Zodiac
日本でも既にアメリカで『Zodiac』公開!などと記事が出ているのに、うちの近所では全く音沙汰がないのでネットで調べてみると、全米で数箇所しか上映されてなくて、しかも田舎町のうちの近所なんか全然やってませんでした。今週になってやっと、以前に都落ちした『トロイ』を観た、小さな小さな映画館で上映中なのを発見。しかし、来週を調べるともうやっていないので、観に行くとしたら今週しかチャンスはないっ!
「コーヒー買いに行きたいのだけど、一回出てもいい?」 「・・・コーヒーなら中でも売ってるわよ・・・」 「あそこのスターバックスに行きたいんだけど・・・・」 「・・・OK・・・お好きにどうぞ」 売ってくれたチケットって言うのが、どこの文房具屋さんでも買えるようなありきたりなものだったため、 「なに、これ持ってればまた入れるの?」 「私が責任持って入れてあげるから大丈夫よ」 あっそう・・・とスターバックスで一息ついてから戻ってみると、結構な人数の人がチケットを買っている。私の前に並んでいたおじさんは、奥さんの分と合わせて、たった6ドル財布から出すのにものすご~い時間がかかる。 私の番になってみると、チケット売りがさっきのおばさんではないではないか!!! 若い男の子に変わっている。入れなかったらどうしよう。まー入れなくても3ドルだけど、でも2回払うのは業腹だなあ、などと思いつつ、 「さっき、チケット買って、いったん出たんだけど・・・」 と、くちゃくちゃのチケットをかかげると、にーちゃんこっちに顔も向けないで 「あ、どーぞどーぞ、入ってください」 だって。 ボックス・オフィスが$33ミリオンで、制作費の$60ミリオンを大きく割ってしまったと言われているこの映画、んー、確かに物語にパンチがないのは認めざるを得ませんな。この事件は連続殺人事件なのだけど、実話なので、デヴィッド・フィンチャーと言ったら出てくる『セヴン』のような、実に巧妙な、ドラマチックな殺しではないからね。 話の核になるのは、この事件に関わった刑事、新聞記者、それから後にこの映画の原作になる『Zodiac』と『Zodiac Unmasked』を書くことになる、当時風刺漫画家だったロバート・グレイスミスが、いかにこの事件に惹き付けられ、翻弄されて行くか、というところ。ほとんどがこの人たちの地道な調査の描写で、派手さは全くありません。 しかも、一番話題だったジェイク・ジレンホールが演じるロバート・グレイスミスは子持ちのやもめ男、新聞社でも一番地位の低い、冴えない風刺漫画家。その上、主人公なのにこの人より刑事さんや、新聞記者の方が良く出てくるんだな。 でも、ジェイクくんは多分、セックス・シンボル/アイドル的な扱いを受けないように、わざとこういう役を選んでるんじゃないかなと思った。白髪交じりの頭に猫背、冴えないチェックのシャツにダウン・ジャケット・・・。しかもこの人声が甲高くて、野暮ったいグレイスミスさん役がピッタリなのよ!にも関わらず、ジェイクくんが画面に出てくるだけで、目が惹きつけられてしまうもんなあ。 他の出演者もすごいですよ。Toschi警部役のマーク・ラファロはくりくり頭にもみ上げの、刑事コロンボみたいな70年代風のスタイルで、キーの高い声で細々としゃべるのがいやに個性的だったし、そのパートナーのアームストロングを演じたのが、「どっかで見たことある」と思ったら、『ER 緊急救命室』のDr.グリーンじゃないの!マジメで出来る警部補を好演。それに新聞記者・ポール・アヴェリー役のロバート・ダウニーJr.、『キスキスバンバン-LA的殺人事件』『スキャナー・ダークリー』と同じ路線のキャラだったけど、この映画が一番ハマってた。いちいち可笑しかったよ! フィンチャー監督は、「『セヴン』とは違った雰囲気にしたかった」と言っていたらしいけど、やっぱりコアなところでの好みというものは滲み出てしまうものなのか、画面の暗さや不気味な感じはやっぱり『セヴン』と酷似していた。あと、音楽。時の流れを表すために、建設中のビルが早送りでみるみる出来上がって行くシーンがあって、その時かかった曲が、『セヴン』でミルズ夫妻とサマセットが一緒にディナーをしたときにかけていたレコードの曲とセンスが一緒だったし、駄目押しにグレイスミスがようやく警察のレポートにアクセスできたとき、何百とある箱のなかから書類を引っ張り出して読んでいくシーンが、『セヴン』でサマセット警部がSeven Deadly Sinのリサーチをしている、真夜中の図書館のシーンを彷彿とさせた。 実際の事件が起こったのが60年代後半、調査は10年くらい続き、舞台は70年代頃なんだけど、その時代を表す小道具とかを上手く使っているのも結構面白かった。管轄が違うところで殺人が起きているので、互いに写真や犯人から送られてきた手紙なんかを交換したいんだけど、Eメイルもなければ、ファックスも普及していなくて、じりじりしちゃう。犯人が新聞社に送ってきたコード表も、コピー機でさっさとコピーするんじゃなく、写真で撮るでっかい機械でコピー作ったりとかさ。あと、警部の車に無線が入って、「電話してください」って言われると、車から降りて、道のポールに備え付けてある「ポリス専用」みたいな青いハコを開けると電話が出てきたりとか。サンフランシスコの街並みも良く出来ていたし、当時の郵便配達車をズームアップしたり、この殺人犯の調査がいかに困難だったか、時代性を使って表すのに神経使っているという印象を持った。IMDbを読んだら、フィンチャー監督は細部に気を使っていて、良く聴くとグレイスミスのカーラジオで、『ギミー・シェルター』で有名なアルタモントの悲劇を引き起こしたローリング・ストーンズのショウのアナウンスが流れているんだって。 ***以下ネタバレ*** 出演者の演技や映像なんかは面白かったんですけど、唯一気に入らなかったのは、2時間強の長丈なので、最後、実話にありがちな「そんで、この人はこの後こうなった・・・」という黒い画面に白い文字で説明して終わっちゃったこと。実際のゾディアック事件は解決していないので、本編が尻切れトンボに終わってしまうのはいいとしても、警部たちや、グレイスミス、そして第一容疑者だったアーサー"リー"アレンのその後を実写して欲しかったなあ。 特に、グレイスミスがおおっぴらにゾディアックの調査をし出してからは名前が広まり、顔もTVに出て、「ゾディアックが見ていたらどうするの」と再婚した奥さんが心配したり、ゾディアックが殺した女性の家にかかってきた「ハアハア電話」がグレイスミスの家にかかってくることで、「これは主人公とその家族が危ないのか!」という期待をさせているんだからさ。これでマジ奥さんが狙われたりしたら『セヴン』の2番煎じになっちゃうし、犯人がグレイスミスを襲いに来たら「王道ハリウッドサイコホラー」になっちゃうからできないのはわかるけど、映画は状況証拠ばっかで逮捕できないとは言え、この第一容疑者のアーサー・リーが、犯人、というスタンスなのだから、次々に新聞社に送られてくるゾディアックの手紙を詳しく見せるシーンなんか思い切って削って、アーサー・リーが後々心臓発作で死んだというのを聞いてグレイスミスがほっと安心する、とかそういうシーンを付け加えたらもっと面白かったと思った。 Key Word 映画 ゾディアック ジェイク・ジレンホール ロバート・ダウニーJr. デヴィッド・フィンチャー クロエ・セヴィニー |
ジェイクが出てるのと、 フィンチャー監督なのでどっちも大好きな私はこの映画の製作が発表されてからずーっと心待ちにしてました。Zodiac事件については詳細知らないのですが、とにかく、ストーリーがどうこういうより監督の演出をじっくり見たいです。うほー!マジで楽しみです♪
Codomoさん、
私もジェイク・フィンチャーどっちも好きなので面白かったです。でも、観る前にもう少し事件の概要を知っていたら面白かったかなと思ったけど。 ど~も,こんばんは
この映画の予告編を何度か映画館で観ましたが,やたらおもしろそうですね~。日本では6月公開なので,今から楽しみですよ。 ジェイク・ギレンホールくんがやたら『漫画家でしょ・・・』とかつっこまれてて,いい味出してたし。 chuchuさん こんばんは!
殺人事件で実話物は,ハズレが多い気が しますが,これは地味なんだ~ そしてぶつ切れ,『ブラックダリア』みたいに 勝手に犯人を創造なんてのは ないんですね。 Hiroさん、
『ブラック・ダリア』、観よう観ようと思って結局そそられないんだよな~ ま~事実は小説より奇なり、じゃないってことですかね。本当にあったことを映画にする方が難しそうだもんね。 返TBとコメントありがとうございました。
自分はいまいち入り込めませんでした。 題材がちょっとマニアックな上に、マニアックな謎解き、マニアックではなかった恐怖度と作り手の熱が空回りして伝わりませんでした。 丁寧に作られた作品だと思うのですが。 お久しぶりです。日本では「ZODIAC」昨日公開だったので観て来ました。
実話なのでしっくりしないラストはしょうがないですが、映像はすごく凝っていてよかったです。それにサスペンス作品の演出としても1級品でした。 chuchuさん、連日お邪魔です。
アメリカではヒットしなかったのですね。『セヴン』と雰囲気似てた、確かに。 グレイスミスのカーラジオ、こちらでは字幕で「ストーンズのコンサートは・・」って出ましたよ。親切(笑) 音楽に注目したレビューで、さすが姫!と思いました。ではでは~。 http://thinkingdays.blog42.fc2.com/blog-entry-254.html おひさです。
ロバート・ダウニーJr出てましたね。 最近ちょくちょく見かけますね。 「毛皮のエロス」も近々公開だし。 意外と力の入った作品で良かったですよ。 力入りすぎちゃったという話もありますが。 とりこちゃん、
え!『毛皮のエロス』ってとっくに公開されてません(それとも田舎住まいなのかいな、あんた)?? エロス、いいよ!いい映画よ!観てみて! うっ。確かに微妙な田舎っぷりですね
単館系だからしょうがないのだっ このコメントは管理者の承認待ちです
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