Star Walk/Larry Graham and Graham Central Station - 1979.01.15 Mon
グラハムさん談
「途中から各自がソロ活動を始めたんだ。まずウィリーが抜け、チョコレートが抜け・・・
それでだんだんグラハム・セントラル・ステーションっぽくなくなってきてね。
それならいっそソロになろうかと」
前作「いかしたファンキーラジオ」は大ヒットしたものの、母体となったチョコレート
メンバーは全員脱退してしまい、名義こそ「Larry Graham and Graham Central Station」
ですが、ほぼグラハムのソロ作品と考えてよいかと。
ライナーにディスコブームの分析について面白い記述があるのですが、
70年代前半の第一期ディスコブームを牽引したのはフィラデルフィアサウンドに
ハッスラやらバンプといった誰でも簡単に踊れる親しみやすいつまり
「馬鹿でも踊れる2ビート」だったのがスライやGCSを生み出したベイ・エリア・ファンクは
16ビートを基本に複雑なシェイクや意表を突いたブレイクがあり、とても素人が踊れる
リズムではなかったとあり、その辺がアルバム単位では評価が高いものの、シングルヒットが
生まれなかった原因かと。
そのためこの作品ではディスコヒットを目論んだ細工がしてあり、タイトル曲の
「Star Walk」は当時大人気だったスターウォーズ要素を盛り込んだ2ビートで
更にビージーズやE,W&Fireが多用したファルセットコーラスをフューチャーし
ディスコでのプレイを多くするために曲時間を伸ばすなど、没個性でヒット作りに
力を入れているので、表面的にファンクネスは残っていますが、どこか散漫な感じです。
遅ればせながらディスコブームに便乗しようと思ったグラハムさんは
ディスコ終焉の1979年にバンドを解散。
(この件については先にまとめた下の記事をご参照ください)
「チコちゃんに叱られる、何故ファンクが没落したのか?エポックメイキングな1979年を考察する」
80年以降のグラハムさんはベーシストとしてよりもボーカリストメインのソロ活動を展開します。
My Radio Sure Sounds Good to Me(いかしたファンキーラジオ)Larry Graham and Graham Central Station - 1978.05.15 Mon
[sales data] 1978/5 [producer] Larry Graham Benny Golson [member] Larry Graham(vo/b/g/clavinet) Gaylord "Flash" Birch(ds) Gemi Taylor(g) Nate Ginsberg(key) Robert "Butch" Sam(key/org/p) Tina Graham(bvo) |
この作品はちょっと思い出がありまして、ジャケ買いでレニー・ホワイトさんの
「The Adventures of Astral Pirates」を購入したつもりで間違って購入した
GCSで一番最初に手にした作品で私にとってGCSは実は勘違いの出会いだったのです(笑)
若い方々は「ラジオ」を聴く機会が少ないので分からないと思いますが、
ネット以前、更にTVで音楽プロモーションビデオなど存在しない70年代の
最先端音楽情報発信の主役は「ラジオ」だったんですよ。
今でもよく覚えていますが、住居が横田基地に近いためFENから洋楽が24時間垂れ流しで
小学2年生頃、WingsのJetのイントロのムーグ音に初めて接した時の衝動は忘れられません。
私が音楽(特に洋楽)に夢中になり始めた頃はラジオからラジカセに移行しており
私に洋楽のイロハを叩き込んだ愛器はこれ!(SONY CF 1980)
MTVの登場ですっかり音楽情報発信の役割はテレビやネットに奪われてしまい
私もいつの間にかラジオとは縁遠い生活を送るようになってしまいましたが
この作品は80年代以前ラジオが担っていた音楽情報発信の重大拠点だったことを
後世に伝えている作品ともいえます。
ディスコブーム最盛期に抗うように前作で突然ファンクのギアを上げたグラハムさんが
導き出したのが本作の「踊れるファンク」だったのかなと。
本作を前にベビーフェイス、デヴィッド・ヴェガ、ハーシャル・ケネディ主力3人が脱退し
奥さんのティナ・グラハムさんが加入。
GCS結成の元となったホットチェコレートメンバーが全員脱退してしまったため
再びグラハムさんがマルチプレイでベーシックトラックを作り上げ、最大限グラハムさんの
ウネリ捲るベースを前面に出さねばならなかった苦肉策が吉となり
グルーヴしながら、かつポップな要素も保持。
(細かいことですが、本作はGCS名義ではなくラリー・グラハム&GCS名義)
私は踊りが苦手なのであまりよく分かりませんがこの匙加減が難しいのでしょうが、
ファンクとディスコの調合量のバランスが整った好作品と言えると思います。
「POW」はグラハムさんの目論見通り全米ラジオでかけられまくり
ベースのスラップ奏法の金字塔と名高い名曲ですが、私は最初レニー・ホワイトさんの
作品だと思って聴いたので、スタンリー・クラークさん恐るべしと勘違いしたのも
今となってはいい思い出です(笑)
Now Do U Wanta Dance(ダンス・ダンス・ダンス)/Graham Central Station - 1977.04.01 Fri
再びバンドメンバーがジャケットに登場していますが、リズム・ボックス担当の
紅一点で甘酸っぱいボーカルで人気だったチョコレートさんが脱退。
邦題「踊れ!踊れ!踊れ!」ということで前作はポップでパワーダウンしたかに見えたGCSですが、
初心忘れるべからず的にデビューアルバムと同じようにアカペラナンバーで始まる一方
ヴォコーダーを使用するなど最新技術も取り入れて前作から参加していたことも気に留めなかった
ゲイロード・バーチさんとグラハムさんのリズムがかなり太っとく「Crazy Chicken」まで
かなりファンク度高めで、GCS作品では個人的に一番好きです。
後半からはR&Bやディスコナンバーも収録されていますが、この作品でファンクのギアを
上げたのは、グラハムさんがディスコブームに飲み込まれ没個性にならないように
予防線を張り距離感を取りたかったからかもしれませんね。
Mirror/Graham Central Station - 1976.05.15 Sat
今までバンドメンバーをジャケット写真に登場させていましたが、本作は
ユーライア・ヒープな対自核風ジャケットです(笑)
本作で気づいたことはグラハムさんはマルチプレイを止め、ベースプレイ同様ボーカルに
力を入れるようになり、ファンクな曲もありますが、ディスコブームを意識して
ホーンやストリングスアレンジを厚めにした踊れるサウンド転換のためかなりポップになりました。
古くからのファンクファンが離れ、新しいディスコファンが寄り付いた感じで
GCSのこの機転が75年に失速していったスライさんやJBさんと大きく異なる点でしょうか。
Ain't No 'Bout-A-Doubt It(ダイナマイト・ミュージック)/Graham Central Station - 1975.07.15 Tue
べトナム戦争終結後にリリースされた作品ということもあるのか喜びを爆発させ
全体的にかなり陽気でワクワク度が高くまさにダイナマイト・ミュージックという感じです。
GCSの良いところはノリの良いファンク一辺倒ではなく、甘いソフトバラードを挟み込んで
メリハリをつけているところでしょうか(私はファンク一辺倒でも全く問題ありませんが(笑)
ハイライト曲は文句なくOPの「The Jam」。
メンバーがそれぞれが順番にボーカルと担当楽器のソロを回して最後のラリーさんの
俺様っぷりにつなげるリレー形式のこのジャム曲にバンドの民主的な様子を伺うことができます。
Release Yourself(魂の解放)/Graham Central Station - 1974.09.15 Sun
自分の殻に閉じこもってしまったスライ・ストーンさんが失速していくのを尻目に、
代わってぐいぐいグルーヴ感を増幅したグラハム・セントラル・ステーションの2枚目。
1曲目こそFunk Boxを使用していますが、全体的にグラハムさんのベースがブイブイ唸ります。
(この手のベース特集ではグラハムさんの楽曲が多数取り上げられているはず)
デジタルミュージック登場以前の人間の奏でる熱の籠ったリズムが「音楽は楽しんだもの勝ち」と
訴えかけるご機嫌なファンク作品です。
Graham Central Station - 1974.01.15 Tue
スライさんと仲違いしてバンドを脱退したラリー・グラハムさんのパーマネントバンド、
グラハム・セントラル・ステーション(以下GCS)発進です!
グラハムさんはスライ脱退後アーチスト稼業廃業してプロデューサーに転向しようと思っており
ホット・チョコレートというバンドのアルバムをプロデュースするうちに、このメンバーを
自分が引っ張って行けば凄いサウンドが誕生すると思い直して結成したのがGCSです。
アカペラで始まり意表をつかれましたが、この作品を聴くとファンクにおいてベースが
いかに重要な楽器であるかを再認識せねばなりません。
ラリー・グラハムさんはベースのスラップ奏法の開祖でもあり、グラハムさんのベースフレーズを
コピーするのはベースを志す人たちには常識という、まさに教科書的な存在であると同時に
マルチプレイヤーでもあり、本作はバンド名義ではありますがスライさんと同じように
ほぼグラハムさんのワンマンな作品です。
スライやP-ファンクのようなドラッグ臭が漂わない健全さから非常に聴きやすく
スライさんがファンク革命を起こしたFunk Box(打ち込み)を早速取り入れながらも、
あくまでサブ楽器にとどめ、あくまで本業のベース楽器を基本とした粘りを練り込んだ
グラハムさんの別視点での大きなファンク愛を感じます。