注意*今日はnazunaのちょっと暗い話を書いていますので、そういう話がダメな方はスルーしてください。【あらすじ】
学校で友達をかばったために、いじめに合う「ひなた」
周りに負けず戦う彼女のために、零はできることを必死に捜す。
元担任の林田先生に「お前にできることを一つずつやりなさい。」と諭され、ヒナのために戦うことを誓う。
そんな時、零に二階堂が対局中に倒れたとの一報が…
零はいろんな思いを背負い、新人戦の決勝に臨むため大阪に向かう―――――
他のBLの感想をUPしようと思っていたのですが、家に帰ったら弟との本やらDVDを受け渡ししている棚にこの本が置いてありました。
(BLが散らかっているので、私の部屋は立ち入り禁止です
)
そういえば発売日だったな、と読み進めたら……な、なんですかこの胸を締め付けられる切なさは。
いじめにあっていた友人をかばい、支えていたひなたは、友人が転校してしまうといじめのターゲットになってしまう――――
前巻で学校でいじめにあっていることを告白したひなたを、おじいちゃんは「よくやった、すげえ勇気だ」と褒めて励まします。
零もあかりもみな「辛いなら逃げていい」そう思うのですが、ひなたは逃げ出さずに耐えながら、いじめを行う同級生に、何もしない担任に、胸の奥底で深い強い怒りを湛えています。
ああ、今までの話はこの前哨戦だったんだな、と思いました。
この話を羽海野チカさんは書きたかったんだな、と。
今まで我慢して流され、諦め、逃げていた零は、ひなたの強さに打たれて自分にできることを模索します。
ちょっと最初はズレていましたが、自分にできることを必死に考え、探します。
「必要とされたい」
「だから勝ちたい」
強く、強くそう望むようになります。
そして、二階堂の治らない病気のことも零は知ります。
いつも自分のことでいっぱいいっぱいで、気が付けなかった多くの優しさに、くやしくて、情けなくて――――
様々なものと戦い続けながらも自分を励まし、支えてくれる友人や先生、大切な人たちがいることを、零は将棋との、自分の戦いの中で気がつきます。
こんなに人の心に訴えかけ、そして励まされる作品に出会えたことを感謝したいです。
ひなたの強さが私にはまぶしく映ります。
いじめとは林田先生が話す通り、同じパターンなどない。人の数だけ問題があり、これがいいなんて解決方法もない。
私はひなたの様な実質的ないじめはありませんでしたが、周りから振り回され、辛いけど辛くない姿を必死で見せて、家で小さくなって泣いていた学生時代がありました。
ひなたのクラスと同じく、目立つリーダー的なグループがあり、それがクラスの中心で、女子の中心でした。(他にもグループはありましたが)
その子たちがYesといえばYesだし、NoといえばNo。
最初は仲が良かったのに、急に見向きもされなくなり、暫く経ったころまた寄ってきたり。
最後はクラスの女子を二分するグループ同士で一人の女子を取り合い、けんかをしていたのを、何も属せない私は遠くで「私は関係ない」と一人背を向けて強がっていました。
本当は誰かに必要とされたかったし、手を取ってもらいたかった。
でもそれは気まぐれなものじゃなくて、しっかり自分を見てくれる誰かを。
その時代はずっと考えていました。
なんで、どうして、どうして私だけこんな風になるの――――
後ろを向いて、背を向けて、とにかく辛くない方へ逃げることが精一杯で。
確かに物を隠されたり、叩かれたりという実質的ないじめはなくとも、体型をからかわれたり、どうでもいい風に扱われたり、でも手のひらを返したように友人顔をしてきたり。
なぜ、なぜ、と思いながらも、ひなたのような強さは私は持てませんでした。
手のひらを返した同級生を、何事もなく受け入れ、そして離れて行くときも何事なくふるまうことしかできませんでした。
引き留めることもなく、また怒りをぶつけることもなく。
ただただ、流されるままでした。
こんな自分だから、しょうがない、と。
その年ごろの女の子は、気まぐれで、自分が大事で、楽しいことが大好きで、他人を思いやる情緒がたりなくて、言う言葉が人を傷つけるなんて思わなくて。
自分もまたそうだったんだと思います。
今でも深く心に突き刺ささっている同級生の言葉があります。
悲しいことに、その10数年後、同じセリフを当時の職場の上司に言われてしまいました。
その時も思いました。
自分がすべて悪いのだ、と。
その時は追いつめられている自分に気が付き、根気よく話を聞いてくれた職場の仲間が、友人が、両親が支えてくれたので乗り切ることができました。
今思うとそんな人が言った言葉を鵜呑みにするのはどうか、と思えるのですが、当時はすべて自分が悪いと思っていたので(←友人は素直に聞きすぎだって呆れていました)、本当に悩み、辛く苦しい日々でした。
我慢は決して良いことではない、耐えることだけがすべてではない。
その言葉だけがすべてではないことを、ようやく分かった気がします。
でも分かっていてもなかなか塞がれないのが、心の傷、というもので。
だから、本当につらくて、悲しくて、でもそれに背を向けずに立ち向かおうとするひなたの姿に、私は本当に心を揺さぶられます。
それを支えるあかりやおじいちゃんの姿もまた励まされます。
本にどちらかというと夢や癒し、わくわく感を求める私には、このお話は読んでいて辛い。
それはとても生々しい記憶とともに、過去や傷を思い出させる。
でも読まない方が良かったなどと決して思わない。
こんな素晴らしい本に出会えてよかった。
ぜひ当時の自分にこの本を読ませたい。きっと色んな勇気をもらえると思うから。
悩める人すべてに読んでもらいたい大切な本です。
羽海野チカさん、ありがとう