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SS241122  20ー10絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」

SS241122  20ー10絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」


「おーい、二人で何してんの?」

「そーよぉー。でも綺麗な夜空ね」

後ろを振り向くと、シーフと女魔法使いが
近づいてきた。

「起きたのか」

「ああ、何か目が覚めたら
剣士、お前隣にいねぇんだもん」

「そうそう、私はシーフに
剣士が夜這い掛けてねとか言うから
飛び起きてちょっとシーフと話し合いをね」

「まさか拳と拳の話し合いになるとは
思わなかったぜイタタタタ」

シーフがやれやれとジェスチャーをすると
女魔法使いがシーフの耳を引っ張った。

「おーいてぇ。
それより名刀『月鏡』がどうしたって?」

シーフの問いに俺は無言で
崖に刺さっている刀を指さした。

「えー?あの刀が『月鏡』ってことか?」

「うーん。にわかには信じられないわね。
大体伝説の時代から刺さっていたら
錆びて朽ち果てているんじゃないのぉ」

シーフと女魔法使いがの疑問に

「名刀『月鏡』は月光を食んで輝くそうだ」

「え?なんで剣士知ってんの」

「そうそう、シーフの言う通りだわ」

「古文書で読んだことがある」

俺はポツリと二人に答える。
二人は顔を見合わせて

「それでもよぉ。あの崖に刺さっている刀が
『月鏡』か確証はねーぜ」

シーフの言葉に女魔法使いも頷く。

「そうか」

「おいおい、剣士それだけ?」

俺は黙って崖を『月鏡』を見上げた。
・・・只の地震が伝説となっただけと思いたい。
だが、それだけでは済まされない
何か不気味な気配を
崖の大蜘蛛の模様は醸し出していた。

次いで俺は視線を隣の慈母観音菩薩像に向けた。
像は崖に向いてその柔和な眼差しを注いでいた。

(・・・どうか何事も起きぬことを。)

俺は像に祈った

続く

善き事がありますように。
お読みいただきありがとうございました。
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SS241115  20ー9絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」

SS241115  20ー9絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」


客間は二室あり、広い方に俺とシーフが。
もう一室に女魔法使いが泊まることとなった。

リリリリリ・・・・
外から虫の声が聞こえる。

グーすぴー・・・
シーフはぐっすり眠っている。

俺はシーフを起こさないように
愛剣エクスカリバーを持ってそっと外に出た。

崖の下に立つ。
美しい満月に照らされた崖には
確かに大蜘蛛をイメージする、
黒い模様が浮き出ている。

後ろから足音がする。

「眠れませんか」

「和尚様・・・そうですね。
何故か心がざわめいておりました」

「そうですか。
私もこの崖の大蜘蛛の模様が
実際に化け物であるとは信じられませんでした。
伝説はあくまでも伝説と思っておりました」

そして和尚様は手に大事そうに持っていた
胎内仏をそっと撫でる。
彼は傍らの慈母観音菩薩像を見上げて

「ですが、この慈母観音菩薩様が
何故崖を向いておられるのか・・・
伝説が本当ならば合点が行きます」

「・・・和尚様、私はあくまでも伝説は
地震を大蜘蛛の仕業と伝説として
残したと思いたいのですが・・・」

和尚様は俺の次の言葉を待ってくれた。

「地震がいいわけではございません。
ですが、この崖の模様規模の大蜘蛛だと
地震に加え他の被害が心配なのです」

「・・・以前、大蜘蛛と戦われたように仰る」

「・・・はい」

月明かり。星灯り。
それに照らされ崖の大蜘蛛の模様、
その頭の部分中央に刀らしき物が刺さっている。

和尚様が隣に並んで

「あれが名刀『月鏡』と言われております」

伝説となってどの位の年月が経っているのだろう。
崖から出ている刀身の部分が
夜空からの明りに照らされ光っている。

リリリリリ・・・・
秋虫が涼やかな音色を奏でていた。

続く

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SS241108  20ー8絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」

SS241108  20ー8絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」


「お化けお化けお化け・・・」

シーフがぶつぶつ言っている。

「うわーん、姫様が姫様がっ」

女魔法使いが更に泣いている。

・・・暫くすると二人とも落ち着いたらしく
静かになった。
そこを見計らって俺は和尚様に

「兎に角、慈蓮尼さんが七余姫様なら
出会った時に気配がしなかった事が納得いきます」

と告げると、和尚様が頷いて

「きっと慈母観音菩薩様のお力を借りて
霊魂の七余姫様がお姿を現わされたのでしょう」

両手を合わせた。
すると横合いからシーフが

「ちょっと待て。
するってぇとお化けじゃなくて七余姫様の
依頼ということは、依頼自体が無効ということか?」

と言ったところ、和尚様は

「いえいえ、どのようにして取り出されたのか
不明ですが、ご本尊様の体内に在られた
この胎内仏をお持ちになられた事、
そして七余姫様のお頼み事でしたら
お支払いはさせて頂きます」

と告げた。
ぱぁっと明るくなるシーフと女魔法使い。

「ただ、拙寺はこの通りの鄙びた荒れ寺でございまして
十分なお支払いができるかどうか・・・」

しゅーんと沈むシーフと女魔法使い。
それを見た和尚様が慌てて

「ああ、申し訳ない。
もしなんでしたら、あの崖にある
名刀『月鏡』をお持ち下さい。
伝説の名刀ではないかもしれませんが
好事家が高く買ってくれるやも知れません」

と言ったところ、

「例え名刀と言えど、崖に刺さって
雨ざらしになっていたら錆びだらけよぉ」

「そーそー、それに名刀『月鏡』かも
怪しいんだろ」

女魔法使いとシーフが声を揃える。

「二人とも心配するな。
報酬の不足分は俺が払う」

俺がそう告げると

「剣士ぃ。いいのぉ?」

「いやいや、報われない恋に・・・
いや、なんでもないなんでもない!」

「文句があるなら出さないが・・・いいのか」

「「ありません!!」」

二人は声を揃えて喜んだ。

「ありがとうございます。
せめて事が終わりましたら
皆様方の旅のご無事の御祈祷を
させていただきたく思います」

そして和尚様は、夜明けまで間がありますので
お休みになってくださいと寝所へと案内してくれた。

続く



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SS241101  20ー7絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」

SS241101  20ー7絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚」


「イテテテテ、抓ることないだろ抓ること」

シーフが頬を撫でながら抗議する。
シーフの頬を抓った女魔法使いはボロボロ泣きながら、
姫様かわいそうかわいそうと呟いている。

「それでその名刀月鏡は今でも崖に刺さっているのですか」

俺は和尚様に尋ねた。
和尚様は頷いて

「確かに現在も崖には刀が一振り刺さっております。
ただ何分伝説ですから、あの刀が名刀月鏡かどうかは
定かではございません」

「そうですか。
それと気になったのですが、
お寺のすぐ脇に立つ、ご本尊様と同じ仏様ですが、
何故崖の方を向いているのでしょうか。
普通は崖を背にしませんか」

「おお、よくぞ聞いて下さいました。
実は拙寺のご本尊様は慈母観音菩薩様と申されましてな。
この通り、若い女性のお姿をされていらっしゃいます。
そして崖の仏様ー正確には同じ慈母観音菩薩様と申されます」

和尚様は一息入れて

「慈母観音菩薩様はその名の通り
母が子に注ぐように深い慈愛を表す菩薩様でしてな。
末姫様こと七余姫様のご不幸を嘆いたご領主夫妻が
姫様のご冥福を祈って拙寺と共に造られたのです。
そして初代住職は剣客であったと伝わっております」

「うわーん」

俺の側で女魔法使いがおいおい泣き始めた。

「剣士ぃ、これどうするよ」

シーフが困り果てた顔で俺に問う。

「気が済むまで泣かしておけ。
それより和尚様、崖の大蜘蛛はともかく
伝説でも語られた地震が過去、本当に起きていて
慈蓮尼さんはその危険性を
伝えたかったのではないのでしょうか」

和尚様はしばらく考えて

「確かに。あなた方が言われる
慈蓮尼という尼僧は拙寺には『現在』
存在しておりません。
実は七余姫様の亡くなってからつける
仏弟子としてのお名前を
『可憐院慈蓮七華大姉』と申されます」

「・・・ということは我々が出会った
慈蓮尼というのは」

「はい。信じられないのですが
七余姫様だったのではないのでしょうか」

「す、するとお化けに遭っていたってことか!」

俺と和尚様の会話にシーフが絶叫する。
ああ、そう言えばこいつは

「俺はお化けが大っ嫌いなんだよぉおおおお」

シーフの渾身の叫びが本堂に響き渡った。

続く



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SS241025  20ー6絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚

SS241025  20ー6絶体絶命!!「秋に埋もれし恋奇譚


「拙寺の後ろの崖に追い詰められた山賊の頭は、
盾にしていた末姫様こと七余姫様ごと
飛び降りたのでございます」

「ええ!そんなっ あんまりだわ」

和尚様の語りに女魔法使いが叫ぶ。

「落ち着きな、伝説だろ伝説」

シーフが茶々を入れる。
すると和尚様が

「それが一概に伝説とは言えませんでな。
この話には続きがございまして」

和尚様が話を続ける。

末姫様ごと飛び降りた山賊の頭は
その生への尋常ならざる執着か
悪行の報いか分かりかねますが、
飛び降りた瞬間、巨大な大蜘蛛へと
変じたのです。

そして拙寺の方の崖の面に憑りつき
地を揺らしました。
剣客は必死になって末姫様を探しました。

そして崖の上から跳躍して末姫様を探しました。
すると、地上へと降りる際に
末姫様が大蜘蛛の背の頭の部分に
埋め込まれるように囚われているのが
確認できましてな。

しかも段々と末姫様のお身体が
大蜘蛛へとめり込んでいくのです。
大地は揺れる、末姫様は大蜘蛛へ取り込まれる。
なすすべがございません。

その時、末姫様の胸の辺りが突然光だしましてな。
それと同時に剣客の手にしていた刀も光りまして。
これはもうこの刀で末姫様を貫けという
神仏のお命じであるとその場の全員が覚悟いたしました。

剣客は末姫様を見つめて、末姫様は頷いたのです。
剣客は覚悟を決めました。
揺れる大地の中、崖を跳躍して登り。

末姫様の囚われている大蜘蛛の背に辿り着くと
何と呟いたのかは分かりかねますが
刀で末姫様ごと大蜘蛛を貫いたのでございます。

すると大蜘蛛になった山賊の頭の絶叫が
辺りに響き渡り、土埃が辺りを覆いました。
そして土埃が収まるころには
大地の揺れも収まったのです。

「それで末姫様はどうなったの?」

女魔法使いがせっつく。
和尚様は頷いて

「それが・・・その崖には大蜘蛛の死骸はありませんでな。
末姫様こと七余姫様のご遺骸もございません。
皆、必死になって探したのですが・・・その時」

「「その時?」」

女魔法使いとシーフが声を揃える。

「はい。その時、ある者が崖を指さしました。
そこには大蜘蛛の影が張り付いていたのでございます。
そして、大蜘蛛の頭の部分に剣客の刀が
刺さっておりました。崖に刺さらなかった刃の部分が
月の光を受けて輝いておりました」

そして和尚様は一呼吸おいて、

「そして末姫様のご遺骸は
見つからなかったのでございます。
後にご領主さまが剣客に問いただした所、
それは「月鏡」という名刀でございました」

「そんな!」

女魔法使いがボロボロと泣き出した。

「おいおい、泣くなよ。
伝説だろ、物語なんだから
あーあ厚化粧が落ちるぞイテテッ」

女魔法使いが泣きながらシーフの頬を抓った。

続く



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はじめまして😊
主に俳句を掲載しております。
他ショートショート・4コマ等を掲載しております。

(↑フィクションです。
実在の人物・団体等とは
関係ございません。
また、『SS』とは
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略として用いております)

地球のどこかで暮らす
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*4コマの記念日はウィキを
参照しております。




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