2011年07月 No Movie, No Life (映画・DVDレビュー)
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映画レビュー 「モンスターズ/地球外生命体」

モンスターズ/地球外生命体  原題:Monsters

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【公式サイト】  【allcinema】  【IMDb】

低予算ながら数々の賞を受賞し、話題を呼んでいるSFパニックムービー。男女二人がモンスターのいる危険地帯を抜け、メキシコからアメリカまで帰還する様を描く。監督は本作で有名になったギャレス・エドワーズ。主演もそれほど名の売れていないスクート・マクネイリーとホイットニー・エイブル。

NASAが地球外生命体を持ち帰ろうとした際、探査機が大破しメキシコの半分がそのモンスターで占められている危険地帯となってしまった。メキシコで取材をしている新聞社カメラマンのコールダー(スクート・マクネイリー)は勤務先の社長令嬢であるサマンサ(ホイットニー・エイブル)を無事連れ戻す様命令を受ける。海路を閉ざされた二人には危険地帯を縦断する陸路しか残されていない・・・。

本作は鑑賞前にシネ通で事前情報を入手していた。そこでも話題だったのが120万円という低予算でやっているという事だった。実際に鑑賞し、どうやってこのレベルのものを120万で作れるのかと思っていたら、IMDBには6400万円(80万ドル)と推定だが記載されていた。まぁこれなら納得というか、依然低予算ではあるものの、逆にそんなに掛けたのかと思ってしまう。

さて、予算の事は置いておいて本題に戻ろう。本作は非常に設定とその描写が面白い。それは全て人間がもたらした事象で、人々が迷惑被ってるという点だ。モンスターを持ち込んだのも人間、そしてそれを始末するために毒ガスを撒いて人間にまで被害を負わせているのも人間、全て悪の根源は人間なのに、敢えて大衆にはそう思わせない様な描き方がされている。米兵が「ワルキューレの騎行」を口ずさむ辺りは「地獄の黙示録」をオマージュとし、アメリカの自身が招いたベトナム戦争を彷彿とさせる。これほどの皮肉があるだろうか。

一方でこの皮肉を繋げる話の流れが、いまいちインパクトが弱い。もう少し派手でスピード感のあるパニックが複数回あったり、もっとドラマチックな展開があれば良かったのだが、当初は予算の情報が入っていたので、致し方無しかと思っていたが、予算も120万円では無かった様なので少々ガッカリした。

皮肉の部分は面白かったものの、SFパニックとして見た場合は若干物足りなさを感じる。モンスターであるタコもいまいちパリッとしないし、意外とすんなり危険地帯を越えてしまうのも拍子抜けだ。

ただこのギャレス・エドワーズという監督には期待したい。潤沢な予算が付き、やれることが全てやれる環境になった時に、彼の真価が問われるだろう。

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

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映画レビュー 「狂乱の大地」

狂乱の大地  原題:Terra em Transe

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グラウベル・ローシャ監督の没後30周年を記念し、1967年の作品ながら日本初公開となった作品。架空の共和国エルドラドを舞台に、詩人が自らの意思を貫くため、政治の世界に飛び込み、保守派と革命派の対立に交わりながら、人々や政治家の理想や現実など全てを否定し、唯我独尊の道を歩むも苦悩するフィクション。

理想に燃えるジャーナリストであり詩人でもあるパウロ(ジャルデル・フィーリョ)は革命派のヴィエイラ(ジョゼ・ルゴイ)と組み、彼を知事の座に押し上げ、自身の理想の追求を夢見るが、しがらみに囚われ、一向に革命が進まない。失望のさなか、町に戻りフェンテス(パウロ・グラシンド)に近づくも裏切られる。武装闘争に走ろうと再度ヴィエイラと組もうとするが・・・。

とにかくもの凄くインパクトの強い作品である。いくらフィクションと言えどもリアリティが高く、その嘘と裏切りが横行し、人民がケイオスの状態である様は、まさに南米で繰り広げられてきた戦争と同じといっても過言ではない。またパウロは自身の理想を追求するなら手段を問わず、自身の支持する政治家を貶めようと企てられていると判断すれば、殺しも辞さない、まさしくアナーキーそのものだ。

当時、国会で論争になったというのもうなずける。嘘と裏切りが横行し、全てを否定していくストーリーは、あたかも現政府がそうであると言わんばかりの風刺の側面も持っている。そしてこのアナーキーっぷりにも関わらず、台詞は詩人の側面が前面の出てきて、非常に情緒的な台詞が展開されるため、そのギャップに思わず面喰ってしまう。

現代作品と比較すれば、当然作りが甘かったりする部分は多々あるのだが、もはやそんな事はどうでも良くなる作品だ。パウロによる自己理想の追求とジアスの旗と十字架を両手に闊歩する姿に代表される権力の前に、観客も様々な思いが交錯するはずだ。途中理解が難しい場面もあるが、その作品の持つ力は十分センセーショナルだと感じた。

評価:★★★★★★★☆☆☆

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映画レビュー 「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ  原題:Exit Through the Gift Shop

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謎のベールに包まれているカリスマ・ストリート・アーティストであるBANKSYが監督を務めたドキュメンタリー。今やストリート・アートは立派なアートとして認められており、そのカリスマとも言えるBANKSYが、作品の内容も殆ど事前公開しないまま公開された話題作。

LAに住み、古着屋を営むティエリー・グエッタは、何でもかんでもビデオ撮影するのが趣味。ある日ストリート・アートに目覚めた彼は、世界中のストリート・アーティストを追い掛け回し撮影する日々を送っていた。ただ一人だけ、BANKSYを除いて。BANKSYと奇跡的に出会えたティエリーは、当然の様に撮影するが、その先に待っていたものとは・・・。

事前情報が皆無だったので、どんなジャンルの作品かも何も知らないまま鑑賞したが、全編に渡りドキュメンタリーであった。それもホームビデオで撮影された、生々しい映像でだ。

序盤は、ティエリーの追跡ドキュメント的な流れで、このままどうやって落すのかと思いきや、中盤以降のBANKSYとの出会い以降は、ある意味バカバカしくも時代が味方した意外な展開が待っている。

カット割りなどは、ハンドカメラでティエリーが撮ったものがベースとなるので、素人丸出し感でいっぱいで工夫のしようも無く、映像自体に飽きてきてしまうが、全体のまとめ方などは良く出来ており、「ストリート・アートとはどういうものか」や「アーティストはどういう人達で、どういう信念でやっているのか」という点について興味深く観る事が出来る。もっとも、作品中のBANKSYの発言を聞いていると、彼はディレクションを決めるだけで、スタッフにお任せだったと思うが・・・。

ストリート・アートはアングラではなくなって来たとはいえ、日本ではまだまだ一般的ではないジャンルではなく、イマイチ馴染めないかもしれない(ワタクシもその一人)。ただ一般論として、アングラで危険な香りがするものほど魅力的であり、この作品を通じ、彼らの信念、自己主張、描くモノ(個性)に触れる事で、彼らが何故表現するのか、その理由が垣間見れた感じだ。

なかなか異色な作品であり、アングラなドキュメンタリーであるため、万人にはおススメできないかもしれないが、個人的には、観ておいて損はしない作品だ。

評価:★★★★★★☆☆☆☆

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映画レビュー 「ラスト・ターゲット」

ラスト・ターゲット  原題:The American

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暗殺者として裏社会に生きる男が、ある女性との出会いを切っ掛けに引退を決意し、そのために最後の仕事に向かう様をシリアスに描くサスペンス。ジョージ・クルーニー主演、アントン・コービン監督作品。

暗殺者として生きるジャック(ジョージ・クルーニー)は、スウェーデンで襲われ組織のパヴェル(ヨハン・レイゼン)の仲介でイタリアの田舎町に身を隠す。ここでマチルデ(テクラ・ルーテン)と名乗る女性から暗殺用ライフル製作の仕事を受ける。と同時にクララ(ヴィオランテ・プラシド)という一人の女性と出会い、引退を決意する。最後の仕事をやり遂げに向かうジャックだが・・・。

実にシリアスで、ストイックで、ダンディズム溢れ、余計なモノを極力排した作品だ。台詞もそれほど多く無く、ジョージ・クルーニーのオーラとイタリアの田舎町という情景、そして暗殺者という陰のある設定という、それだけで観客の心を魅了するだけの雰囲気を持ち合わせている。(ジョージ・クルーニーのあからさまな肉体自慢のカットがあるが、それはご愛嬌)

ストーリーライン自体は分かりやすく容易に展開は想像できてしまうが、前述の雰囲気に加え、どこか危険な香りがするマチルダや、引退へ誘う神父がスパイスとして加わり、静寂の中にも緩急が良くつけられている。

しかし、台詞も少ない分、この雰囲気の中に自分がどれだけ入り込めるかで、この作品の評価が大きく変わる。入り込めた人にはまるでそこに居るかの様な感覚になり、入り込めなかった人は、少々退屈な時間を味わうだろう。

最大の魅力であるジョージ・クルーニーのストイックに生きるダンディズムには脱帽だ。寡黙な役はあまり思いつかないが、クールに決めるのもとても良い雰囲気が出ていた。本作を観てしまうと、今までこういうジョージが観れなかった方が不思議な位だ。

閉塞感漂う毎日を送る人に是非観てもらいたい作品だ。絶妙な雰囲気の中に、信じた道を突き進む勇気を与えてくれるだろう。たとえそれがどんな結果になろうとも・・・。

評価:★★★★★★★☆☆☆

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映画レビュー 「アイ・アム・ナンバー4」

アイ・アム・ナンバー4  原題:I Am Number Four

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何者かに狙われており、逃げ続ける生活を送っている高校生が、自ら運命を切り開くため戦う事を決意するSFアクション。製作マイケル・ベイ、監督D・J・カルソー。

世界の各地に散らばっている、No.1~9まで番号を持った9人の謎の人物。彼らは得体のしれない何者から逃げ続ける生活を送っていた。が、確実に魔の手は伸び、順番に3人が殺されていく。No.4であるジョン(アレックス・ペティファー)は次は自分だと悟ったが、同級生のサラ(ダイアナ・アグロン)と出会い、逃げずに戦うことを決意する。果たして2人の運命は・・・。

ツイッター上で意見は真っ二つに分かれたこの作品。ワタクシは残念ながらこの作品は支持できなかった。題材や設定はなかなか面白いと思うのだが、ストーリー展開が終始ジョンの高校生活にフォーカスが当たっていて、学園ラブストーリーを見せたいのか、SFアクションを見せたいのか良く分からない。サラへの深い愛情を表現したかったのだろうが、ちょっと冗長過ぎだと感じた。そこまでやらなくても、大体観客は想像できるものだ。

それよりも、SF的なところを期待してしまうのはワタクシだけだろうか。敵が何故執拗に追いかけ続けるのか、敵は一体何なのか、そしてNo.1~9の関係は何なのか、ほとんど一言で片づけられてしまい、何だか良く理解できなかった。良く分かったのは、彼ら全て宇宙人だってことだけだ。大事な9人だけが地球に逃げ延びた様だが、3人は既に殺されてしまった。このままで良いのだろうか・・・?

肝心のアクションシーンはラスト10分強程度だけだ。ここに至るまでのかったるさと言ったらない。かと言って、この10分強に何か目新しさがあるかと言えば、特に何もないのだ。そして想定の範囲内でのバトルが繰り広げられる。予告編のシーンがMAXだろう。

最後まで観きって思ったのは、本当は3部作位の壮大な大作を作りたかったが、予算などの関係でいきなりはできない。ただし1作目がヒットしたら続編がOKになる。そのため、本来は色んな設定やら何やらを描きたかったのだが、全部すっ飛ばして、単発で終わっても続編が可能になってもどちらにでも対応可能なシナリオにしたんだな、という事だ。だからイマイチすっきりしない内容と感じたのではないかと考える。

どうしても、割り切りつかない展開や、設定の一部しか使わないシナリオに苛立ちを感じる。様々な事情があったとしても、一つの作品として見た場合は、どうも納得がいかない。もし続編があるなら、背水の陣で本気で作ってほしい。

評価:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

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映画レビュー 「スペイン一家監禁事件」

スペイン一家監禁事件  原題:Secuestrados(Kidnapped)

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ミゲル・アンヘル・ビバスという監督も日本では大して知られていなく、俳優陣も無名な者ばかりだが、ドキュメンタリーとも取れるリアリティ溢れるバイオレンス・スリラー。

スペイン郊外の家に引っ越してきた一家は、その引っ越してきた夜に突然、3人の覆面強盗に押し入られる。強盗は暴力と凌辱により一家を服従させ、金を奪おうとする。捉われた一家の運命は如何に・・・。

これはなかなか面白い作品だ。ストーリー的にはシンプルで、強盗に押し入られ、ATMに金を下ろしに生かされた父親のハイメ(フェルナンド・カヨ)のシークエンスと、自宅に監禁され、暴力と凌辱で服従させられる母マルタ(アナ・ワヘネル)と娘イサ(マヌエラ・ベイェス)のシークェンスに分かれる。

イベント的には監禁ものの王道を突き進むのだが、描写の仕方が、サスペンスやスリラーというよりかは、ドキュメンタリーに近いくらい、リアリティに溢れるのが特徴だ。これはひとえに、アナ・ワヘネルとマヌエラ・ベイェスの怯え方、息の使い方がとてもリアルであるに他ならない。緊張感をヒシヒシと感じ取るのがこの作品の楽しみの一つだ。

それを助長させる様な、救いの無い終わり方。恐らく実際はこの終わり方が正しいのだが、久しくあっけにとられてしまった。この感覚は、「イデオン」を見て以来である。

思い切りよくここまでやったのは良いが、強盗団が多少間抜けで突っ込みどころが多かったり、中盤でいい加減、母娘の叫び声が鬱陶しくなってきて、色々なドラマで「泣くんじゃねー!」と強盗が叫ぶ気持ちが分かったりする様なところはあるのだが、百歩譲って置いておいたとしても、何かもう一捻り、時間縛りの要素の様に、強制的に訪れる何かがあると、より緊張感が途切れなかっただろう。

こういう直球勝負な作品は嫌いじゃない、というかむしろ好きだし、それでいてここまでやれるなら、なかなか大したものである。変化球の作品が増えてきてる現代だが、敢えて直球の騙しの効かなさ、明快さも素直に楽しみたい。

評価:★★★★★★★☆☆☆

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映画レビュー 「水曜日のエミリア」

水曜日のエミリア  原題:Love And Other Impossible Pursuits

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ナタリー・ポートマンが製作総指揮を務めた上に、主演を飾ったヒューマンドラマ。ヒロインは妻子のある上司を略奪し結婚するも、自分の子供の急死、そして夫の子供との衝突など、彼女の心理を描く。

NYで弁護士として働くエミリア(ナタリー・ポートマン)は、妻子もある上司、ジャック(スコット・コーエン)と恋に落ちてしまい、略奪結婚をする。やがてエミリアにも2人の子供が誕生するが突然死してしまう。子供を失った悲しみと、連れ子のウィリアム(チャーリー・ターハン)との衝突、ジャックの前妻のキャロリン(リサ・クドロー)の攻撃の前に、追い詰められてしまう。

本作は、正直1回では味わえきれないくらい、色んな要素の心を打たれるシーンが多く、とても細かい部分まで考えきれない作品でした。それもこれも、エミリアの今の生活に至るまでがとても複雑で、それぞれが違った要素を持っているからだ。

ブラック・スワンではナタリーは存分に2面性を魅せてくれたが、それは全身を使って表現するものだった。本作では普段の生活の上で、表情だけでそれを魅せてくれた。人は嫌いな人と接すると、無意識の内に態度にでるだろう。それを意識的にやっている。ウィリアムに対する、前半と後半の表情の違い見ものだ。

さらに、子供を亡くし、自分でも感情がコントロール出来ない様は、見ている側もどうして良いか分からないと思ってしまう位、引き込まれてしまった。

少々、エミリアの置かれているシチュエーションが、日本人の感覚からすればあまりに複雑で、全く感情移入できないかと思いきや、重要な感情表現をする場は、ほぼ一般の視線で語られるため気持ちが入りやすかったのもポイントだ。

ちょうど30代、40代という人生で最も揺れ動く時期に想い抱く感情を、エミリアやキャロリンの女性視点、そしてジャックの男性視点が上手く融合され、捉えている作品だ。特に何となく先が見えない不透明感を少なからず抱いている同世代は、言葉で表し切れない、何かを感じられると思う。もう一度、自宅でゆっくり観たい作品だ。

余談だが、劇中でエミリアが「Harvad sucks」(だったかな?)と言ってるシーンがあるが、実際にナタリーはハーバードの心理学科を卒業してます。卒業したからこそ言える台詞である。

評価:★★★★★★★★☆☆

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映画レビュー 「ムカデ人間」

ムカデ人間  原題:The Human Centipede (First Sequence)

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夕張映画祭で一躍有名になり、ようやく一般公開になったホラー映画。マッドサイエンティストが自身の狂った欲望を叶えていく様を描く問題作。主演はディーター・ラーザー。またHEROSでに出演した北村昭博もキャスティングされた。

ヨーロッパを旅行中のリンジー(アシュリー・C・ウィリアムズ)とジェニー(アシュリン・イェニー)。ドイツ郊外の山奥で車がパンクしてしまい、助けを求めるためようやく見つけた民家はハイター博士(ディーター・ラーザー)の自宅ラボだった。ムカデ人間を作り上げる欲望に駆られる博士に、2人は眠らされてしまう。そしてもう一人連れ去られてきたカツロー(北村昭博)。3人の運命は・・・。

世界各地で様々な反響を呼んでいる本作。扱っているテーマがテーマだけに当然の結果であるし、そのアイデアだけでなく、映画としての完成度云々の部分も多々あるのだが、先ずは、この完全にイカレてる発想を、1本の作品として世にリリースした事を称賛したい。

だいたい、ああやって人間を繋げようなんて、誰が考えるのだろう。SAWシリーズの様々なトラップも良く考えるもんだと感心したが、本作の様にシンプルでかつ、かなり狂ってるアイデアは感服ものだ。

その斬新なアイデアばかりが先行するが、作品としては意外とヌルイものとなってしまってる感が拭えない。先ずホラー作品と言いながらも、かなり笑える点だ。これは以前他の作品でも書いたが、怖さを突き詰めていくというのとはちょっと違う。あからさまに真面目な顔して狙ってやってる。またグロテスクな描写が多いかというとそれ程でも無いので、ホラーを期待して観に行くと肩透かしを食らうことになる。

本作は紛れも無くB級作品なのだが、B級の良い所は、例えばホラーならその路線で真向勝負しようとしているにも拘らず、思わずヌルくてニヤリとしてしまうところだろう。本作は、ホラーに行きたいのだが、笑いが先行してしまい、物足りなさとも違う不満を感じてしまう。これは恐らく、作り手側がどこまでホラーもしくはグロテスクな要素を出していいものか躊躇してしまったと想像する。あまりにも大胆なテーマなので、それ以上のリアルな描写をしてしまうと、それこそ波紋を呼んでしまうと考えたのではなかろうか。

もちろん、ムカデ人間が出来てからの3人の絶望感はヒシヒシと伝わってくるのだが、それとハイター博士のマジボケ顔の笑いを比べると、どうしても笑いが先行してしまう。それもこれも笑い打ち勝てるだけの、大きなホラーショックが無いためだ。

ただし、本作の公開である程度の確信を、トム・シックス監督は掴んだのでは無いだろうか。このシリーズ、そして監督の真価が発揮される次作に大いに期待したい。もしこの笑いと、それより大きなホラーショックが融合したのならば、今までにない傑作になる事は間違い無いだろう。

評価は迷うところだ。作品全体で考えるとマイナス面もあるのだが、題材のインパクトが大きすぎる。また次作への期待も込めて7★にしたい。

評価:★★★★★★★☆☆☆

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映画レビュー 「ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える」

ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える  原題:The Hangover Part II

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あの大ヒットコメディ「ハングオーバー」の続編。今度はステュの結婚式で舞台はタイ。前作のメンツも変わりなく、監督も前作に引き続きトッド・フィリップスがメガホンを取る。本作は2仕様上映されており、TOHOシネマズ六本木ヒルズでのみ、R18バージョンが鑑賞できる。

歯科医のステュ(エド・ヘルムズ)が遂に結婚することに。相手はタイ出身の美女。彼女の出身国であるタイでの結婚式を予定しているが、前回の二の舞は避けたいため、アラン(ザック・ガリフィナーキス)だけは誘いたくなかったが結局くる羽目に。こうしてフィル(ブラッドリー・クーパー)、ステュ、アラン、そして花嫁の弟のテディ(メイソン・リー)の4人はタイに向かい、穏やかな独身パーティを送るはずだったのだが・・・。

一言でいうと抱腹絶倒。下ネタやブラックユーモアが苦手な人でない限り、劇場で思わず爆笑してしまう作品。本作はタイトル通り、2作目で、ストーリーは完全に独立しているので、事前準備も何もなく観ても楽しめるのだが、前作のストーリー構成を踏襲しているし、前作の絡みのネタが多数出てくるので、前作を復習しておくことを強くおススメしたい。

本作は、前作をかなりパワーアップさせた感じで、笑わせ方、特に、アランの絡み方は相当練られている印象だ。そしてミスター・チャウ(ケン・チョン)も忘れてはいけない。彼はこのシリーズにおいて相当なスパイスになっている。

前作は、ただおバカをやって、おバカな台詞で直球で笑いを取りに行ってる感じだが、本作は人の出し方、ジョークを入れるタイミング、そして台詞と全てを絶妙にアレンジして、より自然に、そして大きな笑いが得られるような工夫が随所に感じ取れる。

R-18バージョンは、モザイクが無く文字通り丸見えなので、六本木まで行ける方は是非行って観て頂きたいと思う。ロールエンドのスライド写真でノーモザイクの威力が発揮されると思うので。

評価:★★★★★★★★★

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