ソックリの系譜。 : 匂いのいい花束。ANNEXE。
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ソックリの系譜。

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怒濤のような年度末が終わり、無事生還しました(笑)
ホッと一息、チョッと空いた時間を利用して「ヒッチコック」を観てきました。
アンソニー・ホプキンスがヒッチコックになり切って……と、随分、話題になっていましたね。
ヒッチコックの最高傑作と評判の高い「サイコ」の制作秘話。
映画ファンにとってはなかなか興味深い作品でしたし、
映画の途中から、全然、似ていないと思っていたアンソニー・ホプキンスと、
ヒッチコックが見事にダブり、役者魂と演技の魔力に感心したり……。


今日はそんなこんな、実在の人物を演じた映画についてあれこれをチョッと……。
ここ数年、特にこの10年間のアカデミー賞を振り返ってみると、
実在の人物を描いた作品が大人気、しかも、華々しい成果を出しています。
チョッと思い出しただけでも物凄い数の実績があります。
本年度アカデミー賞主演男優賞を見事獲得した、ダニエル・デイ=ルイスの「リンカーン」。
昨年度アカデミー賞主演女優賞のメリル・ストリープの「マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙」。
他にざっと思い付くだけでも、
2010年、ジョージ6世を演ったコリン・ファースの「英国王のスピーチ」、
2008年、ハーベイ・ミルクを演じたショーン・ペンの「ミルク」、
2007年、エディット・ピアフを演じたマリオン・コティヤールの「ピアフ」、
2006年、エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンの「クィーン」、
2005年、トルーマン・カポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンの「カポーティ」、
2004年は、主演男優賞がレイ・チャールズを演じたジェイミー・フォックスの「レイ」、
助演女優賞が、「アヴィエーター」でキャサリン・ヘプバーンを演じたケイト・ブランシェット。
2002年、ヴァージニア・ウルフを演じたニコール・キッドマンの「めぐりあう時間たち」……。

これってチョッと凄いですよね。主演、助演、各男優賞と女優賞がありますから、
約10年間で40の賞の内、1/4の10人が実在の人物を演じて見事、賞を獲得しています。
この他、受賞こそなりませんでしたが、「マリリン 7日間の恋」の、
ミシェル・ウィリアムズなどを含めると、もっと大変なことになります。
その昔、アカデミーは、アル中と精神的に問題がある役が好きと言われましたが、
今ではそこに「実在の人物」が加わった感があります。


では何故、実在の役、ソックリさんに皆がこれだけ興味を持つのか?
なかなか興味深いものがあります。自分が知っている有名人に、
演じる役者がどれだけ似せられるかを楽しむのでしょうか。
それとも、過去の偉人、有名人を役者が演じるのを見る事によって、
自分もその時代を生きる擬似体験をすることが出来るからでしょうか……。
または有名人の人生を覗き見出来る?なかなか面白い問題だと思います。

こうしてザッと書き連ねた作品と実在の人物、演じた役者を眺めてみると、
チョッとした共通点を見る事が出来ます。皆、それ程、外見が似ていないのです。
現代の特殊メイクやコンピューター・グラフィックの技術からすると、
もう少し似せてもいいようなものなんですが、程々に、50%くらいで収めている感じがします。
外見的には、皆、髪の色や髪型、必要最小限の似せ方しかしていない。
勿論、今をときめく大スターが演じることが多いですから、
あまりにに過ぎて誰だか分からなくなっては元も子もないのですが……。
残りの50%は演じる役者の力量任せ……そんな感じでしょうか。
全く同じに作ってしまうと映画化する本来の目的を見失ってしまうのでしょう。
所謂、どこまでにせられるかのソックリ大会ではありませんからね。

先日、鉄の女と言われたマーガレット・サッチャーが亡くなりました。
マーガレット・サッチャーを演じたメリル・ストリープの写真が初めて公開された時、
見た人々は口を揃えて「ソックリ!」と膝を打ちましたが、
良く見るとそれ程でもないんですね……兎に角、メリル・ストリープが綺麗!
パンフレットの写真、ご覧になりましたか?どの写真も物凄く綺麗なの。
メイクも髪型ももっと似せることが出来るハズなのに、
程々に押さえて役者の技量を発揮する余地を残しておく……。
あくまでもメリル・ストリープのマーガレット・サッチャー。
その辺のバランス感覚も含めて、去年度のメイクアップ賞の受賞につがったのではないかと思います。
同じく、去年主演女優賞にノミネートされたミシェル・ウィリアムスのマリリン・モンロー。
金髪にしてホクロを付けて……それくらいなんですね。
特にソックリにするための技巧を感じさせません。
ナチュラルでガラス細工のように傷付きやすいマリリンを、
ミシェル・ウィリアムズが好演していました。

ケイト・ブランシェットのキャサリン・ペプバーンは特に何もしていないように見えました。
背が高くて痩せ形で……その柄と、ハッキリした快活な台詞回し、
ヘプバーンの作品に見る彼女のイメージを再現したブランシェットの見事な演技。
何もソックリに仕立てることが全てではないことを実証しています。
要は、その人物に見えればいいのです。

リストアップした映画の中で、作品的には「めぐりあう時間たち」がダントツで面白かったです。
ヴァージニア・ウルフを題材に、違う時代、世界に生きる女性3人の物語り。
一ひねりも二ひねりもきいていて、しかも、それぞれの時代感が見事。
付け鼻をしたニコール・キッドマンがなかなかいい味を出していました。

「ヒッチコック」に話しを戻すと、
先程、書いた「覗き見」……これってヒッチコックの作品の重要な要素なんです。
彼の作品の殆どが「覗き見」を基調としています。今回の「ヒッチコック」でも、
そんなヒッチコック自身の覗き趣味の映像がふんだんに盛り込まれています。
役作りにおいて「おぉ!」と思わず身を乗り出したのは、
アンソニー・パーキンスを演じたジェームズ・ダーシーです。
いやぁ、雰囲気といい身のこなしといいチョッとビックリしちゃいました。
映画史上、最も一つの役に取り憑かれてしまったアンソニー・パーキンスを好演。
作品的には、チョッと物足りなかったかなぁ……。
劇中に「サイコ」のモデルになったと言われる殺人鬼が出て来ます。
エド・ゲイン……ヒッチコックは幻想の中で殺人鬼と対話し、
殺人鬼にヒントを貰い、促されるかのように「サイコ」を作ります。
僕、こういうの好きじゃないんですよ……「ブラック・スワン」の時もそうでした。
黒鳥の強迫観念に取り憑かれたバレリーナの妄想をCGを駆使して実写で挿入する……。
その部分がなかったら手放しでナタリー・ポートマンの主演女優賞を褒めたいのですが……。
「ヒッチコック」……アンソニー・パーキンスとヘレン・ミレン、
この2人が出ていなかったら、パンチの効かない、
ごくごく平凡な2流の作品になっていたのではないでしょうか。
ハッキリ言っちゃうと……今一でございました(笑)

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今日の写真は数年前、パリで撮影した1枚。
唐揚げで有名な「韓林」で食事の後、プラプラ坂道を下っている時に発見!
パリの街、特に横道はこういう落書きがあるので楽しいです。
いつかブログで使う事もあるかも……そう思って撮った1枚です(笑)
落書きとは言え……既にアートの域ですね。


2013年4月14日


ブノワ。


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by raindropsonroses | 2013-04-14 00:00 | 映画館へ行こう。