No.0128
神戸 港町を歩く・後編
異人館巡りを終えて坂を降り、次に向かったのは三宮駅を挟んで反対側にある、神戸ドールミュージアム。
人形好きなら外せない場所です。
こじんまりした人形店、タイムロマンの2階3階がミュージアムになっていました。
1階のお店で入場料を払って階段を上ります。
規模は小さいながら、かなり大きな子を筆頭にブリュ数体、アロポー、A.テュイエなど珍しい子を含むベベドールやファッションドールがガラスケースに並びます。
私はブリュのお顔が好きなのですが、ここの看板娘の赤いドレスのブリュは流石にブリュらしいノーブルな顔立ちで素敵でした。
もう一体、惹かれたのがあまりジュモーらしくないくっきりした目つきのポートレート・ジュモー。
それにしてもビスクドールの顔立ちも結構様々で、なかなか工房ごとの特徴を見分けるのは困難です。
3階にはオートマタが飾られていました。お馴染みランベール工房やヴィシー工房の、手紙を書くピエロや東洋の手品師(ポーの「メルツェルの将棋差し」を思い出します)、楽器を弾く人形や曲芸師、そしてもう一つの看板である「タバコを吸うダンディー・ルネー」などなど、なかなかの品揃えでした。
展示を見終えて1階のお店もざっと見て、外へ出ると時はまさに夕刻。
暮れてゆく街並みに、今が6月であれば足穂の「六月の夜の都会の空」を見上げることができるのに、と思いつつ、再び丘の方へ向かい、蔦の絡まるにしむら珈琲北野坂店へ。
随分高級感のある店内だと思ったら、幾つかあるにしむら珈琲の中でも、ここはかつて会員制のサロンだったのだそうです。
ゆったりしたソファで深炒りのオリジナルブレンド珈琲を楽しみました。
そしてホテルへチェックイン。
映画でも観ようとラインナップを見ると「天才画家ダリ 愛と激情の青春」というのがあります。
かつて私が愛好してやまなかったダリの映画というので早速観ることに。ところが、相方は途中でぐっすり眠ってしまいました。
この映画、邦題に騙されましたが、実は主人公はダリではなく、ダリの親友のガルシア・ロルカ。
ゲイであるロルカとダリの恋愛を交えた友情に、学友のルイス・ブニュエルが嫉妬。ロルカのガールフレンドも加わった複雑な人間模様が、内戦の予感を孕んだマドリードを舞台に繰り広げられます。
結局、ダリとブニュエルはパリへ。スペインに残ったロルカは人気作家となりますが、やがて内戦が勃発。ロルカはファランヘ党員に捕まり、銃殺されます。
月光に照らされた湖で泳ぐロルカとダリのシーンなど美しい描写もあり、映画としてはまあ良かったのですが、納得がいかなかったのはダリのキャラクター。
あまりにもお坊ちゃん然とし過ぎているのです。
体格も、痩身だった筈のダリとは違って白くて肉付きがいいし、ダリ特有の奇矯な行動も若者が羽目を外してふざけているようにしか見えません。
私の主観も入っているかもしれませんが、ダリはもっと神経質で、演じている部分はあるにせよ、芸術に向き合う姿勢は真剣そのものだったのではないかと思うのです。
あとロルカの死を聞いた時「オレー!」って言って欲しかったな(笑)。
ロルカ、ブニュエル、ガラは良かったです。特にガラは、これぞガラ!という感じでした。
そういえば最近読んでいた谷崎潤一郎も神戸ゆかりの作家だけれど、谷崎と千代夫人と佐藤春夫の関係って、ポール・エリュアールとガラとダリみたいだ、と思いました。(後者はエルンストもいるけど)
翌日はすっきりとした快晴。
ホテルを出て、次の目的地までは徒歩だというので、東京湾岸を思わせる広々とした道路をてくてくと歩きました。
やがて見えてきたガラス張りのキューブ状の建物。
ここは「人と防災未来センター」。阪神・淡路大震災の教訓から、自然災害の被害をいかに軽減するか、ということを目的に建てられた施設なのだそうです。
順路はまず阪神・淡路大震災を音と映像で追体験するシアターから始まり、震災直後の街並みのジオラマを通り抜け、被災者が生活を取り戻すまでの映像を観ます。
その後は震災を記録した膨大な資料が展示されたフロアへ。
修学旅行生と一緒になったので、最初は随分賑やかだったのですが、展示をじっくり見ているうちに彼らとは大分離れてしまいました。
西館から東館へ移動すると、こちらには水害についての展示が。東日本大震災の記録が元になっています。
3Dシアターで上映された「大津波-3.11未来への記憶」という映画がとても良かったです。
次の予定もあるというので途中飛ばしながら見ましたが、3時間くらいは居たでしょうか。
それにしても、政治や社会ももちろん大事ですが、人間にとって何より考えなくてはいけないのは自然と共存して生きる、ということないのかな、と思いました。
次に行ったのは隣の兵庫県立美術館でやっている「大エルミタージュ美術館展」。
私にとっての収穫は、ダーフィット・テニールス2世の各作品でしょうか。
あとはイタリア、オランダ、フランドル、スペイン、フランス、ドイツ、イギリスと、各国の画風の違いが分かりやすく、興味深かったです。
美術館を出て、今度は海沿いの道を駅の方へと辿ります。
本当は中世の修道院を模したという、ホテルモントレ神戸にも行きたかったのですが、あまり時間もないそうなのでレトロ喫茶の英國屋へ入り、遅いランチにしました。
後は空港でお土産を見るだけ、ということでモノレールに乗ったのですが、最後の最後で事件が。
モノレールの中で二人で眠り込んでしまい、目が覚めると出発点の三宮駅に戻っていたのです。
幸いすぐ気付き、一旦降りた車両に乗り込んだのですが、あまりのことに内心焦りつつ二人とも無言。。
空港に着いたのは25分位前。搭乗は15分前までなので、10分程しか時間がありません。
だというのに、手荷物チェックでペンケースが引っ掛かり、中にあったカッターとデザインナイフが没収されてしまいました。
それでも何とか無事飛行機に乗り込むことができ、一安心。
次はきっと6月に来よう、と思いながら、神戸の地に別れを告げたのでした。
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