建築学科のけしからん先生、天明屋空将の事件簿
著:せひら あやみ 発行元(出版): 集英社
≪あらすじ≫
建築学科的ストーカー騒動、愛する『彼女』誘拐事件、“閲覧注意”隙間女の怪、パクリ疑惑―。天才的建築家ながら大学講師として緩々暮らす天明屋空将が、迷助手の女子大生・月島小梅と共にキャンパスで起こる珍事件を謎解く…!神保町を舞台に、変わり者だらけ!?個性豊かな建築学科の面々が織り成す青春×建築ミステリー!!「…、エスキスしてみようか」
(BOOK データベースより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
オレンジ文庫には正直あんまり良い印象がないんだけど、気になったので手に取ってみた一冊。タイトルの通り、今回は建築学科を舞台にしたライトミステリー、っていうか日常系ミステリー。
内容としては他の類似したライトミステリーと大差があるものではない。建築界では有名だが怠惰な建築士兼大学の建築学科で講師をしている天明屋と、その存在を偶然知った別学部のヒロイン月島小梅とでの日常的な小さな謎を解いていく、という具合なのだが、肝心の建築要素はかなり薄いと言っていい。この辺が、探偵や警察と言った定番の職業以外での専門職をタイトルや主人公に選んだ時の難しいところなのだろう。残念ながらこの作品もそういった、専門性があるからこそ解ける謎、といった壁を突破出来て居るとは言い難い。推理を始めるときの「エスキスしていみようか」というのもなんか不自然で決まり文句になり切れていない。
ミステリーとしての謎解き要素はやや薄く、どちらかといえば本当に日常生活って感じか。もう少し謎要素が強くても良かったかも。
一方で、キャラクターは個人的に悪くないと思う。恋愛要素も入っているが、三角関係って感じではないし、個々のキャラクターもいい塩梅(まぁ、変人とか個性が強いというのを謳っている部分もあるので、そういう意味では「そこまで個性が強くない」ともいえてしまうが)。
欲を言えば最後のエピローグは要らなかった、かな。小梅の言動でその想いは明白で、でもそれを敢えて明示しないところが暗に訴えている感じがあって良かったのに、それを不必要に明文化してしまってちょっと萎えたというか白けた感じがした。
それ以外の部分でのストーリー構成は、まぁ悪くない。事件を解くたびにそれに絡んでいた人たちが仲間になるシステムはちょっとラノベっぽいが(笑
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。ストーリーやミステリーは無難かギリギリ及第点だが、キャラクターで上手く回した印象。群を抜くような存在ではないが、安定して読めると思う。
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