島田荘司『北の夕鶴2/3の殺人』
2024/09/15 Sun. 21:27:20 edit

島田荘司『北の夕鶴2/3の殺人』
何度目の再読だろう。
本格ミステリの美しさに痺れたものですが今回数十年ぶりの再読では印象が異なりました。
魅力的な謎は早い時期で提示されますが以降は吉敷刑事の物語です。別れた妻のために行動する様はハードボイルドのようです。誰もが仰天する本格の謎ときは最後の数ページに集約されています。既読していますが本当に解決できるのかともう程最後の最後までわかりません。それだけにその解決編の濃度の濃さは強烈です。
ああ面白かった。
どこか読み飛ばしたのか読みが浅かったのか 「2/3」の意味は分からなかったのは残念です。
福澤徹三『忌み地』
2024/09/08 Sun. 12:17:05 edit

福澤徹三『忌み地』
怪談社の糸柳寿昭と上間月貴が全国各地の忌み地、いわくつき物件を中心に取材。ふたりが足で集めた情報をもとに作家・福澤徹三が取材のプロセスや現場の状況を書き起こした前例のない怪談実話集。糸柳と上間は事故物件が集中する地域で、恐るべき怪異の連鎖に遭遇する。歴史から忘れ去られた戦慄の真相とは?
実話怪談は好きでよく読みますが、その階段の後日談語られる、”この話を書くとPC壊れる”とか”カメラが壊れる”といったものに惹かれます。本作は怪異を蒐集する状況含め描くという事でより好みに合った怪談集でした。とはいっても何かが壊れるといった話はありませんだが。しかし怪談蒐集の際に起こる、話がつながっていくという連鎖や関係ないところから話が吹く連で行く様子は大変興味深かったです。
山村正夫『湯殿山麓呪い村』
2024/09/06 Fri. 23:45:24 edit

山村正夫『湯殿山麓呪い村』
ある密室殺人が、隠された過去を暴き出す。角川小説賞受賞の名作ミステリ。
「語らざるべし、聞かざるべし」。大手食品メーカーの社長、淡路剛造が自宅の浴室で何者かに殺害された。殺害前、彼の自宅前では怪しげな遍路の姿が目撃されており、剛造の娘の婚約者の元には、幽海上人の生まれ変わりを名乗る謎の男から剛造が過去に起こした罪を裁くという怪電話がかかってきていた。彼が犯した罪とは何なのか。事件を追ううち、彼の故郷の村で起きたある母娘の失踪事件、更には湯殿山麓の寺の奇妙な戒律が浮かび上がる――。角川小説賞受賞の本格推理小説。
何十年ぶりの再読です。
初読時はつまらないなあと感じていましたが今回は違いました。
導入部の湯殿山の縁起みたいものもすんなり読めましたし、その後のミステリとしてのワクワク感もしっかりとありました。
作者は本作執筆時ですでにベテランですが、横溝正史と社会派の融合を目指したようです。そのような背景か横溝っぽさは充分にありました。
探偵役はいまいち魅力的ではない(クイズに強い大食漢というキャラ付けはあるがピンとこないものがありました)のですが、全く事件を解決しないさせないところは本家の金田一耕助にならっています!
結果的にはトリックは物足りないものがあるのですがもしかしたらこの部分も初読時につまらないと感じた、あるいは許せなかった部分かもしれません。
探偵の殺される夜
2024/08/24 Sat. 22:00:22 edit
探偵の殺される夜

短編ミステリはこれを読めば、間違いなし! 本格ミステリ作家クラブが厳選に厳選した絶品のアンソロジーをお届けします。選ばれたのは、長岡弘樹、麻耶雄嵩、青井夏海、東川篤哉、貴志祐介、柳広司、滝田務雄、鳥飼否宇、辻真先、巽昌章。いずれ劣らぬ10人の競演をぜひお楽しみください! 解説・福井健太。
久々に短編集を読む。
思った以上に面白かった。
しょっぱなの長岡弘樹さんの作品がベスト。
他はかつて読んだものや未読だが所有している作品が多かった。

短編ミステリはこれを読めば、間違いなし! 本格ミステリ作家クラブが厳選に厳選した絶品のアンソロジーをお届けします。選ばれたのは、長岡弘樹、麻耶雄嵩、青井夏海、東川篤哉、貴志祐介、柳広司、滝田務雄、鳥飼否宇、辻真先、巽昌章。いずれ劣らぬ10人の競演をぜひお楽しみください! 解説・福井健太。
久々に短編集を読む。
思った以上に面白かった。
しょっぱなの長岡弘樹さんの作品がベスト。
他はかつて読んだものや未読だが所有している作品が多かった。
鮎川哲也『砂の城』
2024/08/18 Sun. 14:54:00 edit
暑くて読書も進まずようやく夏季休暇最終日に読了。
ケレン味なしの地味な推理小説ですがこのような作品を読みたくなることもあります。
時刻表アリバイトリックはまあそんなものかと読み飛ばす感がありますがそこに至るまでの地味な推理の積み重ねが面白い。
ケレン味なしの地味な推理小説ですがこのような作品を読みたくなることもあります。
時刻表アリバイトリックはまあそんなものかと読み飛ばす感がありますがそこに至るまでの地味な推理の積み重ねが面白い。
佐藤究『Ank:a mirroring ape』
2024/08/12 Mon. 21:58:55 edit
佐藤究『Ank:a mirroring ape』

2026年、京都で大暴動が起きる。「京都暴動=キョート・ライオット」だ。人々は自分の目の前にいる人間を殺し合い、未曽有の大惨劇が繰り広げられた。事件の発端になったのは、「鏡=アンク」という名のたった1頭のチンパンジーだった。霊長類研究施設に勤める研究者・鈴木望は、世界に広がらんとする災厄にたった1人で立ち向かった……。
AIと類人猿研究がいかなる目的で結びつくのか。
主観人物と時系列があちこちに飛びながら壮大なテーマをぶち上げていく。
鏡に映った自分を自分と認識できるのか、できないのかというテーマが標題のmirroring ape
「京都暴動」の描写も淡々と描いており暴力シーンでありながらそれほど嫌な感じはしない。
冒険小説、サスペンス、SFの面白さを満喫できる傑作。
次男が行っている大学が出てきたり、長男が住んでいる千葉の超マイナーな地名が出てきたりとちょっとその辺の偶然性も面白かった。

2026年、京都で大暴動が起きる。「京都暴動=キョート・ライオット」だ。人々は自分の目の前にいる人間を殺し合い、未曽有の大惨劇が繰り広げられた。事件の発端になったのは、「鏡=アンク」という名のたった1頭のチンパンジーだった。霊長類研究施設に勤める研究者・鈴木望は、世界に広がらんとする災厄にたった1人で立ち向かった……。
AIと類人猿研究がいかなる目的で結びつくのか。
主観人物と時系列があちこちに飛びながら壮大なテーマをぶち上げていく。
鏡に映った自分を自分と認識できるのか、できないのかというテーマが標題のmirroring ape
「京都暴動」の描写も淡々と描いており暴力シーンでありながらそれほど嫌な感じはしない。
冒険小説、サスペンス、SFの面白さを満喫できる傑作。
次男が行っている大学が出てきたり、長男が住んでいる千葉の超マイナーな地名が出てきたりとちょっとその辺の偶然性も面白かった。
またまた1か月以上
2024/07/28 Sun. 16:54:01 edit
またまた1か月以上更新が途絶えていました。
何でしょうか。暑いから?
暑いからと言っては何ですが読書が進みません。
そんな中読んだのは「鯉沼家の悲劇」
光文社文庫の鮎川哲也監修『本格推理マガジン』に収録されています。
著者は宮野叢子。雑誌「宝石」発表された昭和24年の作品になります。
ミステリというより鯉沼家一族の人間模様が面白い。(横溝正史風)
そして昨日読んだのが渡辺優『私雨邸の殺人に関する各人の視点』
ちなみに私雨って言葉は存在し、(山で)局所的に降る雨を指すようです。
三人の登場人物と、神の視点である「X」の視点で物語は進みます。
視点は替わりますが時系列はダブる事も戻る事もなく読みやすいです。
殺人の動機ですがこれはこれでアリと思いました。
また久々に図書館に行き『本の雑誌』を借りました。
特集はルビ。実に面白い。編集者の苦労が良くわかりました。
話は戻ってとにかく暑い。
はっぴいえんどの名曲「夏なんです」にうたわれる世界はもはや昔。
♫ギンギンギラギラの夏なんです
といってもせいぜい30℃あたりなのではないでしょうか。
むしろ涼しそうです。
さて国書刊行会という渋い出版社があるのですが
暑い中わざわざ刊行する人のルポ『酷暑観光かい?』
あるいは『酷暑観光会』といった出版はどうでしょうかね。
何でしょうか。暑いから?
暑いからと言っては何ですが読書が進みません。
そんな中読んだのは「鯉沼家の悲劇」
光文社文庫の鮎川哲也監修『本格推理マガジン』に収録されています。
著者は宮野叢子。雑誌「宝石」発表された昭和24年の作品になります。
ミステリというより鯉沼家一族の人間模様が面白い。(横溝正史風)
そして昨日読んだのが渡辺優『私雨邸の殺人に関する各人の視点』
ちなみに私雨って言葉は存在し、(山で)局所的に降る雨を指すようです。
三人の登場人物と、神の視点である「X」の視点で物語は進みます。
視点は替わりますが時系列はダブる事も戻る事もなく読みやすいです。
殺人の動機ですがこれはこれでアリと思いました。
また久々に図書館に行き『本の雑誌』を借りました。
特集はルビ。実に面白い。編集者の苦労が良くわかりました。
話は戻ってとにかく暑い。
はっぴいえんどの名曲「夏なんです」にうたわれる世界はもはや昔。
♫ギンギンギラギラの夏なんです
といってもせいぜい30℃あたりなのではないでしょうか。
むしろ涼しそうです。
さて国書刊行会という渋い出版社があるのですが
暑い中わざわざ刊行する人のルポ『酷暑観光かい?』
あるいは『酷暑観光会』といった出版はどうでしょうかね。