中学時代、トラックの地区記録を次々に塗り替えた彼女。
その能力を嘱望されてこの学校の陸上部に入った。
僕は彼女と幼なじみ。
彼女の踊るようなフォームが好きだ。
ぐずぐずシューズの紐を結ぶ僕。
「何してんの?早く、アップするわよ!」
いつも元気な彼女。
やがて、彼女はスランプに陥った。
踊るようなフォームは影を潜めていた。
噂によれば、彼女は部の先輩と恋に落ちていたらしい。
それでも彼女は休むことなくトラックを走っていた。
以前、聞いたことがある。
時として女子アスリートにとって恋が敵になることを。
それでも彼女は黙々と走り続けた。
嫌な噂を吹き飛ばすように。
そして、僕は思い出していた。
歳の離れた競馬好きの兄貴の話だ。
06年、新設されたG1「ヴィクトリアマイル」
古馬牝馬のマイル女王を決めるレースだ。
2番人気に推されたのはダンスインザムードだった。
2年前の桜花賞馬だ。
桜花賞を勝った後、勝ちに見放されていた。
オークス。1番人気を背負うものの2着。
アメリカンオークスに招待されるも2着に敗れる。
帰国後の秋華賞も1番人気に推されるが4着に完敗だった。
そして陣営は天皇賞(秋)へと矛先を向ける。
13番人気と低評価ながら2着と好走する。
それからも、海外遠征を含め惜敗が続いた。
能力があるものは時に試練を与えられる。
兄貴が言った。
「ダンスインザムード、得意距離で久々のG1勝ちかもな」
新緑の中、スタートを切られた18頭が府中のコースを走る。
マイネサマンサがレースを引っ張るも
最終コーナーを周り、内からダンスインザムードが抜け出してくる。
完勝だった。
兄貴の言うとおり得意距離で息を吹き返したのだ。
もうすぐ高校生活最後の大会だ。
「私、ちゃんと走れるかな?」
「大丈夫だって、得意な400mだろ?
勝てるって、ダンスインザムードみたいに」
「何それ?ダンスなんとかって?」
「い、いや、何でもないよ。ダンサーみたいに走れるってこと。
きっと大丈夫だよ」
彼女は訝しげに首を傾げていた。
G1 ヴィクトリアマイル
5月15日(日) 東京 芝1600m
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