Desire Develops An Edge/Kip Hanrahan - 1983.01.15 Sat
キップ・ハンラハンさんのソロセカンドアルバム。
以前、ジャック・ブルースさんにはまってむしゃらに参加アルバムを収集していた頃に
購入した1枚だったのですが、この頃のニューヨークアンダーグラウンド周辺を
うろうろしていたミュージシャン勢揃いでちょっと驚いたのはその中に若き日のジョンスコの名前があり
「Nancy」でジャック・ブルースさんと共演していました。
このアルバムはハンラハンさんとスティーヴ・スワローさんのアレンジ曲が多いので
多分ジョンスコはスワローさんに呼ばれたのでしょう。
(ジャック・ブルースに憧れていたスワローさんのベースでジャック・ブルースが歌うという
洒落た演出もあります)
動的な「マテリアル」や「ゴールデン・パロミノス」と比べるとラテンパーカッション群で
ゆっくりしなやかに柔らかく刻む静的なリズムで(打楽器でスイングするように)ジワジワ攻めてきます。
演奏家であると共に音楽プロデューサーな一面としてライヴでは演奏開始と共に客席に座り
途中でMCでボソボソ喋ったり演奏しているメンバーにあれこれ指示を出したりするそうです(笑)
ハンランさんはこの後1986年にタンゴ界の革命児アストル・ピアソラさんの大傑作
「タンゴ・ゼロ・アワー」をプロデュースし、一躍脚光を浴びたとのことです。
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Coup De Tete/kip hanrahan - 1981.01.15 Thu
80年代のN.Y.アンダーグラウンドシーンを牽引したキップ・ハンラハンさんのデビューアルバム。
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今回の主人公キップ・ハンラハンさんの経歴をネットで調べてみると
N.Y.ラテンのメッカ、ブロンクス出身でヒスパニック・コミュニティで育ち、
幼少時からパーカッションに慣れ親しみ、インド~バリ~ガーナなど
世界中を巡って各地のリズムを吸収しそれらをジャズに融合する前衛プロデューサーとして開花。
大学生のとき映像作家/詩人のジョナス・メカスさんに出会い、大きな影響を受け
当初映画監督を目指していたそうですが、80年にレコード会社「アメリカン・クラヴェ」を設立。
ヴェルベット・アンダーグラウンドに切り開かれた80年代NYアンダーグラウンドの音楽シーンを
牽引していたビル・ラズウェルさん率いる「マテリアル」、アントン・フィアーさんの
「ゴールデン・パロミノス」とこのキャップ・ハンラハンさんのプロジェクトは
同じようなスタイルで多彩なメンバーが出入りし人脈的にもクロスオーバーしていたようです。
本作はラズウェルさんやアントン・フィア―さんの他、アート・リンゼイ、フレッド・フリス、
デイヴ・リーブマン、マイケル・マントラ―、カーラ・ブレイさんになんとテオ・マセロさんまで
参加しています。
こういうジャンルを超えた有象無象が集うニューヨークのインディーズシーンが産み出す音楽は
とても楽しいですよね。
インディ―スの理想の姿というのは、保守的な村社会を劇的に変化させる「他所から来た馬鹿者」が
予想外な力を発揮する場でもあるのですが、日本のインディーズシーンはメジャーデビューする
調整中の2軍みたいな風潮に固まってしまっていて、セールス縛りのメジャーとさほど変わらない音楽ばかりで
残念です。
基本はボンゴ、コンガ、パーカッションをメインにした複数打楽器のラテンリズムを基調に
途中途中に好き勝手に他楽器が乱入してくるような感じです。
この作品の気怠い男性ボイスはジャック・ブルースさんだと思っていたら、本作は不参加で
ハンランさん本人でした(苦笑)