美しい言葉。 - 匂いのいい花束。
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Category: スターの時代。

美しい言葉。 

2021/06/28 Mon.

BBTT9644 - バージョン 2
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 
 「そうねぇ……先ず春子さんね。」

敬愛する新宿2丁目のゲイバーのマスター、クロちゃんは、
迷うことなく杉村春子の名前を挙げました。
いつも深夜になって客足が途絶えると、
僕と2人で喧々諤々、大論争になる話題……。
 
 「大女優とは?」
 
この曖昧で個人の意見が大きく左右する命題……。
僕とクロちゃんの意見が一致するのは杉村春子の時だけでしたっけ。
僕の中の定義では、大女優とは1人で悲劇を一本背負えること。
この辺もクロちゃんと一致するところ、夜も更け、白々と空が明るくなる頃……。
杉村春子、山田五十鈴、田中絹代、高峰秀子、高峰三枝子、
京マチ子、若尾文子、山本富士子、そして映画界、最後の大女優が岩下志麻……。
そんなところにいつも落ち着くのでした。現在では……麻実れいくらいかな?
クロちゃん曰く、吉永小百合は映画スターで大女優ではないそうです。
淀川長治さんがグレース・ケリーを女優と呼ばないでお嬢さんと呼んだのに似ています。
 
杉村さんは決して美人ではなかったし、
舞台の世界で大スターになったのは50歳を過ぎてからです。
だけれど、舞台に限らず、日本映画全盛の時代に、名だたる名監督たちに重宝され、
そして、テレビの世界でも活躍した大スター、
いやいや、大女優の筆頭は矢張り杉村さんでしょう。
類い稀なる演技力に加えて自然な台詞回し、華やかな色気と所作。
日本の演劇史、映画史に燦然と輝く大女優です。
 
 
70年代に入り、ハリウッドでごくごく普通の隣りのネエちゃん、
兄ちゃんたちがスクリーンを我が物顔で闊歩する時代からこの方、
また、娯楽の王様であった映画が没落し、テレビと映画の境目が無くなり、
テレビのスイッチを入れれば出ているタレントがスクリーンを所狭しと歩き回り、
また、文字通り、キラ星のようなスターがいなくなった今、
本物のスター、大女優がいなくなりました。
チョッとだけハリウッドの映画に出たから?
テレビで2時間ドラマの主役を何本かやったから?
甘い、甘い、そんなもの大女優でも何でもないです。
昔はお金を払ってわざわざ映画館に行かないとスターは見られなかったのです。
 
 
さて、関西にお住まいの、僕が敬愛する真紅さんのブログに、
こんな興味深いエントリーがありました。



段々とエスカレートしているみたいですね……。
キツいいい方をすると言葉狩りみたいな?
自分で自分の首を絞め、表現の幅を極端に狭めるナンセンス。
真紅さんも仰言っているように「女優」と呼んで欲しくない方々の意見は尊重しましょう。
そう言う方々は謹んで「俳優」と呼べばいいのであって、
ただね、そんなに目くじら立てて、男と女の差を無くすことって必要でしょうか。
男らしい、女らしいって素敵なことだと思いませんか?
 
何が普通で何が普通じゃないの?人は自分と違ったもの、
理解出来ないものを排除しようとします。そうやって自らの安寧を確保するのね。
その心根の奥底には理解出来ないものに対する「恐怖」があると思うの。
この世の中、男と女しかいない……そんなものはナンセンスなんですが(苦笑)
こればかりはどうにも仕方ないのかもしれません。
 
 
宇多田ヒカルの最近のツイートにこんなものがあったそうです。
僕的には何もそこまで……そう言う感じもします。
彼女のように世の中に名前が出ていて、
しかも結婚と離婚を経験している女性はそうなのかもしれません。
フランスではいくら若いからと言って「マドモアゼル」と呼ぶと嫌がられるそうです。
どんなに若くても働いていれば「マダム」……そう聞いたことがあります。
名前を文字、字面で見た時に、ミスター、ミセスが書いてあると、
変な間違えをしなくていいと思うんですけど……。
少し前から定着している「ミズ」と言う言葉で十分じゃないの?僕にはそう思えます。
 
 
 
話しが横に逸れました……。
「女優」……真紅さんは仰言るように、本当に美しい言葉だと思うのです。
この「女優」と言う美しい言葉に憧れて、
今まで一体どれくらいの女性が血の汗を流し、涙にむせんだことでしょう。
真紅さんの記事の中の「顔はぶたないで。私、女優なんだから」と言う台詞の他に、
三田佳子演じる大女優、羽鳥  翔が、
薬師丸ひろ子演じる新人女優三田静香の手の甲を叩きながら、
 
 「女優!女優!女優!勝つか負けるかよ。」
 
そんなシーンもありましたっけ。
 
いつも思うのだけれど、意図して人を傷付けることは論外だけれど、
目くじらを立て、重箱の隅をつつくようにしてする言葉狩りみたいな?
何とも詰まらないな世界になったものだと思います。
僕は普通に使うつもり。禁止用語も必要とあらば……です。


写真は「国営  越後丘陵公園」で美しく咲く芍薬の「サラ・ベルナール」。
アール・ヌーヴォー時代のフランスを代表する大女優です。
彼女はレストランでメニューを朗読してその場の皆を涙させたと言う逸話を持っています。
ご存知のように、彼女はあるフォンス・ミュッシャをはじめ、
同時代の芸術家に多大な影響を与えました。
真の芸術とはそれだけでは存在しない、
全てのものに影響を与えると言う素晴らしい例です。
 

2021年6月28日
 
 
ブノワ。
 
 
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コメント

なくしたくない言葉ですね。

ブノワ。さん、こんにちは。
記事リンクありがとうございます。敬愛していただいているなんて、、、、恐縮です(汗)。
ありがとうございます。
映画スターと女優は違う、、本当にそうですね。
>淀川長治さんがグレース・ケリーを女優と呼ばないでお嬢さんと呼んだ
そうだったのですね。
『スタア誕生』で誰もがジュディ・ガーランドがアカデミー主演女優賞を獲ると思っていた時、受賞したのがグレース・ケリーだったのですよね。
ジュディ・ガーランド、どんなに悔しかったことでしょう(涙)。。
昨年、レネー・ゼルウィガーが主演女優賞を獲った時、ジュディ・ガーランドへのハリウッドの「罪滅ぼし」なのかもと思ったりしました。
吉永小百合に関しても、『いのちの停車場』でブノワ。さんが書かれていたのと同じようなことを私も感じました。
映画スターであり続けることを彼女は選び(選ばざるを得なかったのか?)、大女優にはなれなかったのでしょうか。
「女優」という言葉、、本当に美しく、憧れるに値する美しい言葉です。
せめて私たちが生きているうちは、なくしたくない言葉ですね。
TBもさせていただきました。

真紅拝

真紅 #V5.g6cOI | URL | 2021/06/29 18:51 - edit

なくなりませんよ。

真紅さんへ。
こんばんは。
早々にメッセージをありがとうございます。
敬愛……だって、映画の違った一面をいつも教えてくれるでしょう?
グレース・ケリーは綺麗でしたよね、お育ちのいい本物のお嬢さま。
淀川さんはその辺を言いたかったんじゃないですかね。
ケイト・ウインスレットがオスカーを獲った時、
授賞式でグレース・ケリーを模したでしょう?
メイクと髪型を真似て敬意を表した……僕の目にはそう映りました。
グレース・ケリーはいまだに影響力がありますよね、僕は好みじゃないけれど。
ジュディ・ガーランドがあの時オスカーを獲っていたならば……。
何事につけ「たられば」はないと思うんですけど、
彼女の晩年は全く違ったものになっていたでしょうね……。
吉永小百合ですけどね……見ていて何の高揚感も感じないんですよ。
何を観ても全く面白くない。周りも腫れ物に触るみたいじゃないですか。
「細雪」からの一連の市川崑の作品は吉永小百合を素材として見事に料理していましたが、
今や彼女にそれを出来る人が1人もいないんじゃないかな?
シャーロット・ランプリングの最盛期を監督出来る人がいなかったみたいに。
代表作が「愛の嵐」だけじゃ寂しいでしょう?「デューン」はチョッと楽しみですけど。
面白いと思うのは、大女優と言う言葉があって大男優って言う言葉がないこと。
一体どれだけの女性が女優と言う言葉に憧れたんでしょうね?
本当に美しい言葉、僕は使いますよ、最後の最後まで!
真紅さん、僕、トラッックバック出来ないの……もう少し調べますけど、
お返し出来なかったらゴメンなさいね……(苦笑)

ブノワ。

ブノワ。 #- | URL | 2021/07/01 21:06 - edit

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