


「●洋平と明良☆番外編」
彼らの日常
彼らの日常 1
今日は明良の当番。
といっても、週の半分近くは明良だ。
「こんにちは」
明良が幼稚園にお迎えに行き、同じくお迎えに来ている母親の輪に向かって声をかける。
「あ。こんにちは~」
口々に挨拶を返してくれる母親たちに、明良は極上の笑みを浮かべた。
細身の体にタイトなスーツを身につけ、手にはアタッシュケース。
今日は打ち合わせがあった仕事の帰りだが、身だしなみには充分に気を使っている。
幼稚園に父親がお迎えに来ること自体そう多くはないのに、明良の見た目はどうしても人目を惹く。
それもわかっていて、堂々と正面から微笑むのだ。
自分の子供を迎えにくることに、何一つ後ろ暗さなどないのだから。
有名私立の幼稚園に入れた方が良いのか、地域が良いのか。
親四人で相談した。
これから小学校、中学と地域に馴染むために、自分たちの生活園の幼稚園に決めた。
「明良さん。やっと来週、お店に行けます」
母親の吉沢が声をかけてきた。
「長い間、お待たせしました」
「本当に。もう私たち、興奮してしまって」
「女子会なんです」
「夫と子供の手を離れて美味しい食事。もう、今からワクワク」
「コース料理なんて何年振り? 何が出てくるか、楽しみすぎて」
母親四人が傍に来て、興奮した面持ちで告げてくる。
洋平のイタリアンの店は、本場のコースを出すお店として地元だけでなく、遠いところからも食べに来る評判の店になった。
本国イタリアの有名店だけあって、過去に旅行した人たちがSNSで「日本であの味が食べられる」と上げたことから火が点いた。
イタリアまではそうそう行けなくても、国内ならまだ足を運びやすい。
ガスパロの店の味を、その場で働いていたシェフが再現する。
そして、洋平のオリジナルメニューはここでしか食べられない。
何より一番大きいのは、イタリアで金賞を獲ったことだ。
雑誌の取材と、有名人が美味しいイタリアンの店としてテレビでも紹介された。
席数もそう多くない店だけに、シェフは洋平と、ドルチェも兼ねた芹沢だけ。
あとはホール担当の岸本の三人で店を回している。
行列してもらえるのは有難いが、それは主旨と外れてしまう。
ゆっくりとイタリアのコース料理を味わってもらいたい。
一日に、三十名。
それ以上になると負担がかかり、味が落ちてしまう。
味が落ちてしまえば、店の評判は一瞬で終わる。
上がるのも早いが、落ちるのも早い。そういう時代だ。
必然的に完全予約制となり、一年先まで埋まっている。
おかげで、ゆったりとコース料理を楽しんでもらえるようになった。
「シェフに腕を振るうように伝えておきます」
「コース料理ってだけで、テンション上がるわよね」
「お店に入れるだけでも興奮しちゃう」
そうだよな。
普段、家のことや子供のことに日々追われているんだ。
ちょっとお洒落をして、仲の良い友人たちと夫や子供抜きでゆっくりと食事を楽しむ時間。
それをどれだけ楽しみにしているのかが、充分に伝わってくる。
純粋に喜んでいるその表情を見ているだけで明良も嬉しくなってきて、今度こそ本当の笑みを浮かべた。
母親たちが、ほぅ……と見惚れていると、子供たちの声が聞こえてきた。
「お父さん!!」
彩良は嬉しそうに明良を見つけて飛び込んでくる。
「おかえり」
アタッシュケースを下ろし、可愛い娘を抱き上げる。
「彩良ちゃん、本当にお父さんそっくりね」
いつも言われている言葉に、二人で顔を合わせて微笑んだ。
「おとーしゃ!!」
彩良を抱っこしたまま声の方を見ると、こっちに向かって走ってくる息子。
「おかえり~。桔平(キッペイ)」
彩良を下ろして、今度は息子を抱き上げる。
洋平によく似た、俺の可愛い息子。
その柔らかなほっぺに、ぐりぐりと頬ずりするとキャッキャと声を上げる。
彩良には最近嫌がられるようになって、わりと本気でショックを受けている。
「さ、帰ろうか」
桔平を下ろすと、すぐに彩良にくっ付いて自分から手を繋ぐ。
周りもそれぞれに帰っていく中、明良は振り返り「さよなら」とほほ笑んで頭を下げ、二人を連れ立って車へと向かった。
応援、有難うございます!

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「こんにちは」
明良が幼稚園にお迎えに行き、同じくお迎えに来ている母親の輪に向かって声をかける。
「あ。こんにちは~」
口々に挨拶を返してくれる母親たちに、明良は極上の笑みを浮かべた。
細身の体にタイトなスーツを身につけ、手にはアタッシュケース。
今日は打ち合わせがあった仕事の帰りだが、身だしなみには充分に気を使っている。
幼稚園に父親がお迎えに来ること自体そう多くはないのに、明良の見た目はどうしても人目を惹く。
それもわかっていて、堂々と正面から微笑むのだ。
自分の子供を迎えにくることに、何一つ後ろ暗さなどないのだから。
有名私立の幼稚園に入れた方が良いのか、地域が良いのか。
親四人で相談した。
これから小学校、中学と地域に馴染むために、自分たちの生活園の幼稚園に決めた。
「明良さん。やっと来週、お店に行けます」
母親の吉沢が声をかけてきた。
「長い間、お待たせしました」
「本当に。もう私たち、興奮してしまって」
「女子会なんです」
「夫と子供の手を離れて美味しい食事。もう、今からワクワク」
「コース料理なんて何年振り? 何が出てくるか、楽しみすぎて」
母親四人が傍に来て、興奮した面持ちで告げてくる。
洋平のイタリアンの店は、本場のコースを出すお店として地元だけでなく、遠いところからも食べに来る評判の店になった。
本国イタリアの有名店だけあって、過去に旅行した人たちがSNSで「日本であの味が食べられる」と上げたことから火が点いた。
イタリアまではそうそう行けなくても、国内ならまだ足を運びやすい。
ガスパロの店の味を、その場で働いていたシェフが再現する。
そして、洋平のオリジナルメニューはここでしか食べられない。
何より一番大きいのは、イタリアで金賞を獲ったことだ。
雑誌の取材と、有名人が美味しいイタリアンの店としてテレビでも紹介された。
席数もそう多くない店だけに、シェフは洋平と、ドルチェも兼ねた芹沢だけ。
あとはホール担当の岸本の三人で店を回している。
行列してもらえるのは有難いが、それは主旨と外れてしまう。
ゆっくりとイタリアのコース料理を味わってもらいたい。
一日に、三十名。
それ以上になると負担がかかり、味が落ちてしまう。
味が落ちてしまえば、店の評判は一瞬で終わる。
上がるのも早いが、落ちるのも早い。そういう時代だ。
必然的に完全予約制となり、一年先まで埋まっている。
おかげで、ゆったりとコース料理を楽しんでもらえるようになった。
「シェフに腕を振るうように伝えておきます」
「コース料理ってだけで、テンション上がるわよね」
「お店に入れるだけでも興奮しちゃう」
そうだよな。
普段、家のことや子供のことに日々追われているんだ。
ちょっとお洒落をして、仲の良い友人たちと夫や子供抜きでゆっくりと食事を楽しむ時間。
それをどれだけ楽しみにしているのかが、充分に伝わってくる。
純粋に喜んでいるその表情を見ているだけで明良も嬉しくなってきて、今度こそ本当の笑みを浮かべた。
母親たちが、ほぅ……と見惚れていると、子供たちの声が聞こえてきた。
「お父さん!!」
彩良は嬉しそうに明良を見つけて飛び込んでくる。
「おかえり」
アタッシュケースを下ろし、可愛い娘を抱き上げる。
「彩良ちゃん、本当にお父さんそっくりね」
いつも言われている言葉に、二人で顔を合わせて微笑んだ。
「おとーしゃ!!」
彩良を抱っこしたまま声の方を見ると、こっちに向かって走ってくる息子。
「おかえり~。桔平(キッペイ)」
彩良を下ろして、今度は息子を抱き上げる。
洋平によく似た、俺の可愛い息子。
その柔らかなほっぺに、ぐりぐりと頬ずりするとキャッキャと声を上げる。
彩良には最近嫌がられるようになって、わりと本気でショックを受けている。
「さ、帰ろうか」
桔平を下ろすと、すぐに彩良にくっ付いて自分から手を繋ぐ。
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始まりました。
まだ全部書き終わってないまま、見切り発車です。。。
彼らの淡々とした、ただの日常です。(故にBLではないかもです)
更新は不定期になりますが、次が気になる!!という展開はないのでご安心下さい。淡々と…を目指しました(笑
どうぞよろしくお願いいたします。
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