It Might as Well Be Spring(春の如く)/Ike Quebec - 1962.12.09 Sun
[sales data] 1963 (Rec;1962/12/9) [producer] Alfred Lion [member] Ike Quebec(sax) Freddie Roach(org) Milt Hinton(b) Al Harewood(ds) | ![]() It Might as Well Be Spring/ Ike Quebec |
アイク・ケベックさんの人気&代表作。
10年前の自分の耳なら絶対に聴きこなせなかったような品の良いジャズ作品を聴いて
胸内震える日が来ようとは夢にも思いませんでしたね(笑)
「Heavy Soul」の録音からわずか2週間後、同メンバーによる録音ですが、
本作の方がブルージ―なバラード曲が中心で静かに重低音響くテナーサックスと
ギミック一切なしの教科書のようなフレディ・ローチの控えめなオルガン音の相性が非常によく、
聴き手に対する思いやりがあるような優しい演奏が繰り出されます。
ケベックさんはあまり感情を表に出すような激しい演奏はしませんが、黒人霊歌の「Ol' Man River」は
珍しく熱(ブロー)が入っています。
この曲はミュージカル「Show Boat」のために書かれた曲で「老人の川」と歌われているのは
ミシシッピー川のことで、当時小型の貨物船は動力がなかったため、川を上る時は
黒人奴隷が川の両側から船をロープで引っ張らされ
「黒人はつらい労働を強いられ、死ぬまで休むことはできない」と重労働を嘆いた歌で
明るい曲調なので勘違いしがちですが、とても重い歌詞できっとその情景が浮かんで
胸が張り裂けられるような思いをケベックさんは吐き出したのだと思います。
(船の汽笛を真似るお遊びもあります)
Bossa Nova Soul Samba/Ike Quebec - 1962.10.05 Fri
[sales data] 1962 (Rec:1962/10/5) [producer] Alfred Lion [member] Ike Quebec(sax/shekere) Kenny Burrell(g) Wendell Marshall(b) Willie Bobo(ds) Garvin Masseaux(shekere) | ![]() Bossa Nova Soul Samba/Ike Quebec |
ケベック談
「この演奏を聴くと踊りださずにいられない。最高のフィーリングなんだ」
アイク・ケベックさんのサックスは強烈なブロウをかまして酸素欠乏で倒れるような
激しい吹奏ではなく、抑制を効かせた渋い音色が特長的で当時の米ではボサノバが流行しており、
多くのテナーサックス奏者がジャズとのマッチグに挑むのですが、ケベックさんはそれに
ソウルを足した「ボサノバ+ソウル+ジャズ」のイメージにぴったりの演奏です。
(ドボルザークの「家路」やリストの「愛の夢」などジャズ演奏では珍しい
クラシック曲も選曲されています)
そしてそれにお供するケニー・バレルのギターが又渋い!
(「LOIE」はケニー・バレルの提供曲)
作品の評判もよく復調の兆しを見せていたケベックさんですが、この録音のわずか2か月後に
肺がんでお亡くなりになります(享年44歳)
Easy Living Ike Quebec - 1962.01.20 Sat
[sales data] 1987 (1962/1/20) [producer] Alfred Lion [member] Ike Quebec(sax) Bennie Green(trombone) Stanley Turrentine(sax) Sonny Clark(p) Milt Hinton(b) Art Blakey(ds) | ![]() Easy Living Ike Quebec |
ケベックさんとソニー・クラークさんの共演盤。
絶妙のコンビネーションとまではいきませんが、ご両人共にまだまだ生存されていれば
コンビによる数々の名演を産み出したのではないかと思うとちょっと残念。
4曲目から6曲目までがカルテット演奏で、残りの5曲はタレンタインと・ベニー・グリーンが
加わったセクステット演奏。
この作品は1987年に陽の目を見たお蔵入り作品なのですが、ライオンさんの判断力が凄いなと思うのは、
このまま発売されてもそれなりに売れたと思うのですが、日本ほど人気がなかったクラークさんとの
共演音源をバッサリ切ってしまうこの辺のブルーノートの発売基準の厳格化はブルーノートたる
所以なのでしょう。
復帰前は分かりませんがケベックさんの珍しいセクステット演奏(明るい曲調の物が多い)が
聴けるのもポイントですが、やはり聴き物はカルテット演奏でしょうか。
この眠りこけてしまうようなスローテンポは誰がキープしているのかと思いましたが
リズム隊(本作はアート・ブレイキー&ミルトン・ヒントン)が変わっても同じと考えると
これはケベックさんならではのリズムということなのでしょう。
Blue & Sentimental/Ike Quebec - 1961.12.23 Sat
[sales data] 1963/6 (Rec:1961/12/16&23) [producer] Alfred Lion [member] Ike Quebec(sax/p) Grant Green(g) Paul Chambers(b) Sam Jones(b) Philly Joe Jones(ds) Louis Hayes(ds) Sonny Clark(p) | ![]() Blue & Sentimental/Ike Quebec |
7曲目までが1961年12月16日ポール・チャンバーズ、フィリ―・ジョー・ジョーンンズ、
そしてこの作品が初共演となるグラント・グリーンという面子で録音したものに
12月23日サム・ジョーンズ、ルイス・ヘイズ、ソニー・クラーク、グラント・グリーンという面子で
1曲を追加録音しています。
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(正確に言うとケベック&グラントの初共演音源は5日前(12/11)に録音されたものが
1985年に「Born to Be Blue」としてリリースされました)
下手すると演奏途中で皆眠り込めてしまうのではないかというほどのスローテンポで繰り出す
重厚なバラードに最後の命を沁み込ませるサックスの音色はケベックさんの真骨頂。
(3曲ほどピアノも弾いています)
思った以上にグラントさんは各曲十分なソロをとらせてもらっており、チャーリー・クリスチャンへ
捧げた楽曲を提供するなど大先輩に気後れすることなく伸び伸び演奏しています。
演奏というよりも知恵者が揃って楽器を通してウィットに富んだ大人の会話を楽しんでいるような
佇まいです。
Heavy Soul/Ike Quebec - 1961.11.26 Sun
[sales data] 1962/3 (Rec:1961/11/26) [producer] Alfred Lion [member] Ike Quebec(sax) Freddie Roach(org) Milt Hinton(b) Al Harewood(ds) | ![]() Heavy Soul/Ike Quebec |
グラント・グリーンさんとの共演で俄然興味が沸いたアイク・ケベックさんは
1940年代後半から活躍していたベテランミュージシャンですが、薬物依存のせいで
50年代は散発的にしか録音が残っておらず、ブルーノートに引き入れたライオンさんによると
10年近いブランクがあったので再び輝きを取り戻せるのか?内心不安だったようです。
そんな不安をよそにジミー・スミス、グラント・グリーン、ソニー・クラークなどの
アルバムセッションで存在感ある演奏を聴かせ、録音したソロデビュー作。
(このアルバム以前のブルーノートに残されていた音源は「From Hackensack to Englewood Cliffs」に
編集され2000年にリリースされています)

ケベックさんのオリジナルは3曲で、「Acquitted」と「Que's Dilemma」2曲の出だしが
milestonesっぽいのは内緒です(笑)
実に堅実なオルガン演奏を披露しているフォレディ・ローチさんは
本作がプロデビュー作となるようです。
アップテンポな曲もありますが(アルバムの中では妙に明るい「Blues For Ike」は
ローチさんのプレゼント曲です)全体的にローチさんのブルージ―なオルガン音と
ケベックさんの「黒い」雰囲気が醸し出すムーディーな音楽を聴き終わると幸せいっぱいの
脱力感に襲われること請け合いです。
(ケベックさんとライオンさんのちょっといい話)
ケベックさんは音楽活動の空白期間ブルーノ―トのスカウトマンとしても貢献しており
セロニアス・モンク、バド・パウエルを発掘したり、ランオンさんの専任運転手でもあったそうで
1961年に末期癌であることがライオンさんに伝わると、恩返しの意味も含め治療費捻出のため
矢継ぎ早に複数のアルバム制作を行ったと言われています。
そのためアイク・ケベックさんの代表作は末期癌宣告された1961~1962年に集中しているので
はまった場合、寄り道せず一気に聴き倒せます。