第138回直木賞受賞作品
-お父さんからは夜の匂いがした。-9歳の頃に震災で家族を失った花を引き取ったのは、花の親戚という若い男・・・淳悟・・・
淳悟は花の父親となり、そして男になった・・・・
最近ミーハーに大賞受賞作品を読みあさっております
って言うか、どちらもタイトルや作者に惹かれたって言うのが理由なんだけど。
だいたい「私の男」が養父って事で興味津々になったわけだけど・・・内容は予想とは違っていました。
正直かなり衝撃的・・・HEAVYだったぁ・・・
暗い極寒の海の漁港に立ちこめる魚の腐臭の様な、漆黒の海底からわき上がってくる死臭の様な、
男女が激しく絡み合って匂い立つ体液臭の様なよどんだ生臭さが漂ってきそう・・・そんな物語でしたわ。
心の中が寒々として重くなるし。だいたい近親相姦ってだけでもただ事じゃないんだけど。
でもこういう話、好きなんです。
こういう息苦しいほど泥臭い話に目がないんです。
その泥の深みに、ズルズルと引きずり込まれてしまうんです。
どこにも暖かみもなければ救いもないけど・・・
舞台は花親子が移り住んでからの東京と、移り住む前の北海道。
そのどちらででも、花親子の上空には重い空気が常に垂れ込め、そのどす黒い中で彼らは肩を寄せ合うように
生きている。
花と淳悟だけの世界・・・・花と淳悟だけが決めた世界の中で。
原点はオホーツク海を臨む北海道で、そこから彼らの全てが始まっています。
それは、自らの元となる血潮の貪り合い・・・強すぎて歪な愛と、重すぎる罪の始まり。出会ったときから、お互いの欠けたパズルのコマを見付けたように引き寄せられた花と淳悟。
まるでそれぞれがそれぞれの体の一部でもあるかのように許し合う彼ら。
求め方も知らず与え方も知らない彼らは、貪欲に欲しふんだんに与えた・・・・
・・・それは神を冒涜した行為・・・
でも彼らはお互いの中に自分を探し、見付け、愛し、また探し続けるという事をやめることは出来なかった・・・
そんな親子の物語。
暗く冷たいオホーツク海に流れる流氷のように孤独に彷徨い、神にも逆らう歪んだ愛を肯定しながら
重い鎖を引きずって生きる親子・・・自分の「血と愛」を探し離れられなくなった親子の話。
生々しくエロティックな描写には少々驚かされるけど、彼らを取り巻く人々や情景が実に綿密に繊細に
描かれ、この罪の親子の重苦しい生き様を一層引き立たせています。
勿論彼らに共感なんて出来ません。したら大変です。
でも何故かこういう話に惹かれる・・・有り得ないけどこういう男女の繋がりに、そして彼らの心の奥底に潜む闇
に興味が沸いて仕方がない。
何よりこの父親、淳悟と言う男が、女から見ると何とも魅力的な男なのよ。
優しさと残酷性を持ち合わせた危険な臭いのする男・・・・
ちなみに私の頭の中では、淳悟には豊川悦司さんがキャスティングされ、姿が重なって仕方ありませんでした~