2月3日映画「雪の花」を観た天然痘と戦った福井藩の町医者 笠原白翁(良策)の物語である
〇福井の誇れる歴史上の人物だった。
治療手段のなかった疱瘡(天然痘)病気になったものは山などに隔離された。何としても疱瘡から人々を救いたい。福井藩の町医者、笠原良策は、私財を投げうっって医術を学び、オランダ医学に「種痘」なる天然痘予防法を知る。
幕府でも認可していなかった「種痘の種」(ワクチン)を幾多の批判や妨害を乗り越え入手し、接種を普及させた。
名を求めず、利を求めず、ただ人民を救いたい一心を貫いたその生き様に感動を覚えた。改めて福井の誇れる人物であることを思い知った。
「ともに在りて」の副題は、庶民とともに在り続けた笠原良策(後に白翁)の気持ちとともに献身的に夫を支えた妻の千恵との二人三脚を表現したものではなかろうか。
〇松平春嶽初め幕末の福井藩士の先進性を思った
日本における疱瘡(天然痘)撲滅に果たした「笠原良策」の役割は大きい。その影には幕末の福井藩主、松平春嶽の幕府に対する進言があった。思えば明治新政府の基本方針「五ヶ条のご誓文」の原案を作り、東京府知事となった由利公正初め「啓発録」の橋本左内、梅田雲浜、橘曙覧など幕末の福井藩には先進性を持った人物の存在を改めて知る思いがした。
〇桃李の名前が素晴らしい
雪の花の主人公役は「松阪桃李」である。桃李の名前は、中国の歴史家司馬遷の『史記』に書かれた言葉「桃李不言下自成蹊」からとったらしい。 桃やすももは何も言わないが、花や実を慕って人が集まるので、その下には自然と道ができる。同じように人徳の有る人には人が自然と集まると言うたとえで、笠原良策を演ずるにふさわしい名前であると思ったものです。
〇新型コロナウイルスのワクチンを思い浮かべた
天然痘の患者のかさぶたを取り、これを健康人の身体に入れ込むという医療行為はなかなか受け入れられものではない。映画でも猛烈な反対運動があったが笠原良策の死を賭した嘆願が実を結び種痘所での予防接種が行われるようになった。
ファイザー社、モデルナ社などのワクチンに加え、2024年秋からはMeiji Seikaファルマ社の「レプリコン」という新しいタイプのワクチンも供給されている。
従来の「生ワクチン」「不活化ワクチン」とは異なるmRNAワクチンは遺伝子の組み換え技術を使った新しいワクチンであるため、様々な反対意見や論文が出されたのは記憶に新しい。
現実にワクチン接種が原因と思われる死亡も出ているし、副反応に苦しむ人も出ている。その反面ワクチンで助かった命も少なくない。従来のワクチンのように数年以上かかって作られ接種されるまでに出たであろう被害者を考えると、絶対反対を唱えたり否定することはとてもできない。
江戸時代も今も権威ある医師の中に反対する者も賛成する者もいたであろう。知識の無い庶民は、自分の信ずる医師の意見に従うほかはなかっただろうと思われる。
新しい技術、新しい発明、新しい論説には、必ず反対するものが現れる。コペルニクスの「地動説」もそうであったし地球温暖化にさえ反対論がある。
好き嫌いの気持ちを持って物事を見る事は「先入観」を持つこととなり、自分に都合のよい情報を集めがちになる。何が正解かはある程度の時の経過によって判明することではないだろうか。雪の花の映画は「温故知新」を考えさせてくれる。
新型コロナワクチンに群がる賛否両論の専門家の中には、名声を求め金儲けに走る輩もいたのではないだろうかと思っている。与野党の政治家もそうである。改めて「名を求めず、利を求めない」町医者、笠原良策の精神に敬意を表するものである。