Go Live From Paris/ツトム・ヤマシタ - 1978.01.15 Sun
パリのパレ・デ・スポールで行われた「Go」の完全再現のライヴ盤。
(「Go」プロジェクトは当初三部作構想だったのですが、あまりに制作費用がかさみ
プロジェクトは頓挫し3作目はこのライヴ盤に切り替わった経緯があるようです)
元々劇場でパフォーマンスを伴う作品として構想されていたようですが、
パフォーマンス抜きのライトショーとして2回だけライヴが行われています。
1回目は1976年5月29日ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールで核となる5人の他に
フィル・マンザネラさんとロスコ―・ジーさんが参加。
そして2回目は1976年6月12日パリのパレ・デ・スポールで行われた本盤は上記二人に代わり
パット・スロールさん、ジェローム・リムソンさん、ブラザー・ジェイムズさん、
カレン・フリードマンさんが参加。
「Go」でも触れましたが、ライヴの演奏順はB面~A面というストーリー順になっており
これはヤマシタさんの繰り返し聴くことによって輪廻転生を表現するという意図に
よるものだそうです。
スタジオ盤と異なりオーケストラは参加していないものの、メンバーがメンバーだけに
ライヴならではの高パフォーマンスが披露されスタジオ盤よりもワイルドな仕上がりです。
特にライヴの場数を踏んだウインウッドさんのボーカルはスタジオ盤よりもかなり良いです。
尚、メンバー紹介で一番強い反応があったのはクラウス・シュルツさんです。
ヤマシタさん談(ライナーから転記)
「Goは大衆とはすごく接点のある作品だと思います。ただ、それはまだ大衆との
意識の中で結ばれている接点に過ぎないのです。そういうものではなく
例えば昔の名曲、ベートーベンの第九とかを聴いた時に、東洋人であろうと
西洋人であろうとも違和感がないのですよ。それはもう意識とかいうものよりも先に
超越したバイブレーションから出ているもので、やはりそこまで音楽を持っていくことが
大切だと思うんです。ロックの根底には純粋な共同体的意識があったんですけど
それがちょっと今はありませんね。と言うよりもどちらかというとすごく個人的な
勝手主義と言うんですか、そんな感じがあると思います。だから人間がもう一度
そこからもっと違う深い所に目覚めていかなければならないと思うわけです。
そのためには一度今まであった形式、音楽上においてのロック。ポップス、タンゴだとか
現代音楽だとかそういうものを全部取り払ってその時初めてみつかるのだと思います。」
「Go」プロジェクト以降、ヤマシタさんは日本に戻ると現代音楽からもロック界とも
距離を置き、宗教観の強い音楽活動に移行します。
ヤマシタ談
「すべてのジャンルにおいて自分は最高であると思い込み、その結果他人の作品が
すべてつまらなく見えた。つまり感動を失ってしまったのだ。」
偉大な才能の持ち主は自ら殻に閉じこもってしまったので、その後知る人ぞ知る存在に
なってしまったのが残念です。
Go Too/ツトム・ヤマシタ - 1976.08.15 Sun
「Go」プロジェクト第二弾はウインウッドさんが抜けた穴をジェス・ローデンさんと
リンダ・ルイスさんのツインボーカルで埋めヘッドハンターズのポール・ジャクソンさんなどの
新顔が参加しています。
(アルバムジャケットは2種類あります)
前作は宇宙に存在していた人間が何か見えないものに引かれ地球に向かう旅の過程を
描いた作品でしたが、本作は宇宙から来た人々の間に生まれた愛をテーマにした
コンセプトアルバムです。
「Ecliptic」(月蝕)で物語は「つづく」の形で終了し、三部作最終作「Go On」(仮)に
続く予定でしたが、残念ながら制作費用の問題で、プロジェクトはとん挫します。
イメージ的に近いところでは「ラジオ・ノーム・インヴィジブル」シリーズで
スピリチュアルロックを展開していたGONGの連中と接点があれば(特にスティーヴィ・ヒレッジ)
本来の「Go」三部作は完結したのではないかと勝手に想像しています。
Go/ツトム・ヤマシタ - 1976.02.15 Sun
現代音楽家のツトム・ヤマシタさんとトラフィックのスティーヴ・ウィンウッドさん、
サンタナバンドのマイケル・シュリ―ヴさんとちょっとその接点の見出し難い3人が
中心となって制作されたプログレファンの間でもしばし話題となる1枚。
(アルバムクレジットでSutomu Ymashitaとなっているのは外人が発音しやすいように
したためとのこと)
アナログ時代にレンタルレコードで借りて聴いたものの、インストだと思っていたら
歌物だったので違和感を抱いたまま、そのまま忘れていたのですが、
最近アル・ディ・メオラ周辺を調べていたら、この作品に参加していた事を知り
さっそく取り寄せてみました。
ヤマシタ談
「ジャイアント・ポップ・クラシックを作るんだ。そこには壁は何もないはずだ。
GOはほとんどルールのないランダムで抽象的で偶然性のゲームなんだ。」
ヤマシタさん、ウィンウッドさん、シュリ―ヴさんの他、アル・ディ・メオラさんに
クラウス・シュルツさんなどのメンバーでアルバム制作に入る前にパーティーを催し
そこでNASAの宇宙映像を見せ、アルバムコンセプトを練り上げたとのことです。
アルバムのストーリーは同名のゲームをベースにしているそうで、
サウンド的にはロックとクラシックの融合というよりもポップス寄りで
ピンク・フロイドの「狂気」の影響を強く感じますが、さらにソウル、ボサノヴァなどが
混在しており、ファーイースト・ファミリー・バンドの世界観を引き継いだような
スペースファンタジーです。
このアルバムはアナログ盤でいうB面の「スペース・レクイエム」がストーリーの始まりで、
A面に戻って「スペーステーマ」で終わるという流れになっており、これは宗教観の強い
ヤマシタさんが「輪廻」の概念を表現しており、そのことはアルバム完全再現のライヴの
セットリストで明らかになります。