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全酪新報/2025年3月10日号
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「生乳需給安定や国産自給飼料の増産等へ支援要請、2025年度運動方針を承認」――日本酪農政治連盟が通常総会

日本酪農政治連盟は3月5日、都内で中央委員会及び通常総会を開き、2025年度運動方針など全議案を原案通り承認した。来年度も引き続き生乳需給調整対策や国産自給飼料の増産、高校生への牛乳飲用推進等に対する支援確保に向けて要請活動を展開する。役員補選も行い、副委員長を現行の4人から5人体制へと増員した上で新副委員長に佐藤哲氏(元委員長、北海道酪農協会会長)が選任された。(右:柴田委員長)-詳細は全酪新報にてご覧ください-

中央委員会に引き続き開いた通常総会
お断り=本記事は3月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「自民党酪政会と懇親会、森会長『酪農は不可欠な産業』」――日本酪農政治連盟

酪政連は通常総会後、自民党酪政会所属の議員らとの懇親会を党本部で実施。その席上、森英介酪政会会長は「出来ることは全てやっていきたいと思う。何と言っても酪農は我が国にとって不可欠な産業分野で命綱のようなもの。皆様には大変な状況に負けずに、これからも元気に酪農を続けてほしいと心から願っている」と述べた上で「酪政会も一致団結し、皆様が少しでも仕事がしやすく、元気が出るように頑張っていきたい」と力を込めた。懇親会には60名の国会議員らが駆け付け、それぞれ地元の酪政連委員と交流した。(右:森会長)

冒頭、柴田輝男酪政連委員長は、脱脂粉乳の在庫低減対策や加工原料乳補給金など関連政策の確保にあたっての支援へ謝意を述べた上で「自民党の先生方には今後もお世話になると思う。令和7年度もしっかりと酪農民を支えるために頑張っていく」との意気込みを示した。
懇親会には森会長をはじめ、森山𥙿幹事長や鈴木俊一総務会長、坂本哲志国会対策委員長、宮下一郎総合農林政策調査会長など多くの党幹部が出席。このうち、森山幹事長は今後行われる参院選への協力を求めるとともに「日本の農業、畜産・酪農を、若い人達が誇りをもって頑張れる産業にしていこうじゃありませんか。我々はその実現をしっかりと約束する」と強調した。(右:森山幹事長)

また鈴木総務会長は、自身が会長を務める東北酪政会でこのほど行った現場視察などの取り組み、地域活動が酪農振興に繋がると説明。その上で「酪農はそれぞれの地域で代えることのできない地域経済の支え手。その大切な酪農がしっかりと前へ進んでいけるように、自民党としても皆様と連携していきたい」と述べた。(右:鈴木総務会長)

党本部で行われた懇親会。牛乳で乾杯した
「クロスコンプライアンス導入へ通知、全国的な需給調整に向けパンフレット作成し周知図る」
全国的な需給調整の取組を要件とするクロスコンプライアンス(以下クロコン)の25年度からの段階的な導入について、農水省牛乳乳製品課は2月28日、概要や運用方法等を記載した通知を指定団体、自主流通事業者等へ発出した。合わせて説明資料として、対象となる補助事業や申請時の提出書類、拠出要件等をまとめたパンフレットを作成(図)。3月中に、関係団体や自主流通事業者等を対象としたオンライン説明会を開催するほか、申請手続きに関するQ&Aも月内をめどに公表し、制度の周知徹底を図る。
クロコン導入の対象となる補助事業は、現時点で①国産チーズ生産奨励等事業②生乳流通改善緊急事業③バター・脱脂粉乳需給不均衡改善緊急事業④中小酪農等対策事業⑤乳用牛長命連産性等向上緊急支援事業⑥酪農労働省力化対策事業⑦畜産・酪農収益性強化整備等特別対策事業(畜産クラスター事業)⑧ICT化等機械装置等導入事業(畜産ICT事業)――を想定。8事業以外の補助事業については今後、事業の実施状況等を踏まえ、対象とするかどうか検討を行う。
拠出先の事業は、今年度中に畜産局長が認定するがJミルクが25年度より新たな基金を造成し、開始する「酪農乳業需給変動対策特別事業」が想定されている。申請時の提出書類や拠出要件の詳細は図を参照。
このほか農水省HPでは、クロコンの運用について整理した特設サイトを開設。問い合わせ窓口も設置している。
本紙など酪農専門紙の取材に対し、牛乳乳製品課の平田裕祐課長補佐はクロコン導入の意義について「需給安定がなければ、酪農経営の安定にもつながらない。生乳に関わる関係者は皆、需給全体のプレイヤーの一員であり、無関係でいられるわけではない。需給安定を図る取組は(生乳に携わる)全ての関係者に裨益するもの。(クロコン導入により)皆で支える取組を後押ししていきたい」と強調した。

「牛用配合飼料等を対象に㌧1200円支援」――全酪連・特別対策
全酪連(隈部洋会長)は3月7日、2024年10~12月出荷分の牛用配合飼料等を対象に「㌧当たり1200円」を支援する独自の特別対策を発表した。
高止まりしている配合飼料価格をはじめ、生産費の負担増加等により依然厳しい状況が続いている酪農経営の一助となるよう講じるもの。支援金は会員らへ3月末までに支払う。
対象となる銘柄は、育成飼料、乳配飼料、肥育飼料、TMR銘柄、混合銘柄。特別対策についてはこれまで、21年10~12月出荷分、22年1~3月出荷分、同年4~6月出荷分を対象にそれぞれ「㌧当たり2千円」、23年1~3月出荷分に「㌧当たり1千円」を支援金として支払っており、今回で5回目の特別対策実施となる。
「トムミルクファーム(広島)が耕畜連携の取り組みで農林水産大臣賞」――第11回自給飼料生産コンクール
日本草地畜産種子協会(布野秀隆会長)は3月3日、都内で「第11回全国自給飼料生産コンクール」表彰式を開催。耕畜連携によるWCS用イネを活用した生産利用体系を構築し、地域の農地保全等への貢献が評価され、㈲トムミルクファーム(広島県東広島市、沖正文代表取締役)が最優秀賞の農林水産大臣賞に輝いた。受賞を受けて、沖代表は「これまで続けてきた取り組みが今回このように評価されたことはとても嬉しい。シカ・イノシシといった獣害対策など課題もまだまだたくさんあるが、『地域に必要とされる経営』を胸に掲げ、耕種農家や地域の方々とともにこれからも歩んでいきたい」と語った。
トムミルクファームは、約230頭の乳牛を飼養する大規模酪農経営。今回のコンクールでは、中山間地において自給飼料生産利用を通じた農地保全や地域振興を図っている点が高く評価された。

正文さん(左)と長男の孝典さん
「野生鳥獣問題を考える」――第4回
静岡県立農林環境専門職大学名誉教授
小林信一
~保護から管理へ~
「狩猟者はこの40年で6割減少 猟友会頼みも限界 育成が急務」
シカも捕獲の対象に
現在でこそシカは「増えすぎ」が問題となっているが、戦後しばらくは絶滅が危惧され、保護されてきた。メスジカは保護のため1948年以降、狩猟獣から除外されてきた。1980年代には頭数の増加による農林業被害も増え始めていたが、メスジカ除外は1993年まで継続され、全国で完全に解除されるのは2007年になってからの事であった。
1999年に鳥獣保護法が改正され、「特定鳥獣保護管理計画」制度が新設され、自治体が個体数の増えすぎた「特定鳥獣」の保護管理も行うこととなった。さらに、2007年に農水省を主管とする「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」(鳥獣被害防止特措法)が制定され、被害防止計画を策定した市町村に国が支援する仕組みができ、捕獲費用支援として、シカの場合は1頭当たり8千円が助成されることになった。
2011年度の農水省の鳥獣害対策予算は前年の23億円から113億円へ急増し、その後100億円以上を野生鳥獣対策に投じられるようになった。2014年には「鳥獣保護法」は「鳥獣保護管理法」に改正され、「管理」の文言が挿入された。以上のように、鳥獣害対策は保護から個体調整を主体とする管理に変化してきた。
野生鳥獣との長い戦い
シカやイノシシとの「戦い」は今に始まったことではない。「シシオドシ」をご存じだろうか。竹筒に水がたまることで上下に回転して、下の石をたたいて「カコーン」という音を発する装置だ。日本庭園では音を楽しむ風流な仕掛けだが、もともとは田畑を荒らすシカやイノシシを脅して追い払う仕掛けだ。「鹿威し」または「猪威し」と書き、江戸時代に考案されたとされる。
また、「しし垣」という害獣の進入を防ぐために山と田畑との間に築かれた石垣、土塁もある。こちらは、さらに歴史をさかのぼり、鎌倉時代の文献にも見られ、総延長100㌔㍍を超えるものまである。外敵に備えるという意味では、日本版「万里の長城」ともいえる。このように先人は獣害に苦しみ、様々な対策を試みてきた。
現在、農水省が提唱している鳥獣被害対策は、①侵入防止対策②生息環境管理③個体群管理――を3本柱としている。このうち①の侵入防止対策とは、犬や花火を使った追い払いや柵などで田畑を囲うことだ。地域によっては集落や町村全体を数十㌔㍍も囲っている地域もみられる。現代版しし垣だ。
②の生息環境管理は、野生鳥獣の集落への出没を防ぐために、刈払いによって隠れ場をなくすことや、畑の野菜残さや収穫しない柿等の果実の撤去など集落に餌を残さない取り組みである。
③の個体数調整はシカなどを殺処分して、適正頭数まで減らす取り組みである。冬季の狩猟期以外に有害鳥獣駆除として国や地方自治体が狩猟者に助成している。現在シカでは年間約70万頭が狩猟を含め捕殺されているが、その8割以上が助成による捕殺である。
担い手育成が喫緊の課題
国は2013年に、10年後の2023年にシカの頭数を半減させて、152万頭にする計画を立てたが、若干減少したものの、目標年までの半減は達成できなかった。その一因は、狩猟者がこの40年で6割減少し、さらに60歳以上が6割を超えていることと言われる。
国は被害対策の柱として「担い手の確保」を掲げ、狩猟者の育成に力を入れている。近年は若い人も含め、狩猟免許取得者は若干増加傾向にある一方、実際に狩猟に従事する数はさほど増えていないと言われる。現在は地域ごとに自主的に作られている猟友会が狩猟の主体となっているが、先に見たように狩猟者の減少や高齢化を見ると、猟友会頼みにも限界が来ている。
国は「認定鳥獣捕獲等事業者制度」(鳥獣保護管理法・2015年改正)によって団体や企業が捕獲事業に従事できるようにしたり、市町村ごとに「鳥獣被害対策実施隊」(鳥獣被害防止特措法・2012年改正)を創設したりしている。実施隊員は市町村長が市町村職員や農家などの中から指名するが、民間の隊員も非常勤公務員として遇される。
野生鳥獣対策には、現場で活躍する専門家の育成とその制度化が望まれるが、実施隊はその一歩と期待される。
