「アクロス・ザ・スパイダーバース」

公開時に観にいったのだが、寝不足状態で挑んだため、途中何度も寝落ちし、断片的にしかおぼえていなかった本作。今回アマプラにて配信開始ということで、ようやく完全な形で視聴したわけだが。こういう話だったのね。ようやく理解した。なるほど、これは各方面から賞賛されるわけだわ。よくできてる。
とはいえそれでも正直、前半は少々退屈に感じてしまったんだが、中盤、並行世界にそれぞれ存在するスパイダーマンが無数に集まるスパイダー・ソサエティにて話が展開しだしてからは、本作のテーマが明らかになって、俄然おもしろくなってきた。あとはラストまで一気見。
大切な人を失うか、それともその人を救う代わりにユニバースを崩壊の危機にさらすか、といった究極の選択をせまれることになる主人公マイルズ。それが避けられない運命であると知り、反抗した結果拘束、運命は自分の力で変えてみせるとばかりに単独逃げ出して、他のスパイダーマンたちにおわれることになるのだった。
運命論とそれにあらがう人々といった、ありがちな話ではあるものの、そういうのが結局好きな私は結構熱い気持ちになりながら観てしまった。
そしてあらためてすごいと感嘆してしまったのが、その革新的な映像だ。とくにスパイダーマンとスパイダーマン達による追走シーンはカラフルな色彩、様々なエフェクト、スピーディーな動きと、まさにビジュアルの洪水とでもいったかんじで、押し寄せる圧倒的なイメージの連続は、もはや狂気の域に達している。
試したことは無論ないが、ドラッグできめていってしまった人が見ているイメージはこんなんじゃないかという感じで、まさにトリップ時の仮想体験を味わせてくれてなかなか刺激的だ。
思えば私はこうした、あっちにいっちゃった感覚を求めて映画や音楽に接しているところがある。そうした意味でもその願望を満たしてくれた一本であるといっていいだろう。
その結果、あっちの世界にいっちゃったまんまダークに終わるのもよい。というのも本作は三部作の二作目だからで、オチをつける必要がないからなのだ。次作の完結編も楽しみだけれど、そう考えるとありきたりな映画に落ち着いてしまうのでは、という危惧もある。それというのも現実にもどってこなければならないという都合上、家族愛とか友情とか、ありふれた最後にするしかないだろうから。