Million Dollar Baby
私はボクシングって嫌いです。怖いです。あんな生々しい戦いを、スポーツとして楽しんでしまうという神経が理解できません。それにそれを観て興奮してしまう観客の気持ちがわかりません。「ボクシングでは尊厳が全てだ。相手から尊厳を全て引っ剥がしてしまうこと」と映画で言われているとおり、殴られて血みどろになって必死の形相になっているボクサーを見て、私は怖くなってしまって楽しめない。 公式サイトに、かなりきちんとしたストーリーが載っているので、それはそちらを見ていただくとして、私が気になったのは、主人公の女性ボクサー・マギーの家族です。 お父さんは死に、弟はけちな犯罪で刑務所行き、妹とお母さんは、働きもしないで生活保護の世話になっている。マギーはそんな家庭で育ち、教育も受けられず、13歳のときからウエイトレスをして働いている。 マギーがボクシングで少し成功し、お母さんに小さな家を買ってあげる。いまどきない親孝行な娘です。しかしお母さんは、家を持っているなんて政府に知れたら、生活保護を打ち切られたり、国が出してる医療保険が降りなくなったりしてしまうと言って、感謝するどころか怒ります。
彼女はリビングルームのソファに一日中座ってテレビやビデオを見ています。寝るのもそこで、テレビをつけっぱなしにして寝ます。彼女のベッドルームは、とうの昔に物置と化し、足の踏み場もありません。とにかく、家中、ものだらけで、掃除は全くしません。地下室の洗濯機の前には、6畳一部屋分くらい汚れた洋服が散乱していて、誰も洗濯しません。食べるものはファストフードか、冷凍食品かジャンクフード。なのになぜかキッチンには野菜や果物やミートソースの缶詰が、棚に納まりきらないほど溢れ帰り、フリーザーは冷凍してあるお肉でパンパンになり、なにも入れられない状態。流しの周りには洗っていないグラスがずらーっと並んでいる。本当に、マジで20個くらいあったんではないでしょうか。一度、彼女が自分の女友達の悪口を私に言って聞かせていたことがありました。その女友達は「本当にだらしない女で、そうじ一つしないのよ!」私は口にこそ出しませんでしたが、なんたってB型ですので、態度に出ていたのでしょう。黙ってじっと彼女を見つめる私に、「ここより汚いのよ!」といいました。 こういう人たちはお金がないとなげき、将来に対して非常に不安に思っていながら、マギーの母親のように、今、持っているものを失うのをとても怖がります。福祉や弱者を守る法律に関しては、いろいろ複雑な問題が絡んでくるのでばっさり白黒つけられませんが、こういうあきらかに自分でどうにかなる人たちから、自分の足で立つという気概を奪ってしまう側面はあるなと思いました。多分、この人たちが必死に働いても、生活保護を受けているのと同じレベルの生活しかできないかもしれないけど、心の張りが違うと思うのだけど・・・。 でも・・・・こういう人たちは、社会の制度の問題でなく、福祉がなくてもこういう人たちなのかもしれない。そう思うと、血のつながりとは、なんなんだろう、と思います。マギーは、あんな環境で育っていながら、家族とは全く違う価値観を見つけ、そんな彼女のことを思いやる家族は一人もいない。マギーのトレーナーのフランキーは、実の娘がいるのに全く連絡も取れなくて、一人で暮らしている。そんな二人が知り合って、ボクシングを通して信頼を築く。本当の家族よりよっぽどお互いを必要とし、大切にし合う。 社長の本音日記というブログで、この映画は「観終わった後も心に重くのしかかったものが取れない、そんな気持ちの映画」だという感想が書かれていました。(それがこれを観てみようと思ったきっかけなのですが)確かに、「あー良かった」というエンディングではありません。マギーとフランクは、心も身体も傷つき、苦悶して、哀しくて、失うものもとても多かった。でも二人が出会えたのは、すばらしいことだったのだと思います。タイトルの「ミリオンダラー・ベイビー」というのは、フランクにとってマギーがすばらしいボクサーだった、という意味ではなく、本当に大切な人だった、という意味でつけたタイトルなんだなと思いました。 いい映画です。一度観てみてください。 Key Words ミリオンダラー・ベイビー クリント・イーストウッド ボクシング 映画 |
同感です。
マギーの家族はほんとにひどかった。 もう、吐きそうなくらい、ひどい人たちでしたよ。 だから、フランクに出逢って、ボクシングにすべてを賭けたあの時期が余計に素晴らしく思えました。 生きることの意味を考えさせられました。 これこそまさに「いい映画」ですよね。 チュチュ姫さん、はじめまして・・。 僕の「映画チラシ館」に寄って頂いてコメントとTBをありがとう。 僕のほうからもTBさせていただきました。 頂いたチラシをそのまま隠しておくのももったいないのでこうしてアップしてるんですよ。 僕は映画館にあまり行かずに家でのDVD&ビデオ鑑賞が主で、そのほうは「ビデオ鑑賞日記」にアップして、チラシのと分けてるんですよ。 ミリオンダラー・ベイビーは見てないのですが、10月28日にDVDが出るので楽しみにしています。 これからもよろしくです。 やっと「ミリオンダラー・ベイビー」を見たのでTBさせていただきました。
ビデオで見た感想はもうひとつのブログ「ビデオ鑑賞日記」にアップしているのでこちらのほうからです。 日が変わってからアップしてからTBしようと思っていたら、チュチュ姫さんが「ジョーズ’87」にコメントを書いていただいてちょっとビックリでしたよ(^o^)丿 「ミリオンダラー・ベイビー」はさすがアカデミー賞主要4部門を撮っただけのことはあって素晴らしい作品でしたが、僕はどうも前の「ミスティック・リバー」同様に馴染めない作品でした。 懐かしいe映画もどんどん見てますよ。 「ジョーズ’87」はまだまだ新しいほうです。 僕はかなりのクラシックファンで、1920年代のサイレント映画から見てますよ(^o^)丿 ご訪問とTBありがとうございました。
チュチュ姫さんがおっしゃるように この映画、ボクシングの壮絶さよりも マギーの家族のようなああいう レイジーな家庭を作ってしまうアメリカ社会や 貧富の差、親子の絆などなど かな~り深いたくさんのテーマがこめられている 秀作だと思いました。心に重く残っています。 私もTBさせてくださいね。 このコメントは管理人のみ閲覧できます
チュチュ姫さん、はじめまして!
あなたのブログを読んで、なんとなく物語の背景がわかったような気がしました。 こういったことを知っていると映画の観かたも代わってくるように思いました。 みのりさん、
はじめまして。そう言っていただけるとうれしいです。 また遊びにきてください。 コメントありがとうございました。
なかなか独りになれない独り好きです。 何にも知らずにロッキーの女性版と思って気軽に観たら、すごく意味ある映画でした。 ラストシーンは好きな終わり方ではないのですが、何故かまた観たいと思う映画です。 このコメントは管理人のみ閲覧できます
うむ、なるほど・・・。
この記事を読んで、なおさら興味が湧いてきました。 映画見てみたいです^^ edelweissさん、
是非是非観てみてください! チュチュ姫さま
モ・クシュラ・・・(いとしい人 我が血よ) 娘への思いがあふれてますね。 人はつながっていたい どんな形であれ、人は人と深く繋がっていたいって・・・ モーガンフリーマンのどうしようもないボクサーへの愛情も後になって思い出されて仕方がありません。 チュチュ姫さまの文章を読んで また この映画観たくなりました。 TBさせていただきます。 このコメントは管理人のみ閲覧できます
なるほど実体験のお話しで、この映画のリアリティが増した気がします。
ホワイト・トラッシュというのはプア・ホワイトと同義なんでしょうか? ボクももう一度観ようと思いつつなかなか手が出ないですね…観たあと沈むので。。。 trichopteraさん、
早速の訪問、サンクスです! >ホワイト・トラッシュというのはプア・ホワイトと同義なんでしょうか? と思いますよ。マギーのお母さんみたいな人、うちの周りに一杯います。 こういう映画はいいんだけど、ホント、観た後辛いのでもう一度観る気になりませんよね。 |
|
トラックバックURL削除
storyロサンゼルスで古いボクシングジムを営むフランキー(クリント・イーストウッド)は、タイトルマッチに挑戦寸前で、唯一の金のたまごでもある選手によそのジムに移籍され意気消沈していた。か…悲しすぎる とりあえず生態学+【2006/08/22 03 : 24】
クリントイーストウッドはあまり好みではない・・・モーガンフリーマンは大好き!ボク プロフェッショナルなアーチストが好き【2006/07/07 08 : 31】
ちっこいボクシングジムを経営する老トレーナー、フランキー(クリント・イーストウッド)のもとに、31歳の女マギー(ヒラリー・スワンク)が現れ、弟子にしろと脅迫する。最初は 0からの漫画&イラスト映画道【2006/05/26 21 : 51】
だいぶ前に観た作品です。アメブロで書いた記事を引用しています。最近アクション映画で“面白い!”と思える作品に出会えないので、感動作を観ようと借りたのがミリオンダ 独りの時間が好き【2006/04/05 22 : 30】
2004年 アメリカ 133分 原題 Million Dollar Baby監督 クリント・イーストウッド脚本 ポール・ハギス撮影 トム・スターン音楽 クリント・イーストウッド出演 フランキー・ダン:クリント・イーストウッド マギー・フィッツジェラルド:ヒラリー・スワンク 楽蜻庵別館【2006/03/23 08 : 58】
遅ればせながら、『ミライオンダラー・ベイビー』を観た。アカデミーを獲っている映画なので、いまさらストーリーの説明も野暮だよね。簡単に言えば、貧乏どん底生活を抜け出すために、ミリオンダラーのボクサーを目指す女性と、その老いぼれトレーナーのお話。この映画を観 どうなんかね、国際結婚。【2006/02/11 10 : 13】
ヒラリー・スワンク Hillary Swankヒラリー・スワンク Hilary Swank 生年月日 ■ 1974年07月30日 出身地 ■ アメリカ/ワシントン州/ベリンガム 本名は、ヒラリー・アン・スワン ジョニーからの伝言【2006/02/05 11 : 24】
ようやく観ました、昨年の話題作。すごく哀しい話で、見終わった後、その余韻でボーっとしてしまいましたが、いい映画です。小さなボクシング・ジムを経営し、長年トレーナーとしてやってきたフランキー。(クリント・イーストウッド)トレーナーとしては優秀な彼だが、選手 英語で映画【2005/12/21 12 : 23】
『ミリオンダラー・ベイビー』(監督:クリント・イーストウッド、出演:クリント・ 極楽三十路生活賛歌【2005/11/26 10 : 55】
2004年 アメリカ 原題:Million Dollar Baby 原作:F・X 銀の森のゴブリン【2005/11/22 01 : 36】
アカデミー賞主要4部門(作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞)に輝いた注目作という事意外、何の予備知識もなく借りてみました で・・・感想ですが正直、「マッタリな日曜を返してくれー」みたいな気分に陥りました。個人的に ソードフィッシュとか、“人生楽あり.... サボテンな日常 ~with 電磁波吸収系セレウス君【2005/11/08 22 : 59】
クリント・イーストウッドは「この映画はボクシングではなく、シンプルなラブストーリー」というが、私の見る限りラブストーリーではなく、やはり女子プロボクサーの映画だ。試合での重大な事故から自殺未遂、そして尊厳死へと至る、あえていえばアッサリと事象を見せている 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~【2005/11/01 13 : 07】
2004年 133分 監督 クリント・イーストウッド出演者 クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、アンソニー・マッキーロザンセルスのダウンダウンでボクシング・ジムを営むフランキーのもとに31歳の女性マギーが入門志願.... ビデオ鑑賞日記【2005/11/01 00 : 22】
2004年 133分 監督 クリント・イーストウッド出演者 クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、アンソニー・マッキーロザンセルスのダウンダウンでボクシング・ジムを営むフランキーのもとに31歳の女性マギーが入門志願にやって 映画チラシ館【2005/10/15 18 : 57】
なぜ、戦うのか?理由はもう要らない。 13歳からウェイトレスで稼いできたマギー(ヒラリー・スワンク)は、名トレーナーであるフランキー・ダン(クリント・イーストウッド)に「私のトレーナーになって」と頼む。「女はダメ」とけんもほろろに追い返されるが、頑固 AMOR ETERNO【2005/10/06 06 : 52】
|