2012/07/19(木)
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:17:03.69 ID:G2xyMbst0
マミ「おはようQB。準備はいいかしら」
QB「ああ。もちろんだよ、マミ」
QBはマミさんと一緒に住んでいます。
QBは宇宙からやって来たインキュベーターです。
宇宙の寿命を延ばすために魔法少女の契約をするのが仕事です。
マミ「それじゃ、行きましょうか」
QB「うん」
QBはマミさんと一緒に学校へ行きます。
マミさんの学校には大口契約できそうな逸材がいるので営業をかけたいのです。
どうしていつもついて来るのか、マミさんは聞いたりしません。
今までのようにQBと一緒に行くのが当たり前だと思っているからです。
マミ「おはようQB。準備はいいかしら」
QB「ああ。もちろんだよ、マミ」
QBはマミさんと一緒に住んでいます。
QBは宇宙からやって来たインキュベーターです。
宇宙の寿命を延ばすために魔法少女の契約をするのが仕事です。
マミ「それじゃ、行きましょうか」
QB「うん」
QBはマミさんと一緒に学校へ行きます。
マミさんの学校には大口契約できそうな逸材がいるので営業をかけたいのです。
どうしていつもついて来るのか、マミさんは聞いたりしません。
今までのようにQBと一緒に行くのが当たり前だと思っているからです。
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:22:28.64 ID:G2xyMbst0
さやか「あ、マミさんだ」
まどか「おはようございますマミさん」
通学途中、マミさんは一歳年下の友達に会いました。
先日魔法少女になったさやかと、魔法少女候補のまどかです。
QB「やあ、まどか。願い事は決まったかい?」
QBはすかさずまどかに聞きました。
まどか「ううん。まだだよ」
QB「それじゃあ決まったら教えておくれ」
横ではマミさんとさやかが飽きたようにその様子を眺めています。
毎朝同じやり取りを繰り返しているからです。
さやか「大事な願い事なんてそう見つからないしね」
さやかはしみじみ言いました。さやかも幼馴染が怪我をするまで願い事を決めかねていたのです。
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:27:07.11 ID:G2xyMbst0
QBの今日の仕事はおしまいです。
あとは日がな一日、マミさんと友達のおしゃべりを聞いているだけです。
まどか「駅前に新しいケーキ屋さんができるそうです」
マミ「できたら皆で行きましょうか」
QB「マミはケーキが好きだね」
さやか「ケーキが嫌いな女の子はいません!」
時にはほんのちょっぴり参加しながら。
QBの仕事は魔法少女の契約をすることです。
今日も立派に勧誘して、そして失敗しました。
失敗したのならしょうがありません。
失敗が続くのもまたしょうがないことなのです。
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:28:01.99 ID:EvKQksv2O
語呂がいいスレタイ
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:32:31.78 ID:G2xyMbst0
まどか「ほむらちゃん、おはよう」
ほむら「…おはよう」
向こうからもう一人の魔法少女が現れました。
といっても、相手は少し離れたところからマミさんたちを観察しているだけで、近づこうとしません。
マミ「佐倉さんとは仲直りできそうなのに、彼女は難しいわね」
さやか「まあ、杏子のほうもたいがいですけどね」
まどか「ほむらちゃん……」
三人をよそにQBは別のことを考えていました。
ここのところ営業成績は上がりません。
なにしろさやかと契約する以前の実績は数年ほども遡らなければならないのです。
こんな事態はQBにとって初めてでした。
こんな事態になった理由、それはマミさんと契約したあたりから始まっているような気がしました。
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:37:41.77 ID:G2xyMbst0
QB「マミ、メソメソしてばかりじゃダメだよ。早く魔女を退治しに行かないと」
マミ「うぅ、でも……」
マミさんの両親は交通事故で死んでしまいました。
かろうじてマミさんだけが生き残り、QBと契約したおかげで助かったのです。
けれど小さいマミさんは両親を恋しがってソウルジェムに穢れを溜め込んでいきました。
QBは考えました。
最終的には魔女になってもらうのですが、あまり早すぎても効率がよくありません。
充分に魔法を使って、魔女を倒してグリーフシードを手に入れて、その上で魔女化するのが一番良いのです。
QB「わかったよマミ。今日はぐっすり休んで明日からまた頑張ろう」
だから計画を変更しました。とりあえず言いくるめておいて、少しでも働いてくれるようしむけたのです。
QB「僕は他の子を勧誘してくるよ」
マミ「待って、行かないで」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:44:14.66 ID:G2xyMbst0
QB「なんだい?」
マミ「寂しいの……今日はここにいて」
QB「僕には仕事があるんだよ」
マミ「でも……」
マミさんは今にも泣き出しそうです。
QBは妥協しました。インキュベーターは目的のためなら柔軟な対応ができるのです。
QB「わかった。それじゃあ君が眠るまで一緒にいてあげるよ」
マミ「!」
マミさんは大喜びです。大きな瞳が細くなりました。
すると今度は別の問題が起こりました。
マミさんは嬉しすぎて目がさえてしまったのです。ベッドの中でQBを抱きしめてニコニコしています。
QB「早く寝ておくれよ」
QBの任務には宇宙の命運がかかっています。
現状において多少の計画変更を行ったにしろ、本来ならもたもたしている暇はありません。
しかしインキュベーターの優秀な思考能力はとっておきの打開策を発見しました。
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:48:07.76 ID:G2xyMbst0
歌です。
人類の子供は子守り歌を聴かせるとすぐに眠ってしまうはずです。
QBはさっそく実行しました。
QB「しーんぱーいないからねー きーみーのおーもーいーがー」
マミ「?」
QB「だーれーかーにーとーどーくー あーしーたが…」
マミ「なぁにそれ?」
QB「なにって子守り歌じゃないか。君たちは眠るとき歌を聴くんだろう?」
マミ「そんな子守り歌聴いたことない」
QB「歌に種類があるのかい?」
マミ「それに下手くそ…」
QB「音程はこの前見たテレビから完全コピーしているよ」
マミ「子守り歌は…」
マミさんはQBに子守り歌を唄って聴かせました。
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:53:07.69 ID:G2xyMbst0
QBは腑に落ちません。曲こそ違えどQBのほうが上手く唄えているはずです。
マミ「~♪」
それなのに確かにマミさんの歌のほうが良いと思いました。
QB「ふーむ。これはどういうわけだろう」
マミ「QBのために唄いました」
QB「そうかい」
マミ「では続けてもう一曲」
QB「もう寝ないとだめだよ」
人類の生態を研究するのも仕事をする上で必要なことです。
QBはもっとマミさんの歌を聴きたいと思いましたが、子供は早く寝かすのがこの国の常識でもあります。
QB「歌はまた明日にしよう」
QBはもっとも妥当と考えられる提案をしました。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:55:50.26 ID:G2xyMbst0
次の日のテレビで有名な歌手がこんなことを言っていました。
「『が』の発音は『ga』ではなくて『gua』。言葉は美しく使うものです」
「人間は汚い生き物ですからせめて心構えと言葉くらいは美しくしなければいけません。そう努力することではじめて綺麗になるのです」
QB「やはり人間は理解し難いね」
どうもQBにはわからないようです。
マミ「QB、なにみてるの?」
QB「少し人間の文化を勉強しようと思ったんだけど……マミにはこの歌手の言ってることがわかるかい?」
マミ「この人変な恰好~。妖怪?」
どうやらマミさんには少し早いようです。
マミ「でも天上の美? っていうのはカッコいい!」
通じるものもあるようですが。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:59:33.15 ID:G2xyMbst0
それからというもの、QBは多忙でした。
マミさんの親族はマミさんの養育にあまり熱心ではなかったので、マミさんには生活に必要なもろもろの負担がかかりました。
家事や社会的な手続きは小さいマミさんには大変な作業でした。
魔法少女といえど日常生活のしがらみを無視するのは難しいのです。
QB「これは染みになるからすぐ洗わないとね。洗濯機の使い方は覚えたかい?」
QB「給食費は忘れずに先生に渡すんだよ」
マミさんが一人でも暮らせるように、QBはたくさんの世話をしました。
料理を教えたり。
しつこいセールスマンの追い返し方を教えたり。
全てはマミさんを効率よく動かして魔女にするためです。
反対に、営業する時間はどんどん減っていきました。
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:04:54.27 ID:G2xyMbst0
QB「ねえ、マミ」
マミ「どうしたの?」
QB「君のやり方は効率的じゃないよ」
数年が経ちました。
マミさんもベテランの魔法少女になり、大抵の魔女には負けません。
家事も一人でできるようになりました。
QB「緊急性の低い使い魔まで退治している。魔力の無駄だしリスクが大きい」
QBはいまだにマミさんと一緒に暮らしています。
マミさんにそそいだ時間と労力を無駄にしないためです。最後まで見届けるつもりでした。
マミ「でもQB、使い魔も放っておけば被害を出すわ」
QB「それは君にとって重要なことかい? 被害が出るとしても、
君とは縁もゆかりもない人物である可能性が圧倒的に高いさ」
QBはこれまでで学習していました。
人間には優先度があるということを。
奉仕と献身は賞賛される行為ですが、無関係な人間にまで施す決まりはどこにもありません。
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:11:11.56 ID:G2xyMbst0
QBはあくまで理知的に説きました。
それはこの国の法律からいっても、道徳からいっても、非の打ちどころがありません。
QB「君が誰かのために頑張らなきゃいけない理由はないんだよ」
マミ「理由ね……あなたが親切にしてくれたから、じゃダメ?」
あまりに唐突でQBには理解できませんでした。
マミ「困ってる時にあなたが優しくしてくれて、とてもうれしかったわ」
そうではありません。QBにはQBの目論見があってマミさんの世話をしたのです。
マミ「だから今度はわたしが困ってる人を助けたいの」
QB「君に助けられた人は、君に助けられたなんて少しもわからない。君の場合とは全然違う」
マミ「それでも、わたしが助けた人がまた別の困ってる人を助けるかもしれない。
それがどんどん広がったら素敵でしょう」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:16:09.00 ID:G2xyMbst0
やっぱり人間は論理的じゃないね、とQBは思いました。
第一、マミさんに無理をされたらQBが困るのです。
それをどうやって伝えようか思案していると、またマミさんが言いました。
マミ「心配してくれてありがとう、QB」
QB「わけがわから…」
QBが言い終わる前にマミさんは行ってしまいました。
迷子らしい子供を発見したからです。
魔法少女に変身しなくてもマミさんは困っている人を放っておかないのです。
QB「わけがわからないよ」
QBはつぶやきました。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:24:10.48 ID:G2xyMbst0
まどか「QBはどう思う?」
QB「え?」
まどか「どうしたらほむらちゃんと仲良くできるかな」
しばし昔のことを考えていたQBでしたが、すぐに頭を切り替えました。
QB「彼女の行動になんらかの意図があることは間違いないけど、目的がわからないことにはね」
さやか「そうだよねー。魔法少女にはなるなって言われても、こっちは納得できないし」
マミ「なにか不都合でもあるのかしら?」
QB「それは…」
さやか「あ! もうすぐ始業時間だ」
マミ「ちょっとおしゃべりしすぎたみたいね。急がなくちゃ」
皆は早足で学校へ向かいます。
真面目なマミさんもこんな日だけは遅刻ギリギリです。
けれどマミさんはどこか嬉しそうでした。
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:29:44.58 ID:G2xyMbst0
QBの仕事は相変わらず滞っています。
まどか「ごめんね、まだ決まらないの」
QB「それじゃ仕方ないね」
朝一でまどかを勧誘して断られ、
QB「暁美ほむら、そんなに気になるなら思い切って近づいたらどうだい?」
ほむら「お前にしては妙なことを言うのね」
遠巻きに眺めるほむらを少しだけ注意し、
杏子「この世に正義の味方なんていないんだ。自分の好きにやりゃいいじゃねえか」
さやか「いないからあたしたちが好きにやってんじゃない」
時折角を突き合わせる杏子とさやかをなだめ、
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:35:17.71 ID:G2xyMbst0
QB「さやかは前に出すぎだ。もっと冷静にならないと」
さやか「面目ない」
杏子「へへっ、突撃バ~カ」
QB「杏子もだよ。もっとさやかと連携するんだ」
ほむら「フォローするこっちの身にもなってほしいわね」ボソッ
さやか「ん?」
ほむら「」ザワールド
まどか「今ほむらちゃんがいたような…」
マミ「きっと『敵か味方かわからないけどピンチにはなぜか助けてくれるミステリアスな戦士』を装いたいのね」
QB「マミもそういうの好きだね」
ほむら(おかしなイメージをつくられてる……)
魔女退治が終われば皆を労う。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:42:08.85 ID:G2xyMbst0
人間はわけがわからないので思い通りに動かすのは骨が折れます。
いつも気を配っていなければなりません。
だから他のQBたちのように営業ばかりできないのです。
QB「この生活はとても疲れるね」
マミ「どうしたのQB?」
QB「なんでもないよマミ」
そして楽しそうな顔のマミさんと家に帰るのです。
QBは今の生活が変わることを考えませんでした。
考えられませんでした。
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:49:10.59 ID:G2xyMbst0
ある日、QBのところに別のQBがやって来ました。
あまりにも仕事をしないQBに帰還命令を伝えに来たのです。
新QB「君の思考にはノイズが混入している。母星で速やかにクリーニングを受けるんだ」
QB「ノイズだって? 僕は正常だよ」
新QB「リモート検査の結果がそうなっているんだ。現に今も命令に従おうとしないことが証拠さ」
QBはなにも言い返せなくなりました。
そもそもインキュベーター同士で見解の相違が存在することがおかしいからです。
新QB「君の担当区は僕が引き継ぐよ」
しかしQBは決して承諾しませんでした。自分がいる限り誰にも代わりは任せないと断言したのです。
新QB「しょうがない。しばらくは留任を認めよう。でももし君がインキュベーターの力を不正に使おうとしたら、
その時は自壊プログラムが作動するからね」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:54:04.83 ID:G2xyMbst0
QBは初めて「気持ち」を自覚しました。
これが人類の持つ感情と同じなのかはわかりません。
ただ、今の生活がずっと続けばいいと思っている自分に気付いたのです。
けれどQBはインキュベーターです。
やがて変化は起こりました。
さやかが魔女化したのです。
マミさんと皆はとうとう魔法少女が都合の良いシステムではないと悟りました。
ほむら「魔法少女というのは……」
ほむらが真相を話します。ソウルジェムのこと、グリーフシードのこと、魔女のこと。
マミ「嘘でしょQB?」
マミさんが震える声で尋ねました。
QB「全て事実だよ。僕たちは嘘がつけないんだ」
インキュベーターは嘘がつけないのです。
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:58:33.40 ID:G2xyMbst0
皆がそろうことはもうありませんでした。
魔女になったさやかは退治され、杏子もその時に死んでしまいました。
QB「まどか、願い事は決まったかい?」
まどか「…………まだ」
まどかは以前のように打ち解けなくなりました。
落ち込み、暗い顔をしています。
それでもQBはいつものように勧誘を続けました。
それがインキュベーターの仕事なのです。
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:04:56.27 ID:G2xyMbst0
マミ「パトロールへ行ってくるわ」
真実を知ってからふさぎ気味だったマミさんも、しばらくすると普段の調子を取り戻しました。
魔女や使い魔から街を守らなければいけないからです。
しかしマミさんでも平静ではいられません。
再び一人きりになった負担もあります。
QB「マミ、必要最低限の魔女とだけ戦うんだ。ほむらだってそうしているよ。
このままじゃ遠からず君も限界がくる」
マミ「あなたはわたしたちを魔女にするのが目的なんでしょう?」
QB「……そうだよ」
インキュベーターは嘘をつけないのです。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:09:49.37 ID:G2xyMbst0
マミ「わたしに親切にしてくれたのも、全部そのため?」
QB「……そうだよ」
マミ「そう……そうなのね……」
QBは嘘をついていません。
でも本当のことを言っているわけではないと叫びたくなりました。
それがなぜかはわかりませんでしたが。
マミさんはこの話題についてはもう口にしませんでした。
QBを追い出したりはしませんでしたが、
会話はとても少なくなりました。
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:14:52.45 ID:G2xyMbst0
決定的な日が訪れるのに時間はかかりませんでした。
QB「マミ、ここの魔女は強力だ。今の君では危ういよ」
マミ「暁美さんにはなにか別の目的があるようだし、わたしがやるしかないわ。この街はわたしが守らなきゃ」
QB「だからそれは…」
マミ「QB」
マミ「心配してくれてありがとう」
魔女を退治することはできましたが、マミさんは魔女化が避けられないほど消耗しました。
もう、どうすることもできません。
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:21:18.16 ID:G2xyMbst0
QBははじめてまどかに一日二度目の営業をしました。
規格外の素質を持つまどかなら、願いでマミさんを助けられるかもしれないからです。
QB「さあ、まどか。僕と契約して魔法少…」
QBは言いかけて止まりました。
まどかと契約してマミさんが喜ぶのか?
まどかが魔女化したら地球はどうなるのか?
それらの疑問はインキュベーターにとってどうでもよいことです。
インキュベーターならば、ここはとにかく契約を迫るのが正しいのです。
しかし、
QB「ごめんよ、まどか。なんでもないんだ」
QBははじめて仕事をさぼりました。
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:28:38.19 ID:G2xyMbst0
まどか「大丈夫だよQB。わたしの願いはもう決まってるから」
QB「!」
まどか「わたしが皆を、魔法少女の皆を救ってみせる」
まどか「でも“あなた”とは契約しない」
QB「ど、どういうことだい?」
まどか「だってあなたは…」
そこへ別のQBがやって来ました。
新QB「じゃあ、君はどうやって願いを叶えるんだい?」
新QB「僕らと契約しなければ願いは叶わないよ」
QB「ここは僕の担当だ! 余計なことはしないでくれ!」
新QB「絶好のチャンスなんだ。協力しようじゃないか」
まどか「……うん、そうだね。“そっち”となら契約するよ」
QB「まどか!」
新QB「よくわからないけどそれは朗報だ。さあ、まどか。君はどんな願いを…」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:34:17.43 ID:G2xyMbst0
そのQBはいつのまにか蜂の巣になっていました。
ほむら「まどか、あなたはどこまで愚かなの」
ほむらが時間を止めてピストルで撃ったのです。
ほむら「お前も結局はインキュベーターだったのね…」
ほむらはQBにもピストルを向けます。
QBは黙っていました。
マミ「やめて、暁美さん!」
QBを探しにきたマミさんが叫びます。
まどか「ほむらちゃん、そのQBは撃っちゃダメ!」
まどかもほむらを止めます。
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:42:20.65 ID:G2xyMbst0
ほむら「………」
ほむらはQBに向けていたピストルをゆっくり下ろしました。
ほむらも、このQBはやさしいQBだと知っているのです。
ほむら「巴マミ、出歩いて平気なの?」
マミ「いいえ。もう自分でマスケットも出せないわ……だから一丁貸してもらえないかしら?」
ほむらは持っていたピストルをマミさんに渡しました。
顔は背けていましたが、唇を固く噛みしめていました。
マミ「帰りましょうQB」
QB「マミ、君は……」
マミ「いいでしょう?」
QB「…僕でいいのかい?」
マミ「あなたがいいの」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:46:09.76 ID:G2xyMbst0
マミ「二人とも、あとはよろしくね……迷惑をかけてごめんなさい」
まどか「マミさん! わたし、なんとかしてみせます! きっと、皆で…!」
マミさんはやさしく微笑むと、QBと並んで帰っていきました。
ほむら「まどか、あなた…」
まどか「大丈夫。もう誰かに頼りっぱなしはやめたの。ほむらちゃん、わたしを信じて」
まどかは帰っていくマミさんたちの後姿を見て、
いつもと同じだと思いました。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:51:40.00 ID:G2xyMbst0
マミ「ひとつ聞いてもいい?」
QB「なんだい?」
歩きながらマミさんが尋ねます。
マミ「いつか魔法少女が必要なくなる時がくるかしら?」
QBは少し答えに詰まりました。
人類は魔法少女とともに発展してきたのです。
また、このシステムは人類の歴史が続く限り希望と絶望を利用しよう開発されたものです。
人類が滅びない限りなくなることはありません。
けれどQBは言いました。
QB「うん。僕らの計算ではいずれ必要なくなるはずさ」
QBは嘘をつきました。
マミさんは嬉しそうでした。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:55:40.01 ID:G2xyMbst0
マミ「ねえ、QB。歌を唄ってほしいの」
家に帰ってくるなり、マミさんは倒れ込んでしまいました。
握っているソウルジェムはほとんど真っ黒です。
マミ「もうもたないと思ったら引き金を引くから…それまで……」
ほむらのピストルをしっかりと汚れた宝石に突き付けています。
QBはマミさんといろんな話がしたいと思いました。
けれど上手く言葉が出てきません。
だからその分、一生懸命唄おうと思いました。
マミさんよりも上手に唄おうと思いました。
マミさんに寄り添って一生懸命唄います。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:00:40.24 ID:16AAU6vI0
まどかの願いガいは…?
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:02:30.84 ID:G2xyMbst0
QB「しーんぱーいないからねー きーみーのおーもーいーがー」
マミさんはそっと目を瞑りました。その顔はとても穏やかです。
QB「だーれーかーにーとーどーくー あーしーたがきっとあるー」
唄いながらQBは思いました。
マミさんにできる限りのことをしてあげたい。
だから最後にたった一つ、魔法を使うことにしました。
それは夢の魔法。
魂の宝石が砕けるその瞬間、
マミさんは自分が一番幸せだと思う夢をみるのです。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:07:01.20 ID:G2xyMbst0
QB「どーんなーに困難でー くーじーけそうでーもー」
マミさんが目を瞑っていてくれて良かった、と思いました。
インキュベーターの力を不正に使ったからなのか、
QBの身体がぼろぼろ崩れはじめたのです。
さっき嘘をついてしまったので、
もはや自分はインキュベーターではなくなっていて、
インキュベーターの力が使えなくなっている恐れもありましたが、杞憂だったのでしょうか。
QB「信じーるーこーとーさー かーなーらーず 最後に…」
QBが唄い終わる前に銃声が響きました。
マミさんがソウルジェムを撃ったのです。
QB「マミ、歌はまだ終わってないよ…」
QBの身体も完全に崩れ、あとかたもなく消えてしまいました。
倒れ伏したマミさんは、まるで幸せな夢をみながら眠っているようでした。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:11:33.01 ID:G2xyMbst0
マミ母「おはようマミ。朝ごはんの準備ができたわよ」
マミ「ええ、すぐ行くわお母さん」
マミさんは四人家族です。
お父さんとお母さんと猫のQBと一緒に住んでいます。
マミさんとQBはとても仲良しです。
マミ「それじゃ、いってきます」
マミ父「なんだQB、今日もマミと一緒に行くのか」
マミさんとQBは一緒に学校へ行きます。
大人は知りませんが、実はQBは魔法の国からやってきた魔法の猫なのです。
子供が良い事をすると、それに応じて願い事を叶えてくれるのです。
そうやってより良い世界をつくる手助けをするのがQBの仕事です。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:15:05.30 ID:G2xyMbst0
さやか「あ、マミさんだ」
まどか「おはようございますマミさん」
通学途中、マミさんは一歳年下の友達に会いました。
手芸部の後輩のまどかと、まどかの同級生のさやかです。
QB「やあ、まどか。願い事は決まったかい?」
QBはすかさずまどかに聞きました。
まどか「うん。今度の金曜日はたっくんの誕生日だから、ママの仕事が早く終わるようにしてほしいの」
QB「それはいいね。せっかくのお祝いだし家族一緒が一番だ」
横ではマミさんとさやかが微笑ましそうにその様子を眺めています。
まどかはとても家族想いなのです。
さやか「そういやQB、おかげさまで恭介も発表会に間に合いそうだよ」
さやかは笑顔で報告しました。風邪をひいていたさやかの幼馴染がQBの魔法で治ったからです。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:19:06.23 ID:G2xyMbst0
QBの今日の仕事はおしまいです。
あとは日がな一日、マミさんたちとおしゃべりをするだけです。
まどか「発表会上手くいくといいね」
マミ「皆で応援しにいきましょう」
QB「盛り上げていかないとね」
さやか「会場ではお静かに願います!」
時々悪ノリして茶々を入れます。
QBの仕事はより良い世界をつくる手助けをすることです。
叶える願いはマミさんたちが自分の力で達成できることだけです。
魔法はタイミングやめぐり合わせをほんのちょっぴり変えるだけ。
より良い世界をつくるのはマミさんたちなのですから。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:23:24.63 ID:G2xyMbst0
まどか「ほむらちゃん、おはよう」
ほむら「おはよう、ま、まどか……」
向こうから二人の女の子が現れました。
杏子「よう、マミ」
ほむら「さ、佐倉さん、先輩相手にそんな…」
最近転校してきたほむらと杏子です。
杏子「固い事言うなって。マミとあたしは親の代からの友達なんだから」
さやか「いやいや、親しき仲にも礼儀ありでしょ」
ほむら「そうですよ佐く……そ、そうよ杏子」
引っ込み思案なほむらも近頃は打ち解けてきました。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:29:26.28 ID:G2xyMbst0
まどか「QBはどう思う?」
QB「ん? 僕にはわからないよ。猫には学校も会社もないからね」
QBは空気が読めます。どちらかに肩入れすればさらに騒がしくなるとわかっているのです。
五人もそろえば賑やかなことは言うまでもありません。
さやか「あ! もうすぐ始業時間だ」
マミ「ちょっとおしゃべりしすぎたみたいね。急がなくちゃ」
皆は早足で学校へ向かいます。
真面目なマミさんもこんな日だけは遅刻ギリギリです。
マミさんたちの毎日はこんなふうに続いていくのです。
マミさんはとても幸せそうでした。
おしまい
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:30:27.99 ID:KmPu/PpH0
いい話だった乙
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:31:21.76 ID:rg2LUmpq0
泣けたありがとう
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:32:30.34 ID:QB/sPIKAO
泣きそうになった
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:36:25.79 ID:7YcLvDmF0
乙
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:36:48.77 ID:G2xyMbst0
>>48
思わせぶりに書いただけです。ごめんなさい。でも願いを使ったかどうかわかりません。
ちなみにQBはインキュベーターの力を不正に「使おうとしたら」死ぬ設定です。
ではマミさんの夢は……?
あと文章でも構成でも「繰り返し」は意識してやってます
うざかったらごめんなさい。でもやってみたかったんです
パクリ元
やなせたかし『やさしいライオン』
カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』
昔テレビでみた美輪明宏の特集番組
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:41:21.35 ID:IvixXTp70
乙乙
『タイタンの妖女』よりも『火星年代記』っぽいね。
どちらも好き。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:51:32.67 ID:G2xyMbst0
あー、あと「反転」もやってみました
>>9>>10で
QBが自発的に唄う→もっと唄おうとするマミさんを止める、という流れが
>>47>>50では
マミさんに促されて唄う→もっと唄おうとするも唄えなくなる、という感じで
自意識過剰でごめんなさい。でもやってみたかったんです
全部アラン・ムーアが悪いんや!
あいつさえおらんかったら「いっちょSS書いてみるか」なんて思わなかったんや!
--------------
当ブログについて
※欄472さんありがとうです。
読み物:まどか
お絵かき掲示板
画像掲示板
さやか「あ、マミさんだ」
まどか「おはようございますマミさん」
通学途中、マミさんは一歳年下の友達に会いました。
先日魔法少女になったさやかと、魔法少女候補のまどかです。
QB「やあ、まどか。願い事は決まったかい?」
QBはすかさずまどかに聞きました。
まどか「ううん。まだだよ」
QB「それじゃあ決まったら教えておくれ」
横ではマミさんとさやかが飽きたようにその様子を眺めています。
毎朝同じやり取りを繰り返しているからです。
さやか「大事な願い事なんてそう見つからないしね」
さやかはしみじみ言いました。さやかも幼馴染が怪我をするまで願い事を決めかねていたのです。
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:27:07.11 ID:G2xyMbst0
QBの今日の仕事はおしまいです。
あとは日がな一日、マミさんと友達のおしゃべりを聞いているだけです。
まどか「駅前に新しいケーキ屋さんができるそうです」
マミ「できたら皆で行きましょうか」
QB「マミはケーキが好きだね」
さやか「ケーキが嫌いな女の子はいません!」
時にはほんのちょっぴり参加しながら。
QBの仕事は魔法少女の契約をすることです。
今日も立派に勧誘して、そして失敗しました。
失敗したのならしょうがありません。
失敗が続くのもまたしょうがないことなのです。
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:28:01.99 ID:EvKQksv2O
語呂がいいスレタイ
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:32:31.78 ID:G2xyMbst0
まどか「ほむらちゃん、おはよう」
ほむら「…おはよう」
向こうからもう一人の魔法少女が現れました。
といっても、相手は少し離れたところからマミさんたちを観察しているだけで、近づこうとしません。
マミ「佐倉さんとは仲直りできそうなのに、彼女は難しいわね」
さやか「まあ、杏子のほうもたいがいですけどね」
まどか「ほむらちゃん……」
三人をよそにQBは別のことを考えていました。
ここのところ営業成績は上がりません。
なにしろさやかと契約する以前の実績は数年ほども遡らなければならないのです。
こんな事態はQBにとって初めてでした。
こんな事態になった理由、それはマミさんと契約したあたりから始まっているような気がしました。
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:37:41.77 ID:G2xyMbst0
QB「マミ、メソメソしてばかりじゃダメだよ。早く魔女を退治しに行かないと」
マミ「うぅ、でも……」
マミさんの両親は交通事故で死んでしまいました。
かろうじてマミさんだけが生き残り、QBと契約したおかげで助かったのです。
けれど小さいマミさんは両親を恋しがってソウルジェムに穢れを溜め込んでいきました。
QBは考えました。
最終的には魔女になってもらうのですが、あまり早すぎても効率がよくありません。
充分に魔法を使って、魔女を倒してグリーフシードを手に入れて、その上で魔女化するのが一番良いのです。
QB「わかったよマミ。今日はぐっすり休んで明日からまた頑張ろう」
だから計画を変更しました。とりあえず言いくるめておいて、少しでも働いてくれるようしむけたのです。
QB「僕は他の子を勧誘してくるよ」
マミ「待って、行かないで」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:44:14.66 ID:G2xyMbst0
QB「なんだい?」
マミ「寂しいの……今日はここにいて」
QB「僕には仕事があるんだよ」
マミ「でも……」
マミさんは今にも泣き出しそうです。
QBは妥協しました。インキュベーターは目的のためなら柔軟な対応ができるのです。
QB「わかった。それじゃあ君が眠るまで一緒にいてあげるよ」
マミ「!」
マミさんは大喜びです。大きな瞳が細くなりました。
すると今度は別の問題が起こりました。
マミさんは嬉しすぎて目がさえてしまったのです。ベッドの中でQBを抱きしめてニコニコしています。
QB「早く寝ておくれよ」
QBの任務には宇宙の命運がかかっています。
現状において多少の計画変更を行ったにしろ、本来ならもたもたしている暇はありません。
しかしインキュベーターの優秀な思考能力はとっておきの打開策を発見しました。
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:48:07.76 ID:G2xyMbst0
歌です。
人類の子供は子守り歌を聴かせるとすぐに眠ってしまうはずです。
QBはさっそく実行しました。
QB「しーんぱーいないからねー きーみーのおーもーいーがー」
マミ「?」
QB「だーれーかーにーとーどーくー あーしーたが…」
マミ「なぁにそれ?」
QB「なにって子守り歌じゃないか。君たちは眠るとき歌を聴くんだろう?」
マミ「そんな子守り歌聴いたことない」
QB「歌に種類があるのかい?」
マミ「それに下手くそ…」
QB「音程はこの前見たテレビから完全コピーしているよ」
マミ「子守り歌は…」
マミさんはQBに子守り歌を唄って聴かせました。
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:53:07.69 ID:G2xyMbst0
QBは腑に落ちません。曲こそ違えどQBのほうが上手く唄えているはずです。
マミ「~♪」
それなのに確かにマミさんの歌のほうが良いと思いました。
QB「ふーむ。これはどういうわけだろう」
マミ「QBのために唄いました」
QB「そうかい」
マミ「では続けてもう一曲」
QB「もう寝ないとだめだよ」
人類の生態を研究するのも仕事をする上で必要なことです。
QBはもっとマミさんの歌を聴きたいと思いましたが、子供は早く寝かすのがこの国の常識でもあります。
QB「歌はまた明日にしよう」
QBはもっとも妥当と考えられる提案をしました。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:55:50.26 ID:G2xyMbst0
次の日のテレビで有名な歌手がこんなことを言っていました。
「『が』の発音は『ga』ではなくて『gua』。言葉は美しく使うものです」
「人間は汚い生き物ですからせめて心構えと言葉くらいは美しくしなければいけません。そう努力することではじめて綺麗になるのです」
QB「やはり人間は理解し難いね」
どうもQBにはわからないようです。
マミ「QB、なにみてるの?」
QB「少し人間の文化を勉強しようと思ったんだけど……マミにはこの歌手の言ってることがわかるかい?」
マミ「この人変な恰好~。妖怪?」
どうやらマミさんには少し早いようです。
マミ「でも天上の美? っていうのはカッコいい!」
通じるものもあるようですが。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 08:59:33.15 ID:G2xyMbst0
それからというもの、QBは多忙でした。
マミさんの親族はマミさんの養育にあまり熱心ではなかったので、マミさんには生活に必要なもろもろの負担がかかりました。
家事や社会的な手続きは小さいマミさんには大変な作業でした。
魔法少女といえど日常生活のしがらみを無視するのは難しいのです。
QB「これは染みになるからすぐ洗わないとね。洗濯機の使い方は覚えたかい?」
QB「給食費は忘れずに先生に渡すんだよ」
マミさんが一人でも暮らせるように、QBはたくさんの世話をしました。
料理を教えたり。
しつこいセールスマンの追い返し方を教えたり。
全てはマミさんを効率よく動かして魔女にするためです。
反対に、営業する時間はどんどん減っていきました。
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:04:54.27 ID:G2xyMbst0
QB「ねえ、マミ」
マミ「どうしたの?」
QB「君のやり方は効率的じゃないよ」
数年が経ちました。
マミさんもベテランの魔法少女になり、大抵の魔女には負けません。
家事も一人でできるようになりました。
QB「緊急性の低い使い魔まで退治している。魔力の無駄だしリスクが大きい」
QBはいまだにマミさんと一緒に暮らしています。
マミさんにそそいだ時間と労力を無駄にしないためです。最後まで見届けるつもりでした。
マミ「でもQB、使い魔も放っておけば被害を出すわ」
QB「それは君にとって重要なことかい? 被害が出るとしても、
君とは縁もゆかりもない人物である可能性が圧倒的に高いさ」
QBはこれまでで学習していました。
人間には優先度があるということを。
奉仕と献身は賞賛される行為ですが、無関係な人間にまで施す決まりはどこにもありません。
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:11:11.56 ID:G2xyMbst0
QBはあくまで理知的に説きました。
それはこの国の法律からいっても、道徳からいっても、非の打ちどころがありません。
QB「君が誰かのために頑張らなきゃいけない理由はないんだよ」
マミ「理由ね……あなたが親切にしてくれたから、じゃダメ?」
あまりに唐突でQBには理解できませんでした。
マミ「困ってる時にあなたが優しくしてくれて、とてもうれしかったわ」
そうではありません。QBにはQBの目論見があってマミさんの世話をしたのです。
マミ「だから今度はわたしが困ってる人を助けたいの」
QB「君に助けられた人は、君に助けられたなんて少しもわからない。君の場合とは全然違う」
マミ「それでも、わたしが助けた人がまた別の困ってる人を助けるかもしれない。
それがどんどん広がったら素敵でしょう」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:16:09.00 ID:G2xyMbst0
やっぱり人間は論理的じゃないね、とQBは思いました。
第一、マミさんに無理をされたらQBが困るのです。
それをどうやって伝えようか思案していると、またマミさんが言いました。
マミ「心配してくれてありがとう、QB」
QB「わけがわから…」
QBが言い終わる前にマミさんは行ってしまいました。
迷子らしい子供を発見したからです。
魔法少女に変身しなくてもマミさんは困っている人を放っておかないのです。
QB「わけがわからないよ」
QBはつぶやきました。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:24:10.48 ID:G2xyMbst0
まどか「QBはどう思う?」
QB「え?」
まどか「どうしたらほむらちゃんと仲良くできるかな」
しばし昔のことを考えていたQBでしたが、すぐに頭を切り替えました。
QB「彼女の行動になんらかの意図があることは間違いないけど、目的がわからないことにはね」
さやか「そうだよねー。魔法少女にはなるなって言われても、こっちは納得できないし」
マミ「なにか不都合でもあるのかしら?」
QB「それは…」
さやか「あ! もうすぐ始業時間だ」
マミ「ちょっとおしゃべりしすぎたみたいね。急がなくちゃ」
皆は早足で学校へ向かいます。
真面目なマミさんもこんな日だけは遅刻ギリギリです。
けれどマミさんはどこか嬉しそうでした。
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:29:44.58 ID:G2xyMbst0
QBの仕事は相変わらず滞っています。
まどか「ごめんね、まだ決まらないの」
QB「それじゃ仕方ないね」
朝一でまどかを勧誘して断られ、
QB「暁美ほむら、そんなに気になるなら思い切って近づいたらどうだい?」
ほむら「お前にしては妙なことを言うのね」
遠巻きに眺めるほむらを少しだけ注意し、
杏子「この世に正義の味方なんていないんだ。自分の好きにやりゃいいじゃねえか」
さやか「いないからあたしたちが好きにやってんじゃない」
時折角を突き合わせる杏子とさやかをなだめ、
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:35:17.71 ID:G2xyMbst0
QB「さやかは前に出すぎだ。もっと冷静にならないと」
さやか「面目ない」
杏子「へへっ、突撃バ~カ」
QB「杏子もだよ。もっとさやかと連携するんだ」
ほむら「フォローするこっちの身にもなってほしいわね」ボソッ
さやか「ん?」
ほむら「」ザワールド
まどか「今ほむらちゃんがいたような…」
マミ「きっと『敵か味方かわからないけどピンチにはなぜか助けてくれるミステリアスな戦士』を装いたいのね」
QB「マミもそういうの好きだね」
ほむら(おかしなイメージをつくられてる……)
魔女退治が終われば皆を労う。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:42:08.85 ID:G2xyMbst0
人間はわけがわからないので思い通りに動かすのは骨が折れます。
いつも気を配っていなければなりません。
だから他のQBたちのように営業ばかりできないのです。
QB「この生活はとても疲れるね」
マミ「どうしたのQB?」
QB「なんでもないよマミ」
そして楽しそうな顔のマミさんと家に帰るのです。
QBは今の生活が変わることを考えませんでした。
考えられませんでした。
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:49:10.59 ID:G2xyMbst0
ある日、QBのところに別のQBがやって来ました。
あまりにも仕事をしないQBに帰還命令を伝えに来たのです。
新QB「君の思考にはノイズが混入している。母星で速やかにクリーニングを受けるんだ」
QB「ノイズだって? 僕は正常だよ」
新QB「リモート検査の結果がそうなっているんだ。現に今も命令に従おうとしないことが証拠さ」
QBはなにも言い返せなくなりました。
そもそもインキュベーター同士で見解の相違が存在することがおかしいからです。
新QB「君の担当区は僕が引き継ぐよ」
しかしQBは決して承諾しませんでした。自分がいる限り誰にも代わりは任せないと断言したのです。
新QB「しょうがない。しばらくは留任を認めよう。でももし君がインキュベーターの力を不正に使おうとしたら、
その時は自壊プログラムが作動するからね」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:54:04.83 ID:G2xyMbst0
QBは初めて「気持ち」を自覚しました。
これが人類の持つ感情と同じなのかはわかりません。
ただ、今の生活がずっと続けばいいと思っている自分に気付いたのです。
けれどQBはインキュベーターです。
やがて変化は起こりました。
さやかが魔女化したのです。
マミさんと皆はとうとう魔法少女が都合の良いシステムではないと悟りました。
ほむら「魔法少女というのは……」
ほむらが真相を話します。ソウルジェムのこと、グリーフシードのこと、魔女のこと。
マミ「嘘でしょQB?」
マミさんが震える声で尋ねました。
QB「全て事実だよ。僕たちは嘘がつけないんだ」
インキュベーターは嘘がつけないのです。
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 09:58:33.40 ID:G2xyMbst0
皆がそろうことはもうありませんでした。
魔女になったさやかは退治され、杏子もその時に死んでしまいました。
QB「まどか、願い事は決まったかい?」
まどか「…………まだ」
まどかは以前のように打ち解けなくなりました。
落ち込み、暗い顔をしています。
それでもQBはいつものように勧誘を続けました。
それがインキュベーターの仕事なのです。
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:04:56.27 ID:G2xyMbst0
マミ「パトロールへ行ってくるわ」
真実を知ってからふさぎ気味だったマミさんも、しばらくすると普段の調子を取り戻しました。
魔女や使い魔から街を守らなければいけないからです。
しかしマミさんでも平静ではいられません。
再び一人きりになった負担もあります。
QB「マミ、必要最低限の魔女とだけ戦うんだ。ほむらだってそうしているよ。
このままじゃ遠からず君も限界がくる」
マミ「あなたはわたしたちを魔女にするのが目的なんでしょう?」
QB「……そうだよ」
インキュベーターは嘘をつけないのです。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:09:49.37 ID:G2xyMbst0
マミ「わたしに親切にしてくれたのも、全部そのため?」
QB「……そうだよ」
マミ「そう……そうなのね……」
QBは嘘をついていません。
でも本当のことを言っているわけではないと叫びたくなりました。
それがなぜかはわかりませんでしたが。
マミさんはこの話題についてはもう口にしませんでした。
QBを追い出したりはしませんでしたが、
会話はとても少なくなりました。
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:14:52.45 ID:G2xyMbst0
決定的な日が訪れるのに時間はかかりませんでした。
QB「マミ、ここの魔女は強力だ。今の君では危ういよ」
マミ「暁美さんにはなにか別の目的があるようだし、わたしがやるしかないわ。この街はわたしが守らなきゃ」
QB「だからそれは…」
マミ「QB」
マミ「心配してくれてありがとう」
魔女を退治することはできましたが、マミさんは魔女化が避けられないほど消耗しました。
もう、どうすることもできません。
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:21:18.16 ID:G2xyMbst0
QBははじめてまどかに一日二度目の営業をしました。
規格外の素質を持つまどかなら、願いでマミさんを助けられるかもしれないからです。
QB「さあ、まどか。僕と契約して魔法少…」
QBは言いかけて止まりました。
まどかと契約してマミさんが喜ぶのか?
まどかが魔女化したら地球はどうなるのか?
それらの疑問はインキュベーターにとってどうでもよいことです。
インキュベーターならば、ここはとにかく契約を迫るのが正しいのです。
しかし、
QB「ごめんよ、まどか。なんでもないんだ」
QBははじめて仕事をさぼりました。
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:28:38.19 ID:G2xyMbst0
まどか「大丈夫だよQB。わたしの願いはもう決まってるから」
QB「!」
まどか「わたしが皆を、魔法少女の皆を救ってみせる」
まどか「でも“あなた”とは契約しない」
QB「ど、どういうことだい?」
まどか「だってあなたは…」
そこへ別のQBがやって来ました。
新QB「じゃあ、君はどうやって願いを叶えるんだい?」
新QB「僕らと契約しなければ願いは叶わないよ」
QB「ここは僕の担当だ! 余計なことはしないでくれ!」
新QB「絶好のチャンスなんだ。協力しようじゃないか」
まどか「……うん、そうだね。“そっち”となら契約するよ」
QB「まどか!」
新QB「よくわからないけどそれは朗報だ。さあ、まどか。君はどんな願いを…」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:34:17.43 ID:G2xyMbst0
そのQBはいつのまにか蜂の巣になっていました。
ほむら「まどか、あなたはどこまで愚かなの」
ほむらが時間を止めてピストルで撃ったのです。
ほむら「お前も結局はインキュベーターだったのね…」
ほむらはQBにもピストルを向けます。
QBは黙っていました。
マミ「やめて、暁美さん!」
QBを探しにきたマミさんが叫びます。
まどか「ほむらちゃん、そのQBは撃っちゃダメ!」
まどかもほむらを止めます。
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:42:20.65 ID:G2xyMbst0
ほむら「………」
ほむらはQBに向けていたピストルをゆっくり下ろしました。
ほむらも、このQBはやさしいQBだと知っているのです。
ほむら「巴マミ、出歩いて平気なの?」
マミ「いいえ。もう自分でマスケットも出せないわ……だから一丁貸してもらえないかしら?」
ほむらは持っていたピストルをマミさんに渡しました。
顔は背けていましたが、唇を固く噛みしめていました。
マミ「帰りましょうQB」
QB「マミ、君は……」
マミ「いいでしょう?」
QB「…僕でいいのかい?」
マミ「あなたがいいの」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:46:09.76 ID:G2xyMbst0
マミ「二人とも、あとはよろしくね……迷惑をかけてごめんなさい」
まどか「マミさん! わたし、なんとかしてみせます! きっと、皆で…!」
マミさんはやさしく微笑むと、QBと並んで帰っていきました。
ほむら「まどか、あなた…」
まどか「大丈夫。もう誰かに頼りっぱなしはやめたの。ほむらちゃん、わたしを信じて」
まどかは帰っていくマミさんたちの後姿を見て、
いつもと同じだと思いました。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:51:40.00 ID:G2xyMbst0
マミ「ひとつ聞いてもいい?」
QB「なんだい?」
歩きながらマミさんが尋ねます。
マミ「いつか魔法少女が必要なくなる時がくるかしら?」
QBは少し答えに詰まりました。
人類は魔法少女とともに発展してきたのです。
また、このシステムは人類の歴史が続く限り希望と絶望を利用しよう開発されたものです。
人類が滅びない限りなくなることはありません。
けれどQBは言いました。
QB「うん。僕らの計算ではいずれ必要なくなるはずさ」
QBは嘘をつきました。
マミさんは嬉しそうでした。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 10:55:40.01 ID:G2xyMbst0
マミ「ねえ、QB。歌を唄ってほしいの」
家に帰ってくるなり、マミさんは倒れ込んでしまいました。
握っているソウルジェムはほとんど真っ黒です。
マミ「もうもたないと思ったら引き金を引くから…それまで……」
ほむらのピストルをしっかりと汚れた宝石に突き付けています。
QBはマミさんといろんな話がしたいと思いました。
けれど上手く言葉が出てきません。
だからその分、一生懸命唄おうと思いました。
マミさんよりも上手に唄おうと思いました。
マミさんに寄り添って一生懸命唄います。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:00:40.24 ID:16AAU6vI0
まどかの願いガいは…?
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:02:30.84 ID:G2xyMbst0
QB「しーんぱーいないからねー きーみーのおーもーいーがー」
マミさんはそっと目を瞑りました。その顔はとても穏やかです。
QB「だーれーかーにーとーどーくー あーしーたがきっとあるー」
唄いながらQBは思いました。
マミさんにできる限りのことをしてあげたい。
だから最後にたった一つ、魔法を使うことにしました。
それは夢の魔法。
魂の宝石が砕けるその瞬間、
マミさんは自分が一番幸せだと思う夢をみるのです。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:07:01.20 ID:G2xyMbst0
QB「どーんなーに困難でー くーじーけそうでーもー」
マミさんが目を瞑っていてくれて良かった、と思いました。
インキュベーターの力を不正に使ったからなのか、
QBの身体がぼろぼろ崩れはじめたのです。
さっき嘘をついてしまったので、
もはや自分はインキュベーターではなくなっていて、
インキュベーターの力が使えなくなっている恐れもありましたが、杞憂だったのでしょうか。
QB「信じーるーこーとーさー かーなーらーず 最後に…」
QBが唄い終わる前に銃声が響きました。
マミさんがソウルジェムを撃ったのです。
QB「マミ、歌はまだ終わってないよ…」
QBの身体も完全に崩れ、あとかたもなく消えてしまいました。
倒れ伏したマミさんは、まるで幸せな夢をみながら眠っているようでした。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:11:33.01 ID:G2xyMbst0
マミ母「おはようマミ。朝ごはんの準備ができたわよ」
マミ「ええ、すぐ行くわお母さん」
マミさんは四人家族です。
お父さんとお母さんと猫のQBと一緒に住んでいます。
マミさんとQBはとても仲良しです。
マミ「それじゃ、いってきます」
マミ父「なんだQB、今日もマミと一緒に行くのか」
マミさんとQBは一緒に学校へ行きます。
大人は知りませんが、実はQBは魔法の国からやってきた魔法の猫なのです。
子供が良い事をすると、それに応じて願い事を叶えてくれるのです。
そうやってより良い世界をつくる手助けをするのがQBの仕事です。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:15:05.30 ID:G2xyMbst0
さやか「あ、マミさんだ」
まどか「おはようございますマミさん」
通学途中、マミさんは一歳年下の友達に会いました。
手芸部の後輩のまどかと、まどかの同級生のさやかです。
QB「やあ、まどか。願い事は決まったかい?」
QBはすかさずまどかに聞きました。
まどか「うん。今度の金曜日はたっくんの誕生日だから、ママの仕事が早く終わるようにしてほしいの」
QB「それはいいね。せっかくのお祝いだし家族一緒が一番だ」
横ではマミさんとさやかが微笑ましそうにその様子を眺めています。
まどかはとても家族想いなのです。
さやか「そういやQB、おかげさまで恭介も発表会に間に合いそうだよ」
さやかは笑顔で報告しました。風邪をひいていたさやかの幼馴染がQBの魔法で治ったからです。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:19:06.23 ID:G2xyMbst0
QBの今日の仕事はおしまいです。
あとは日がな一日、マミさんたちとおしゃべりをするだけです。
まどか「発表会上手くいくといいね」
マミ「皆で応援しにいきましょう」
QB「盛り上げていかないとね」
さやか「会場ではお静かに願います!」
時々悪ノリして茶々を入れます。
QBの仕事はより良い世界をつくる手助けをすることです。
叶える願いはマミさんたちが自分の力で達成できることだけです。
魔法はタイミングやめぐり合わせをほんのちょっぴり変えるだけ。
より良い世界をつくるのはマミさんたちなのですから。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:23:24.63 ID:G2xyMbst0
まどか「ほむらちゃん、おはよう」
ほむら「おはよう、ま、まどか……」
向こうから二人の女の子が現れました。
杏子「よう、マミ」
ほむら「さ、佐倉さん、先輩相手にそんな…」
最近転校してきたほむらと杏子です。
杏子「固い事言うなって。マミとあたしは親の代からの友達なんだから」
さやか「いやいや、親しき仲にも礼儀ありでしょ」
ほむら「そうですよ佐く……そ、そうよ杏子」
引っ込み思案なほむらも近頃は打ち解けてきました。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:29:26.28 ID:G2xyMbst0
まどか「QBはどう思う?」
QB「ん? 僕にはわからないよ。猫には学校も会社もないからね」
QBは空気が読めます。どちらかに肩入れすればさらに騒がしくなるとわかっているのです。
五人もそろえば賑やかなことは言うまでもありません。
さやか「あ! もうすぐ始業時間だ」
マミ「ちょっとおしゃべりしすぎたみたいね。急がなくちゃ」
皆は早足で学校へ向かいます。
真面目なマミさんもこんな日だけは遅刻ギリギリです。
マミさんたちの毎日はこんなふうに続いていくのです。
マミさんはとても幸せそうでした。
おしまい
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:30:27.99 ID:KmPu/PpH0
いい話だった乙
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:31:21.76 ID:rg2LUmpq0
泣けたありがとう
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:32:30.34 ID:QB/sPIKAO
泣きそうになった
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:36:25.79 ID:7YcLvDmF0
乙
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:36:48.77 ID:G2xyMbst0
>>48
思わせぶりに書いただけです。ごめんなさい。でも願いを使ったかどうかわかりません。
ちなみにQBはインキュベーターの力を不正に「使おうとしたら」死ぬ設定です。
ではマミさんの夢は……?
あと文章でも構成でも「繰り返し」は意識してやってます
うざかったらごめんなさい。でもやってみたかったんです
パクリ元
やなせたかし『やさしいライオン』
カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』
昔テレビでみた美輪明宏の特集番組
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:41:21.35 ID:IvixXTp70
乙乙
『タイタンの妖女』よりも『火星年代記』っぽいね。
どちらも好き。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/07/15(日) 11:51:32.67 ID:G2xyMbst0
あー、あと「反転」もやってみました
>>9>>10で
QBが自発的に唄う→もっと唄おうとするマミさんを止める、という流れが
>>47>>50では
マミさんに促されて唄う→もっと唄おうとするも唄えなくなる、という感じで
自意識過剰でごめんなさい。でもやってみたかったんです
全部アラン・ムーアが悪いんや!
あいつさえおらんかったら「いっちょSS書いてみるか」なんて思わなかったんや!
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※欄472さんありがとうです。
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この記事へのコメント
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 13:33: :edit1ゲット
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 14:42: :editアラン・ムーアっつーとフロムヘルの人か
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 15:06: :edit面白かった
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名前: 静かなる水のほとり #-: 2012/07/19(木) 16:29: :edit△ ¥ ▲
( ㊤ 皿 ㊤) マークがマーサを
( )
/│ チ │\ 見つけることができますように。
< \____/ >
┃ ┃
= =
主はわが羊飼いにて
我は足らぬものとて何もなし。主は我を緑の牧場に伏せ給う。
主は我を導き…… -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 16:34: :edit巴マミのふとももにおにんにんはさみたいよぉ
-
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 16:53: :edit006getだぜ!
-
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 17:50: :edit良かった
-
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 18:24: :editアラン・ムーア
ウォッチメン、スーパーマンの最期等
アメコミの凄い人 -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 18:56: :editこの感じ好き
-
名前: 異常なナナシ #-: 2012/07/19(木) 22:24: :edit涙腺緩んだ。
やっぱりQBはマミさんといるのが一番しっくりくる気がする -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/19(木) 22:54: :editこれはいいシナリオ
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/20(金) 00:44: :editほむまどには出せない面白さだ
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/20(金) 01:11: :editほんともう、ウルッて来た
QBこの野郎…
※12
このSSが良SSなのは間違いないんだからわざわざ余計なこと言わんでええよ -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/20(金) 15:45: :editQB・・・
-
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/20(金) 16:14: :edit本編がアラン・ムーアで
3ゲットロボはロバート・シェクリイか
渋いところ突いてるな -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/07/21(土) 11:06: :editQB「ここにグリーフシードがある…!やる…!だから行けっ…!さやかのGS浄化してこいっクソヒロイン…!」
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名前: 通常のナナシ #-: 2013/02/18(月) 14:48: :editスレタイが「やらしいQB」に見えた俺の目は腐ってる………

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 黒猫 白猫Ver.