「●洋平と明良☆番外編」
彼らの日常
彼らの日常 5
洋平はリビングのテーブルでレシピ制作。
休みの日は、季節の食材と照らし合わせながら没頭する。
オープン当初はコースだけでなく単品メニューもあったが、予約客で埋まるようになった今はコース料理のみだ。
ドルチェ担当の芹沢も一時はガスパロの店で一緒に働いた仲間で、基本的に何でもできる。
一足早く帰国していた芹沢に、スタッフとして来て欲しいと声をかけたら二つ返事でオッケーが出た。
忙しくなって人を増やそうかとも考えたが、厨房の大きさを考えれば導線的にもシェフ二人がちょうど良い。
コース料理は三種類で、品数によって値段が違うというシンプルさにした。
儲けに走るより、味を守ることに専念するのはガスパロに徹底的に仕込まれたことだ。
そういう意味では芹沢も肝に落としているから、仕事もやりやすい。
洋平は時計を見てお迎えまでまだ時間があることを確認し、少し休憩をしようとキッチンに立った。
*
カフェオレを持って、階段を上がって三階の明良の仕事部屋の前でノックをした。
「はい」
返事がある。
「お疲れ。進んでる?」
追い込みに入ると完全にシャットアウト状態に入ってしまうのを知っているから、まだ下書きの段階はこうして息抜きを兼ねての訪問。
まぁ、顔を見たいのが一番の理由だけど。
「今回は点数多いからな」
うーん……と伸びをして、ありがとうとカフェオレを受け取った。
「今日、親父が店来いってさ。またいつもの、新しいメニューの試食かな」
「了解」
「とか何とか言ってさ、親父と母さんが孫見たいってのもある」
「毎週のように行ってんのに」
明良がふっと笑う。
そこへ明良のスマホが鳴る。
「……母さんだ」
「絶対、孫連れて来いコールだよ」
「タイミング良すぎ」
二人で笑って明良が電話に出る。
『今日、彩良も桔平もそっち行ってるんでしょ? あんたデザインで忙しいなら、幼稚園のお迎え母さん行こうか?』
海外への買い付けは諏訪が一人で行く頻度が上がったから、母さんは店だ。
「いいよ。洋平も休みだから二人で行く」
『……そうだったわね』
あからさまにガッカリしている母に、明良が苦笑いをこぼす。
「お迎えに行って、帰りにちょっと店に寄るよ。下書き何点か出来たし、石の現物も見たいから」
本当は明日行くつもりだったが、石を実際に見ればイメージが出来やすい。
どっちにしろ、明日は明日でまたじっくりと見に行けばいい。
『あ、そうなの? じゃ、待ってる』
テンションが上がった母の声に笑みを零しながら、電話を切った。
「ってことで、店に顔出さなきゃ」
「オッケー。彩良、店のショーケース見るの好きだからな」
「桔平はすぐ飛び跳ねるから、事務所でよろしく」
*
店の裏口から入ると、母がパソコンで画面越しに諏訪と話をしていた。
「あ。ちょうど今お母さんとお話ししてるのよ。いらっしゃい」
母に手招きされて、彩良と桔平がダダッと走る。
画面に映る母親に二人で手を振って会話をしているのを見ながら、ひと段落するタイミングを見計らって明良と洋平も顔を出す。
明良とはやはり仕事の話になるから、洋平は飛び跳ねる桔平を抱っこして着替えをさせるために応接室の横の備品室に入った。
帰りにどっちもの親の店に行くから、着替えをもってきていたのだ。
「ほら桔平。バンザイは?」
「ばんじゃーい」
制服を脱がして手早く着替えさせる。
「おしっこは?」
「ないよ」
「出そうになったらすぐ言うんだぞ」
部屋を出ると傍に明良の母が着替えをもって、彩良と待っていた。
「さ、おばーちゃんとお着換えしようっか」
「もう自分でできるよ?」
「……そう?」
「彩良。おばあちゃんに、上手に着替えられるとこ見せてあげて」
「うん。わかった!」
張り切って答える彩良を、ニコニコした顔で見る明良の母親。
「僕もできるよ!」
桔平が明良の母に訴えると、目を見開く。
「えぇぇ? 桔平も? すごーい!」
大げさに驚いてくれるから、桔平は嬉しそうだ。
「じゃ、今度おばーちゃんにお着換えできるの見せてくれる?」
「うん。わかった!」
「もー、この子は。なんでこんな可愛いのよ」
姉と同じように返事する桔平を抱きしめて、頭を撫でる。
「おばーちゃん、ドア閉めて」
彩良が早く着替えたいらしく声をかけると、慌てて部屋に入った。
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休みの日は、季節の食材と照らし合わせながら没頭する。
オープン当初はコースだけでなく単品メニューもあったが、予約客で埋まるようになった今はコース料理のみだ。
ドルチェ担当の芹沢も一時はガスパロの店で一緒に働いた仲間で、基本的に何でもできる。
一足早く帰国していた芹沢に、スタッフとして来て欲しいと声をかけたら二つ返事でオッケーが出た。
忙しくなって人を増やそうかとも考えたが、厨房の大きさを考えれば導線的にもシェフ二人がちょうど良い。
コース料理は三種類で、品数によって値段が違うというシンプルさにした。
儲けに走るより、味を守ることに専念するのはガスパロに徹底的に仕込まれたことだ。
そういう意味では芹沢も肝に落としているから、仕事もやりやすい。
洋平は時計を見てお迎えまでまだ時間があることを確認し、少し休憩をしようとキッチンに立った。
*
カフェオレを持って、階段を上がって三階の明良の仕事部屋の前でノックをした。
「はい」
返事がある。
「お疲れ。進んでる?」
追い込みに入ると完全にシャットアウト状態に入ってしまうのを知っているから、まだ下書きの段階はこうして息抜きを兼ねての訪問。
まぁ、顔を見たいのが一番の理由だけど。
「今回は点数多いからな」
うーん……と伸びをして、ありがとうとカフェオレを受け取った。
「今日、親父が店来いってさ。またいつもの、新しいメニューの試食かな」
「了解」
「とか何とか言ってさ、親父と母さんが孫見たいってのもある」
「毎週のように行ってんのに」
明良がふっと笑う。
そこへ明良のスマホが鳴る。
「……母さんだ」
「絶対、孫連れて来いコールだよ」
「タイミング良すぎ」
二人で笑って明良が電話に出る。
『今日、彩良も桔平もそっち行ってるんでしょ? あんたデザインで忙しいなら、幼稚園のお迎え母さん行こうか?』
海外への買い付けは諏訪が一人で行く頻度が上がったから、母さんは店だ。
「いいよ。洋平も休みだから二人で行く」
『……そうだったわね』
あからさまにガッカリしている母に、明良が苦笑いをこぼす。
「お迎えに行って、帰りにちょっと店に寄るよ。下書き何点か出来たし、石の現物も見たいから」
本当は明日行くつもりだったが、石を実際に見ればイメージが出来やすい。
どっちにしろ、明日は明日でまたじっくりと見に行けばいい。
『あ、そうなの? じゃ、待ってる』
テンションが上がった母の声に笑みを零しながら、電話を切った。
「ってことで、店に顔出さなきゃ」
「オッケー。彩良、店のショーケース見るの好きだからな」
「桔平はすぐ飛び跳ねるから、事務所でよろしく」
*
店の裏口から入ると、母がパソコンで画面越しに諏訪と話をしていた。
「あ。ちょうど今お母さんとお話ししてるのよ。いらっしゃい」
母に手招きされて、彩良と桔平がダダッと走る。
画面に映る母親に二人で手を振って会話をしているのを見ながら、ひと段落するタイミングを見計らって明良と洋平も顔を出す。
明良とはやはり仕事の話になるから、洋平は飛び跳ねる桔平を抱っこして着替えをさせるために応接室の横の備品室に入った。
帰りにどっちもの親の店に行くから、着替えをもってきていたのだ。
「ほら桔平。バンザイは?」
「ばんじゃーい」
制服を脱がして手早く着替えさせる。
「おしっこは?」
「ないよ」
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