阿部の方を見る。
それに気づいた阿部は、田島に見ろという。
榛名が全力投球の豪速球を投げると、捕手がそれを捕れなくはじく。
榛名は捕手に謝り、1球だけとなる。
田島は1球だけなのでがっかりする。
試合は榛名の力投があり武蔵野第一が4-3で勝つ。

見るのに飽きてきている者もいるので、百枝はここで観戦を終えさせる。

試合が終わったので榛名が阿部の居た所に行くがもう阿部はいなかったので球場の外まで探しに行く。
秋丸恭平(あきまるきょうへい)が榛名にどうしたんだと聞くと阿部だと言う。
秋丸が阿部のことを知っていたので榛名が驚くと、榛名がシニアに面白い1年がいるといつも自慢げに言っていたという。
榛名が阿部を自分のことを最低呼ばわりする超なまいきな奴だと言うと、秋丸はそのころの榛名は故障のことからすさんでいてそんな榛名と正面きって付き合っていたのかと思ったら思わず身震いが起こり、「俺、隆也の気持ち分かるわ」と言う。
秋丸は榛名のダウンをしながら「俺は隆也に感謝する」と思う。

(10)
百枝がうちに足りないものがあるねというと、阿部がもう一人投手が欲しい、という。
それを聞いた三橋はショックのあまり目の前が真っ暗になりへろへろになる。
それは他の投手にマウンドを取られるかもしれないという恐怖だった。
これから多くの試合をこなすには、三橋にだけ投げさすわけにはいかないと、百枝が説明しても三橋は納得しなく泣く。
そこで、田島が機転をきかして三橋の背中にエースナンバーの「1」を書くと、三橋はそれでなんとなく納得した(笑)

ので、二人目の投手としてまがりなりにも投手経験のある花井と沖が指名される。
捕手ももう一人必要だというと、またしても三橋が動揺するが、それにおかまいなく百枝は田島を指名する。
始め田島は捕手に興味を示していなかったが、百枝が強い打球が来るとか高いキャッチャーフライを捕れたらとても気持ちいいとかうまくいうと、田島はその気になって引き受ける。
そして10人しかいないので試合をこなすために各自2ポジション以上を担当することになった。

阿部と三橋のピッチング練習(投球練習)で、三橋が気のない球を投げたので、阿部が歩み寄って訳を聞くと、二人目の投手ということもだが、自分の捕手が阿部でなくなることが一番不安ということだった。
三橋に言わせると、阿部がいるから自分の価値を見出せているということだった。
そこで阿部は自分が受ければお前は良い投手になれるのかと聞くと、三橋が「うん」と言ったので、阿部は
三橋が自分を肯定する台詞(せりふ)を言ったのは初めてだと思い、「なら俺、3年間怪我しねぇよ、病気もしねぇ、お前の投げる試合は全部キャッチャーやる」と啖呵を切ると、三橋は笑顔になる。
そんな三橋の「うん」と言う声をそれとなく聞いた百枝は二人の良好な関係に満足する。

花井と沖は田島とピッチング練習をする。

練習後に、百枝から主将を決めようという話が出る。
そうすると、みんなはそれぞれ適任者を思って一斉に花井を見る、そうすると百枝もご満悦で花井を推奨する。
花井は全員からでは断わるにも断われなく主将を引き受ける。
その花井は副主将として、阿部と栄口を指名する。
花井の初仕事は声だしをして練習を終わることになり、花井は戸惑いながらも「夏大まで頑張るぞ、ニシウーラッ」と叫ぶ。

いままで補欠だった西広辰太郎(にしひろしんたろう)もポジションが決まって練習をし、ライトフライを捕って感激する。
そんな西広を見ていた三橋は篠岡とぶつかってしまう。その篠岡から三橋はお誕生日おめでとうと言われる。

練習後、百枝から試験週間ということで勉強の話が出る。
田島からなんで先生みたいなこというんですかと文句が出ると、百枝は鬼の志賀の顔が浮かび、成績が悪いとどちらにも集中できないことになるから勉強も必要だと言う。
そこで赤点が心配な者ということで聞くと、三橋と田島が総なめであったので、百枝は赤点取ったら試合に出させないと脅す。

勉強をどうしようかということでみんなで苦手を教えあうということになったのだが、場所がないと思っていたら三橋が自分家(じぶんち)を提供すると言う。
三橋家(みはしんち)へ行くと阿部は三橋のピッチング練習場に目がいく。
三橋と田島は勉強のできる西広が教えることにして、みんなで勉強しようとすると三橋の母が帰ってくる。

三橋母はみんなが来たのは三橋の誕生を祝うためだと思っていたので、三橋はあせってしまう。
そしたら田島が「みんなでお祝いしょうぜ」と言ったので、場が一気に和む。
花井が三橋母も誘うと、三橋母は花井を「良い子ね」と言って感激する。
三橋の誕生が祝われ、須山と花井が4月生まれということで、須山と花井もここで祝われる。

阿部は目にしていた投球練習場にみんなを誘って、三橋に9分割で投げさす。
それを見てみんなは感心し、阿部は田島に真似できるかと聞くと、田島は「努力の賜物だろう、真似は出来ないよ」と言って「三橋、行こうな甲子園」と煽(あお)る。
三橋は「行きたい!」と同意する。
みんなはそんな三橋を見て変わったなと言う。
阿部は「あの時俺は三橋の弱気は変えられないと思ったし、変わらなくていいと思った。俺のサインに首さえ振らなきゃ性格なんてどうでもいいと思っていた。俺が俺の野球をやれれりゃいい、なんてつまんないこと、どうして思っててたんだろう(略)こいつの努力全部生かしてやりたい。三橋を勝たせたい。」と思う。


☆所感

武蔵野第一高校と浦和総合との試合を見に行って、はからずも武蔵野第一の榛名元希(はるなもとき)が阿部隆也(あべたかや)に声をかけたことから、阿部の原体験のひとつが明らかになった。

阿部と榛名はシニアでの阿部が中学1年生で榛名が中学2年生の時に出会っている。
2年生の榛名が阿部のいるシニアに途中から入ってきて、監督がまだ決まった相手がいなかった阿部に紹介して組むことになったのである。
阿部は最初は榛名の球が捕れなくて痣(あざ)だらけになるが、ある日榛名に褒められたことによってますますやる気が出て、このチームでは阿部だけが榛名の球を捕れる捕手となり、榛名が3年生でエースとなった時にレギュラーとなる。
しかし、榛名はある経緯(いきさつ)から1試合80球という球数制限をしている上に速球派にありがちなノーコンであった。
そこで、阿部はそれを分かった上で配球の組み立てをするのであるが、それすらも榛名は無視する。
それでも、阿部は榛名が凄い投手だということで、敬意があったので我慢していたが、その堪忍袋の緒がある試合で切れてしまった。

その試合で榛名が無死満塁の状態なのに80球となったからとマウンドをこともなげに降りたことである。
これで阿部は自分の存在を否定されたような感じになったと思われる。
阿部にとっての試合とは、勝つために全力を尽くすことである。
勝つ戦いをしない者は阿部にとっては背信行為ということになろう。
ということで、背信行為の裏切り者の榛名は阿部にとって最低の投手となった。

そんな阿部と榛名の関係だけど、阿部と榛名は友だちに成れるかというと、友だちに成れるでしょう。
少なくとも榛名は阿部に好意を持っていることは確かでしょう。
榛名は特に意識していなくても秋丸が「シニアに入って榛名はゆっくりと元に戻っていった。その間、隆也がずっと付き合ってくれたんだ。そりゃ苦労も嫌な思いもしただろうなぁ。自分が腐っていた時のことなんか榛名には忘れちゃって欲しいけど、こいつが今当たり前に投げている事が、俺は隆也に感謝する。」いうように結果的に榛名にとっては阿部は忘れられない存在であろう。
まぁ、阿部にとっては秋丸がいうような善意的なことではなく、あくまでもこの投手(榛名)がいれば勝てるということおよびレギュラーになれるということでの付き合いなのであろうが。

同じ言動をしても相手の受け止め方によって善意にも悪意にもなることもあるだろうし、自分が善意でしても悪意に受け取られたり悪意でしても善意に受け取られることもあるだろう。
ここらへんは微妙というか結果オーライってとこもあるかもしれない。

勝つことへの一途なことから先輩後輩(目上目下)関係なくその理論を貫徹しようとして遠慮なくいうところが逆に榛名としては阿部を気に入っているともいえよう。
阿部としても榛名を最低の投手とは言っているが、別に榛名を嫌っているわけではないだろう。というか投手としてのその実力に敬意すら持っているといえよう。
自分の思い通りにならないからいらだっているだけである。
しかも、榛名の実力を認めているだけによけいにもどかしいともいえる。
お互い相手が気になるといえる。
人間の度量としては、榛名も天才の一人なので榛名の方が上だろう。
そこらへんで阿部の方がしこりを持っているといえよう。

なぜ、しこりが残っているかといえば、思ったように出来なかったからである。
勝つ理論を持っている阿部としては、こうすれば勝てるというのがある。
この場合、榛名が阿部の思うような投球をすればそこに勝ちの道もあったのである。
この勝ちを導く方法があったのにそれが出来なかった。
その責任は誰にあるかといえば、当然、阿部にあるといえよう。
阿部がこの投手がこういう投球をすれば勝てると思っているのに、その投手にそういう投球をさせることが出来なかったのだから、それはそういうことを考えた者に責任があるだろう。
つまり、阿部の人間観が狭く投手を気持ち良く自分の思ったようにコントロール出来なかったということである。
阿部もそういうことは漠然とは分かっているが、まだ形としてはそれが出来ないので、今は榛名が悪いつまり最低の投手だということでその代償をしているということである。

そこらへんが阿部の中ですっきりしたら榛名とのしこりもなくなるといえよう。
ここらへんは、孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず(かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず )」の己を知る部分がまだまだ足りないともいえる。

投手はロボットではなく人間なのだから、阿部の思った通り(理論通り)に動くはずがない。
そこをうまく動かすことに捕手(人生)の妙技があるといえよう。
しかし、今の阿部にはそこまでの技量も度量もない。

そこらへんは三橋廉(みはしれん)も阿部の理論において勝てる徒手なのだから、今のように性格にイライラするのではなく、一人の人間の投手として認めいつも三橋が気持ちよく投球するように三橋の心身をコントロールすべきである。
ここらへんは阿部の度量が試されるともいえよう。

そういうことで阿部と榛名は、歳をとったらこの二人のシニア時代あるいは高校時代の軋轢は笑い話になるだろう。

なんたってこの二人は似た者だろう。共に自信と信念と野心を持っているのだから。
榛名が阿部を評して言う「じゃ、先輩いねぇんだ。お前もつくづく人に従えない性格だよなぁ」も、阿部が榛名を評して言う「あいつにとって俺たちチームメートは練習道具でしかねえんだ。(略)榛名は俺たちとは全然違う次元で野球やってんだ。そういうのもありなんだと思うし、すげえとも思う。」も極端ではあるがお互い自他のことをいっているといっていいでしょう。

ところで、阿部と三橋は友だちに成れるだろうか。
こちらは今のままでは難しいだろう。
何せ対等ではないのだから。
これから先、三橋がどの時点で阿部と対等と思うのだろうか。

とはいっても、三橋が阿部と対等に成るのはかなり難しいであろう。
同い年といっても、三橋にとっては阿部は自分を初めて認めてくれた恩人なのだから。
別に西浦で野球をするためではなく未練たらしくグランドに来たら、百枝に誘拐されてつい投手といってしまって遅い球で恥をかくところだったのを、阿部がそのくせ球とコントロールで三橋の価値を見出してくれたのだから。
しかも、そのくせ球とコントロールを見事な配球によって勝ちに結びつけてくれたのだから。
阿部がいなければ自分には価値がないと思ってしかたないだろう。
榛名のように三橋が自分で配球できれば(つまりサインに首を振ることもある)少なくとも恩人であってもそれなりに対等には成れるのだが。

友人がなんらかのことで恩人になっても友人であるが、恩人はよっぽどのことがないかぎり友人にはなれないだろうと思うが。

この榛名との邂逅から、、
阿部がなぜ新設したばかりの海のものとも山のものとも分からない西浦高校に来たのか、その理由のひとつが分かった気がします。
それは、武蔵野第一高校の榛名が言った、「じゃ、先輩いねぇんだ。お前もつくづく人に従えない性格だよなぁ」です。
この言葉が物語っています。
阿部は勝つための理論を持っています。
しかし、既存の学校に行ったのならそこにはすでに先輩がいたりレギュラーがいたり伝統があったりで、必ずしも阿部の思っているような勝つ野球が出来るとは限りません。
というか、阿部の性格から言うと衝突する可能性が高いでしょう。
仮に1年でレギュラーを取れても、当然、投手(ピッチャー)は先輩だろうから、この榛名ほどではなくても阿部の思う通りの投球(ピッチング)はしてくれないでしょう。
その先輩にもっとコントロール良く投げろとか言うと、当然、衝突するでしょう。

そういうことを考えると、新設で1年だけしかいない西浦ならば、阿部の思うような勝つ野球が1年の時から出来るということである。
投手も阿部がとことん指導して、自分の思うような投手に育てることが出来るということである。
ところが、阿部にとっては大大ラッキーで、阿部の育てたいと思うような投手がもうすでにここにいたのである。
それが三橋である。
三橋は阿部の考える理想の投手であった。
もう、阿部にとってはこれ以上にない神様からの贈り物であった。
だからこそ、百枝まりあが三橋にもっと速い球を投げさせようとした時に、反対して百枝と衝突したのである。

これは阿部が意識しているかどうかは分からないが、監督が若い女性の百枝だというのも選択肢にあっただろう。
若い女性の監督ならある意味お飾り的で、自分の思うままになるというような読みもあったと思われる。
まぁ、この読みは外れてしまい、どちらかというと阿部の方が百枝の手の内で踊っているという感じになっているのだが。
ほんと「この女、何者」というくらいの野球センスと人心掌握術を持っている優れた監督だったのです。
ここらへんのことをはっきり口にしたのが花井梓であったということである。
「野球部入るのやめます」「監督が女だから」「監督が女ってありえねぇだろう」
阿部もこの花井と根本では同じ意識であったであろう。
だたし、阿部はだから自分の思うままにできるから、女の監督を歓迎して参加するということなのだろうから花井とはその行動は逆になるのであるが。

阿部ほどの理論派(頭脳派)が、何も考えなくて単純に大バクチで来たとは思えなかったのであるが、この榛名の言葉で少しは氷解したといえる。
阿部にとっての大バクチは、西浦に来ることではなく、西浦で自分の理想の投手を育てられるかということなのだろう。
西浦に来ることは、諸事情を勘案しての帰結のことなのであろう。
だからこそ、春休みも来て練習していたのである。
すべて、阿部の計算しての既定のことなのである。

まぁ、おそらく百枝も阿部のこういうところは気づいているであろう。

しかし、榛名はさすがに三橋と違って、阿部の本心を良く分かっているということだろう。
ここらへんはお互い何度も衝突しているから、そこから阿部の考えも榛名には分かっているといえよう。
というか、そういうことを考えると、榛名が阿部の要求したような本気の速球を阿部が頭を下げてまで哀願しても投げなかったのは、阿部のそういう本心を知っていてわざとしたといってもいいであろう。
榛名としても阿部のいいなりになるのはあんまり面白いことではなく、そうやって阿部をからかう方が面白かったともいえよう。
まぁ、逆に言えばそれくらい阿部に親近感を持っていたともいえよう。
試合そっちのけで、阿部に悪ふざけをするのだから(笑)

とはいっても、勝つことをその野球人生の目的にしている阿部にとっては、榛名は裏切り者と写ってもしかたないことといえよう。
だから、最低の投手なのである。

ここでこの最低の投手であるという言葉を聞いていた三橋が、「榛名さんだ、阿部くんの首を振る嫌いな投手は榛名さんだ。阿部くんの根元のとこに榛名さんがいる」と思う。
また、「阿部くんが榛名さんを許せないのはチームのエースとしてじゃない、自分のエースとしてだよ。阿部くんは榛名さんがちゃんとこちらを向いて欲しかったんだ。榛名さんとちゃんとバッテリーに成りたかったんだ。プロになってからじゃなくて、阿部くんといまやっている野球を大事にして欲しかったんだね」とも思う。
これも阿部の原体験を的確に捉えている言葉だろう。

こういう特質は弱い人間によくあることである。
弱い人間は意外と的確に相手の気持ちを捉えるといっていいでしょう。
そこから、己の生きる道を見つけるといっていいでしょう。

つまり、阿部との関係を持続するには、この阿部の原体験を自分に置き換えて、その阿部のしたかったことを自分が代替して行うということである。
そうすることによって、阿部の心に自分を住まわせるということである。
このことを知った三橋は、阿部の理想とする野球に全面的に協力するということである。
そうやって、阿部にとりつけば、自分の地位もまた安泰であるということを直感的(あるいは本能的)に分かったということである。

ところで、このことから思うに、三橋がマウンドを譲らなかった(降りなかった)というのは、弱者の防衛本能が働いたといっていいだろう。
三星中時代に、もし一度でも叶にマウンドを譲って、もし叶が良いピッチングをしたら、自分など見向きもされないということを直感的に分かっていたということだろう。
それは、明らかに自分より叶が上だと思っているからである。
自分の方が上なら、叶にマウンドを譲っても全く問題にしないだろう。
しかし、いくらマウンドを譲らない為に投げることが好きだとしても、何もしなければさすがに自分でも自分の行為に耐えられないだろう。
そこで、コントロールを磨くということにしたということだろう。

投手を続けるためにはこのマウンドにしがみつくという行為しかないというのは、今回、夏を勝ち抜くために第2・第3の投手や第2の捕手を作るということで、それがはっきり表れたといえる。
新たに投手を作るということで、三橋はお先真っ暗になるのであるが、田島が背番号1を書いてくれたので納得したり、新たな捕手を作るということで、またまたお先真っ暗になるのであるが、阿部が「3年間怪我しねぇ、病気もしねぇ、お前の投げる試合は全部キャッチャーやる」と言う言葉で元気になる。

自分に自信がないからこういうことになるのである。
三橋の代わりの投手を作るということではなく、多くの試合をこなすために三橋だけでは負担が大きいということで、他の投手もいるということである。
投手に関してはその投手が三橋に取って代わる訳ではないということでなんとか納得するが、さすがに捕手は阿部だから自分の価値を生かしてくれるということが分かっているので、こちらは怯えるしかなかった。
しかし、それも、阿部が必ず三橋の捕手になってくれるということで一安心する。
いずれにしても、今の段階でこの西浦でも投手を続けられるためには阿部しかいないということはよく分かっているといえよう。
思えば、百枝に誘拐された時は、投げるのすら嫌がっていたのに今では西浦で投げるのが当たり前という感じなので阿部がいなければということであっても大きな成長といえよう。

榛名が阿部を呼ぶ時に、「隆也」と名の方を言ったので、ナインは誰も阿部だと分からなかったのであるが、篠岡千代(しのおかちよ)が、隆也は阿部の名だと分かり、阿部に呼ばれていることを告げる。
これはよく分かる。
普段はみんな性の方で呼んでいるので、名の方を知らないということである。
まだ、野球部のナインとしての付き合いであって、友たちとしての付き合いがないから名までは知らないといえる。
というか、友だちになると、今度は愛称で呼ぶことが多いから、また氏名が分からないということにもなる(笑)
わたしなどでは、小さい頃は年上には大人がそう読んでいるから○○ちゃんだし、年下には名の一部(例えば隆也なら「たか」という具合)で呼んでいるから、結局、幼馴染の本名を知らないということである。
大人になっても、その愛称で呼ぶことも多いしということ。

篠岡はマネージャーだから、みんなの名簿を作って持っているので知っているということ。
また、阿部はあからさまに無視していたのであるが、篠岡に言われたのでしかたなしに榛名の呼び声に答えたということ。

さて、夏に向けて本格的に始動するということで、主将(キャプテン)を決めることになったのであるが、野球でのここまでの実績や知識や人望ということで、候補は田島悠一郎(たじまゆういちろう)と阿部と花井梓(はないあずさ)になるであろう。
田島は天才ということでこの西浦ナインの中ではその野球センスは群を抜いているといっていいいだろう。
しかし、田島はチームとして勝つというより自分が相手の凄い投手と戦うことが主眼という感じなので、チームをまとめてある方向の持っていくとかいうのはあまり向いていないだろう。
また、野球に関しては何事もそつなく出来るので、出来ない相手への配慮にも欠けるとこがあるかもしれない。
阿部は勝つということを主眼にしているので、今のレベルの選手ではちと荷が重いといえる。
全体的に選手の力を向上させるとかいうことには若干配慮が欠けるといえる。
阿部の思考は高校生というよりどちらかというとプロの思考であり、高校生では阿部と同じようなことを考えているものは少ないといえる。
よって、他のナインに対しても三橋に対する態度と似たり寄ったりとなるかもしれない。
また、今の阿部の実力では現実的には三橋で手一杯というところだろう。
そういうことになると残るのは花井となる。

花井は田島や阿部に比べると野球に対する実力や感性はやや劣るが、他の者よりは上なので全体のバランスを取るにはちょうど良いといえる。
いわゆる常識人である。
そういうことから、全員一致で監督も異存がないということだろう。
田島や阿部にはその才能故の非常識があるので、監督としては野球の才能を買ってもリーダーとしては心配なとこもあるだろう。
田島も阿部も自分のやることに自信があるので監督の意向を無視して自分の感性や論理を優先するとこがある。
その点、花井なら主将として監督の意向に沿ったことを着実にこなしてくれるといえよう。

野球部専任教師(部長)の志賀剛司(しがつよし)のメンタルトレーニングの第2弾は、リラックスです。
ちなみに、第1弾は、モチベーションの維持でした。
リラックスに対するの脳の働きはα波(アルファ波)ということです。
このα波を自由にコントロールするために、志賀は瞑想を提唱します。
α波が出ていてリラックスしている状態というのは手の平が暖(あった)かくなるとのことです。
そこで、みんなで手をつないで輪となって5分間瞑想します。
こうやって、α波を出す条件を作ります。

ところで、このα波が出ている状態ということの実例として、志賀は篠岡千代(しのおかちよ)に蛇がいるといって緊張状態にさせます。
つまり、α波というのは集中している時に出るとのことです。
篠岡はその時点で蛇に対する防御に集中しているということです。

ということは、緊張状態とは集中しているということになります。
確かに、へらへらしていると緊張感が足りないとかを言うが、それってもう少し真面目にやれつまり集中しろということです。

そういうことになると緊張しているというのは集中していると言っていいと思います。
ではなぜ、緊張というのがあまり良くないかというと、それは自分の意思ではなくて集中状態にあるということです。
この篠岡の場合でも、蛇に対して自分が不安を抱いているから、無意識に集中しているといえます。
篠岡が蛇に対して、蛇を排除するだけのことが出来れば、つまり怖がらなければこのような緊張は起こらないといえます。
これから自分に起こることに対して、自分が対処する術を持っていないとそれに対して不安が起こりそのことに無意識に集中するつまり緊張するということになると思います。
ある意味、緊張するというのは負の集中といえます。
あることに集中していると、大概はその集中していること以外は見えないということになります。
だから、緊張したままだとまわりが見えなくてギクシャクした動きになるのだと思います。
また集中というのは相当なエネルギーを使うので、長い間の集中はエネルギーの消耗もはなはだしいと思います。

そこで、リラックスというのはこの無意識の集中すなわち緊張をリセットして普段の状態に戻すものだと思います。
そして、普段の状態から意識的な集中を行って、これから起こることに対して対処させるということになります。

先のモチベーションの維持にしてもリラックスにしても、この志賀の言っていることが正しいのかどうかは分からないが、こういう論理の組み立てをすることによって、その行うことに大いに意義すなわち説得力が付加されることは確かだろう。
要はなんであれ、モチベーションが維持され、リラックスをコントロールできればいいのである。
そして、重要なのはそれを何かで条件反射させることである。
モチベーションは食事で条件反射させた。
食事というのは、これは誰でもするのであるから、これと野球をすること勝つことを条件づければ、いつもモチベーションを維持できるのである。

ここらへんが志賀のしたたかに賢いとこである。
この志賀の言うドーパミンやα波の理論が正しいか正しくないかではなく、そのことによってある目的とする効果がでればいいのである。
これを論理性という。

どのような理論であろうがこのことによって、ナインがやる気になって試合に勝てばいいのである。
極端に言えば嘘でもいいのである。
この最大のものが宗教である。
宗教はその体系そのものにどれだけの真が含まれているかは分からないが、その宗教が現実に人を世を動かしているのは確かであろう。
現在でも多くの人に生きるためのモチベーションとリラックスを与えているのを否定はできないであろう。

とはいっても、このナイン(野球部)でも天才の田島や理論派の阿部は、自分のモチベーションの維持やリラックス(集中力のコントロール)の方法を持っているので、必ずしも志賀の理論(方法)はいらないように、宗教を必要としない人もまた多くいるといえよう。
つまり、己に自信や信念や野心のないものは、何かをしようとした時にあるいは何かをしなければならない時に、どこからかその自信や信念や野心を借りてこなければならないということ。
それが、志賀の理論であったり宗教であったりするというわけ。

宗教でのモチベーションの維持や高まりの条件反射の一例が、念仏やお経を唱えることであるのだろう。
信じる者は救われる(笑)


☆会話(引用)

志賀剛司のメンタルトレーニング第2弾。(8)
志賀剛司(しがつよし)(部長)
「おはよう、さぁ、今日から練習前に瞑想するよ」
花井・泉
「め・い・そ・う」
志賀
「そう、まぁ、瞑想なんていうととらえどころがないけど
 ようするに5つある脳波のうちの一つ、α波(あるふぁは)を出す訓練しょうってこと」
栄口勇人(さかえぐちゆうと)(二塁手)
「あるふぁは?」
志賀
「さて、このα波、どんな時に出てると思う」
水谷文貴(みずたにふみき)(外野手)
「部屋でくつろいでいる時?」
泉孝介(いずみこうすけ)(外野手)
「好きな曲を聴いている時とか?」
西広辰太郎(にしひろしんたろう)(外野手,補欠)
「リラックスぽぃい感じ?」
志賀
「うんうん」
「篠岡ぁ、足元に蛇ぃ」
篠岡千代(しのおかちよ)(マネージャ)
「えっ、きゃあぁぁぁ」
志賀
「いま篠岡はずごいα波でてる」
ナイン
「はぁあぁ」
篠岡
「せ、先生、蛇は?」
志賀
「あっ、うそ、うそ」
篠岡
「いないんですか」
志賀
「うん、うそだから」
{篠岡、へなへねとその場に座り込む}
篠岡
「ふぁぁ、ひどい」
志賀
「もう出てない」
篠岡
「なにそれ」
花井梓(はないあずさ)(外野手)
「いまのでほんとにα波が出ていたんですか
 全然、リラックスしているように見えなかったんですけど」
志賀
「いや、篠岡からはα波が出ていたよ」
「ようするにリラックスとは体をだらんとさせることじゃなく
 集中して余計な力を抜くってことなんだ」
巣山尚治(すやましょうじ)(遊撃手)
「集中して」
栄口
「リラックスする?」
志賀
「そう、さっき篠岡は何も考えずにただ蛇に備えていた
 これはすごい高いレベルの集中なんだよ」

「何か極端だな」
沖一利(おきかずとし)(一塁手)
「けど何も考えてなかったら野球できないすよ」
志賀
「別に2時間かかる野球の試合中ずっと集中してろってことじゃない
 もっとずっと短い時間の話なんだよ」
「たとえば9回裏ツーアウト、サヨナラのチャンスで打席に立ったとして
 その状況を忘れてリラックスして打席に立つ
 なぁんてこと君らにできるか」
巣山
「無理だな」
栄口
「あぁ、想像しただけで緊張してくる」
志賀
「それが反射でできるといったら」
ナインたち
「えっ」
志賀
「リラックスは条件づけでできるんだよ」

「条件づけ?」
志賀
「いわゆる梅干みると唾液ってやつ」
ナイン
「ええっ」
花井
「じゃ、ボール見るとリラックスできる、みたいな」
志賀
「そういうこと」
花井・泉
「マジっすか」

「じゃ、もう試合中緊張しないの」
水谷
「うそでぇえ」
巣山
「でも、ほんとならすげえぇ」
志賀
「とはいっても今日明日でできるようにはならないよ」
「蛇から逃げるだけじゃないから
 体に覚えさせなけりゃならないこともたくさんあるしね」
「で、まずはα波の出てる感じを憶えてもらう
 そのための瞑想ってわけ」
水谷
「うわっ」
巣山
「ようやく最初の話題につながった」

「前振り長え」
志賀
「さて誰でも日常的にα波の出てることはある
 けど、いつ出てんのは分かんないよね」
栄口
「全然」
田島悠一郎(たじまゆういちろう)(三塁手)
「つうか、考えたことねぇし」
志賀
「リラックスしているかどうかを知る簡単な方法は手の温度でね
 手の平ってのは緊張すると冷えてリラックスすると暖(あった)まる」
「個人差はあるけどその差は大体2度だといわれている」
三橋廉(みはしれん)(投手)
{自分の手の平を触って}
「あっ」
志賀
「2度っていえば触れて分かる温度差だ」
「これからやるのは体感瞑想というやつだよ
 体のどこか、たとえば手の平に意識を集中してそこが暖かくなるイメージを持つ
 実際、温度が上がればα波が出ていると思っていい」
「丸くなって座っちゃおうか
 隣の人と手つないで」
{みんな座って手をつなく}
「隣の人の手の温度をそれぞれ感じてみてくれ」
{三橋は阿部と手をつなぐのを躊躇する}
三橋
「あっ」
阿部隆也(あべたかや)(捕手)
(また冷たくなっちゃってら)
志賀
「さぁ、目をつぶって」
「いいかい、心臓から指の先まで血液が流れていくのをイメージしてみて
 自分の手の温度が隣の人より暖かければ自分の体温を分けてあげる
 自分の方が冷たければ相手に分けてもらうイメージだ」
「呼吸はなるべく長く吐く
 長く吐くのは筋肉の緊張をほぐすのを助けるためだよ」
「さぁ、呼吸をそろえようか」
「吸って、ちょっと溜(た)める、ゆっくり吐いて、
 吸って、ちょっと溜める
 朝御飯が消化されて吸った空気で燃えて体温になるのを想像する」
「ゆっくり吐いて上がった体温を隣の人にも分けてあげる
 もらう人は遠慮なくもらう」
「僕らはチームになったんだ」
「吸って吐いて、吸って吐いて」
志賀
{志賀、みんなを見て柏手を打つ}
「はい」
「終わり」
田島
「もう」

「はや」
志賀
「5分でいいんだ
 あんまやっても眠くなるしね」
阿部
(三橋の手、冷たいままだったな)
(百枝;信頼されるっていいもんでしょう)
(まぁ、相手は投手だからな、そう簡単にいくとは思ってないさ}
百枝まりあ(ももえまりあ)(監督)
「さぁ、アップ始めるよ」
「バッテぃングのできる時間は限られているからね
 他の部活が始まるまでロングティやって
 今日はそのあと県大会の試合を見に行くよ」
田島
「試合!どこ対どこ」
百枝
「浦和総合と武蔵野第一」
阿部
(武蔵野第一だって)


余談:2年生

おおきく振りかぶって」のアニメ版は全25話であり、そのアニメ版の続きである「おおきく振りかぶって~夏の大会編~」は全14話です。
また、漫画版は3月4日(日)現在28巻まで発売されています。
アニメ版は、漫画版の第1巻から第15巻の途中までです。

ということで、わたしのこの記事は第28巻に到達するまではいつになるか分からないので、とても先走るのですがここでわたしがこの「おおきく振りかぶって」でとても気になっていることを書きたいと思います。

それは何かというと、阿部たち現1年生の10人が2年生になるということです。
阿部たちが2年生になって一番大きく変わるのは、新部員が入部することです。
どのような部員が入ってくるのかは分かりませんが、ともかくまったく新しいことになります。
はっきりいってこの10人の野球部員で全国区レベルの選手は阿部と田島くらいでしょう。
花井は潜在能力はあるという感じでしょうか。

あとの者は新しい部員が入ってくれば当然そのポジションを脅かされるということになります。
三橋だって、いまこそ投手が一人しかいないから、マウンドを独占できるけど、これからはそういう訳にはいかないでしょう。
三橋が凄いと感じている榛名クラスの投手が入ってこないとも限りません。
そうなれば、監督も阿部もいまのように三橋を甘やかすこともないといえます。

榛名クラスの投手が入ってきて阿部に対抗したらまた面白いと思ってしまいます。
三橋に対してもなんであんなに隆也さんにぺこぺこするんですかとか、投手と捕手とは対等ですよ、というより投手あっての捕手ですよ、とか生意気に言ったりするわけ(笑)
そういう後輩に阿部がどう対応するのか楽しみといえる。
いまのところ、阿部が後輩の球を受けるシーンはないのですが、シニアの3年生の時は後輩の球を受けていたと思うのだが。
阿部のことだから有無もいわせず、俺の言うとおりに投げろ、とかいっていたのでしょうか。
それとも後輩に対しては、案外とうまく操っていたりしていたのでしょうか・・・

西浦は夏の大会でシードの桐青を倒し5回戦まで進み、ニュースや記事になったりテレビ中継もあったりでそれまでの無名高からそれなりに名を知られる高校(チーム)になったので、優秀な選手が入部してくる可能性も十分にあると思います。

だから、どんな選手が入ってきて、どんなチームになるのかとても楽しみです。
早くそのチームを見たいです。

いままでは基本的に自分が強くなるだけの努力で良かったが、これからは自分だけでなく後輩が強くなる努力もしなくてはならなくなる。
チームを強くするためには後輩を育てなければならないが、後輩が育てば育つほど自分の存在が危うくなるということになる。
また、メンタルトレーニングなども現10人と後から入ってくる者には差もありそこらへんもどうするのか。
部長や監督の力量も新たに試されるといえます。
10人を相手にするのと20人を相手にするのではおのずとその戦略・戦術・管理は違ってくるでしょう。
そもそも20人いれば、紅白試合だって出来るわけだから。
必ずしも今みたいに同世代での和気藹々という感じだけではなく新たな軋轢も生まれてくるとも思われます。
新人が入ってくるということは結果的にいえば、この1年間いっしょに苦楽を供にしてきた者の中に新たな者が割り込みそれを追いやるということなのだから。

と思っていて、第28巻を読んでみたら、まだ秋季大会が終わった頃だから11月くらいです。
わたしとしては、第28巻では、もう2年生だと思っていたので、ちょっと落胆しました。
このペースで行くと2年生になるのはいつなのでしょうか。
というより、この「おおきく振りかぶって」は2年生の話があるのでしょうか。
このペースだと、2年生になるとこで、甲子園優勝を目指すぞ、てなことで終わる予感すらします。

実際このペースだと、阿部たちが3年生になって甲子園出場あるいは甲子園優勝するのは、全100巻くらいになりそう(笑)
おそろしく先が長い話だ。
ともかく、ここからはペースを上げて、早く2年生になった姿でのチームを見たい(笑)

ちなみに100巻の内訳は、1年生の時33巻、2年生の時33巻、3年生の時33巻、総集編+おまけで1巻というのでどうでしょうか(笑)
このペースだと1年に2巻くらい出るから、10年で20巻、完結するのに100巻では50年かかるということになってしまいます。
どうするんでしょうか(笑)


追記(2018.3.10.土):GYAO!での無料視聴

おおきく振りかぶって」のアニメ版の無料視聴がGYAO!(https://gyao.yahoo.co.jp/)で始まりました。
3月10日(土)現在で、第1話「ホントのエース」が配信されています。
各話はこれから順次配信されていきます。
第1話のとこの配信終了日は2018年5月17日となっているので、これが事実なら約2ヶ月ほど無料で見れるということになります。

GYAO!での「おおきく振りかぶって」の無料視聴のURLは
 https://gyao.yahoo.co.jp/p/00908/v14289/
です。
「PLAY」が赤になっていれば視聴可能です。


おおきく振りかぶっての
HPは
 http://www.oofuri.com/1st/
放送のHPは
 http://www.tbs.co.jp/anime/oofuri/1st/
ウィキペディアは
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6
 おおきく振りかぶっての登場人物;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9
です。

YouTube(https://www.youtube.com/)から
Ookiku Furikabutte (TV 2007) Opening 1 【OP1】 『Dramatic』 by Base Ball Bear - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=3_545HwqH8A
 
Ookiku Furikabutte 1 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=xWfKZgTsBeA
 
Ookiku Furikabutte Ending 1 [Sub Español] - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=flY3bTuEWoI
Ookiku Furikabutte - Ending 2 (Thai Sub) - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=1mQLUXRlqk8

ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)から
 α波(アルファ波):https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E6%B3%A2
 瞑想;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9E%91%E6%83%B3
 緊張;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E5%BC%B5


波紋
20171026木 波紋


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アニメ「宝石の国」

アニメ「宝石の国」が面白いです。
この「宝石の国」の面白さの際立ちはその発想です。
こういう発想の物語はわたしにとっては初めてだと思います。
それではわたしの独断と偏見でこの物語について少し書きたいと思います。
なお、このアニメの視聴はGYAO!(ギャオ!)(https://gyao.yahoo.co.jp/)での無料視聴です。

第1話 フォスフォフィライト
第2話 ダイヤモンド
第3話 メタモルフォス
第4話 魂・肉・骨
第5話 帰還
第6話 初陣
第7話 冬眠
第8話 アンタークチサイト
第9話 春
第10話 しろ
第11話 秘密
第12話 新しい仕事

前回の暫定版から普通版をリリースします。
第4話から第12話までのあらすじと所感も少し増補しました。
改めて見ると、かなり興味深い物語だと思います。
機会があったら、もっと詳細に書きたいとも思いました。

なお、無料視聴は終わってしまいましたが、有料ということではGYAO!ストアで見れます。
GYAO!ストアでの宝石の国
 https://streaming.yahoo.co.jp/p/y/00908/v14184/
です。
1月10日現在で、1話と2話が100円で3話から12話までが200円なので、全部見るとなると2200円でしかもおまけで税まで付きます。トータル2376円です。視聴は2日間です。
はっきりいってわたしはこれは高いと思います。
1話50円だったら、12話で600円でおまけで税が付いても648円だから、これならわりと気楽に見れると思います。
ただし、全話パック(12話)だと1540円+おまけで税(視聴は22日間)となって少し安くなるようです。

また、DVDとBlu-rayはホームページによると、
第1巻 発売中(2017年12月20日(水)発売)
第2巻 2018年1月17日(水)発売予定
第3巻 2018年2月14日(水)発売予定
第4巻 2018年3月14日(水)発売予定
第5巻 2018年4月18日(水)発売予定
第6巻 2018年5月16日(水)発売予定
です。


☆あらすじ

とある星(おそらく地球)で僧姿で男性姿の先生(金剛先生)といわれる者に率いられた女性姿の宝石たちが、月人(つきじん)といわれる月からの宝石強奪者と戦う物語である。
その宝石たちの一人であるフォスフォフィライト(通称フォス、以下フォスと記す)が本物語の主人公である。

(1)
フォスはこの宝石の戦士たちで最も弱いため、先生から戦いに参加することを許されない。
その任務は戦いではなく博物誌というこの地の調査である。
とはいっても博物誌の仕事が分からないフォスは、みんなに仕事のことを聞いている内に、毒を吐き出すために一人孤独に夜の見回りをしているシンシャと出会う。
このシンシャに月人からの襲撃から助けてもらったフォスは、シンシャが月人にさらわれたいというのを聞いて、なんとかシンシャのためになる仕事を見つけようと思う。

ちなみに、宝石たちは月人の弓や槍を受けると、砕けるがそれで死ぬ訳ではなく、その砕けた破片をくっつけると小さな微生物のインクルージョンの働きで元通りになる。
そのくっつける役割として医者のルチルがいる。
砕くと宝石たちは動けなくなるので、そこで月人たちは宝石を回収して月に持ち帰る。

(2)
この星は6度(たび)流星を受け、その欠片で6個の月ができ、そのため生物は海に逃げ、そこから無機物として生まれたのが、宝石たちのようである。

博物誌に関してもシンシャに関してもアイデアの浮かばないフォスはそのアイデアの拠り所として、ダイヤモンド(通称ダイヤ)を訪ねるが、その時に月人が現われて、ダイヤと月人の戦いになる。
ダイヤは月人の放った矢や槍を刀で跳ね返して月人に応戦するが、それはダイヤにとって負担が大きく刀が手からすり抜ける。
このダイヤの危機に、颯爽とボルツが現われ、一撃で月人を倒してしまう。
そんなボルツを見てダイヤを複雑な心境になる。
そんな折りまたしても月人が現われるが、その月人たちはフォスたちを無視して学校の方に行ってしまう。

月人は学校の上空にくると、なにやら巨大な蝸牛(かたつむり)の殻状の物を落とす。
月人はまたしてもボルツが倒してしまう。
そこで一安心していたら、蝸牛の殻状の物から生物が出て来て、フォスを飲み込んでしまう。
この生命体は、宝石たちを溶かす能力があってボルツさえも歯が立たない。
飲み込まれたフォスはその生命体の体内で溶けてしまう。

(3)
激闘の末、巨大な蝸牛状の物を、海水の池に落とすと、縮こまってしまい小さななめくじかなまこのような物になってしまった。
そこで、フォスはどこにいったのかと殻状の物の中を探すがフォスはどこにもいない。
そうすると、ダイヤはフォスがそのなまこのような物に変わってしまったと思う。
ダイヤはなんとかフォスを元に戻そうとみんなに相談するのだが、誰もフォスのことなど気にかけていないようにそっけない。
ダイヤは疲れ果て草むらで寝ていると、ダイヤの輝きを月人だと見間違えたシンシャがやって来る。
シンシャもフォスにはそっけなかったが、ダイヤの必死の頼みで、フォスが殻に取り込まれていることを教える。
ダイヤを喜び勇んで、みんなの助けを借りて、殻にあるフォスの薄荷色の破片を集め、それをルチルのとこに持っていき修復してもらう。
こうして、ダイヤの熱意によってフォスは元に戻ったのだが、フォスはなまこ状の物を見ると敵意むき出しにして襲い掛かる。
そして、フォスはそのなまこ状の物と話し始める。

(4)
なまこ状のものの言葉はフォスだけが分かり、それによるとなまこ状のものはアドミラビリス族の王のウェントリコススだということである。
ウェントリコススからシンシャに助けられたことを聞いたフォスは、シンシャの今の境遇をなんとかしたいと先生に相談するが、先生であってもどうすることも出来ないといわれる。
夜の見回りはシンシャが自ら考えての仕事であるとのこと。
フォスはシンシャを助けると約束したのに何の手立てもないので落ち込んでいると、ウェントリコススが宝石たちの形をしたものが海にいるので、気晴らしに行こうと誘う。
フォスはみんなに黙って海に行こうとするのであるが、それがばれて先生に止められる。
それでもウェントリコススが弱ってしまったので、再び黙って海に行く。

海に入って故郷に近づいたウェントリコススは本来の姿になる。
その姿は上半身は女性で、下半身はくらげか蛸(たこ)か烏賊(いか)のように複数の脚がある姿である。
まぁ、海のケンタウルスという感じでしょうか。
その姿からフォスがなぜ自分たちに似ているのかと問い詰めると、ウェントリコススは言い伝えとして、人間が魂・肉・骨の3つに分裂したなれの果ての姿だという。
肉はアドミラビリス族となり海に住み、骨は無機質となり陸に住み、魂は清らかな新天地として月に住んでいるといわれる。そして、魂はその宿り主として肉と骨を求めているという。
そんな話をしていると、突然、フォスに月人の矢が襲いかかり、フォスの脚が砕ける。

(5)
ウェントリコススがフォスを海へと誘ったのは実は罠だった。
宝石を誘い込めば、ウェントリコススの弟のアクレアツスを解放するという月人との密約があったのである。
そのため、フォスは月人に捕らえられてしまう。
しかし、月人はウェントリコススに更なる宝石の誘い込みを要求する。
そこでウェントリコススはシンシャなら誘い込めるかもしれないというと、フォスは拒絶の叫び声を上げる。
それに呼応するように、さざえのような巻貝のアクレアツスが目覚め、月人を全滅させる。
アクレアツスは再びフォスを囮にして両親たちを解放しようと画策するが、ウェントリコススはせめてもの罪滅ぼしとしてフォスを仲間たちの元に戻すことにする。
なお、この時フォスは自分の年齢を300歳という。

宝石たちはフォスがいなくなったのに気づき、みんなで海に入ってフォスを探すが見つけることは出来ない。
そんなフォスをウェントリコススはシンシャのいる浜辺に送り届け、シンシャはフォスを学校に運ぶ。
そのフォスを樹脂を取りに戻ったルチルが発見する。
ルチルは両脚を失ったフォスに、ウェントリコススがくれた巻貝の殻の部位を接続する。
フォスの脚は柄物となり、その新たな脚のため、フォスは超高速で走れるようになる。

(6)
脚の速くなったフォスは、能力が上がったということで、先生に再び月人と戦うことを依願する。
先生も一応、脚が速いということで、双晶のアメシストと組んでの見張り役の任務を与える。
この時、フォスに海での報告を求め、その中でフォスが「人間」という言葉を発すると、先生は大いに動揺する。
見張り役となって3日目に月人がフォスたちに襲来する。
その月人を双晶のアメシストが退治したかにみえたが、首を切った仏から、棘のある挟み物が出てきて、アメシストたちを捕まえて砕いてしまう。
フォスは恐怖のあまり、動けず、助けを求めにすら行けない。
このままでは、アメシストたちもフォスも月人に連れ去られるかと思われた時に、疾風の如くボルツが現われ、棘のある挟み物を切り捨て、アメシストたちを解き放つ。
最後は先生が来て、光のつぶてのようなもので月人を壊滅する。

なお、この話の中で、イエローダイヤモンドが3597歳であり、なんの為に戦っているのさえ忘れたという。
なんの為に戦っているのかということでは、フォスが単純明快に「先生が大好きだから助けたいんです」という。

(7)
フォスはアメシストたちに謝るが、逆にアメシストたちに謝られる。
この月人たちの兵器は新型であったので、アメシストたちに油断があったという事である。
フォスは反省のため走りの特訓をしていると、夜の見回りのシンシャが見え、そのシンシャを包むように雪が降ってくる。
宝石たちは、光を栄養にしているので、光の乏しい冬は動きが鈍るので冬眠するということである。
そして、その冬の間は、ひと月に10日ほど晴れてその時には月人が襲来するが、読みやすいということで、先生とアンタークチサイトの2人で対応しているということである。
そのアンタークチサイトは普段は液体であるが、気温が下がると固体となり寒ければ寒いほど強くなるとのことである。

しかし、今年はフォスが眠くないということで、この冬を起きているということになる。
アンタークチサイトは、始めはフォスを邪魔者扱いするが、フォスの熱意を聞いて、フォスにも冬の仕事を与える。
それは、奇声を発して宝石たちの眠りを妨げる流氷割りや積もった雪の除雪である。
脚力だけしかないフォスにとって、この日常作業は負担の大きいものであった。
アンタークチサイトはフォスの働きを評価するものの、この脚力くらい腕力があったならと呟く。
フォスも脚力くらいの腕力が欲しいと、柳の下に泥鰌とばかりに腕を切ろうとするが止める。
そうすると、氷がそんなフォスに腕をなくしてもなんとかなるから、私が噛み切ってやろうと誘惑する。
フォスはその誘惑にそそのかれそうになるが、我にかえったはずみに滑って海に落ちる。
そのフォスを見たアンタークチサイトがフォスを助け上げると、フォスの両腕は失われていた

(8)
フォスの両腕がないのを見たアンタークチサイトは、直ぐに海に入ってフォスの両腕を捜すが見つからない。
しかも、アンタークチサイト自身も右手を失うところだった。
アンタークチサイトは、フォスの両腕がなくなったのは自分のせいだと先生の腕の中で泣く。
先生は、フォスの両腕に接合可能な無機物を尾の浜に探しにいくようにいう。
尾の浜とは、「古代生物が海で朽ち無機物に変わり、長くは数億年地中をさまよったあと、生まれる」ということで、宝石たちが生まれた場所である。
そこには、今は金と白金しかないのであるが、とりあえずフォスに金と白金を接続してみる。
そこで様子を見ようとすると、突然、空が晴れてくる。
晴れてきたのでアンタークチサイトは一端引き上げようとするのだが、フォスに付けた金と白金が増殖し始める。
と同時に、月人が現われて、アンタークチサイトを攻撃し始める。
それに対して、アンタークチサイトは果敢に対抗する。

一方、尾の浜に月人が出現したのを知った先生は尾の浜に行こうとするが、そこに月人の軍団が立ちふさがって足止めしようとする。
アンタークチサイトは新型兵器の釣り針状の爆弾によってボロボロになりながら、なんとか月人を潰した。
フォスは腕に付けた合金が自動的に檻を作って囲い込み月人から見えないようになっていた。
そこで、アンタークチサイトがその檻を破ってフォスを出そうとしていた時に、月人の第2弾の矢を受け、砕け散った。
月人はそれを回収して月に持ち帰ろうとする。
それでフォスが激高すると、合金が自分の思うようになり、月人を攻撃するが、時はすでに遅く月人はアンタークチサイトの破片を持って飛び去ってしまう。
そこに足止めをくらっていた先生が来て、光のつぶてを発するがそれおも届かなく月人は去っていく。
こうして、アンタークチサイトは月にさらわれたしまった。

(9)
アンタークチサイトが月にさらわれたので、その後任として、この冬は月人の来襲の対応や流氷割りなどはフォスが行なうことになった。
そうして、時は廻り、また春がやって来る。
冬眠から目覚めたみんなは、フォスの変わりように驚く。
特に金と白金の合金の両腕が自在に動くのには、みな驚きかつ興味が湧いて、フォスをいじくりまわす。
フォスはいちやくみんなの注目の的となり人気者となる。
そればかりではなく、その実力をもアメシストたちの前で一人で月人を一蹴することによって見せ付ける。
それを見ていたボルツはなにやら思案する。

なお、春ということで、衣装はレッドベリルの創作した夏服となる。
トップスは白のシャツでボトムはサスペンダーの付いたキュロットである。
なお、フォスとシンシャはトップは黒シャツでボトムは黒ショートパンツ(ホットパンツ)の冬服のままである。

(10)
フォスの実力に目をつけたボルツは、フォスに自分と組むように提案する。
フォスはボルツが苦手だし、ダイヤからボルツを取ることになるので、組むことに躊躇して悩む。
しかし、アンタークチサイトの勇気という言葉を思い出し、ボルツととりあえず組むことにする。
その組んだ初日に早速、月人の襲来がある。
しかも、その月人は2重黒点の新型である。
黒点から手のようなものが出ているが、ひっかっているようなので、その隙にボルツが先制攻撃をするが、突然数本の手が出できて、ボルツは捕まってしまう。
そのボルツをフォスが攻撃して解き放つが、その何者かがいよいよ全貌を現す。
それは、6本の手と2本の足を持った巨大な狛犬のような月人であった。
それを見たボルツは勝てないと判断し、学校まで逃げ、鐘を6つ鳴らして全員をその場に待機させて、瞑想中の先生を起こす作戦に出る。

だが、誰もいないと思っていた学校にはダイヤとアレキサンドライトが残っていて、狛犬のような月人はダイヤを標的に追い掛け回す。
ダイヤは始めは恐怖から逃げ惑っていたが、ボルツとフォスのことを思い出し、一人で立ち向かうが、やはり敵わない。
それでも玉砕覚悟で、おのれの固い身体を刀として一刀両断して尽き果てる。
その様子を見ていたボルツは復讐心に燃え、分断されて2頭になった狛犬のような月人に対峙する。

(11)
ダイヤに2分割された狛犬のような物の一体を怒りに染まったボルツが一刀するとそれは4対になった。
もう一体は、フォスとアレキサンドライトの元に現われるが、それも月人を見てコバルトブルーから赤色になって凶暴になったアレキサンドライトが一刀する。
ボルツとアレキサンドライトが狛犬のような物を細切れにしてしまうと、遂に小さな可愛い狛犬のような物になってボルツとフォスに擦り寄ってくる。
ボルツとフォスはそれに見とれていると、その小さな狛犬のような物は一斉に逃げ出す。
宝石たちみんなでその小さな狛犬のような物を捕まえて檻にいれると107体あった。
その107体が一箇所に集まったので、再び巨大な狛犬になってみんなに襲いかかってくる。
しかし、その巨大な狛犬のような物は「ワン」と吠えたので、それで先生が瞑想から目覚めて、その狛犬のような物を手なずけてしまう。
その時に、先生がその狛犬のような物に「しろ、お前、手はどうした?」と言うのをフォスは聞いてしまう。

その言葉から、フォスは先生と月人の関係に疑義を抱く。
フォスは先生としろとの関係を問うが先生ははぐらかす。
フォスは疑念を持ったまま、夜の外を歩いているとシンシャに出会う。
フォスはシンシャに今の疑念をぶつけると、シンシャはそのことに感づいておりというかみんなそのことを感づいていたが、見て見ぬふりをしているとのことである。
その時シンシャは小さな狛犬のような物を連れており、その小さな狛犬のような物がしろの手であり、しろは五体満足になると、先生に寄り添い、先生がその顔を撫でると成仏してしまう。

先生がフォスにボルツと組んだことを聞くと、フォスはボルツの能力の高さを認め、みんながボルツと組んで、その戦いにおける各々の能力の向上を計るべきだと進言する。
そして、フォスは先生と月人の関係を先生には聞けないので、月人に直接聞くしかないと決意する。
そんな折り、ルチルの元相棒で生まれつき体に穴のあるパパラチアがルチルの懸命のパズル合わせで目覚める。

(12)
目覚めたパパラチアにフォスは先生と月人の関係を調べると言うと、パパラチアは「清く正しい本当があたり一面を傷つけ、まったく予想外に変貌させるかもしれない。だから冷静に慎重にな」と言って再び眠りに落ちる。

ボルツとのみんなの組み合わせの最初はジルコンとなる。ジルコンは緊張のあまり何も出来なくボルツに嫌われていると思い、フォスに相談する。
フォスの「根拠なく明るい予感に甘えられた頃が不思議で、うらやましいよ」という一言で新しい挑戦に前向きになる。

フォスは月人のことをもっと知るために月人マニアのアレキサンドライトに教えを請う。
月人のことをあれこれ考えながら歩いているとやっと月人が襲来する。
これで月人とやっと話せると勇むが、剣を忘れていることに気づく。しかし、合金の防壁で矢をしのぎながら月人の船に乗り込み、月人を一体捕らえる。
その月人に話しかけるが月人の白目が黒目になったことと「ふっ」いう息のようなものが聞こえたところで、シンシャが現われ月人を一掃してしまう。

そのシンシャを見て、フォスは先生と月人の関係を暴く相棒としてシンシャと組みことを考える。
そのことをシンシャに話すと、シンシャは楽しくないからと断わるが、とりあえず組むことは了承する。

こうして、この秩序の中にフォスの混沌という毒が撒き散らされることになる。


☆所感

このアニメは特に意識して見たわけではないです。
きっかけはGYAO!のアニメを見ていてその表紙のショートパンツ(ホットパンツ)姿に惹かれてなんとなく見たということです。
だから、このアニメを見たのは、もう第6話くらいまで進んだ状態でした。
ただ、ここでここまでの全話視聴があったので、最初から全部見ることができました。

このアニメを見ていて、なんとなく違和感というか異様な感じを受けていました。
それによって、このアニメに引き込まれたといっていいでしょう。
その異様な感じは何に起因するのかと漠然と思っていて、思い至ったのが、それがこのアニメ(物語)には、「人(人間)」が出てこないということです。

確かに人が出てこない物語(アニメ)というのはいままでにありました。
たとえば、「みつばちマーヤの冒険」などのように、人以外の生命体での物語です。
しかし、そういう物語でもあくまでもその生命体の物語ではなく、人の言動をその生命体で表すという擬人化の手法でした。

しかし、この物語(アニメ)では、本当に人が出てこないのです。
人ではないものが跋扈しているのです。
物語の第2話の説明によると
「この星には6度(たび)流星が訪れ、6度(たび)欠け、6個の月を産み。すべての生物は海へ逃げ、まずしい浜辺には不毛な環境に適した生物が現われた。
 繁栄した生物の内、逃げ遅れ海に沈んだ物が海底に住まう微小な生物に食われ無機物に生まれ変わり、長い時をかけ規則的に配列し結晶となり、再び浜辺に打ち上げられた。
 それが・・・」
ということである。

また、第4話で海のアドミラビリス族の族長(王)のウェントリコススが話すには、
「わしらの伝説では、この星にはかって人間という動物がいたという。
 この星が五度欠けたときまではしぶとく陸に生き残ったが、六度目には遂に海に入り,魂と肉と骨、この3つの分かれたという。
 わが種族アドミラビリスはその内の肉だと伝えられている。生殖と死をこまやかに繰り返しながら血を重ね紡ぐ特性を受け継いだとされる。
 一方、骨は他の生物と契約し長い時を渡る術を身に付け陸に戻った。
 魂は遂に清らかな新天地をいい、再興のため肉と骨を取り戻すべくさまよっているといわれている。」
とのことである。

ということで、この話から推察すると、6度の流星によって人(人間)は滅んだといっていいだろう。
だから、この物語に登場する生命体は、形は人に似ていても人ではないといえるだろう。
つまり、この物語には人(人間)は登場しないといっていいのである。

しかも、この物語の主役であろう陸の生命体である宝石は無機物であるという。
無機物が生命体?という感じであるが、今の私たちの感覚でいえば、ロボットがそれに当たるだろう。
ロボットが生命体であるかどうかといえば怪しいが、ロボットが人(人間)と同じような言動とするという物語はこれまで多く語られている。
日本では、鉄腕アトムなどがその代表であろう。
そういうことでは、無機物である宝石が生命体であってもそれほどの矛盾や驚きはないであろう。

そもそも生命体というのは何かということ自体もはっきりしていることではないといえる。
我々が知らない起動原理で動いているものがあってもおかしくない。

それよりもやはりこのアニメ(物語)の骨格は、人(人間)が存在(登場)しないということである。
ということで、わたしにはこのアニメ(物語)はその展開が読めないということである。
これが、大いにわたしに違和感をもたらしているのである。

相手が人(人間)ならどのような物語であってもある程度その展開が読めるのである。
人は有限で不完全だから、いかに相手が天才といえどもその限界は読めると言っていいだろう。
人ならどんなことがあっても時速100kmなんかでは走れないだろう。
そういう風にどんなことがあっても、その限界は現時点で明確と言っていいだろう。
その限界を超える者は、超人といったり怪物といったり化物といったりしてもいいだろう。
そして、そのような人を超える者が物語に登場しても、その物語に人が登場する限り、最後には人のレベルで物語が終結するというのが、これまでの物語である。
つまり、人(人間)の物語の範疇を超える事はないのである。
それ故に、物語の展開も合っているかどうかは別としても読めるのである。

ところが、この物語には人(人間)が出てこないのだから読みようがない。
なんでもありなのである。
なんでもありの物語を読めるのは作者しかいないであろう。
否、作者も読めなかったりして・・・(笑)

そういうことで、このアニメ(物語)の展開がとても気になるのである。
最後には、魂と肉と骨が一体になって、元の(あるいは新しい)人(人間)が誕生するとかいう展開になったら、かなり興ざめですが。
そんな展開にならないことを願いながら引き続き見たいと思います。
と思ったのですが12話でとりあえず終わりのようなので・・・

物語そのものとしては、人(人間)ではないので感情で動くというより論理または本能(予定調和)で動くという感じで、そこらへんは分かりやすく、また論理を好むわたしとしては見やすいと言えます。
もっとも感情を持っているのは、主人公であるフォス(フォスフォフィライト)であろう。
これはおそらく、己の身体と己の意思に乖離があるということから起こっていることであろう。
この宝石たちで最も脆弱であると思われるフォスが先生やみんなを守るために最も強さを望んでいるということである。
そのために悩む苦しみを持つのである。

人が人であるという定義は時空的にもいろいろな変遷があり、またいまでも流動的であるのであるが、そのひとつの要因は感情があるかないかということであろう。
現状の人型ロボットが人でないのは、この感情の欠落ということが大いに関与しているだろう。

ウェントリコススによると3つに分かれたということなので、感情も3つに分かれたということかもしれない。
とはいっても、均等に3つというより、肉>骨>魂の順ではなかろうかと思う。
ウェントリコススは弟のアクレアツスを助けるためにフォスを騙すのであるが、こういうのは弟に対する愛情という感情があってのことだろう。

宝石たちには、フォスのように感情が自分の言動に影響する者もいるが、ほとんどの者は自らの任務を遂行することをその第一義としているので、一時的な感情はあっても、その感情を任務に引きずることはない。
これは軍人などと同じであって、感情よりも任務(命令,論理)が最優先するのである。
そういうことでは戦うことに矛盾を感じていないといっていい。
ただ、その起動原理は、先生を助けるためということではあるのであるが。

現時点では、月人には感情はまったく感じられない。
しかも、論理というより本能(予定調和)で動いているといってもいいだろう。
なにせ、月人の言葉はまだ聞いたことがないのでなんともいえないということである。
ウェントリコススのいうように月人が魂なら実体がないということにもなろう。
そうなら倒しても一時的な消滅になろう。
ということから、戦いは未来永劫続くともいえそう。

さて、このアニメ(物語)のまた特異なのは、仏教世界を踏襲していることであろう。
わたしは宗教にはまったく疎いので、仏教世界がどういうものかはいえないのですが。
わたしが宗教に関心がないのは、感化を受けるほどの宗教人に出会わなかったということが大きいでしょう。
人生論を語るなら別に宗教でなくていいですから。
わたしの場合は宗教ではなく哲学の方に行ったということです。
ということで、見た目の皮相的なことしか言えないのですが。

この宝石たちの先生といわれるのが、僧であり、また月人は天女と仏と思われるものです。
実をいうと、このアニメで最も見た目が美しいと思われるのは、この天女たちです。
わたしはこういう美しさに弱いです。
このアニメに惹かれる要因のひとつにこの天女の美しさがあります。
この天女の美しさは無機質の美しさです。

宝石たちとしては、誰が好みかというと、ウェントリコススの好みと合っていて、
「わし、ちょっとツンとした子がタイプ、あの黒い髪の長い子とか、夜の赤い子とか好み」
ということ、つまりボルツとシンシャです。そしてわたしとしてはもうひとりアンタークチサイトです。
やはり強くて聡明ってのは惹かれます。

この3人に共通しているのは、「孤独あるいはひとりぼっち」ということです。
孤独とひとりぼっちというのはわたしのなかではそのニュアンスが微妙に違います。
孤独は精神的な面が強く、ひとりぼっちは物理的な面が強い、言葉です。
つまり、孤独とは自分の回りに人がいてもひとりであると感じることであり、ひとりぼっちとは自分の周りに物理的に人がいないことである。
南海の小島にひとりで居るようなことは、ひとりぼっちであるが必ずしも孤独とは限らない。

ボルツはその強さ故に、孤独といえそうである。
自分と共に戦う宝石たちもおり言葉も交わすので、ひとりぼっちではない。
しかし、真に戦いの話をしたり月人と戦ったりできる者がいないということでは己しかいないということで孤独である。
強者あるいは天才の孤独である。
敵味方関係なくその相手を人目みれば、その能力を見極めることができる。
それ故に、仲間を死なせない(月人にさらわせない)ために、いつも自分が戦うということになる。
そういう一番の例は、「しろ」が出現したときである。
この場で勝てないと分かったなら、躊躇なく退却するし、また鐘を6つ鳴らして、誰も「しろ」と戦わせようとしない。
強くなったといってもフォスではこういうことは分からない。
常に常人の上を行く言動をするボルツを対等に理解する者はいない。
他の宝石たちのボルツへの対応は畏怖しかない。
これは、仲間であって仲間でない関係だろう。

アンタークチサイトは、みんなが冬眠に入った時期に覚醒するので、ひとりぼっちである。
(今回はフォスが居るのでひとりぼっちではないが)
しかし、アンタークチサイトは孤独とはいえないだろう。
その任務に誇りを持っているし、先生をひとりじめに出来るので、それは仲間たちといるより至高のことかもしれない。
また、ほかの宝石たちが見れない世界をアンタークチサイトは一人だけ知っているともいえよう。
そして、その世界を誰かに語りたいという欲求もないようである。
もし、そういう欲求が芽生えたならば、アンタークチサイトにも孤独が芽生えよう。

シンシャはその毒性のために、孤独でかつひとりぼっちといえよう。
なにせ、その毒は仲間を傷つけ(シンシャの毒に触れるとその部分は光を通さなくなり削り取るしか方法がない)、生き物を死滅させてしまう。
その為、シンシャは仲間から外れ岩場で一人で暮らししかも仲間が眠っている夜に見回りをするという仕事をしている。
しかし、夜には月人は襲ってこないのでその仕事は囚人の砂運びと同じようなものである。
というか、どうもシンシャはその毒によって月人にも見放されているようである。
事実上ひとりぼっちであり、また仲間といっしょに行動したいという思いが強いので孤独でもある。

そんな孤独から逃れたい為に、シンシャは月人にさらわれたいという願望すらある。
だからこそ、フォスのようにまったく頼りのない者の「夜の見回りよりずっと楽しくて君にしか出来ない仕事を僕が必ず見つけて見せるから」という言葉にまですがろうとするのである。
翻っていえば、フォスもまた己の非力のため仲間といっしょに戦えないということで、潜在的に孤独を抱えているということなのだろう。
だから、シンシャの気持ちが分かり、思わずなしえないことを約束してしまったのだろう。
このアニメがシンシャの嘆きから始まっているということにその孤独の大きさがあるともいえよう。

また、見た目の女性がショートパンツ(ホットパンツ)ってのも異色なのです。
普通、女の子の場合はスカートがほとんどなのですが。
スカートに比べてショートパンツだと動きが軽やかで自由度が高いです。
また、ここらへんにも自他を僕だとか彼とかいうのと同じように中性的なことを表しているともいえよう。

ところで、第12話になってこのアニメのテーマというようなものが見えてきたように思います。
しろが宝石たちを襲ってくるのですが、そのしろを先生が知っていたということで、フォスにある疑念が湧きます。
それは、月人について先生は何かとてつもないことを知っていてそれを隠しているということです。
この先生と月人の関係をフォスが暴こうとするのです。
これは禁断の扉を開けることになります。

長い間ある体制が維持されていても、いつかはその体制に疑義を感じる者が現われるものです。
当たり前と思っていることを当たり前と思わないものです。
その存在の真を知ろうとするものです。
西洋キリスト教世界におけるヨハネス・ケプラーやガリレオ・ガリレイの地動説やマルティン・ルターやジャン・カルヴァンの宗教改革がその一つの事例でしょう。

あの頼りないフォスがなぜこのような革命家に変貌するようになったのかは、やはり他の血を導入したということだろう。
正にそういうことでは博物誌が生きたということになろう。
失った脚にアドミラビリス族の巻貝の組成物を付けたり、失った腕に貴金属の金と白金を付けたりすることで、元あった記憶が欠落し(すなわち先生による洗脳からの解放)、新しい記憶を紡ぐようになり同じものを見ても他者とは別の見方が出来るようになったのである。
それともう一つは、自分のせいでアンタークチサイトを失ったということである。
初めて戦いで組んだ相手を失ったのである。
このことで、戦いの矛盾を肌で感じたといってもいいだろう。
ここで初めて、なぜ戦うのかということを知りたいという欲求が意識化に現われてきたといってもいいだろう。

ただ決まっていることだからではなく、そこに意義を見出したいということである。
そういうことでは、自分に意義を見出したいシンシャを仲間にするというのもこれまた自然の理であろう。
そして、このことは果てしない孤独を自らに呼び込むということでもある。
しかしシンシャがいれば、孤独であってもひとりぼっちではない。
シンシャがそのフォスの博物誌のノートを持っているということはその予兆であったのであろう。
また、春になってみんなの衣装がショートパンツ(ホットパンツ)からキュロットに変わったのにフォスとシンシャはショートパンツ(ホットパンツ)のままというのもそのことを象徴しているといっていいのかもしれない。

ここからフォスにとっての壮大な博物誌が始まるのである。存在の探究である。

そんなことで、わたしとしては第12話で核心に迫るようなことが起こったと感じたのですが、ここで終わるということはどういうことなのでしょうか。
終わる理由がまったく分からない。
ここからの展開は高度なので一休みということなのでしょうか。
この物語以上にまったくもって不可解ですな(笑)

ということで、とりとめない話になってしまいましたが、とりあえず紹介ということです。

ともかくこのアニメに惹かれるのは、人がいないというその発想です。
最後にどういう展開になるのか、楽しみです。
その最後というのは、アニメというより漫画ということになるのでしょうが。


宝石の国
HP「TVアニメ『宝石の国』公式サイト」は
 http://land-of-the-lustrous.com/
ウィキペデイアは
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9D%E7%9F%B3%E3%81%AE%E5%9B%BD
です。

YouTube(https://www.youtube.com/)から
TVアニメ『宝石の国』本PV (https://www.youtube.com/watch?v=pwFpAyEuph8
 

ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)から
 無機物(無機化合物);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E6%A9%9F%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9
 有機物(有機化合物);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E6%A9%9F%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9
 僧;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%83%A7
 インクルージョン;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3
 宝石;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9D%E7%9F%B3
 宝石の一覧;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9D%E7%9F%B3%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7
 仏;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8F_(%E6%9B%96%E6%98%A7%E3%81%95%E5%9B%9E%E9%81%BF)
 仏の一覧;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8F%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7


余談:GYAO!の視聴

GYAO!の無料視聴だけでけっこう愉(たの)しめます。
アニメとしては、「グイン・サーガ」は面白いです。
このグイン・サーガはかって小説で読んだことがあります。
読んだのは相当前なので、もう内容は忘れてしまっているから、初めて見るようなものですが。
わたしにとって今はアニメが当たりで、「グイン・サーガ」以外にも「ゴルゴ13」「蒼天航路」「GLOOD+」「精霊の守り人」「戦国英雄伝説 新釈 眞田十勇士」など目白押しです。
もう見終わった物では、「ベルセルク」「寄生獣 セイの格率」「DARKER THAN BLACK」「DARKER THAN BLACK -流星の双子(ジェミニ)」「ロードス島戦記-英雄騎士伝-」「バジリスク~甲賀忍法帖~」などが面白かったです。

アニメ以外にもドラマや映画などもあるので見飽きないです。
わたしにとって今はドラマは当たりがないのですが、かってはドラマもよく見ました。


羽根突き
20171227水 羽根突き


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アニメ「宝石の国」 (暫定版)

アニメ「宝石の国」が面白いです。
この「宝石の国」の面白さの際立ちはその発想です。
こういう発想の物語はわたしにとっては初めてだと思います。
それではわたしの独断と偏見でこの物語について少し書きたいと思います。
なお、このアニメの視聴はGYAO!(https://gyao.yahoo.co.jp/)での無料視聴です。

第1話 フォスフォフィライト
第2話 ダイヤモンド
第3話 メタモルフォス
第4話 魂・肉・骨
第5話 帰還
第6話 初陣
第7話 冬眠
第8話 アンタークチサイト
第9話 春
第10話 しろ
第11話 秘密
第12話 新しい仕事

このアニメは12話で終了ということです。
GYAO!での12話は12月27日(水)に無料視聴となります。
また、26日現時点では、全話も無料視聴できます。
GYAO!での「宝石の国」の無料視聴は
 https://gyao.yahoo.co.jp/p/00908/v14183/
です。

ということで、GYAO!の全話無料視聴が終わりそうなので、ここで暫定版として、あらすじも途中までですが、緊急アップします。
興味のある方は、早急にGYAO!で見てください。

後日、あらすじも全話書きたいと思います。
とかいってこのままになったりして・・・


☆あらすじ

とある星(おそらく地球)で僧姿で男性姿の先生(金剛先生)といわれる者に率いられた女性姿の宝石たちが、月人(つきじん)といわれる月からの宝石強奪者と戦う物語である。
その宝石たちの一人であるフォスフォフィライト(通称フォス、以下フォスと記す)が本物語の主人公である。

(1)
フォスはこの宝石の戦士たちで最も弱いため、先生から戦いに参加することを許されない。
その任務は戦いではなく博物誌というこの地の調査である。
とはいっても博物誌の仕事が分からないフォスは、みんなに仕事のことを聞いている内に、毒を吐き出すために一人孤独に夜の見回りをしているシンシャと出会う。
このシンシャに月人からの襲撃から助けてもらったフォスは、シンシャが月人にさらわれたいというのを聞いて、なんとかシンシャのためになる仕事を見つけようと思う。

ちなみに、宝石たちは月人の弓や槍を受けると、砕けるがそれで死ぬ訳ではなく、その砕けた破片をくっつけると小さな微生物のインクルージョンの働きで元通りになる。
そのくっつける役割として医者のルチルがいる。
砕くと宝石たちは動けなくなるので、そこで月人たちは宝石を回収して月に持ち帰る。

(2)
この星は6度(たび)流星を受け、その欠片で6個の月ができ、そのため生物は海に逃げ、そこから無機物として生まれたのが、宝石たちのようである。

博物誌に関してもシンシャに関してもアイデアの浮かばないフォスはそのアイデアの拠り所として、ダイヤモンド(通称ダイヤ)を訪ねるが、その時に月人が現われて、ダイヤと月人の戦いになる。
ダイヤは月人の放った矢や槍を刀で跳ね返して月人に応戦するが、それはダイヤにとって負担が大きく刀が手からすり抜ける。
このダイヤの危機に、颯爽とボルツが現われ、一撃で月人を倒してしまう。
そんなボルツを見てダイヤを複雑な心境になる。
そんな折りまたしても月人が現われるが、その月人たちはフォスたちを無視して学校の方に行ってしまう。

月人は学校の上空にくると、なにやら巨大な蝸牛(かたつむり)の殻状の物を落とす。
月人はまたしてもボルツが倒してしまう。
そこで一安心していたら、蝸牛の殻状の物から生物が出て来て、フォスを飲み込んでしまう。
この生命体は、宝石たちを溶かす能力があってボルツさえも歯が立たない。
飲み込まれたフォスはその生命体の体内で溶けてしまう。

(3)
激闘の末、巨大な蝸牛状の物を、海水の池に落とすと、縮こまってしまい小さななめくじかなまこのような物になってしまった。
そこで、フォスはどこにいったのかと殻状の物の中を探すがフォスはどこにもいない。
そうすると、ダイヤはフォスがそのなまこのような物に変わってしまったと思う。
ダイヤはなんとかフォスを元に戻そうとみんなに相談するのだが、誰もフォスのことなど気にかけていないようにそっけない。
ダイヤは疲れ果て草むらで寝ていると、ダイヤの輝きを月人だと見間違えたシンシャがやって来る。
シンシャもフォスにはそっけなかったが、ダイヤの必死の頼みで、フォスが殻に取り込まれていることを教える。
ダイヤを喜び勇んで、みんなの助けを借りて、殻にあるフォスの薄荷色の破片を集め、それをルチルのとこに持っていき修復してもらう。
こうして、ダイヤの熱意によってフォスは元に戻ったのだが、フォスはなまこ状の物を見ると敵意むき出しにして襲い掛かる。
そして、フォスはそのなまこ状の物と話し始める。

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

(9)

(10)

(11)

(12)


☆所感

このアニメは特に意識して見たわけではないです。
きっかけはGYAOのアニメを見ていてその表紙のショートパンツ(ホットパンツ)姿に惹かれてなんとなく見たということです。
だから、このアニメを見たのは、もう第6話くらいまで進んだ状態でした。
ただ、ここでここまでの全話視聴があったので、最初から全部見ることができました。

このアニメを見ていて、なんとなく違和感というか異様な感じを受けていました。
それによって、このアニメに引き込まれたといっていいでしょう。
その異様な感じは何に起因するのかと漠然と思っていて、思い至ったのが、それがこのアニメ(物語)には、「人(人間)」が出てこないということです。

確かに人が出てこない物語(アニメ)というのはいままでにありました。
たとえば、「みつばちマーヤの冒険」などのように、人以外の生命体での物語です。
しかし、そういう物語でもあくまでもその生命体の物語ではなく、人の言動をその生命体で表すという擬人化の手法でした。

しかし、この物語(アニメ)では、本当に人が出てこないのです。
人ではないものが跋扈しているのです。
物語の第2話の説明によると
「この星には6度(たび)流星が訪れ、6度(たび)欠け、6個の月を産み。すべての生物は海へ逃げ、まずしい浜辺には不毛な環境に適した生物が現われた。
 繁栄した生物の内、逃げ遅れ海に沈んだ物が海底に住まう微小な生物に食われ無機物に生まれ変わり、長い時をかけ規則的に配列し結晶となり、再び浜辺に打ち上げられた。
 それが・・・」
ということである。

また、第4話で海のアドミラビリス族の族長(王)のウェントリコススが話すには、
「わしらの伝説では、この星にはかって人間という動物がいたという。
 この星が五度欠けたときまではしぶとく陸に生き残ったが、六度目には遂に海に入り,魂と肉と骨、この3つの分かれたという。
 わが種族アドミラビリスはその内の肉だと伝えられている。生殖と死をこまやかに繰り返しながら血を重ね紡ぐ特性を受け継いだとされる。
 一方、骨は他の生物と契約し長い時を渡る術を身に付け陸に戻った。
 魂は遂に清らかな新天地をいい、再興のため肉と骨を取り戻すべくさまよっているといわれている。」
とのことである。

ということで、この話から推察すると、6度の流星によって人(人間)は滅んだといっていいだろう。
だから、この物語に登場する生命体は、形は人に似ていても人ではないといえるだろう。
つまり、この物語には人(人間)は登場しないといっていいのである。

しかも、この物語の主役であろう陸の生命体である宝石は無機物であるという。
無機物が生命体?という感じであるが、今の私たちの感覚でいえば、ロボットがそれに当たるだろう。
ロボットが生命体であるかどうかといえば怪しいが、ロボットが人(人間)と同じような言動とするという物語はこれまで多く語られている。
日本では、鉄腕アトムなどがその代表であろう。
そういうことでは、無機物である宝石が生命体であってもそれほどの矛盾や驚きはないであろう。

そもそも生命体というのは何かということ自体もはっきりしていることではないといえる。
我々が知らない起動原理で動いているものがあってもおかしくない。

それよりもやはりこのアニメ(物語)の骨格は、人(人間)が存在(登場)しないということである。
ということで、わたしにはこのアニメ(物語)はその展開が読めないということである。
これが、大いにわたしに違和感をもたらしているのである。

相手が人(人間)ならどのような物語であってもある程度その展開が読めるのである。
人は有限で不完全だから、いかに相手が天才といえどもその限界は読めると言っていいだろう。
人ならどんなことがあっても時速100kmなんかでは走れないだろう。
そういう風にどんなことがあっても、その限界は現時点で明確と言っていいだろう。
その限界を超える者は、超人といったり怪物といったり化物といったりしてもいいだろう。
そして、そのような人を超える者が物語に登場しても、その物語に人が登場する限り、最後には人のレベルで物語が終結するというのが、これまでの物語である。
つまり、人(人間)の物語の範疇を超える事はないのである。
それ故に、物語の展開も合っているかどうかは別としても読めるのである。

ところが、この物語には人(人間)が出てこないのだから読みようがない。
なんでもありなのである。
なんでもありの物語を読めるのは作者しかいないであろう。
否、作者も読めなかったりして・・・(笑)

そういうことで、このアニメ(物語)の展開がとても気になるのである。
最後には、魂と肉と骨が一体になって、元の(あるいは新しい)人(人間)が誕生するとかいう展開になったら、かなり興ざめですが。
そんな展開にならないことを願いながら引き続き見たいと思います。
と思ったのですが12話でとりあえず終わりのようなので・・・

物語そのものとしては、人(人間)ではないので感情で動くというより論理または本能(予定調和)で動くという感じで、そこらへんは分かりやすく、また論理を好むわたしとしては見やすいと言えます。
もっとも感情を持っているのは、主人公であるフォス(フォスフォフィライト)であろう。
これはおそらく、己の身体と己の意思に乖離があるということから起こっていることであろう。
この宝石たちで最も脆弱であると思われるフォスが先生やみんなを守るために最も強さを望んでいるということである。
そのために悩む苦しみを持つのである。

人が人であるという定義は時空的にもいろいろな変遷があり、またいまでも流動的であるのであるが、そのひとつの要因は感情があるかないかということであろう。
現状の人型ロボットが人でないのは、この感情の欠落ということが大いに関与しているだろう。

ウェントリコススによると3つに分かれたということなので、感情も3つに分かれたということかもしれない。
とはいっても、均等に3つというより、肉>骨>魂の順ではなかろうかと思う。
ウェントリコススは弟のアクレアツスを助けるためにフォスを騙すのであるが、こういうのは弟に対する愛情という感情があってのことだろう。

宝石たちには、フォスのように感情が自分の言動に影響する者もいるが、ほとんどの者は自らの任務を遂行することをその第一義としているので、一時的な感情はあっても、その感情を任務に引きずることはない。
これは軍人などと同じであって、感情よりも任務(命令,論理)が最優先するのである。
そういうことでは戦うことに矛盾を感じていないといっていい。
ただ、その起動原理は、先生を助けるためということではあるのであるが。

現時点では、月人には感情はまったく感じられない。
しかも、論理というより本能(予定調和)で動いているといってもいいだろう。
なにせ、月人の言葉はまだ聞いたことがないのでなんともいえないということである。
ウェントリコススのいうように月人が魂なら実体がないということにもなろう。
そうなら倒しても一時的な消滅になろう。
ということから、戦いは未来永劫続くともいえそう。

さて、このアニメ(物語)のまた特異なのは、仏教世界を踏襲していることであろう。
わたしは宗教にはまったく疎いので、仏教世界がどういうものかはいえないのですが。
わたしが宗教に関心がないのは、感化を受けるほどの宗教人に出会わなかったということが大きいでしょう。
人生論を語るなら別に宗教でなくていいですから。
わたしの場合は宗教ではなく哲学の方に行ったということです。
ということで、見た目の皮相的なことしか言えないのですが。

この宝石たちの先生といわれるのが、僧であり、また月人は天女と仏と思われるものです。
実をいうと、このアニメで最も見た目が美しいと思われるのは、この天女たちです。
わたしはこういう美しさに弱いです。
このアニメに惹かれる要因のひとつにこの天女の美しさがあります。
この天女の美しさは無機質の美しさです。

宝石たちとしては、誰が好みかというと、ウェントリコススの好みと合っていて、
「わし、ちょっとツンとした子がタイプ、あの黒い髪の長い子とか、夜の赤い子とか好み」
ということ、つまりボルツとシンシャです。そしてわたしとしてはもうひとりアンタークチサイトです。
やはり強くて聡明ってのは惹かれます。

また、見た目の女性がショートパンツ(ホットパンツ)ってのも異色なのです。
普通、女の子の場合はスカートがほとんどなのですが。
スカートに比べてショートパンツだと動きが軽やかで自由度が高いです。
また、ここらへんにも自他を僕だとか彼とかいうのと同じように中性的なことを表しているともいえよう。

ということで、とりとめない話になってしまいましたが、とりあえず紹介ということです。

ともかくこのアニメに惹かれるのは、人がいないというその発想です。
最後にどういう展開になるのか、楽しみです。
その最後というのは、アニメというより漫画ということになるのでしょうが。


宝石の国
HP「TVアニメ『宝石の国』公式サイト」は
 http://land-of-the-lustrous.com/
ウィキペデイアは
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9D%E7%9F%B3%E3%81%AE%E5%9B%BD
です。

YouTube(https://www.youtube.com/)から
TVアニメ『宝石の国』本PV (https://www.youtube.com/watch?v=pwFpAyEuph8
 

ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)から
 無機物(無機化合物);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E6%A9%9F%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9
 有機物(有機化合物);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E6%A9%9F%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9
 僧;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%83%A7
 インクルージョン;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3


余談:GYAO!の視聴

GYAO!の無料視聴だけでけっこう愉(たの)しめます。
アニメとしては、「グイン・サーガ」は面白いです。
このグイン・サーガはかって小説で読んだことがあります。
読んだのは相当前なので、もう内容は忘れてしまっているから、初めて見るようなものですが。
わたしにとって今はアニメが当たりで、「グイン・サーガ」以外にも「ゴルゴ13」「蒼天航路」「GLOOD+」「ロードス島戦記-英雄騎士伝-」「精霊の守り人」「戦国英雄伝説 新釈 眞田十勇士」「バジリスク~甲賀忍法帖~」など目白押しです。
もう見終わった物では、「ベルセルク」「寄生獣 セイの格率」「DARKER THAN BLACK」「DARKER THAN BLACK -流星の双子(ジェミニ)」などが面白かったです。

アニメ以外にもドラマや映画などもあるので見飽きないです。
わたしにとって今はドラマは当たりがないのですが、かってはドラマもよく見ました。


後記

ここんとこ寒さが厳しくて、寒さが苦手なわたしとしては、身も心も固まっています。
だから、書きたいことはあるのですが、なかなか筆が進みません。
そういうことで、ブログのアップは滞りがちになると思いますのでよろしくお願いします。


また、別の
20171026木 また、別の


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アニメ「おおきく振りかぶって」 その2 第4話~第7話(全25話)

いよいよ三橋廉にとっての因縁の三星学園との試合が始る。
三橋は阿部隆也の相手を読んだ巧みなリードによって各打者を翻弄し3点に抑えて勝つ。
このことによって、中学時代の旧友たちは三橋の実力に気づき、三橋に謝罪する。
こうして、西浦高校は初陣を飾り、三橋は西浦高校でホントのエースとしての一歩を踏み出す。

おおきく振りかぶって」の各話の題名
第4話「プレイ」(DVD第2巻)
第5話「手を抜くな」(DVD第2巻)
第6話「投手の条件」(DVD第3巻)
第7話「野球したい」(DVD第3巻)


☆あらすじ

(4)
三橋廉(みはしれん)はいよいよ中学時代の因縁の相手に投げることになりびびって、阿部隆也(あべたかや)の影に隠れるが、阿部にマウンドでは隠れるとこはないと言われてしまう。
三橋は阿部の俺を信頼して一生懸命投げろという言葉で覚悟を決めてマウンドに立つ。

三星の1番打者「みやかわ」が打席に立つ。
阿部は三橋からの情報で「みやかわ」がミートがうまく特に低めは上手に当てるということと共に相手も三橋を知っているということで五分五分なので、中学時代の三橋と違う印象を持たせるために、真ん中に全力投球のストレートを投げさせる。
当然、全力投球の球なのでボールとなるが、「みやかわ」は驚いた拍子にバットが回ってしまいストライクになる。
三橋は全力投球がボールとなっておどおどするが阿部がナイスボールといったので、ボールでも良かったのだと安堵する。
阿部が打者の構えから速球を意識していると見て、インの低めにスライダーを外すように要求する。
「みやかわ」は好きな低めだと手を出すがボールの変化球なので、打ち損じてピッチャーゴロとなる。

三星の織田裕行(おだひろゆき)は三橋をみて球は遅いしボールは定まらないので、ほんとに贔屓だったのだと思うがその割には打てないなとも思う。
そんな織田の心中を察したかのように叶修悟(かのうしゅうご)が、三橋の球は織田には打ちにくいかもと言い、三橋の球を打っとくのもいいと思うよと言う。
織田はその言葉を聞いて、叶は贔屓ではなく三橋を評価しているのかと思う。
バッテリーは、2番の「ひいらぎ」と3番の「よし」を三振に仕留め、三者凡退で好調な立ち上がりを見せる。
この結果を得て、三橋はキャッチャーって凄い、阿部くんて凄い人だ、と思う。

2回表の西浦の攻撃は4番の天才、田島悠一郎(たじまゆういちろう)からである。
阿部はこのレベルなら三橋を完封させてやれると思い、田島に打てよと思う。
その田島はストライクを簡単に見逃すので、阿部はイライラする。
そして、2ストライクからボールをひとつはさんできたので、阿部はキャッチャーのリードは芸がないなと思っていると、急に田島が集中力を増したので、田島はフォークを待っていたのだとびっくりする。
キャッチャーの畠篤史(はたけあつし)はそんなに後方に立っていたら叶のフォークは打てないと思っていたら、叶の投球後に田島がステップして前に出てフォークを打ち右中間を破って二塁打としたので唖然とする。

西浦ナインは初めての素晴らしいヒットにナイバッチと田島に称賛を送ると、百枝まりあ(ももえまりあ)は、ああっいいわぁと喜悦にひたる。
次の5番の花井梓(はないあずさ)はランナーを進める打撃でいいと思うが、監督の百枝が打てのサインなので、欲を出してしまう。
百枝は、硬球にまだ慣れていないので怖がってのバンドは難しいし、それに試合度胸がどれくらいあるのかも知りたいということで打てのサインを出したのである。
花井は田島のように2-1から決め球のフォークを打とうと思うのだが、あえなく三振してしまう。

ベンチに帰った花井は百枝からフォークを待ってたスイングだねと言われる。
その理由はなぜと言われて花井は打てると思ってと言うと、それはいいけど次の打席まではどうすれば打てるか考えるのよと言う。
そして、百枝はみんなに言う。田島は天才だが彼にないものもある、それは体が小さいのでホームランを打てないから彼だけでは点を取れないのだから、みんなでつなぐ野球をして点を取ること、それをしっかり肝に銘じておくようにと。
6番の巣山尚治(すやましょうじ)と7番は打ち取られて、田島は二塁に残塁となる。
花井は今度は勝つためにはフォークではなくストレートを狙うと決める。

2回裏の三星の攻撃は、4番の織田からである。
織田は叶の言葉を気にしながら打席に立つ。
阿部はマウンドに行って三橋にランナーのいないこの打席で織田のデータを取るので、打たれるかもしれないけどびびるなと言う。
またしても三橋は阿部を凄いと思って、その阿部は味方なんだととても心強く思う。
阿部は織田のその長身で腕の長い構えからどの球でも打てかつホームランを打てる4番だと判断して、インハイのストレートのボール球を要求する。
織田がしっかりと球を見たので、今度はインローのストレートのボール球を要求する。
そうするとまた織田はストレートをしっかりと見て、いまの球はなんだと思う。、
その織田の仕草から阿部はこれは誰かに見ろって指示をされたのだと思い、三星側にも三橋のくせ球を知っている者がいると考える。

そこで、ストレートを見せる必要はないと判断して、後は変化球で勝負しようとする。
カーブを見逃し次のカーブを引っ張った織田は、しびれを切らして阿部に「真っ直ぐほおってえなぁ、打たへんから」と言う。
この言葉で阿部は誰かが三橋のストレートを見ろって指示していると確信する。
しかし、阿部はインローにシュートを要求して織田を見逃しの三振に仕留める。
織田は、「打たへんゆうたのに、どケチ」と捨てゼリフを吐く。
その織田を見て、阿部はエスカレーター組でない奴はあまりやる気ないと見て、勝ったとほくそ笑む。

次は三橋にとっての最大の因縁の相手である5番のキャッチャーの畠の打席である。
三橋は当然のようにびびるが、阿部を信じて投げる。
畠はインへのシュートをストレートだと思い打ち損じて、ピッチャーフライに打ち取られる。
この畠に阿部は、3年受けてて、真っ直ぐかシュートか分かんないのかと半ばあきれる。

織田はベンチに帰ると早速、肩慣らしをしている叶のとこに行って、遅いストレートが浮いてきたと言う。
それを聞いて叶は笑って、あんな遅い球が浮くわけないだろうと言う。
織田の問いに対する叶の答えは、三橋の球は遅いストレートより速いという禅問答のようなものであった。
それは叶に言わせると、三橋の球は出だしの角度と速度が噛み合っていないということである。
普通のストレートとタイミングが違うので、手元で伸びるように感じるということである。
速いチェンジアップのようなイメージということでもある。

つまり、遅いと意識しているから手元で速いと感じそれが浮いたと感じるのである。
でも三星の中学時代のみんなは三橋の球に慣れていて打てていたと叶が言う。
織田がそれにしては今日は打ててないと言うと叶はそれはキャッチャーのせいだという。
叶が織田に何を狙っていたと聞くと、織田は真っ直ぐだと答える。
そこで配球を聞くと、織田は、真っ直ぐ、真っ直ぐ、カーブ、カーブ、シュートといって、あっと言う。
叶は織田の狙い球をあのキャッチャーに読まれたんだと言って、他のみんなもそうやって打ち取られていると言う。
そしたら、織田が打たへんから真っ直ぐ投(ほう)らして、とキャッチャーにいうたと言うと、叶は織田に勝つ気ないのかと激怒して詰め寄る
叶は、お前まで三橋をなめとるんか、4番のお前がそんなんじゃ、また三橋に負けるという。
織田は、贔屓だったんだろうと言うと、そんなの畠が言っているだけだと言う。
織田は投手として叶の方が上だと思っているので、叶の言葉に面食らう。
叶は、俺に勝たせてくれと織田に懇願する。

三橋は6番の「かどた」も三振に取り、思わず右手がガッツポーズを取るが、調子に乗っていると思われたくないのでその手をすばやく引っ込める。
しかし、そのピッチングはナインから「ナイピー」と称賛される。
三橋はベンチに帰ると、阿部に「阿部くん、俺、ピッチャー楽しい、マウンドが楽しい、また登りたい、俺」というと阿部も三橋に「俺もキャッチャー楽しいよ」と言う。
それを聞いていた百枝は「あっははは、まだ試合は序盤だよ、ほんとに面白いのはこれからだからね」と言う。
三橋は、まだこれからいっぱい投げられるんだ、いっぱいと思う。

(5)
織田裕行(おだひろゆき)は、叶修悟(かのうしゅうご)が三橋廉(みはしれん)と投げ合って勝つことに凄い意気込みを持っていることに気づく。
叶は3回表を三者凡退に抑える。
百枝まりあ(ももえまりあ)は畠篤史(はたけあつし)のリードは単調だけどテンポが速くてリズムが良いので打ち崩しにくいと思う。

3回裏、9番の叶の打席になる。
阿部隆也(あべたかや)は叶の仕草から、叶が三橋に対して真剣になっており、その分力んでいると読んで、誘い球を投げさせる。
案の定、力の入っている分、叶は力んで内野ゴロとなるが、叶はなんとか生きようと一塁にヘッドスライディングをする。
それを見た畠は、練習試合でヘッドスライディングすんなよ、怪我したらばからしいせと言うと、叶はむっとして、こっちはまだノーヒットなんだぞ、お前こそもっとまじめにやれよ、と言い返す。
お互い険悪な感じになるが、ここは織田が入ってことなきを得る。

4回の表、叶はヘッドスライディングや畠と言い争いの影響か、息が荒い。
その為に、叶は力が入りすぎて、2番の沖一利(おきかずとし)にストレートの四球(フォアボール)を与えてしまう。
ここで、百枝は、阿部はシニア出身だから硬球に慣れていて怖がらないからとバンドを指示する。
阿部はきれいに一塁側にバンドを決めて、沖を二塁に進塁させる。
これで、スコアリングポジョンになりもっとも頼りになる4番の田島悠一郎(たじまゆういちろう)の出番となる。
畠は一塁が空いているので、歩かせてもいい感じで外角のくさいとこを要求する。
そんな球に対しても、田島は右中間が空いているのを見ると、引っ張って見事に右中間を真っ二つに割る。
二塁ランナーが帰り、1点を先取する。田島は連続の2塁打である。

この光景を三橋が食い入るように見ているので、阿部は叶に同情してないかと聞くと、三橋はしてない、ちょっとしかと答える。
ちょっとという言葉を聞いて、阿部は心の中でこいつと思う。

次の打者は花井梓(はないあずさ)であるが、畠はこのままでは押さえきれないと考えて、叶に最初からフォークを要求する。
しかし、そのフォークを畠が後逸してしまい、田島は三塁に進塁する。
それを見て花井は三塁に走者がいるのでもうフォークは来ないとみて、狙い球をストレート一本に絞る。
その通りにストレートが来たので、花井が強振すると、ボールは外野飛球となり、俊足の田島はなんなくタッチアップでホーム(本塁)に帰り、2点目が入る。

叶は余計に力んで6番の巣山尚治(すやましょうじ)にまたしてもストレートの四球を与えてしまう。
たまりかねた織田はタイムを要求して、内野をマウンドに集めて、叶を落ち着かせようとする。
旧三中の者が、あの三橋だから点を取ってやるというと、叶は怒って、いいかげんにしろよ、と言う。
叶は、何度も言ってるだろう、三橋は良いピッチャーなんだよ、俺たちはいま三橋にパーフェクトでやられてんだぞ、と言う。
それでも、旧三中の者が、あの三橋がいたから勝てなかったと言うと、叶はついに切れたという感じになって、叶は勝てなかったのはお前らのせいだろう、お前らが手を抜いていたからだ、と言う。
畠が手を抜いたのは最後の方だけだと言うと、叶は三橋が実力を発揮できなかったのは畠、お前のせいだ、と言う。
しかも、叶は畠に、俺たちが負けていたのは本当はお前にあるんじゃねえのか、とすら言う。
それを聞いて、旧三中の者がそれはあんまりだ、畠は叶の為に悪役をやっていたと、取り成す。

内輪もめで収拾がつかなくなった感じの時に、織田がみんなの頭をグローブで軽く叩き、落ち着けと言う。
織田は贔屓もあっただろうが叶の言うことも分かると言って、それにしても畠には言いすぎだと言うと、叶は畠に謝る。
そして、叶は、お前たちが三橋をなめてる限り、今日も勝てない、俺が三橋より上なら俺を勝たせてくれ、と言う。
それに対して、畠は今日勝って叶が三橋より上だということを証明するために、俺と織田で逆転してやるから、安心して投げろ、と言う。
これで、一件落着して、叶を落ち着きを取り戻す。

それを羨ましそうに見ている三橋に、阿部は円陣に加わりたいのかと聞く。
三橋は見とれていて阿部の声が聞こえない。
阿部はむかついて大声を出す。
やっと阿部の声に気づいた三橋はおどおどして倒れる。
阿部は、三橋は元のチームに戻りたいんだ、そしてそれが三橋にとって最高の状態なんだ、と思う。
しかし、阿部は、俺だっていい投手が欲しい、大バクチで入った無名の公立高でこんな投手を見つけたんだ、絶対手放したくない、それに勝つためには三橋だって俺と組んだほうが良いはずなんだ、と思う。

7番は叶に三振に討ち取られて、西浦ナインは2点を守る4回裏の守備につく。
百枝は阿部を呼び止めて、4番の前にランナーを出すな、そして三橋を頼む、と言う。
阿部は、そうだ、三橋は西浦に必要なんだ、この試合であいつに俺を認めさせてやる、元のチームメートたちよりも俺を選ばせてやるぜ、と意気込む。

(お前のキャッチャーは俺だ)
(投げるよ阿部くん、力いっぱい、全力で)

(6)
三橋廉(みはしれん)は4回裏も三者凡退に抑える。
叶修悟(かのうしゅうご)も力みがとれて5回表を三者凡退に抑える。

そして、阿部隆也(あべたかや)と三橋のバッテリーは5回の裏、三星の4番、織田裕行(おだひろゆき)の2回目の打席を迎える。
1球目は外へのスライダーをファウルする。
織田は、ランナーがいなくて点を取らなくてはいけないということで、ホームランを狙っているので、好きな外角は振れ過ぎて(力んで)ファールになると認識する。
2級目は内(なか)に入ってきたので、今度は振り遅れてファールとなる。
外、内と攻められたので、三橋に対してコントロールが良いというより、上手い具合に荒れてると思う。
織田に言わせると、そんなコントロールをできる投手はいないということである。
織田は、打席で1球遊ぶか、速球くるか、変化球くるかと迷ってしまい、来たカーブに手が出ず、見逃しの3球三振に終わってしまう。
織田は、打席でもの考えている時点で負けや、と反省する。

阿部は、4番の織田を見逃し三振に取ったので、ご満悦で、投手にとって見逃し三振は最高に気持ち良いことだから、俺といればもっとこの気持ち良さを味あわせてやる、と思う。
忘れるなよ、お前の力を引き出してやれるのは俺だからな、とも思う。
ここもバッテリーは三者凡退に抑える。

この状況に三星の代行監督は、どうして1本も打てないのかと頭をかかえる。

6回の表、2番の沖一利(おきかずとし)が凡退した後、3番の阿部が四球を選ぶ。
ここで4番の田島悠一郎(たじまゆういちろう)ということで、またしても西浦はチャンスを迎える。
そうすると、驚いたことに、三星は一塁が埋まっているのに田島を敬遠した。
これを見て阿部は、こいつらいつの間にか本気になっている、と思う。
これに、田島は、ちぇっ、打数が減ったと残念がる。

こんな状況に次打者の花井梓(はないあずさ)は、くさることなく田島はそんだけの打者だと冷静に判断して打席に立つ。
しかし、花井の打球はサードゴロとなって、阿部が三塁フォースアウト(封殺)となる。
アウトになった阿部がベンチに戻ってくると、三橋が防具を持って迎え、惜しかったね、まだ点取れそうだねと言うと、阿部は叶が打たれてもいいんだなと毒づく。
三橋は、阿部くん、誤解しているよ、俺は決心して三星を出てきたんだから、今はみんな(三星)の敵なんだ、と思う。
阿部は、へたにつつくと里心がついちまうな、結果を出すことに集中しょう、勝利の気持ち良さに逆らえる投手はいねんだ、と思う。

西浦は6回の裏も三者凡退に抑える。
三星も7回表を三者凡退に抑える。

そして、7回の裏の三星の攻撃は1番の「みやかわ」から始まる。
一方、叶は代行監督から100球までだという球数制限を告げられる。
ここで、織田が叶に、三橋に負けている理由を聞く。
それに対して、畠篤史(はたけあつし)は負けてないと言うが、客観的にものを見れる織田は俺ら手を抜かんでは三橋を打てへん、と言う。
それに対して叶はまたしても禅問答のようなことを言う。
織田に投手の条件を聞く。
織田がスピードかコントロールかと聞くと、叶は違うと否定して、その者に投手が務まるかどうかのようなことだと言う。
織田がちゃんと考えたことないと言うと、叶は、「俺は1試合投げきれるくらい投げるのが好きなことだって思っている」と言う。
それを聞いて織田は、どっちのがより好きとかいう抽象的理由かと疑問を投げかける。
叶は好きってのは集中していることだと言う。

そして、叶は三橋は中2の夏くらいから試合中の失投がないと言う。
失投とはどのレベルだと織田が聞くと、叶は思った通りの球種とコースを1試合通して投げられることだと答える。
織田がそれに対して疑義を唱えると、叶は三橋は死球はないし四球も癖のある審判のとき1個出しただけだと言い。三橋の練習用の的が9分割だと言う。
それを聞いて織田は三橋がコントロールして「なかそとなかそと」投げているのかと驚くが、信じられなくて良い感じに荒れとるだけだと言う。
しかも、叶に対して、「投手やってる奴が夢みたいなこというなよ」と言って、打者の打ちづらい球は投手だって投げづらいんだと言う。
そしたら、畠がそれそんなに難しいことなのかと簡単に言うので、織田は驚愕して畠に詰め寄る。
織田は、そんな投手めったにいないと言う。
ここでやっと叶は、自分が三橋は凄い投手だと言っていたことが分かる者がいたので、したり顔になる。
それでも、畠は織田に叶に丸め込まれるな、球自体は遅いのだから、と言うと、叶は諦めたように「この問答も何度やったか」と言う。
そうすると、それを聞いていた代行監督が、1回だけ三橋を打つ方法があると言う。

三星ベンチがそんな問答をしている間に、7回裏の三星の攻撃は2アウト(二死)になり、阿部はあと一人打ち取れば7回をパーフェクト(完全)で終われるとほくそ笑む。
しかししかし、好事魔多しということか、3番の「よし」の打った平凡なレフトフライを水谷文貴(みずたにふみき)が目測を誤り後逸してしまう。
阿部はパーフェクトが無くなったので切れそうになるが、エラーなのでまだノーヒットノーラン(無安打無得点)があると気持ちを切り替える。

ここで打者は4番の織田である。
阿部はこの試合での織田への配球のおさらいをして、この打席の織田を打ち取る配球を組み立てる。
それは、織田は真剣にやっても真ん中から逃げていく球は追えないということで、変化球で「なかそと」に揺さぶれれば打ち取れるというものである。
それは織田も認識していることだった。

代行監督が次ぎどこに来るか分かればお前なら打てるだろうと言うと、織田は分かっているだけでは打てないと言う。
それは、前の球の残像が残っているうちに対角線上に厳しい球が来るから体が反応しきれないと言う。
そうしたら代行監督は、残像など残さなければいいと言う。
それは、1球目は目をつぶって振り、その後捕手のミットを見て来た球の軌道を確認したら、次来る球を予測して打つというものであった。
ミットを見ると「そと」だったので次は「なかにシュート」と織田は予測する。

三橋は織田が目をつぶってバットを振ったのに気づいた。
阿部のサインは「なかにシュート」であった。
それを見た三橋は、投手の直感で打たれると思うが、阿部のサインに首なんか振れないということで、サイン通りに投げる。
読み通りの織田の打球は、センターの花井の頭上を越える。
一塁ランナーの「ヨシ」が帰り、1点を返す。
打った織田は三塁を落しいれる。

阿部はパーフェクトもノーヒットノーランも、完封さえ消えたと呆然となる。
阿部は織田と勝負したことを悔やむ。
次の打者は5番の畠である。
畠は阿部にここまで芯をはずされて凡打だが、叶のためになんとしてもここで打ちたいと意気込むが、阿部のリードをまったく読めないと嘆く。
そんなおり、動揺している三橋が癖を出す。それはストレートを投げる時に右手の親指と中指をこすり合わせることだった。
初球の球種がストレートと分かれば、いままで三橋の遅いストレートを打っている畠なので、ドンピシャリとばかりに場外ホームランを打つ。
これで2点が入り、三星は3対2と逆転する。

三橋はがっくり来て、うなだれたので、百枝まりあ(ももえまりあ)は三橋が崩れると思って伝令を用意するが、三橋が立ち直ったので、この子の投げることへの執着はたいしたもんだ、と感心する。
阿部は自分の配球が間違っているのではないかと動揺する。

(7)
そんな阿部隆也(あべたかや)を見て、百枝まりあ(ももえまりあ)は、自分(阿部)がショックを受けて投手への配慮を忘れているようだと、まだまだだと思う。
それでも、6番「かどた」は外野フライに仕留める。

三橋廉(みはしれん)は自分のせいでまたチームが負けると思いベンチに入ることが出来ず、ベンチの横で落ち込む。
それを見た阿部は、俺の配球で打たれても俺が打たれるわけではない、痛い思いをしたのは三橋だと思い、三橋に「ごめん」と謝り、点を取られたのは俺の責任だと言う。
「お前はよく投げてんだ、顔を上げろ」と阿部が言うと、三橋はやっと顔を上げて阿部を見る。
三橋がなんで謝るんだよと問うと、阿部は俺が欲を出してノーヒットノーランを狙ったからだと答える。
三橋がなんでと聞くと、阿部は三橋が三星に未練たらたらなのではっきり勝ちたかったと言う。

その時、百枝が1,2,3番を呼ぶ。
百枝は3人に四番の田島悠一郎(たじまゆういちろう)が敬遠されないためにはどうすればいいかと聞くと、3人は塁に出て塁を埋めると答える。
百枝はそのためには、体力を消耗している投手の叶修悟(かのうしゅうご)を狙えと指示する。

1番のセカンド栄口勇人(さかえぐちゆうと)が打席に立つ。
栄口のこの打席の目的は叶に球数を投げさせることである。
1球目はそとへの際どい球がボールの判定になる。栄口はもうけたと思い、畠篤史(はたけあつし)はなんでだと思う。
2球目はフォークだが栄口は良く見て2ボールとなる。ここで畠は栄口が待球していると気づき、これなら2ストライクまでは簡単に取れると思いストライクを要求する。
しかし、栄口は待球を読まれないために、このストライクの球をファールする。
これを見て、百枝は栄口は自分の指示を良く理解していると褒め、ご満悦である。
2-2から畠はフォークを要求するが、これも栄口は見送り、ボールとなる。
結局、栄口は四球(フォアボール)を選び一塁に出る。

叶は気合では誤魔化せなくなったと自覚し実践ではこんなに消耗するものかと思い、また改めていつも完投している三橋は凄いと思う。、
消耗し動揺した叶は、2番のファースト沖一利(おきかずとし)に死球(デッドボール)を与えてしまう。
3番のキャッチャー阿部は、畠がミットを真ん中に構えているので、待球だと思い込んでいると読んで、初球のストライクをセンター前にはじき返す。
これでノーアウト満塁となる。

こうしてお膳立てが整い、次打者は大望の4番のサード田島である。
田島を迎えて、三星の内野陣はマウンドに集まる。
そこで、叶は畠に深く握っていいかと聞く。
叶は、ここまでは畠が落差の大きいフォークを捕れないので握りを浅くして、落ち具合を加減していたのである。
畠は意地にもなって止めればいいんだろうと言う。
田島はフォークが来たのでもらったと思ったが、空振りをしてしまう。
百枝はこのフォークなら見逃せばボールになると思って、田島に待てのサインを出すが、田島はフォークを打つことに集中していて百枝の方を見ない。
2球目も空振りするが、田島はタイミングを計ったので、次ぎ打てると確信する。
と思ったら、バッテリーはフォークではなくチェンジアップでタイミングを外しに来る。
しかし、ここは天才田島、みんなの願い通り踏ん張って、ライトまで飛球をとばす。
3塁ランナーの栄口がタッチアップで帰って、3対3の同点とする。
3塁コーチは二塁手の肩が弱いということで沖にホームに突っ込むように指示を出すが、ここは二塁手が意地を見せて返球しホームで刺す。

三橋がまだベンチの横で落ち込んだままでいると、田島が来てノーアウト満塁だったのに1点しか入れられなかった、四番としてはかっちょ悪いけどベンチに帰れないことはないといって、三橋にベンチに戻るように促す。

2アウト(二死)になって、次は5番のセンター花井梓(はないあずさ)である。
西浦のみんなは花井に打ってくれと願う。
畠はフォークでなら花井を打ち取れると思って、フォークを要求する。
それに対して、花井はセーフティバンドをする。
球は叶の前に転がるが、叶はスタミナの消耗から踏ん張りきれなくて一塁に投げられず、その間に三塁ランナーの阿部が帰って、4対3の逆転に成功する。
叶は己に腹を立てるが、点を取られたことをナインに謝るようなことはしないので、織田裕行(おだひろゆき)は叶のようなお山の大将タイプの投手は好きだと思う。
百枝は、みんながそれそれ考えて攻撃したので、またまたご満悦である。
三橋は田島が引きずってきたので、やっとベンチに入る。

そして、そのままの点差で、9回裏がやってくる。
阿部がマウンドで三橋に指示を出していると、三橋は阿部のサインに首振るつもりはないけどと言って、4番の織田が目をつぶっていたことを言う。
そのことに、阿部があきれて怒りの表情を見せると、三橋は口答えをしたから怒っていると思う。
阿部は、なんでその場で言わないんだと怒り、そのことから織田には揺さぶりが効いていなかったから打たれたのだと納得する。
阿部は再び自分の配球に確信を持つ。
2番、3番を内野フライに仕留め、4番の織田には1球目速いストレートを見せるが、これが運良くストライクになり、次は遅い球でファールにして2ストライク後、あのくせ球のストレートで三振に取り、歓喜のゲームセットとなる。
三橋は、西浦でエースになると誓う。

西浦ナインは帰るために車待ちをしていると、三橋の前に畠や叶たち三星中時代のチームメイトが来る。
三橋は逃げるが、阿部が捕まえて三橋を畠たちの前に連れてくる。
阿部は、勝ったんだから何言われても三橋は三星に戻らないと願いを込めて思う。
畠は、三橋の中学時代を俺がめちゃくちゃにしたと謝ると、他の旧チームメイトも謝る。
畠は、「償うチャンスをくれないか、戻ってこいよ」と言う。
阿部は、戻らねぇって、はっきり言え、いってくれ三橋、と独白する。
三橋は、小さな声で、「も・ど・ら・な・い」と言う。
それを聞いて、叶は何でだ、みんなお前の力を認めたんだ、と言う。
三橋は、エースは叶なのに俺がマウンドを降りなくてみんなの野球をぶちこわしたけど、今日は来て良かったと言う。
それは、今日みたいにずっとみんなと野球したかったからだと。
そうすると、叶が野球したといっても敵同士じゃないかと、不満げに言う
そして、一人で寂しくないのかと聞くと、三橋は西浦のみんなを振り返り「寂しくないよ」と答える。
叶は、そんなことを言われたらこっちが寂しくなると思う。
畠はお互いがそれぞれのチームで動いていると叶に言う。
それを聞いて、三橋はまた試合しようと申し出る。
叶は三橋の前に歩み出て、「絶対に、な」と言う。
畠は三橋のストレートの癖を指摘した上で、でもそれでも叶の方が三橋より上だと言う。

西浦のみんなが合宿所に帰って片付けをしていると、三橋は部屋の奥に鎮座しているので、阿部が三橋に近づくと三橋は座ったままで寝ており、そのままそこに横たわる。
阿部は百枝にこのまま寝かせておいていいかと聞くと、百枝は風邪ひかないように布団で寝かすように言う。
そして、百枝は阿部に「この安心は、阿部くんがあげたんだよ」「阿部くんが三橋くんに信頼されたってこと、捕手が投手に尽くした分を、投手は信頼で返すのよねぇ、信頼されるっていいもんでしょう」と言う。

阿部は「こっちからの一方通行じゃないんだ、俺は3年間、お前に尽くす」「西浦を選んで良かったって、必ず思わせるからな」と独白する。

こうして初夏の合宿は終わり、夏に向かって新しい胎動が始る。


☆所感

阿部隆也(あべたかや)は、試合に勝つ方法を知っているといっていいでしょう。
とはいっても、阿部は監督ではなく一レギュラーの捕手なので、試合全体やナインを掌握しての勝ちではない。
そこまでの技量はまだないし、仮にあっても監督ではないので、そういうことはできない。
阿部に出来るのは捕手という立場を使うことである。
野球は点を取られなければ、負けることはない。
まず阿部はこれを貫徹しようとする。
そのためには、打者を打ち取ることである。
打ち取るためには、投手が打者の打てない球を投げることである。
打者の打てない球とはコントロールのある豪速球と相手の弱点をつく配球である。
両方があることが理想であるが、片方だけでもかなりのことが出来る。

阿部は自分が相手の弱点をつく自信があるので、配球で打者を打ち取り点を与えないことを第1の主眼にする。
そういうことを思っていると、球は遅いがなんと驚くべきことに自分の思った通りにコントロールしてくれる三橋廉(みはしれん)に出会う。
その三橋のコントロールは九分割という投手の理想といえるほどの素晴らしいものであり、また変化球もありストレートもくせ球なので、阿部は心の中で狂喜乱舞する。
この三橋がいれば、阿部の理想とする野球が出来るのである。

阿部の理想とする野球はデータ野球である。
相手のデータさえあれば阿部はすべての打者を抑えることが出来るという自信がある。
阿部は一試合全体を見て、配球をする。
一試合9インニングを3分割して、3イニングずつ序盤、中盤、終盤とする。
野球の打者は9人なので、最低3イニングで一巡する。
だから、序盤でデータ照合を行い、中盤で揺さぶりをかけ、終盤で締める。
阿部は上位概念思考(演繹的思考)なので、常に考えているのは完全試合(パーフェクトゲーム)である。
その完全試合を目指してデータを下に配球を決める。

しかし、実際(現実)には完全試合なんてのは奇跡といっていいくらいにしか起こらない(出来ない)ものである。
だから、阿部の理想は常に現実の試合で崩れるといっていいと思う。
ただ、この阿部の理想は理論なので問題ではない。
理想は理想であって現実ではないということを分かっているということである。
この理想は考えの基礎となるものである。

この完全試合が崩れても、それに動揺して何かを行うということではない。
完全試合が崩れることを想定しての完全試合である。
つまり、打者が何らかのことで塁に出たり、点が入ってもこの完全試合の理論が変ることがないということである。
ソストウェアなどで思考されるメインルーチンとインタラプト(割り込み)の関係に似ているといえよう。
ソフトは、普段はメインルーチンで動いているが、何らかの要求(割り込む)があるとそちらのルーチンに行って処理をしそれが終わると、またメインルーチンに戻ってくるということである。
何かの要求があるとそちらの方にいって暴走するということはない。
これと同じように完全試合というメインルーチンがあって、打者が塁に出たり点が入ったら(割り込み)、その対応のルーチンに行って処理をして、塁上に誰もいなくなるとまた完全試合のルーチンに戻るのである。
だから理論的には累上に走者がいようが点が入ろうが動揺することはない。

まぁ、実際的(現実的)には、理論は完璧であってもそれを運用する人間は完璧ではないので、試合毎にその割り込みルーチンのバグが見つかるということになるのですが。
つまり阿部が予期しないことが次から次へと起こって点を取られるということもある訳だ。
当たり前といえば当たり前のことが起こるのであるが、阿部は己(の理論)に自信と信念と野心があるので、それをまた乗り越えることができるといえよう。

それ故に、阿部の(要求する)1球はただの1球ではないです。
全体の中の1球です。野球人生における1球なのです。
過去からの1球であり、未来に向けての1球なのです。
相手を打ち取って試合に勝つということで、すべてつながっている1球なのです。
それが配球であり組み立てなのです。

さて、この阿部の理論を支えているのは、データ分析能力である。
そのデータを活かせるということでは、野球で勝つことへの類希(たぐいなれ)な能力があるということだろう。
人がそのポジションを選択するということはおそらく様々だろう。
阿部の場合は、勝つために点を与えないということからの選択かもしれない。
そのための積極的な選択は、投手か捕手だろう。
究極的にはバッテリー(投手と捕手)で打者を全員三振に取れば済むのである。
巨人の創世期の投手で沢村栄治という豪腕投手がいたのですが、あまりにもすざまじい投球で三振を取るので、野手が試しに目をつぶって守っていたら、結局、三振で終わってしまったというエピソードを聞いたことがあります。
三振を取れれば野手は要らないのです(笑)

阿部としては投手か捕手かの選択があるということになるが、阿部の才能からしたら捕手の方があっていたのであろう。
投手は基本的に投げるということに全神経を使うから、たとえ自らが配球を組み立てられる能力があったとしてもそれでは負担があまりにも大きいだろう。
そういうことを考えれば、捕手は受けるということなので、そのデータから配球を考えるということでは、全神経を配球に使っても問題ないということになる。

そこで、データを分析して配球を考えるということになるのであるが、データはあくまでデータであり過去の情報である。
だから、最初の3イニングでそのデータの真偽を検証するということになる。
それで、真偽が分かったらそこから3イニングは相手を揺さぶって打ち取る。
そして、その6イニングで相手の能力を見極めて締めるということになる。
仮にデータがない時は、最初の3イニングをデータの収集に使うということである。
このデータがない時は、過去の経験やその打者の言動から推測することになるが打たれるということもあるだろう。
まぁ、これがデータ野球の限界でもあるのであるが。
豪速球なら力でねじふせることができるので、データとかはあまり関係ないということである。
極端なことをいうと、打者は真ん中に来ても打ち損じるということである。

ただ、阿部の場合はそういう豪速球より配球で相手を打ち取ることに快感(喜び)を感じる捕手ということである。
捕手にも色々あるだろう。
畠篤史(はたけあつし)などは、そういう配球より豪速球の方を好む捕手だから、球の遅い三橋より球の速い叶修悟(かのうしゅうご)の方が上ということになる。

ここらへんを思うと、やはり人の出会いがスーパーということだろう。
別に畠が悪いということではなく、それは畠の捕手ということの好みである。
だから、三橋は畠の前ではやはり良い投手ではないのである。
なぜなら、畠はデータを分析して配球で勝負しようというような考えが主流ではないからである。
ここらへんは、投手と捕手、どちらが主導権を取るということもあるだろう。
阿部のように勝つための自分の理論があるものは、どうしても配球で勝負したいだろう。
なぜなら、阿部の要求した通りに投手が投げたなら、その打者を打ち取れるという確信(自信)があるのだから。

そういうことでは、阿部にとって球は遅くとも抜群のコントロールを持っている三橋は理想の投手なのである。
だから、三橋は阿部と出会って初めて自分の能力を生かすことが出来るのである。
いくら優れた能力があってもそれを生かす環境がなければそれは宝の持ち腐れとなる。
叶だってもの凄く切れのある(落差のある)フォークがあるが、それを畠が捕れないということで封印しているわけである。
ほんと、人との出会いは重要である。
三橋のようにほんとに素晴らしいコントロールを持っていてもその価値に気づかない場合もあるし、叶のフォークのようにその能力を分かっていても使えない場合もある。

まぁ、三橋の場合は己の性格ということも大いに起因しての能力の未見ではあるのだが。
自分自身でちゃんと投手というのは、たとえ球が遅くともコントロールと配球があればそれなりに打者を抑えられるという自覚があれば、もっと改善できていたのであるが。
自己主張できない性格、自信を持てない性格、故に起こっているともいえよう。
しかし、わたしからいえば、自信がないのに努力を惜しまないとかいうのは凄いと思ってしまうのですが。
本当に本当に、投げることが好きというしかないといえる。

そういうことからいうと、阿部でないと三橋の良さを引き出すことはできないともいえる。
阿部は三橋を意識的に求めていたのである。三橋は阿部を夢(無意識)の中で求めていたといえる。
だから、阿部は三橋を絶対に手放したくはないだろう。
こういう人と人との出会いは、一種の奇跡といえるだろう。
プロ野球などでも、トレードなどで他球団に行って活躍したりするのはこういう人との出会いもあるのだろう。

所変われば品変る、である。
三星中学すなわち畠にとっては、贔屓で投げているだけの球の遅いろくでもない投手だったのが、ここ西浦高校すなわち阿部にとってはこの上もない宝である。
コントロールが良いといっても、コントロールが良いことが上位概念ではない。
コントロール良く相手の狙っているとこに投げたらそれはまずいということになる。
上位概念としては配球すなわち相手の弱点が分からなくていけないということである。
ここは打てないとかこういう揺さぶりに弱いとかいう相手の弱点が分かって、その弱点を攻めるにはコントロールが良くないといけないということである。

阿部はデータからあるいは打席に立った打者の言動からそういう弱手を読むことができるのである。
そういうことになったら、投手がコントロール良く阿部の指示通りの球を投げてくれさえすれば、すべての打者を打ち取れるということである。
反対に、畠はそういう相手の弱点を見つけることがそれほど得意ではないが故に、投手の能力すなわち速い球や切れのある変化球を求めるということになるのだろう。
だから、阿部は三橋が宝で、畠は叶が宝ということである。
各々が自分の能力をより出せる相手といえるだろう。
良いとか悪いとかではなく相性なのである。
人間は不完全で有限な存在なので、これはしかたなく起こることである。
何事においてもすばらしいパートナーに出会えるというのは、ほんと奇跡に近いものがあります。必然的に起こることは本当に少ないでしょう。

そういうことから、畠にとっては叶の方が扱いやすいといえる。
叶は三星中学時代から唯一、三橋の能力を認めていたくらいの野球に対する賢さがある。
織田裕行(おだひろゆき)に対しても三橋のくせ球やコントロールの良さや阿部のリードをちゃんと説明ししている。
こういうとこから、叶は自分でも打者に対して配球を組み立てることができる。
それに対して、三橋はそのくせ球やコントロールがありながらその自分の能力にも気づかないくらいだから、とても打者への配球の組み立てなどは出来ないといえる。
ということで、配球の組み立てがあまり得意でない畠としては叶の方がずっと頼りになるのである。
まぁ、三橋の場合はその性格もあって能力が分かりずらかったともいえるのだが。
三橋はどちらかといえば、投げるのが好きということ以外はないといえるからそれもしかたないだろう。
相手を打ち取るために投げるというようなことではないのだから。

しかしながら、いくら三橋がコントロールが良くても球が遅いのではまた限界もあるということになる。
つまり、遅い球のままだと縦横(上下左右)の変化は出来ても、緩急(前後あるいは遠近)の変化は出来ないので慣れれば打ち頃の球になるということである。
だから、三星中のナインは三橋の球を単に遅い球としてなんなく打っていたのである。
ただ、高校野球ということでは、縦横の変化(配球)だけでもそれなりに抑えることが出来るということである。
なぜなら、一度対戦した相手とまた対戦する可能性がとても小さいからである。
1年間で春夏秋と公式戦があってもトーナメントだから、対戦する可能性は年3回ほどしかない。
3年間(正確には2年半)の野球生活があっても1年毎にチームの構成メンバーは変るので、新しい者はそれに慣れるまでには時間がかかるということになる。
また弱点というものは3年くらいではなかなか矯正できないともいえる。
おそらく、そういうことも計算しての阿部のコントロールだけで相手を抑えることができるという目論見なのであろう。

しかし、試合をもっと経験している監督の百枝まりあ(ももえまりあ)は、緩急(前後あるいは遠近)がないと抑えるのは難しいと思って、三橋にもっと速い球を投げることを教え要求する。
この速い球は見せ球で良いのである。
速い球もあると思うだけで、遅い球にタイミングを合わせるのがちょっとでもずれればもうけものなのである。
配球というのは狐と狸の化かし合いみたいなものであり、阿部は勝つためにそういうことをするのが無性に好きなのである。
阿部には真っ向勝負なんていう思想はどこにもないといっていいだろう。

阿部の重んずるものは、道義などではなく勝つための方策という実利である。
そういうことでは、理論(理想)を持った現実主義者といえる。
(中国の紀元前の秦の政治家の商鞅(しょうおう)のようなタイプなのかもしれない)

極端に言うと、阿部は戦うこと勝つことが好きで、三橋は投げることが好きといえる。
それが野球という競技(スポーツ)で表現されているといっていいだろう。

ところで、三星の織田も賢い選手といえるだろう。
叶が三橋のコントロールの良さをいくら言っても、三星中学のナインは分からなかったけど、織田は叶から聞けばその凄さをすぐに分かるわけだから。
織田がいうように、普通はそういう風(なかそとなかそとという具合)に投げ分けられない。
それは邪念が入るから。
三橋は無心で投げているといっていい。
極端に言うと、投げることが好きで投げているに過ぎない。
もし、三橋が配球を意識して投げたら、織田の言うようになるだろう。
そこには打者を打ち取るために投げないといけないという邪念が入り、当然、力むようなことが起こるから。
今の三橋は、そういう配給の意識はなくて、ただ阿部を信頼して阿部の構えた(要求した)とこに投げているだけである。

もちろん、コントロールを身につけるために血のにじむような努力は当然あるのであるが。
その努力を実際の試合で出せるのは、そういう無心があるからである。
だから、阿部との出会いは三橋にとってその力をもっとも発揮できる出会いなのである。
何も考えなくて阿部を信頼して投げればいいのだから。

こういうのは織田が打席に立った時、打席に立った時点でものを考えているようだとダメだというのと同じである。
つまり、打者も打席に立ったら狙い球を打つということだけに無心にならなければ打てないということである。
カーブのような緩い球を1球でも見せておくと、普通の打者は打席で速い球がくるのか遅い球がくるのか考えてしまい(迷ってしまい)、打つことに集中できないのである。
だから、打席に立ったらストレートを打つとか決めて、それをただ打つということである。
とはいっても、狙い球を決めたからといって、必ずしも打てるわけではない。
それは花井梓(はないあずさ)が叶のフォークを打てなかったことでも分かる。
また、織田がいうように狙い球を決めても前の球の残像があって打てないということもある。

阿部はこういうことを知っているから、揺さぶって打ち取ることが出来るのである。
つまり、弱点というのはまたプレーの限界ということでもある。
阿部はその打者がどのようなプレーをどれだけ出来るかを知る術(すべ)を知っているということである。
これが阿部の類希な能力である。こういうことに関しては天才といえるだろう。
故に自分がその相手のプレーの上をいく(出し抜けば)勝てるということである。
ここまでの話は普通の打者(あるいは投手)での話である。

天才にはこういうことは通じない。
それは田島悠一郎(たじまゆういちろう)が証明している。
フォークをステップして打ったり、フォークを待っていて、チェンジアップを打ったりできるのである。
これは打つ時には無心(打つことに迷いがない)になれるからである。
理屈ではない。
それが出来るから天才といえる。
天才とは直感的にものの本質が分かる者ともいえよう。
努力は才能に勝てない、これは本当である。
でも、心配することはない。
天才は希にしかいないから天才と呼ばれるのだから。
だから、普通は三橋みたいにいかに努力したかで結果を出せるということである。
ただし、その努力が報われるのは、今回の三橋が阿部に出会ったように出会いが大きな部分をおさめるともいえるだろう。
努力というのはそれを認めてくれる人がいてこそ輝くともいえるだろう。

ちなみに、天才は常に結果を出すので黙っていても誰もが認めてくれる。

考えることと無心になるということは一見、矛盾しているようにも見えるが、これは投げるまでは打つまでは、打者を打ち取るためにどうすればいいか投手を打つためにどうすればいいかということを考え、投げる時打つ時は、その考えたことを迷いなく実行するということである。
投げる時や打つ時に、打たれるかもしれないとかコントロールできないとか打てないかもしれないとかどんな球がくるか分からないとかいう迷いや雑念をなくして、ただ投げる打つということに集中するということである。
このことは、心技体が一体になっているから出来ることだろう。
天才はそういうことがしばしば自然に起こる(出来る)といっていいのだろう。
普通のものは、そういう状態を意識して練習して心技体に覚えこませなければならないだろう。
そういうのは時間がかかるといっていいだろう。
しかし、時間さえかければ天才のそういう状態に近づけるといえるだろう。

花井はフォークを打てなかったのであるが、百枝がフォークを狙っていたのならそれでいいというのはそういうことである。
無心で打っても打てなかったのはフォークを打つ技(技術)が足らなかったということである。
つまり、今の花井ではフォークを打つためには心技体が一体ではなかったということである。
だから、花井は今の自分にはフォークが打てないということで、次は今の自分に心技体が一体であるところのストレートを狙いにいくと決めるのである。

ところで、こんなに勝つための戦略・戦術を持った頭脳派の阿部がなぜこんな硬式野球部を新設したばかりの学校にきたのだろうか。
阿部自身は、大ばくちでこの学校にきたということである。
ということは、阿部はシニア時代、特に名の知られた選手ではなかったということなのだろう。
そもそもが捕手のリードというのは、簡単には目に見えないものである。
打たれても抑えても、その評価は大概は投手ということである。
捕手のリード云々などといえるのはよっぽど目の肥えた者か当事者でないと分からないだろう。
だから、捕手は女房役といわれる。
また、阿部の理論を実行するには、投手のコントロールというのがその要である。
シニア時代にそういう投手がいなかったということもいえるだろう。

あと、野手が注目されるのは、その守備力と打撃力である。
その守備力も捕手ではあまり見せ場がない。
内野手や外野手ならば、ライナーを捕ったりダイビングキャッチをしたりのファインプレーをしたら守備力があると評価させるかもしれない。
でも、捕手にはそういう機会は少ないだろう。
とはいっても、野手の守備力も本当のファインプレーは打者のデータを元に、守備位置を変えて守るということだろう。
そうすれば、定位置ならダイビングキャッチをしなければならないような球でも普通に取ることができる。
こういう頭脳派のプレーというのは、見た目にはなかなか分からないといえる。
まぁ、逆に言うと、だから頭脳派は相手を翻弄することが出来るということなのである。

阿部の打撃に関しては、普通といえそうである。ホームランを打つような目立つ打者ではないがそれなりに状況に応じた打撃が出来るといえよう。そういうことでは、出塁率は高い打者だと思う。
また、肩も普通なのだろう。特に盗塁阻止率が高いということではないのだろう。
そういうことで、シニア時代は特に目立った選手ではなかったということである。
しかし、大ばくちで入ったここで、三橋という阿部の理論を実行できる最大最高の投手を得たということである。
阿部としては、その本領を発揮できるのである。

ただ、理論があるからといって磐石であったり完璧であったりすることではない。
理論というのは現実を捨象しているものだから、その理論を現実に適用する時には、その捨象をしたものを付加しなければいけないことになり、それは一様な理論に多様性をもたらすことになる。
故に理論を揺らがすようなこともまた起こるといってもいい。
しかし、理論があれば、揺らぎが起こっても基本的に本筋に戻ることが容易である。
つまり、理論があれば動ずることは少ないし回復も早いといえる。

阿部が織田や畠に打たれて自分の配球にミスがあったのかと唖然とするが、直ぐに立ち直ったり、織田が三橋の球を打ったことを納得すると、その後は何事もなかったかのようにリードをするということである。
これは阿部に勝つことへの理論があるからである。
そういうものがなければ、おそらく訳分からなくなってパニックになるだろう。

三星に勝ったということで、百枝の思惑通りになったということでしょう。
三橋が三星中時代の過去をいつまでも引きずっていたら、あの性格が変る見込みもなくいつまでも中途半端なままであったろう。
それを三星中時代のチームメイトと戦わせるという荒療治を行うことによって、過去を清算させたのである。
そして、その過程で、三橋に阿部の力を見せて信頼させ、また阿部は三橋の力を引き出すことによって投手と捕手の新たな在り方を知る。
打線では田島の凄さを見せつけつつも、田島がホームランを打てないことを指摘して、つなぐ野球を教える。
こういうことで、みんなそれそれ長所と短所があり、各々の長所を活かし短所を補うことを教える。
つまり、勝つためには、個人一人の力ではなく、みんなが勝つために何ができるかということを知らしめたということである。
チームワークということである。
この荒療治で、チームの一つの型、つまり基礎ができたということである。

しかし、これはバクチであった。
もし、負けていたらどうなっていたのだろうか。
それはそれで何かを考えていたのかもしれないが。

それにしても、百枝の人心掌握術は見事である。
その一例は、田島は褒め、阿部は褒めない、とこにも表れている。
田島は天才だが、特に勝つことに野心があるわけではない。
そういうことでは、三橋と共通点みたいなとこがあって純粋に野球(打つこと)が好きといえるだろう。
自由人である。
それに対して、阿部は勝つことに野心がある。
すべての言動は、勝つことに基づいているといっても過言ではないだろう。
もし、百枝が阿部を褒めたら、阿部は若いから増長して百枝の指示(命令)を無視して、勝つための言動をとることもあるだろう。
そうなると、二重権力構造となってしまう。
阿部を褒める(甘やかす)と危険なのである。
現に、三橋の使い方で百枝と衝突した訳だ。この時は、百枝がうまく女の武器を使って阿部を懐柔した訳だ。

もちろん、百枝の阿部に対する信頼感は田島に対する信頼感と同等、いやそれ以上かも知れない。
なにせ、現時点で三橋は阿部がいないとその能力を出せないのだから。

実際、百枝と阿部は似た者同士といえるだろう。
勝つためには、何が必要で何をすればいいかを知っているということで。


☆会話(引用)

叶が織田を初めナインに三橋の凄さを説明する(6)
織田裕行(おだひろゆき)(一塁手,4番)
「なぁ、叶」
「自分、三橋のどこに負けとん」
畠篤史(はたけあつし)(捕手,5番)
「負けてねぇよ」
織田
「俺かて、そう思うけど
 俺ら、手ぇ抜かんでも三橋を打てへんやん」
「もう7回やで、このままなら俺は次が最後の打席や
 なんぞヒントになるかもしれん、しゃべれ」
代行監督
「ヒント?」
叶修悟(かのうしゅうご)(投手,9番)
「織田は投手の条件って何だと思う」
織田
「スピードかコントロールかちゅ話か」

「違う、もっとそいつに投手が務まるかどうかみていなこと」
織田
「ちゃんと考えたことない」

「俺は1試合投げきれるくらい投げるのが好きなことだって思っている」
織田
「おい、どっちのがより好きかちゅう抽象的な理由やないやろやな」

「好きってのは集中しているってことなんだよ」
織田
「はぁ、かもな、で」

「中二の夏ぐらいからかな、三橋って試合中の失投がないんだ」
織田
「失投って、どのレベルでゆうてんや」

「思った通りの球種とコースを1試合通して投げられるってこと」
織田
「それは出来てるかどうか確かめようのないことやろが」

「本人に聞いた」
織田
「そんなん、証拠にならんって」

「中学最後の1年、三橋の出したデッドボールはゼロだった」
織田
「はぁ」

「フォアボールは枠が極端に外に寄った審判の試合で出した一つだけ」
「あいつん家(ち)にある的(まと)って、ストライクゾーンが九分割になってんだぜ」
織田
「九分割って」
「じゃ、あいつはコントロールしてなかそとなかそと投げてるちゅんか
 まさか、良い感じに荒れとるだけやろ」
「叶、投手やってるやつが、夢みたいなこというなや」
「そと投(ほう)ったすぐあと、あんな内側」
{三橋がストライクを取る}
「ああぁ」
「そりゃ、対角線で投(ほう)れたら理想やけど
 打者の打ちづらい組み立ては、投手かて投げにくいんや
 なかのあとのそと、変化球のあとの速球」

「それ、そんなに難しいことなのか」
織田
{畠に詰め寄る}
「はあぁ」

「こいつら投手は三橋しか見てねぇから、それが当たり前だと思ってんだよ」
織田
「本気でゆうてんのか、畠」
「こんなん出来る奴、そうそうおらんで」

「だからその凄さが分からなかったんだ」
「まぁ、あいつの性格のせいもあるけどなぁ」
織田
「ああっ」

「織田ぁ、叶に丸め込まれるなよ」
「球自体はスピードのないつまらんボールなんだからな」

「この問答も何度やったか」
代行監督
「うむ」
織田
「てっことはつまり」
代行監督
「織田」
織田
「あっ、はい」
代行監督
「1回だけ使える手を考えた」
「あの投手を打ち崩す手だ」


おおきく振りかぶって
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です。

YouTube(https://www.youtube.com/)から
Ookiku Furikabutte (TV 2007) Opening 1 【OP1】 『Dramatic』 by Base Ball Bear - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=3_545HwqH8A
 
Ookiku Furikabutte 1 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=xWfKZgTsBeA
 
Ookiku Furikabutte Ending 1 [Sub Español] - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=flY3bTuEWoI
Ookiku Furikabutte - Ending 2 (Thai Sub) - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=1mQLUXRlqk8
انمي Ookiku Furikabutte الحلقه 4 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=G73xY3FizmQ
 
انمي Ookiku Furikabutte الحلقه 5 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=x7I0buN7cKs
انمي Ookiku Furikabutte الحلقه 6 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=dMQ0DRrV7cA
انمي Ookiku Furikabutte الحلقه 7 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=LvK6bS1xNXE


やって来た
20170721金 やって来た


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アニメ「おおきく振りかぶって」 その1 第1話~第3話(全25話)

埼玉の県立高校である西浦高校が今年から百枝まりあを監督として硬式野球部を設立し、そこに投手の三橋廉が強制的に入部させられ、その三橋の投手としての能力を捕手の阿部隆也が見出し、本格的に野球部として始動する。
そして、最初の試合は練習試合として、三橋が元いた中学の高校である三星学園高等部となる。

第1話「ホントのエース」
第2話「キャッチャーの役割」
第3話「練習試合」

おおきく振りかぶって」のDVDでは第1巻から第2巻途中まで(全9巻)。


☆あらすじ

(1)
ここは県立西浦高等学校、三橋廉(みはしれん)が暗い顔でとぼとぼと野球部のグランドに向かって歩いている。
グランドを眺めていると三橋はいきなり百枝まりあ(ももえまりあ)に拉致される。
その百枝にポジションを聞かれて三橋は投手と答える。
ここで投手が入ったからとみんなの自己紹介が始る。
百枝によるとこの学校の野球部は今年から硬式野球部が始ったということで野球部員は全員一年生である。
百枝はこの学校の軟式野球部の出身の監督で、専任教師は志賀剛司(しがつよし)である。
投手は三橋、捕手は阿部隆也(あべたかや)、内野手は栄口勇人(さかえぐちゆうと)と田島悠一郎(たじまゆういちろう)と紹介される。
中学時代は、阿部と栄口はシニア出身で田島はサードで4番ということである。、
田島が四番ということを聞いて花井梓(はないあずさ)が負けず嫌いで俺も四番だったと言うが、花井は監督が女なので入部しないという。
それを聞いて百枝はノックできれいなキャッチャーフライを上げてみんなを感歎させ、その上にジューズがあるといって甘夏を手で握りつぶしてシューズを作って花井に飲ます。
それを見て花井も監督の実力をそれなりに認める。

阿部は捕手だから三橋の実力を知るために三橋に投げてみないかと誘う。
そうすると三橋はおどおどして止めとくと言う。投手として認めてもらえないと思って泣く。
それを見て阿部は泣かすようなことを言ったかと仲間に聞く。
三橋は違うと言って、球遅いから投げても意味ないと言う。
三橋は出身を聞かれ三星と答えると、みな知らないというが、志賀が群馬の三星学園かというと三橋は肯定する。
三橋がうじうじしていると、花井が切れてエースだったんならさっさと投げろと言う。
そうすると三橋は自分は贔屓でエースだったと言う。
三星学園とは三橋の祖父の経営する学校とのことである。
監督のせいではなく自分が投手が好きで三年間誰にもマウンドを譲らなかったために、みんなが野球を嫌いになったと三橋がうじうじ言っていると、今度は阿部が切れて、お前まじでウザイ、と言う。
そして、マウンドを譲りたくないなんて投手にとっては長所だよ、と言って、まぁ嫌な奴なのは確かだが、でも投手としてなら俺は好きだよ、と言う。
その好きって言葉を聞いて三橋は投げる気になる。
阿部は投手やっている奴ってみんな癖あるけど、こいつは相当変だぜ、と思う。

三橋が中学卒業してからも投げていたと言うので、阿部が自主トレしてたんだ偉いなと褒めると、三橋は感激してへろへろとなって倒れる。
それを見て阿部はプレッシャーを与えたのかと思う。
阿部は三橋が投げた最初の球が低いと思ったのに、ストライクゾーンに入ったので驚く。
花井はその遅さにがっかりするが、阿部は何球か投げさせる。
阿部は目を輝かせて三橋のとこに行って三橋に球種を聞く。
三橋は指で4種の球の軌道を示す。
阿部が三橋に投球指導受けたことあるかと聞くと、三橋はないと言う。

その三橋の能力に気づいた阿部は、花井に打席に立つように促す。しかし、花井が入部する気はないと断るので、阿部は巧みに花井が四番だったという自尊心をくすぐり3打席勝負しようと持ちかけると花井は憤って承諾する。
田島も打ちたいというと阿部はそれを断る。この時に阿部は田島がシニアのある名門チームの四番だったと気づく。
この対戦は三橋に自信を付けさせるためなので、大振りの四番の花井がうってつけだと阿部は踏んだのである。
三橋は自信がなく自分のせいで阿部が負けるというと、阿部は三橋に俺がホントのエースにしてやると言う。
そして阿部は、俺の言う通りに投げろよ、サインに首を振る投手は大嫌いなんだと言う。

花井は阿部の巧みなリードで討ち取られる。
最後の三橋の投げたストレートに花井は驚いて三橋に詰め寄り、あの球はなんだ、なんで浮くんだと言う。
みんなは言い訳するなというが、阿部は三橋のストレートは変化するストレートだと言う。
三橋は投球指導を受けてないため、独特の握りで投げるので普通のストレートのような落ち方をしないということである。
そこで打者は普通のストレートだと思うので、球が浮いたように感じるのである。
三橋のストレートは三橋にとっては最大の魔球である。

しかし、球が遅いから慣れれば誰でも打てると阿部は言う。
花井が打てなかったその秘密は、慣れさせない投球を三橋なら出来るからだと言う。
その慣れさせない投球とはコントロールと変化球である。
阿部が三橋にストライクゾーンを何分割しているかと聞くと、三橋は9分割だと言う。
それは阿部に言わせると、プロでも出来ないようなボールコントロールの技術を三橋は持っているとのことである。
それを上手く使えば正直、花井からではいくらでもアウトを取れると阿部は言う。
阿部は三橋に投手としてお前は十分魅力的だと思うよと言うと、三橋は俺は阿部くんが凄いんだと思うと言う。
それを聞いて、阿部は、分かっているじゃないか、俺のリードがなければお前はただ球が遅いだけの投手だ、自分の力のなさを覚えとけ、お前は三年間俺のいう通りに投げるんだ、と独白する。
阿部はこの三橋がいれば打たせた球を取ってくれる野手と1点いれてくれる打者とで甲子園に行けると言う。

三橋が無理です、というと花井は怒って一応、目指すと言えというと、田島は一応ではなく俺は本気で目指していると言う。
そしてこの三橋の発言に一番怒っているのは監督の百枝で、野球をほんとに楽しめるのは本気で勝とうとする人間だけよ、わたしは勝ちたいの、やる前から無理無理いってチームの士気を下げる人間にエースナンバー一番は上げない、と言って三橋に詰め寄る。
その剣幕に三橋は、無理じゃないと言ってしまうが、百枝が合宿の後で三星学園と練習試合をするというと完全にびびって嫌だという。
ついに百枝は切れて、三橋にケツバットをかまし、その弱気をどうにかしろと言う。
花井は性格を変えるのはピッチャー止めるというのは同じだと言い、阿部はだましだまし使っていくしかないと思う。
百枝は、甘夏を握りつぶし、私は本気、エースになりたいなら性格くらい変えてみせてよ、と言う。

ともかく、西浦高校硬式野球部は全員1年生の部員10人でスタートする。

(2)
百枝まりあ(ももえまりあ)は高層ビルの窓の清掃のアルバイトをしながら、これからの野球部のことを思って喜びに浸る。
また、この野球部に篠岡千代(しのおかちよ)がマネージャーとして志願してくる。

合宿の日となる。
合宿地へのバスの中で、三橋廉(みはしれん)が車酔いになる。
阿部隆也(あべたかや)は志賀剛司(しがつよし)に頼まれて三橋の面倒を見る。
三橋によると、監督に性格を変えないと投げさせないと言われたのが気になって眠れなくて、車酔いしたとのこと。
阿部はどうしようもない奴と思うが、三橋は阿部にとって理想の投手なので性格は我慢しようと思う。

合宿所は田舎なので、全部自分たちですることになる。
家の掃除後、みんなで夕食の山菜取りに行く。
三橋と阿部は別メニューということで、百枝に呼ばれてグランドにいっしょに行く。
そこでの百枝の話によると、この家とグランドは森林ボランティアをする代わりに借りたとのことである。
百枝が三橋の球速を聞くと、三橋は101kmと答えたので、あまりの遅さに百枝は笑ってしまう。
そうすると、阿部が三橋にはその遅い球を補うだけのコンロトールがあると言う。
それを聞いて、三橋は阿部が自分をかばってくれているということで感激する。
百枝は角材を持ってきて三橋にこの角材の上でワインドアップしろと言う。
三橋はその角材に乗ってワインドアップをするとこけてしまう。その三橋の体幹のなさにまたしても百枝は笑ってしまう。

それで百枝はそんな体幹でコントロールが良いわけがないと言って、自らが角材の上に立って、コントロールは手でするのではなく体でするのよと手本を見せる。
そして、コントロールが良いのは全力投球してないからだと指摘する。
三橋がしているというので、百枝は実際にそれを証明するために自分が投げる。
その百枝の投げた球を三橋がスピードガンで計ると122kmなので、三橋は感激する。
百枝はその三橋に同じような体型なので三橋もこのくらいは出せると言う。
しかし、阿部は不満である。
百枝がコントロールと変化球だけで何回戦まで行けるのと言うと、阿部は行けます、どこまでもと言う。
百枝は、その言葉を受けて、俺がリードしてやれば、というと、阿部はかっとなって百枝に振り向くと百枝は指を阿部の額に当てて、阿部くんは捕手を分かってないねぇ、と軽くあしらう。
三橋は百枝の指示で左手に鉄アレイを持って投球すると、バランスを崩しそうになったので踏ん張って投げると、なんと111kmの球速が出る。
それを見て三橋はすっかり球速に見せられ驚き、また百枝に130km台も出せるといわれてすっかりその気になる。

しかし、阿部は激怒してそんなノーコンは使えないと言う。
三橋は球威もコントロールもある投手になるように頑張ると言う。
それを聞いて阿部はますます激怒して、9分割に投げられるのか、こいつはこのままで良い、と言う。
スピードは才能だけどコントロールは努力です、こいつがどれだけ努力してきたか、あのコントロールがどれだけ貴重か、考えて下さいよ、と阿部は百枝に訴える。
百枝はその阿部を見て今は言っても無駄と思い、体幹だけは鍛えてもいいでしょうと妥協案を出す。
百枝は三橋に角材の上でボールは投げずワインドアップだけをすることを指示する。
そして、百枝のいうところによると合宿後には三星学園との練習試合があり、しかもそのチームは1年生だけなので三橋の中学時代の同僚ということで三橋はすっかりびびって泣いてしまう。
阿部は三橋に速い球は必要ないといって説得しようとするが、三橋は速い球を投げたいと言って、百枝の指示した練習を行う。
阿部は三橋にしかとされたので、すっかりふてくされて、おとなしそうにしてたってやっぱし投手だ、我が強くて傷つきやすい、チームメイトでもなければ絶対付き合わねぇぞ、投手なんかやな奴ばっかだ、と独白する。

さて、宿舎では球児たちが採ってきた山菜を調理している。
その山菜の天ぷらがあまりにも美味しそうなので、田島悠一郎(たじまゆういちろう)がつまみ食いをしようとすると、志賀がその指を箸でつまんで制止する。
ここから、志賀の脳内ホルモンの講釈が始る。
志賀によると、スポーツに必要な脳内ホルモンは三つあって、ひとつめは自分の将来に集中している時のチロトロピン、二つ目は目の前のことにぴっと集中している時のコルチコトロピン、三つ目は過去に集中している時のドーパミンということである。
志賀はこの三つを条件反射でコントロールするということで、その訓練として食事を利用すると言う。
みんな食事を、美味そうと思い、美味いと食べ、ごちそうさまと満足する。
(志賀の脳内ホルモンに関しての講釈は、会話のとこに引用しておきました)

花井梓(はないあずさ)が志賀の講釈に怪訝な感じを持つと、栄口勇人(さかえぐちゆうと)が志賀は学校とか講演とかに行って勉強したという。
また、栄口によるとこの硬式野球部は志賀が百枝に監督を頼んで、二人で野球部を復活させたということらしい。
そんなことから、田島以外のみんなは志賀と百枝の関係を想像してどんよりとなる。
そこへ志賀が入ってきて寝ることになるが、寝るスペーズがないということから、志賀が男女の関係は寝ることで深くなると言って、これから二人ずつ同じ布団で寝るというと、花井があきれて志賀に枕を投げると恒例の枕投げがにぎやかに始る。
しかし、三橋は隅っこに一人でいてあえて参加しない。そんな三橋に志賀が声かけしていると三橋にも枕が飛んでくる。

この枕投げに参加していないもう一人は阿部で、阿部は三橋が百枝の指示で球速をつけようとして自分の思う通りにならないのでふてくされて外でひとりで、グローブ(キャッチャーミット)の手入れをしていた。
そこに百枝が来て、三橋のことを聞くと阿部はそっけなくいわれた通りしていたと言って、早々と立ち去ろうとする。
そこで、百枝は田島や花井を持ち出し、一人二人良い選手がいても勝てないので阿部にもチームの中核になって欲しいと言う。
しかし、阿部は無理だという、それは百枝が阿部は捕手を分かってないと言ったからだと言う。
百枝はそのうち分かると言うと、阿部は反論して捕手にもいろいろなタイプがあり、自分と監督は目指すタイプが違うと言う。
百枝はそんな話をしているのではないと言って、阿部が力を込めた拳を両手で包み込む。
阿部は戸惑いながらも、百枝の、大丈夫分かるよ、分かる、という言葉を受け入れてしまう。
そして、阿部はどうすりゃいいんですか、と百枝に聞くと、百枝は、私がしたことを三橋くんにしてごらん、と言う。
そうすれば、いろんなことが分かるよ、と百枝は言う。

三橋は今日も眠れない。

(3)
三橋廉(みはしれん)の全力投球の練習後、百枝まりあ(ももえまりあ)は三星学園の投手のことを聞く。
三橋によると、三星の投手の叶修悟(かのうしゅうご)の得意球はフォークであるとのこと。
そうすると三橋は、その叶と正捕手の畠篤史(はたけあつし)のフォークの捕球の練習ことを思い出し、自分がエースを降りなかったため二人に苦労を強いたと泣く。

宿舎では百枝が部員の周辺視野と瞬間視を磨くための1~25までの数字をランダムに配列したボードを示す。
そのボードは数字を1から順番に指で指して25まで何秒で到達できるかというものである。
それは目が見た全部を瞬間的に意識するという訓練である。
これに田島が最初に挑戦すると、なんと7秒9であった。
これに百枝は感激して、ありがとう、うちに来てくれてありがとう、と独白する。こういう思いは阿部も田島に持っている。
花井梓(はないあずさ)は18秒だったので、田島の凄さに脱帽する。

阿部隆也(あべたかや)は三橋に眠れているかと尋ねるが、三橋が眠れていると嘘をつくのでいらつく。
阿部はなんとか三橋と心を通い合わせようとするのだが、そうすると三橋はますます緊張して泣く。
三橋は何か言ったらあきれられ、阿部に嫌われるのではないかと思って、がちがちになる。
嫌われまいとして泣くしかない。
そして、今日も悶々として眠れない。

部員は合宿の総仕上げとして、三星学園との練習試合のために、三星学園高等部硬式野球部専用グランドに来る。
その設備の良さにみんな羨ましがる。
三橋は中学時代のみんなが来るということでおどおどしているが、他の者はみんな伸び伸びとしているので、百枝は安心する。
阿部との投球練習でも三橋はびびりまくっているので、コントロールも全く定まらない。
そんなとこに三星学園の部員がやって来て、叶が三橋に声をかけると三橋は怖くてグラウンドから逃げてしまう。
叶から三橋がいることを知った畠は三橋に憎悪をむき出しにして三橋のあとを追う。
部室棟の隅で、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、と言っている三橋を見つけた畠は、三橋に罵詈雑言を浴びせ、あげくの果てにはあの時、腕を折っとくべきだったとすら言う。

そこに三橋を探しにきた阿部が来たので、畠は阿部に挨拶して立ち去る。
腕を折るという話を聞いていた阿部は、三橋に黙っていることはないぞと言うが、三橋はマウンドを降りて叶にマウンドを譲らなかった自分が悪いと言う。
これではまともに投げられないと思った阿部は、百枝の言ったことを思い出し、三橋の手を握る。
そして、三橋に良いい投手だというが、三橋が嘘だと言ってまた泣く。
阿部をこいつはなんて頑固なのだとイラつくが、その手の冷たさに驚き、また指先が固くたこになっているのに気づく。
そのたこから阿部は三橋のその努力に思いを寄せ、頑固なんかじゃない自信がないんだと気づく。
その要因は中学の時のチームメイトが三橋の努力を理解せず自信を根こそぎ奪っていったのだと思う。
そのことが分かった阿部は、お前は良い投手だよ、ムカつくけどイライラするけど、投手としてじゃなくても俺はお前が好きだよ、だってお前頑張ってんだもん、と言う。
そして、こいつのためになにかしてやりたい、こいつの力になりたい、と思い、それが捕手か、と悟る。
そうすると三橋の手が暖かくなる。
三橋は阿部にピッチャーが好きで勝ちたいと言う。
阿部がそれに同意すると、三橋は阿部が自分を認めてくれると知り、阿部が好きだ、と言う。
阿部は好きだと言われるのに微妙な感じを抱くが、ともかく三橋がやる気になったので、二人でベンチに戻る。

その途中、三星の長身の選手とすれ違う。
その選手は関西系のなまりなので、阿部はメンバー表を見て三橋に知らない選手を聞く。
三橋は4番と6番と7番と8番が知らなく、後は因縁の選手である。
その時、ノックのための投球をしていた叶が三橋に声をかけ、フォークを見せる。
西浦ナインは驚く。
阿部は田島にいまのフォークを打てるかと聞くと、田島はいとも簡単に、どんな球でも打つよ、1試合やって打てなかった球はないもんね、と言うと、ナインはみんな感心するが、花井梓(はないあずさ)は田島がカッコイイとめげる。

百枝はそれを受けてこの試合は大事な試合だと言う。それはこの試合に勝って三橋が初めてうちの仲間になると言う。
みんな三橋くんが欲しい、と百枝がいうと間髪を入れず阿部が、欲しい。と言う。
エースが欲しい、と百枝が言うと、みんなは、欲しい、と言う。
花井が阿部に、この試合に勝って三橋が仲間になるか、と話しかけたことによって、三橋のことがベンチ内で話題になり、阿部が三橋のやっかいな性格の元を作っているのは中学時代の暗い思い出であり、それにいつまでも留まっているのでこの試合に勝てば三橋は一歩前に踏み出せると言い、あいつのためにこの試合どうしても勝って欲しいと、はからずも再度、百枝が三橋をエースにするという意図をみんなに浸透させる。
そして、みんなも三橋を自分たちの仲間にするために絶対に勝とうと誓う。
百枝はこの阿部の言動に、投手のために動いているとご満悦で身震いをする。

西浦高校の先行で試合が始り、無理やりウグイス嬢にされた篠岡千代(しのおかちよ)のアナウンスで1番セカンドの栄口勇人(さかえぐちゆうと)がバッタボックスに立つ。
栄口は叶の初球をきれいに三塁側にセフティバントするが、これを投手の叶がこれまたきれいなフィールデングでピッチャーゴロとしてアウトにする。
次の2番ファースト沖一利(おきかずとし)は初球を詰まらされて三塁ゴロでアウトとなる。
キャッチャーで3番の阿部は見逃し2ストライクで1球ボールを外した後に決め球のフォークを振らされて三振で1回は三者凡退で終わる。

そして、1回の裏、いよいよ三橋は因縁の相手に投球をすることになる。


☆所感

このアニメ「おおきく振りかぶって」は一度全部見ているのですが、記事で高校野球のことをちょっと書いたら思い出してまた見てみました。
そうしたら、前回に劣らずまた魅了されたので、今回はこのブログに詳細を書きたいと思います。

やはりというべきか、このアニメの魅力は、投手の三橋廉(みはしれん)のキャラでしょう。
なんていうか、わたしも捕手の阿部隆也(あべたかや)と同じようにとてもイライラします。
でも、その投手の能力というか投手へのこだわりに惹かれてしまいます。

三橋廉は、いつもおどおどしていて自分の思ったことも言えないしとても気弱で優柔不断な少年(高校生)です。
だから自分に自信がないしその過去から人に嫌われていると思い込んでいます。
人を信頼することも人に信頼されること知らないので、当然ながらみんなと何かに向かって突き進んでいくようなこともないです。
そんな少年ですが、何故にか投手が大好きです。野球が好きというより投手が好きなんです。
マウンド上でともかく投げることが好きなのです。
それはもう常軌を逸しているといってもいいです。
だから、マウンドで投げるということでは努力を惜しみません。
そういうことから、投手としては他の者にないものを持っています。
それは驚異的なコントロールです。
ストライクゾーンを9分割してそこにストレート(三橋の場合これが一番の魔球)はもちろん七色の変化球とはいいませんが4種の変化球を100%投げ分けられます。
もちろん、コントロールの言い分、球は遅いです。
しかし、三橋は自分の凄さに気づいていません。

その三橋の凄さに気づいたのが捕手の阿部です。
その三橋のコントロールがあれば試合に勝てると阿部は直感します。
なぜなら、阿部は相手の打者を封じ込める手立てを持っているからです。
その手立てのためには、コントロールの良い投手というのが阿部の理想だったのです。
相手の打者を封じ込める為には、自分の思ったとこに投げてくれさえすればいいのです。
コントロールが良くてもそれだけでは打たれます。
打者のどこに投げるかという配球が大事になります。
そういう打者の弱点を見る目が阿部にはあるのです。
だからたとえ球が遅くてもコントロールさえがあれば阿部は打者を抑えられるという自信があります。

その自分の理想をかなえてくれる投手が三橋だったのです。
それ故に、阿部は三橋に惚れ込みますが、その三橋の性格には辟易して思わず怒ってしまうこともしばしばです。

まぁ、三橋が自分のコントロールの良さの利点に気がついていて、それに自信を持っていればぐちゃぐちゃ言わずとも話は早いのですが、なんせ三橋の場合は性格だからどうしようもないといえます。
極端にいうと三橋は投手ということを知っていても野球を知らないと言えそうです。
一体、なんのためにそんなに努力してコントロールを磨いたのでしょうか。
野球で勝つためなのか。
だったら、少しは打者を打ち取るためにはどうすればいいかということを考えれば十分そのコントロールで通用するでしょう。
おそらく、そういうことは考えられないのでしょう。
その目的がないあるいは不明なのですよね。
というかただマウンドで投げたい、しっかり投げたいということでコントロールを身につけたというべきでしょうか。

普通は試合に勝つということを考えれば、投手は相手が打てないくらいの速い球を投げるということになります。
では、速い球を投げれない者は投手に成れないかというとそうではありません。
投手のもうひとつの条件はコントロールです。
速い球でもストライクにならなければ打者を打ち取れません。
逆に遅い球でも打者の打てないとこに投げれば打たれません。
そういうことが直感的に分かっていておそらく三橋は自分は速い球を投げれないが投手をしたいということでコントロールを磨いたのでしょう。
しかし、遅い球は遅い球なので、そのままならほとんどの者が打ちます。
そこで鍵になるのが配球なのです。

一般的にはどんな球でもどんなコースでも打てるというような打者はいません。
みんなどこかに弱点はあります。
その弱点さえ分かれば、遅い球でも十分打ち取れます。
逆に速い球でも自分の好きなコースなら打つことができます。
そこらへんが勝負の駆け引きです。

そういうことでは、三橋のコントロールは配球の読みができる阿部だからこそ生きるともいえます。
事実、三橋はそう考えて、阿部を信頼します。
阿部の言う通りに投げていれば勝てるということです。
初めて三橋は人を信頼します。

さて、新設の野球部ということですが、何故にこの学校に硬式野球部が設立されたのかははっきりしません。
どうも監督の百枝まりあと野球部部長(専任教師)の志賀剛司(しがつよし)が意図して硬式野球部を作ったようです。
栄口勇人(さかえぐちゆうと)によると、志賀が百枝に監督を頼んだということなので、百枝は志賀の教え子ということかもしれません。
ある種の夢の実現という感じです。
百枝まりあはバイトで貯めたお金をこの硬式野球部にすべてつぎ込みさえします。
もちろん、当人はこの学校の軟式野球部の出身で、野球も上手くまた選手の扱いも上手いです。

部長の志賀剛司は数学の教師ということで野球は素人ということですが、野球に関する直接なことは監督の百枝にまかせ、自らは選手のメンタル(精神)的なことを担当します。

まぁ、大きく言うと百枝は戦術を担当し、志賀は戦略を担当するといってもいいと思います。
戦争で言えば、百枝は将軍で、志賀は軍師(参謀)といえるでしょう。

その志賀が行うメンタルトレーニングというのがなかなか面白い。
だが、このメンタルトレーニングというのは高校野球だからこそその意義が大きいのだろう。
つまり、高校野球というのは名門校でなければ必ずしも全校全部員が勝利ということ(甲子園に行って優勝すること)を目的とはしていないということである。
そういうこと(甲子園)が明確になっているものには、こういうこと(メンタルトレーニング)はあまり意味はないだろう。
目的をはっきりと持っているものは、戦いが明確であり何をすれば勝利するか何をしなければ負けるかということが見えているのである。
それ故に、それを持っている志賀や百枝や阿部や田島にはあえて必要ではない。
もとから勝つこと戦うことを楽しむことができるからである。極端にいえば、それがないと人生に充実感がないともいえる。
阿部は相手の情報を元に三橋が自分の考えているような投球をすれば勝てるということを確信しているし、田島はどの投手でも打てるという自信があり逆に打てない投手が出てくればより闘争心が沸き起こって打ち崩す楽しむを持つ。
田島みたいな天才的タイプはライバルがいればいるほど向上心が沸き起こるといえよう。
百枝もこの戦力で何をすれば勝てるかということがはっきりしているのだから、選手を信頼してそれを行うだけである。
志賀はそういうことがはっきりわかっているからこそのメンタルトレーニングの提唱なのである。

しかし、この西浦高校の硬式野球部は創部1年目であり、1年生だけということもあって必ずしも全員が勝利すること(甲子園に行って優勝すること)を現実的課題として認識しているわけではない。
それは三橋に代表されるといってもいい。
勝利するということが明確でない三橋に勝てといっても無理だろう。
どうしたら勝てる(相手を押さえる、相手から点を取る)かということが見えないのならそのことに不安になり怯(おび)えすら起こってやる気(集中力)が減退してもしかたないだろう。
そういうことでは条件反射的にやる気を起こさせる(集中させる)方法はとても有効であろう。

条件反射といえば、練習で体に憶えさせるというのもそうでしょう。
守備でボールを捕るのも、打者が打った瞬間にその打ち方でボールがどこに飛んでいくかが条件反射的に分かるということだろう。
それが一番出るのがライナーを捕るような場合だろう。
あれは完全に体が反応しているから捕れるのだろう。

まぁ、投手と打者の勝負の場合は、投手(捕手)が逆に打者のその条件反射をうまく利用して打ち取っているともいえるのだけど。
始めに速い球を投げてから、同じフォームから遅い球を投げると、打者は始めの速い球に条件反射的に対応するためにタイミングを外されるということになるのだろう。
大概の打者は速い球に条件反射的に対応するように練習しているのだから。
だから、そういうのはあまり打撃練習をしていないようなピッチャーとかがけっこう打ったりするわけだ。

この条件反射とは別の言葉でいうとリズムといってもいいかもしれません。
緩急や変化球や間で条件反射つまりリズムを乱すってことです。

ところで三橋の性格なのですが、性格や考えというのは、原体験が元になって形成されるようなものもあります。
阿部によると、三橋のうじうじした性格は、中学時代にチームメイトに負い目があることによって形成されたものということです。
ここでは三橋が生まれてからここまでの過程が必ずしも述べられていないのでなんともいえないですが、少なくともうじうじした性格は中学時代に加速されたことは間違いないでしょう。

こういう原体験から形成された後天的な性格や考えた方は、本人がその形成された原体験を意識化すればかなり改善することはできるでしょう。
でも、三橋の場合は原体験による負い目だけで、それを意識化していないので、改善することはかなり難しいと思います。
性格や考え方のどのようなものが先天的であり後天的であるのかは判然とはしないのですが、その人の生まれた時からの過程を巡ればかなりのことが分かるかもしれません。
とはいっても、その過程を知ることがとても難しいといえるのですが。
本人に聞いてもそれをどれだけ客観的に述べられるかは定かでないし、意図的に隠蔽すらする(嘘をいう)かも知れないし、本人が曲解している場合もあるでしょう。
そういうことで、多くの関係者から情報を集めて検証しなければならないでしょう。
他者があえてその者の性格を直すのはかなり難しいでしょう。
後天的なものなら、本人がなんらかのことで意識化するしかないと思う。

例えば、三橋の場合は、中学時代のことを自分で肯定するようにならないと、このうじうじはいつまでも直らないと思う。
自分は素晴らしい投手だから、すっとエースでいたのは当然なのだ。私が試合に勝てなかったのは私の素晴らしさをチームメイトが気づかなかっただけだというようなこと。
だから、阿部あるいは百枝はこの西浦高校では、三橋をそういう意識化に置こうとして勝つことを目指しているのだが、三橋はそんなことは気づきも考えもしないだろう。
ともかく三橋は、阿部でなくとも、やっかいな奴であると思ってしまいます(笑)
しかし、三橋は憎めないキャラであることもまた確かです。

あと、硬式野球部は今年から始ったということで、全員1年生ということだが、これにこの学校の2年生とか3年生とかは参加できないのだろうか。
軟式野球部もあったことから、2年生とか3年生で参加したいという者もあってもおかしくないだろうとも思うのだが・・・
学校創立1年目ではないのだから。

それにしても思うのは志賀と百枝の能力である。
まぁ、志賀は数学教師ということなので、論理的思考は得意だろうから選手のメンタルコントロールに対しても勉強すればそれなりの知識あるいは智恵を得ることができるであろう。
百枝は監督だからある程度選手の機微が分かるのは当たり前だが、相手の心理を読む術は秀でているといえよう。
ふてくされた阿部でなくとも百枝に、その手を包み込むように握られたら、これはもう当然折れるだろう。
そういう自分の魅力を知ってそれをうまく使うなど、その相手の心理の機微を巧みに捕まえる妙技に感心してしまいます。

また、最初に田島、花井の名を出し、3番目として阿部に期待するという言い方なども阿部の驕(おご)りをうまく抑えているといえよう。
百枝の心の内では、このチームのキーマンは阿部でしょう。ただでさえ捕手は守備の扇の要(おうぎのかなめ)といわれるくらいなのにこの阿部の賢さである。
百枝がチームの勝ちを阿部に期待しても不思議ではない。だから合宿の初日に阿部と三橋を別メニューで百枝の意図を阿部に伝えたのであり、またこうやって個別に阿部を説得するのである。
しかも、そういう意図を阿部に悟られないようにやっているのである。阿部が驕らないように。阿部が驕ればチームがばらばらになる可能性もあるだろう。
驕るということでは、三橋にはそういうことはないだろうから、三橋の失投というのはほとんどないだろう。

こういう賢さを見込んでの志賀の百枝への監督の要請なのだろう。
それにしても、花井たちではないかこの二人の関係はどういうものだろうかと思ってしまいます(笑)

ちなみに、このアニメ「おおきく振りかぶって」で、わたしが一番親近感を抱くというか好きなキャラは、阿部隆也です。


☆会話(引用)

志賀剛司の講釈 -脳内ホルモンについて-(2)
志賀剛司(しがつよし)(野球部専任教師、数学教師)
「つまみ食い禁止で」
田島悠一郎(たじまゆういちろう)(三塁手)
「箸上手(はしじょうず)」
志賀
「お行儀の話じゃないんだ」
「みんなも聞いて」
「スポーツで重要な脳内ホルモンは三つあると俺は思ってんだよね」
部員たち
「あっ」
「脳内ホルモン?」
志賀
「それがどんなホルモンなのか」
「一つ目は自分の将来に集中するためのホルモン」
「きっと勝てる」
三橋廉(みはしれん)(投手)
「ただいま」
志賀
「きっと俺はやれるとつう自分への期待、チャレンジな気持ちの時ね」
「脳内ではチロトロピンというホルモンが活躍してる」
部員たち
「えっ」
「チ、チロ?」
志賀
「二つ目は現在だ」
「練習でも試合でも目の前のことにピッと集中している時
 活躍しているホルモンがコルチコトロピンだ」
「そして三つ目は過去に集中している時に活躍しているホルモン
 今日もよく頑張ったって充実感、勝ち試合の後の満足感
 こいつらのお陰で明日のやる気が生み出される
 そんな幸せかみしめている時、活躍しているのがドーパミンだ」
巣山尚治(すやましょうじ)(遊撃手)
「ええっ、そうなんすか」
水谷文貴(みずたにふみき)(外野手)
「あのぅ、それで」
志賀
「三つのホルモンが活躍していれば問題ない」
「が実際はどうよ
 負けた試合の次の日はグランドに行くのがいやじゃないか
 努力は才能にかなわないって自分に絶望したことはないか」
三橋
「はっ」
志賀
「やらなきゃいけないメニューよりやりたいメニューを優先してないか」
部員
「それは確かに」
花井梓(はないあずさ)(外野手)
「そりゃそんな日もあるよ、人間だもの、だからなんだよ」
志賀
「練習は量より質だ」
「質を上げるためにはひとりひとりの意識が重要なのは分かるよね
 やれると思えること、やると集中すること、やって良かったと満足すること」
「これは案外難しいよ
 そうしろといわれてできるもんじゃない」
「ただし、あるものに関しては三つともすごく簡単に出来るんだ
 それが食事だ」
「食事の前、俺はこれを食べられるって期待する
 食事中美味いと思っている時は食事に集中している
 食べ終わってあぁ美味かったと満足感を味わう」
「これでチロトロピン、コルチコトロピン、ドーパミン、全部活躍したよ」
「山菜摘みもつまみ食い禁止も食事に集中するための工夫なんだ」
部員
「それで」
志賀
「筋肉と同じく脳神経も鍛えられる
 毎日三度、飯の時こいつらを意識的に活躍させることで
 君らの脳は三つのホルモンが普段から活発に働く脳になる」
西広辰太郎(にしひろしんたろう)(外野手、補欠)
「えっと、つまり集中力が増したり」
志賀
「そう」
巣山
「やるきになったり」
志賀
「そう」
花山
「こうこう」
田島
「甲子園行こうぜ、まじで」
{花山、田島をはがいじめにする}
田島
「行けるよ行けるって」
花山
「こんな能天気なキャラに俺もなると」
志賀
「その通り」
「いいかい、反射っていうのは1週間で作られる」
「反射ってのは梅干を見ると唾液が出るっていうあれね」
西広
「パブロフの犬みたいな」
三橋
「あぁ」
志賀
「そう、それが反射」
「さぁ、この合宿で君らの脳に飯を見るとホルモンが活発になるよう反射を作るよ」

阿部隆也と三橋廉のふれあい(3)
阿部隆也(あべたかや)(捕手)
「腕を折るって、何?」
三橋廉(みはしれん)(投手)
「うぅうぅ、ひく、ひく」
阿部
「おい、まじでそんなことされたんなら、黙ってちゃだめだぞ」
三橋
「あぁ、ひく、畠くんが叶くんに投げさせようとして
 ひく、ひく、でも俺がマウンドを降りないから」
阿部
「だから腕を折るってのか」
三橋
「やんなかったし、それに畠くんは悪くないんだ
 ひく、ひく、だって叶くんの方が良い投手だしみんなに好かれているし
 俺は嫌われているし、ひく、ひく」
阿部
(とにかくこんな状態じゃ、まともに投げられない)
(百枝;阿部くんは捕手を分かってない、私のしたことを三橋くんにしてごらん)
阿部
「うっ」
{阿部左手で、三橋の右手を握る}
三橋
「うっつ」
阿部
「大丈夫」
「お前は良い投手だよ」
三橋
「嘘だぁ」
{泣く}
阿部
「良い投手だよ」
三橋
「嘘ですうぅ」
阿部
「良い投手だって」
三橋
「嘘だぁ、あぁあ、ううっ、ひく、ひく」
阿部
(くそっ、俺が監督にこうされた時はすぐ折れたのに)
三橋
「あぁはぁあぁ、ふぁきゃふぁ」
阿部
(こいつはなんて頑固な)
(それにしても冷たい手だ)
(緊張してるんだな)
(うっ、指先が硬い)
(マメがたこになっているんだ
 スライダーのたこ、シュートのたこ
 こいつは、このたこを作るまで、あのコントロールを身につけるまで
 いったい何球投げたんだろ)
(こいつはこんなに努力しているのに)
三橋
「うぃ、ひくひく、やっぱり俺なんか投げ投げちゃ」
阿部
(頑固なんかじゅない、自信がないんだ)
(こんだけ投げても自信、持てないんだ)
(中学の時の奴らが、こいつから自信を根こそぎ取っていったんだ)
(こんなに努力している男を理解しないまま、チームから追い出したんだ)
三橋
「うぃ、ひっくひっく」
{三橋の手を握っている阿部の手が震える}
「うぅうぅ」
阿部
「お前は良い投手だよ」
{阿部、涙をぬぐう}
(むかつくけど、イライラするけど)
「投手としてじゃなくても俺はお前が好きだよ」
「だってお前頑張ってんだもん」
(こいつのために何かしてやりたい、こいつの力になりたい)
(あっ、それが捕手か)
阿部
「うっ」
(手が暖(あった)かくなってる)
三橋
「あっうっ、俺、頑張ってるって、思う」
阿部
「思う」
三橋
「俺、ピッピッチャー好きなんだぁ」
阿部
「分かるよ」
三橋
「そう、阿部くん、分かる」
阿部
「うん、分かる」
三橋
「お、俺、それで俺、勝ちたい」
阿部
「勝てるよ」
三橋
(阿部くんあきれない、阿部くんは俺のこと本当に認めてくれるんだ)
「お、俺も阿部くんが好きだ」
阿部
「どうも」
(言うのはいいけど、言われるのは微妙だ)
「さぁ、行こう」
「試合前に各打者の特徴を教えてくれ」
三橋
「はい」
阿部
(三橋って、実はすげえ簡単な奴かも)


おおきく振りかぶって
HPは
 http://www.oofuri.com/1st/
放送のHPは
 http://www.tbs.co.jp/anime/oofuri/1st/
ウィキペディアは
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6
 おおきく振りかぶっての登場人物;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%8F%E6%8C%AF%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%B6%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9
です。

YouTube(https://www.youtube.com/)から
Ookiku Furikabutte (TV 2007) Opening 1 【OP1】 『Dramatic』 by Base Ball Bear - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=3_545HwqH8A
 
Ookiku Furikabutte 1 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=xWfKZgTsBeA
 
Ookiku Furikabutte Ending 1 [Sub Español] - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=flY3bTuEWoI
Ookiku Furikabutte - Ending 2 (Thai Sub) - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=1mQLUXRlqk8


模様
20161107月 模様


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アニメ「Cat Shit One THE ANIMATED SERIES」

アニメ(映画)「Cat Shit One THE ANIMATED SERIES(キャットシットワン ジアニメィティドシリーズ)」が面白いです。
ウサギがラクダ(ヒトコブラクダ)を皆殺しにします・・・
とはいっても戦闘でウサギが勝つということです。


☆あらすじ

ラクダ(ヒトコブラクダ)兵がウサギ2人とラクダ1人を捕らえてアジトに戻って来る。
そのアジトをウサギの戦闘員のパッキー(パーキンス)とボタスキーが監視していた。
パッキーは人質を救出するために本部に増援を依頼する。
その捕らえられていたラクダはラクダ兵の暴行を受ける。また逃げようとしたウサギ1人は射殺される。
それを見てパッキーは、人質のラクダ1人とウサギ1人が危険であると判断して即座の救援を要請するが増援部隊の到着には早くても30分ほどかかるということでボタスキーと二人で救出することにする。
しかし、敵のラクダ兵は15人ほどいるので、ボタスキーはびびってしまう。
そんなボタスキーにパッキーは俺たちはプロだといって、決行を促す。ボタスキーは上官の命令なので従わざるをえない。
ボタスキーに丘からの援護を任せて、パッキーは敵地に忍び込む。
2人が収容されているであろうとこに来ると、見張りが2人いたのでパッキーはボタスキーに攻撃の命令を出す。
ボタスキーは次々とラクダ兵をバトルライフルで狙撃する。
その襲撃を受けて見張りの2人の内1人が援護に行ったので、パッキーは残った1人の見張りの背後から忍び寄りナイフで殺す。
捕えられている2人のいるであろう建物の中を見ると、ラクダ兵が3人いたのでパッキーはピストルにサイレンサー(消音機)をつけて3人を射ち殺す。
こうして捕らえられていた2人を確保する。
一方、ボタスキーはその位置を敵に発見されて、ロケット弾を打ち込まれた上にアサルトライフルの一斉射撃を受け一時的に戦闘不能に落ちいる。
そこで、パッキーはアサルトライフルなどで自ら敵の掃討に向かう。危ない状況もありながらそこは戦闘能力に長けたパッキー、なんとか敵を殲滅する。

そこにボタスキーも合流するが、ボタスキーはへとへとである。
援護しなかったボタスキーをパッキーが叱責すると、ボタスキーは怖かったと言う。
そのことからパッキーがボタスキーのライフルの装備(装飾)に文句をつけると、ボタスキーはぶつぶつ言う。
敵を殲滅して人質を救出したので本部にヘリを要請すると、本部からはパッキーのいる地点に敵がトラック3台で向かっているので、南の1km先でヘリと合流するようにとの返答がくる。
しかし、暴行を受けたラクダは歩けないので、パッキーがここに残って敵を食い止めることにして、ボタスキーと1人のウサギが、歩けないラクダを担架に乗せて運ぶことにする。
パッキーはボタスキーに戻ってくるなと命令する。
1人残ったパッキーは3台のトラックでやって来た敵と戦う。
敵はおそらく30人近くいるだろう。
パッキーはいろいろ仕掛けをして先制攻撃をするが、なにせ相手が多すぎる。
しだいに劣勢になり、隙を突かれてロケット弾を打ち込まれて風前の灯になる。
もうダメかと思った瞬間、なぜか敵が倒れていく。
戻ってくるなと厳命していたボタスキーがパッキーを助けに戻ってきたのである。
そのボタスキーは鉈(なた)を持った敵に襲われるがライフルで鉈を受け止め射ち殺す。
そしてボタスキーと共に敵をまたしても殲滅するのであるが、ほっとする間もなく、また新手がやってくる。
今度こそは2人とも絶体絶命ということになるのであるが、そこに増援を依頼していた攻撃ヘリ「アパッチ」が太陽の如く現れて、パッキーたちに光を与える。
アパッチはパッキーたちを確認した後、パッキーたち以外のとこにミサイルと機関砲を雨あられと注いで敵(ラクダ)を掃討する。

任務を無事完了したパッキーとボタスキーは晴れやかに戦場をあとにする。
パッキーはボタスキーが戻ってきたので命令違反だとして罰を与えると言う。
ボタスキーは困惑するのであるが、その罰とは祝杯を奢(おご)るということであった。
2人を乗せるためにアパッチが舞い降りる。


☆所感

このアニメ(物語)でまず驚いたのが、戦闘員が「ウサギ」ということでした。
ウサギといえばおとなしく純情でカワイイというイメージです。
とても戦闘のキャラクターではないです。
だから、自然とウサギに肩入れをしてしまいます。
ウサギがラクダを殺しまくっても何か了解してしまいます。
弱い者が強い者を倒しているような錯覚に陥ります。
これが反対、というより戦闘員がオオカミで、敵がウサギで、オオカミがウサギを次々に殺していたら、おそらくわたしはなんて残虐なんだろうと思ったでしょう。

ここらへんの思い込みというか刷り込みというのは怖いです。
同じ行為をしていても、どんなもの(誰)がそれをしているかということで、事態は大いに変ってくるということです。
ほら、犯罪などでも、容疑者が乱暴な者とおとなしいまじめな者とであったなら、当然なことに乱暴な者の方に先に嫌疑がかかるでしょう。
そういう刷り込みがあるということです。
為政者などでも男と女であったなら、同じ無慈悲な政策をしても女の方が大目に見られることがあるかもしれません。
つまり、女の方がある意味、大胆な政策を取れるかもしれません。
女の人であったなら、あの人というより側近に非情な者がいてその者が操っているというようなことで、当人は弁護されるかもしれません。

プロパガンダなどでアイドルなどが使われるのはこういうことでしょう。
アイドルなどがそんな酷いことをするわけがないということで信じてしまうということです。
見た目ではなく、本質を見るというのはとても難しい。

そんなことを思ってしまいましたが、それでもやっぱりウサギは可愛い(笑)
その歩いてる姿など見ていると微笑ましくなるので、そういう風なことに騙されて皆殺し作戦も容認してしまいます(苦笑)

やっぱり、ここはウサギではなくオオカミが合っていたでしょう。
ちなみに、ウィキペディアを見ると、ウサギは米国でオオカミはドイツということです。
これっておそらく、皮肉でしょう。
本当の狼は米国でしょうから。ドイツは狼に食われた兎でしょう。

ここらへんの刷り込みも、原爆を投下して虐殺をした米国ですら核兵器を持てるのに、北朝鮮が核兵器を持てないというのでも分かるだろう。
米国が北朝鮮の核兵器の開発の中止をいうのなら、論理的理想的にはまず米国が核兵器を廃棄してからいうべきだろう。
はっきりいって、北朝鮮は米国に対して特に何か悪いわけではない。
北朝鮮は結果的に今の米主導の軍事バランスを崩そうとしているから、米国にとっては単に悪なのである。
米国にとっては、米国の思い通りにならない奴あるいは逆らう奴はすべからく単純に悪なのである。
米国が狼で、北朝鮮は兎なのである。
民主国家の米国のすることはすべて善(正義)で独裁国家の北朝鮮のすることはすべて悪である、というプロパガンダの刷り込みがあるってことです。

米国のウサギに洗脳された哀れなサルが日本の現状なのである。
洗脳を拒否した日が日本の独立の日すなわち米国の悪になる日である。
それはいつ来るのでしょうか。今日、明日、明後日、・・・
日本が独立できるのは、中国が世界の覇権を握ったときかな。
つまり、日本の自力での独立は無理で、米国が日本を見捨てるということでの形式としての独立ということ。
戦前の大韓帝国(朝鮮)と同じような形かな。

あと、銃器などの火器での戦闘なのに、ラクダ兵が銃ではなく鉈(なた)でボタスキーを殺そうとするのであるが実際にこういうことはあるのだろうか。
よくドラマや映画では、銃での戦闘シーンでこういう素手やナイフでの戦いがあるのだが、多分こういうのは演出でしょう。
実際においては、銃を持っている者によっぽどのことがないと銃以外で立ち向かわないでしょう。
戦中の日本なら竹槍で向かっていったかもしれませんが(苦笑)
このラクダ兵は銃が壊れたか弾(たま)がなくなったから鉈で向かっていったのでしょうか。
それなら撃たれた兵の銃を拾えばいいのだから、きっとこの兵は馬鹿か剛胆かこだわりがあったのだろう。
おそらくこの兵はラクダーのランボー(乱暴)なのだろう。
相手を倒すのは銃以外でないといけないというようなこだわりがあったのかも知れません。
鉄砲が普及しはじめた頃は、鉄砲などは邪道で戦闘というのは刀や槍や弓で行うものであるという古風な武士道(騎士道)にこだわるような者もそれなりにいただろう。
このラクダ兵もそういう部類の戦士あるいは末裔なのかもしれません(笑)

銃以外といえば、パッキーもナイフで敵(ラクダ)を倒しています。
しかし、この時は銃を使えない状況ということです。
見張りを銃で撃てば音がするし死ぬ前に何か叫ぶかもしれないからです。
そのため敵の背後から相手の口をふさぎ喉をナイフで切ります。
こうすれば、他の敵に気づかれることが少なくなります。
その後、パッキーは建物の中に敵が3人いるのを確認して、今度はピストルにサイレンサー(消音器)をつけて3人を倒します。
ここでサイレンサーを使うのなら先の見張りもこのサイレンサー付きの銃で倒せばよかったといえるかもしれません。
ここらへんは技量の問題でしょう。
パッキーはピストルの腕はそれほどではないのかもしれません。ファントムほどの腕はないのかもしれません。
現に建物の敵を倒した時も一発ずつではなく何発も撃っているし、ましてや止めすら撃ったということで。
それに倒れる時に音もすることを考えると、背後から抱きかかえて始末するのが最も確実な方法ということなのでしょう。
そういうことでは、パッキーはまさに戦闘のプロといえるでしょう。

このアニメの映像はフルCG(コンピュータグラフィックス,コングラ)なのですが、とても動きがいいですね。
普通のアニメとも実写とも違う不思議な感覚です。
何かウサギの動きととてもマッチングしていると思います。

なお、ディスク版(DVDとブルーレイ)には日本語版と英語版が収録されています。
字幕も出るので英語の勉強にも打ってつけ?

また、ディスク版にはおまけもあり、タクティカルアクション解説(それ以外に、インタビューと予告編特集あり)というところで、
パッキーの持っているアサルトライフルはSR-47,ピストルはSTRIKE GUNで、
ボタスキーの持っているバトルライフルはM14-EBRで、
敵の持っているアサルトライフルはAK-47,AKS-74U,RPKということです。


YouTube(https://www.youtube.com/)から
「 Cat Shit One 」DVD・Blu-ray 販売告知 - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=wLLbBaSsMTg
 
кошачий апокалипсис на русском - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=syXDSESM0-o
Cat Shit One - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=2HelJxzshpk

Cat Shit One THE ANIMATED SERIESの
HPは
 http://www.catshitone.jp/
ウィキペディアは
 https://ja.wikipedia.org/wiki/Cat_Shit_One
です。

ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)から
 アパッチ(AH-64 アパッチ);https://ja.wikipedia.org/wiki/AH-64_%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%81
 攻撃ヘリコプター;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BB%E6%92%83%E3%83%98%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%97%E3%82%BF%E3%83%BC
 ライフル(小銃);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%8A%83
 アサルトライフル;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%AB
 バトルライフル;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%AB
 Knight's Armament Company SR-47(英語版);https://en.wikipedia.org/wiki/Knight%27s_Armament_Company_SR-47
 スプリングフィールドM14;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89M14
 AK-47;https://ja.wikipedia.org/wiki/AK-47
 AK-74;https://ja.wikipedia.org/wiki/AK-74
 M16ライフル(M16自動小銃);https://ja.wikipedia.org/wiki/M16%E8%87%AA%E5%8B%95%E5%B0%8F%E9%8A%83
 ピストル(拳銃);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%B3%E9%8A%83
 機関銃;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E9%96%A2%E9%8A%83
 短機関銃;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%AD%E6%A9%9F%E9%96%A2%E9%8A%83
 軽機関銃;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%BD%E6%A9%9F%E9%96%A2%E9%8A%83
 重機関銃;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E6%A9%9F%E9%96%A2%E9%8A%83
 汎用機関銃;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%8E%E7%94%A8%E6%A9%9F%E9%96%A2%E9%8A%83
 機関砲;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E9%96%A2%E7%A0%B2
 ロケット弾;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E5%BC%BE
 ミサイル;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB
 サイレンサー(消音機);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B6%88%E9%9F%B3%E5%99%A8
 サプレッサー;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%BC
 ナイフ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%95
 鉈;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%88
 CG(コンピュータグラフィックス);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9
 兎(ウサギ):https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE
 狼(オオカミ):https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%9F
 駱駝(ラクダ);https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%80
 プロパガンダ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%91%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80


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