痛い日々は続く。 痛みとずっと付き合ってるから慣れてる…平気…なんてことない。 なぜか入院中より痛い。
入院中はすることがあまりなかったもんね。 生活は作業ばかり。
ある角度に腕を伸ばすと激痛がはしり、その痛みを神経が覚えているのか数時間その痛みが続く。
起きているときより、横になってるときのほうが痛みがでる。 傷の痛み。 身体の中からの痛み。 骨の痛み。
痛み止めをずっと飲んでしのいでいる。
いつか楽になる日が来るから、と。
肺の水はなくなってるので血中酸素濃度は普通になっている。
でも、肺胞が潰れているのが治っていない。それは『コーチ』くん↓ でわかる。 これは、吐いて吸う力を測ることができて、しぼんだ肺胞(あのカリフラワーみたいなのの集団)を復活させるためのもの。吐いて吸う。
一定位置に右側の黄色の小さい四角を青い枠内に浮かせておかねばならないのでそこそこきつい。
1250ぐらいが普通の女性。 500ぐらいしかいかなかったのが、今は1000まで時々いくようになった。
*画像はネットからの広いもの。うちにも同じものがある。名前は「コーチ2」で2だから改良版かな。
真面目にこれでトレーニングすれば肺胞はいずれ戻るらしい。
肺胞が潰れているとやはり苦しい。 体力がない。
体力がないってどういう感じか、というと… 立っているのがつらくなる、腿をあげて歩けない、すり足になる、歩くのがつらくなる、腕を上にあげているのができなくなる。 夜になると体力を使い果たして疲れる。 シャワー一つ浴びるのも体力がある早めの時間。 のろのろ。
前はカラスの行水並みだったのに、今はだらだら時間がかかる。
この時期はもたもたすると冷えてくるので夫が新しいガスファンヒーターを浴室のほうまでホースを伸ばして準備してくれた。 洗面所、脱衣所、ガンガンあっためる。
ほんと生活すらままならない。 苦しいし痛いし、と…
疲れる。 焦りもあるのかも。 焦りってなにに焦るのか。 なにもないのに焦る。意味不明。 この意味不明に苦しむ。
この前は一人で乗り越えた。
夜…ひとりでぐずぐず、うじゅうじゅしてベッドにいた。 いつもこんな感じ。
横になるほうが痛いから疲れているのに横になるのが恐ろしい。 起きているのもつらい。
ふーーーーーー あーーーーしんど…
「しんど…」…小さい声で言ってしまった。
口にしたことで堰が切れた。
今までほとんど泣いたことがないのに、涙が意に反してポロポロこぼれた。 泣いてるところなんてひとには見せたくない。 ティッシュで押さえた。 夫は自室。
夜の11時半ごろ。
夫が上から降りてキッチンにいった。
夫に言おう… 苦しい日もある…と
リビングへの扉を開けて夫に呼びかけた。
夫が振り向いた。 何か言おうとしたけど、涙がざーーーーーーざーーーーーー出て言葉は出せなかった。
夫は部屋に入ってきて椅子に座った。 わたしはベッドに腰掛けて…
ぶつぶつごたごたあーだこーだうじゅうじゅ…ずるずるぶつぶつ…
時系列もカテゴリー、すべて無視でぶつぶつぶつぶつぶつぶつ話した。 話したのではなくって、吐露した。
泣いたり、時には笑ったり… あーーーイカれてる、わたし。 自覚してた、ちーーーとオカシイぞ、って。
崖の先端でぐらぐらするときもある。 だけど、わたしは絶対に崖下に落ちようとか思わない。 うんと崖から遠くの安全な広場の方にいるときもある。 論理的に全部わかっている。
わたしのことで夫の生活も変わったこともわかっている。 今年の暑さの中、週二回、買い物をして病院に通ってきてくれた。 会えないのに。
「やっかいものを背負いこんだ」なんて夫が思っていないこともわかっている。
モニターで「アジの開き」のように胸を全部あけられ、心臓を止められ、ドクターXのリアルバージョン、の妻、母をみせつけられ生きて手術室から出てくるかわからない時間を過ごした家族だってつらかっただろう。
そのまま死んでもわたしにはわからなかった。
死の恐怖はこうやって生還したからこそ味わっている。
もう、ワケワカメなことをずっとぶつぶつぶつぶつ、ぶつぶつ… 鼻水垂らしながら涙ざーーーーざーーーーー 一生分泣いたと思う。
ふと、ベッドのヘッド部分を見れば夫がわたしのために点灯しやすいように角度などを考えてつけてくれた灯り。 薬のせいで、しょっちゅうトイレ通いをするわたし。
緊急用の「夫に知らせるための」サイレンボタン。 携帯二台使いのわたしに、充実した充電器設備。 ややこしい大量の薬を一緒に日付をうって整理整頓もしてくれた。
そういうのを見て笑ってみたり、してくれたことに感謝して泣いたり…
もう、精神があっちゃこっちゃ。
病院に戻ろうかとも思った。 転院先では、10月の半ばまで居ていいようになっていた。 でも帰ってくることを決意したのはわたし。
できることをしよう。 でも、できないことをどこまで夫に頼っていいのか。 落ちた物を拾うのも難儀する。 トイレでペーパーを使うのも難儀する。 その度、痛みが走って行動が止まる。
自分でわかっていた。
あ、少々メンタルやられてるなあ、って。 だから、夫に声かけないとだめだ、って。
夫にぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ話して… 水飲んで、バナナを食べて… 顔を洗って、乳液をべったりつけて。
もう、夜中の1時過ぎ。 2時頃。
「もう…大丈夫だから…」 夫に言った。
ああ、明日の顔はすごいことになってるんだろうなあ。
夏目雅子は女優だから決して前日に泣かないという。それを母親が「心ない」みたいなことを言ったとか…うろ。
わたしは、顔がデタラメになっても誰とも会うことはないからいい。 でも、すごいことに。 一生分の涙、どこから水が出るんか…
目が腫れることを気にしてみたり、なんだろうねえ。 心があっちこっち。
夫は部屋を出ていって上にあがった。
大きい物音がして、物が落ちる音がして… リビングに出て行ったら、夫がベッドのマットを担いで降りてきた。 落ちたのはセフィロス様のフィギュア。 飾り棚のクラウドくんと一緒に置いてたもの。
夫は、ベッドマットだけ上から降ろしてリビングに敷いた。 マットがあたってセフィロス様が落ちた。
部屋の入り口近くに夫はマットを敷いた。
わたしの寝室はドアが二つあってもう一つがトイレの方なので夫に躓くことはない。
夫は自分がつけていたスマートウォッチをわたしの腕に巻いた。 夫の携帯から、わたしの健康状態がわかる。
闇の属性のわたしに夫は光をあててくれる。 夫だって光の属性でもあるまいに。
「わたしより先に死なないでね。 死んだら、わたし生活できん…」
というと、「ふふふん」と笑った。
夫が光を照らしてくれるから、さしより生きていけると思った。
※過去形です。
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