Gaucho/Steely Dan - 1980.11.21 Fri
[sales data] 1980/11/21 [producer] Gary Katz [member] Walter Becker(b/g) Donald Fagen (org/synthe/key/p/etc) ***** Anthony Jackson(b) Chuck Rainey(b) Don Grolnick(key/etc) Rob Mounsey(synthe/p) Pat Rebillot(key/p) Joe Sample(electric piano) Hiram Bullock(g) Larry Carlton(g) Rick Derringer(g) Steve Khan(g) Mark Knopfler(g) Hugh McCracken(g) Wayne Andre(trombone) Michael Brecker(sax) Randy Brecker(tp/fl) Ronnie Cuber(sax) Walter Kane(bass clarinet) George Marge(bass clarinet) David Sanborn(sax) David Tofani(sax) Steve Gadd(ds/per) Rick Marotta(ds) Robbie Buchanan(p/synthe) Jeff Porcaro(ds/per) Bernard "Pretty" Purdie(ds) Crusher Bennett(per) Victor Feldman(per/key) Ralph MacDonald(per) Nicky Marrero(per/timbales) Patti Austin(vo) Frank Floyd(bvo) Diva Gray(vo) Gordon Grody(vo) Lani Groves(vo) Michael McDonald(vo) Leslie Miller(vo) Jennifer James(vo) Zachary Sanders(vo) Valerie Simpson(vo) Toni Wine(vo) | Gaucho |
[参加メンバー]
アンソニー・ジャクソン,チャック・レイニー,ドン・グロルニック、パット・レビヨット,
ジョー・サンプル,ハイラム・ブロック,ラリー・カールトン,リック・デリンジャー,
スティーヴ・カーン,マーク・ノップラー,ヒュー・マクラッケン,ブレッカー兄弟,
スティーヴ・ガッド、リック・マロッタ,ジェフ・ポーカロ,バーナード・パーディ―、
ヴィクター・フェルドマン,ラルフ・マクドナルド,ニッキー・マレロ,
パティ・オースティン,マイケル・マクドナルドなどなど
前作「Aja(彩)」の大ヒットの儲け分から約1億円近い制作費が投入されたアルバム。
新作への大きな期待で相当なプレッシャーの中、念入りなレコーディングが敢行されるも
前作を踏襲した作りのため強烈なインパクトはなく、参加メンバーを書いただけで
作品紹介が済んでしまう感じですが、本作に関して面白いエピソードがいくつかあって
1)「The Second Arrangement」のマスターを紛失
「The Second Arrangement」という曲が最終ミックスダウンまで完了していたらしいのですが、
当時のアシスタントが誤ってマスター・テープを消去してしまい、
再度録り直しを試みたものの満足するものに仕上がらなかったために
以前からあった曲「サード・ワールド・マン」を代替えで収録しています。
ところがエンジニアのロジャー・ニコルズさん(2011年4月死去)が、消去される数日前、カセットテープに
この曲のラフ・ミックスを録音しており、2020年パンデミックによるロックダウン中、ニコルズの娘さん達が
父親の遺品を整理している最中、この失われた曲「The Second Arrangement」に関連したカセットテープを発見。
(後にDATテープも発見)
2023年、このテープの音源が一般公開されました。
このテープはオークションにかけられる予定だそうです。
2)「ガウチョ」はキース・ジャレット作品の盗作
タイトル曲「ガウチョ」はキース・ジャレットが「Long As You Know You're Living Yours」の
盗作だという訴えを起こし、フェイゲン&ベッカーは盗作を認め、その結果、同曲の作者として
キース・ジャレットの名前がクレジットされています
[Steely Dan Ver]
[Keith Jarrett Ver]
3)ウォルター・ベッカーが交通事故
レコーディングの終盤にウォルター・ベッカーが交通事故で入院してしまい、
スティーヴ・カーンがギター・パートをオーバー・ダビングすることになり
制作期間がかなり延びたとのことです(制作期間約2年半)
ウォルター・ベッカーが麻薬におぼれ音楽活動どころではなくなったため、活動は休止期間に入り
ベッカーは麻薬中毒から脱するためにハワイ・マウイ島に移住。
フェイゲンはソロ活動を開始し、「The Night Fly」は大ヒット。
1993年フェイゲンの「カマキリアド」を復帰したベッカーがプロデュースしたことから、再びタッグを組み
「スティーリー・ダン・フィーチャリング・ウォルター・ベッカー&ドナルド・フェイゲン」名義でライブツアーを開始。
1994年に日本に初来日
2000年に「Two Against Nature」
2003年に「Everything Must Go」をリリース
2017年にベッカーが亡くなると
「スティーリー・ダンとして作り上げてきた音楽を、自分ができうる限り続けていきたい」と語り
フェイゲン単独体制で「ドゥービー・ブラザーズ」とのジョイントライブを成功させるなど活動中。
Aja(彩)/Steely Dan - 1977.09.15 Thu
クロスオーバーが生み出した世紀の傑作遂に出ました!
アルバムのジャケットに写っている女性は日本人モデルの山口小夜子さん
サザン&ウエストコーストという人肌を感じさせるローカルエリアロックが
80年代に近づくにつれ失速するのを尻目に最新のスタジオ録音技術を
最も巧く取り入れて大きく変貌を遂げたのがスティーリー・ダン。
[参加メンバー]
チャック・レイニー、ティモシ―・B・シュミット、ポール・グリフィン、ドン・グロルニック、
マイケル・オマーティアン、ジョー・サンプル、ヴィクター・フェルドマン、
ラリー・カールトン、ジェイ・グレイドン、スティーヴ・カーン、ディーン・パークス、
リー・リトナー、ピート・クリストリーブ、チャック・フィンドレー、ジム・ホーン、
ディック・ スライド ・ハイド、プラス・ジョンソン、ルー・マクレアリー、
トム・スコット、ウェイン・ショーター、バーナード・パーディ―、スティーヴ・ガッド、
エド・グリーン、ポール・ハンフリー、ジム・ケルトナー、リック・マロッタなどなど
バンド作品で一番売れたアルバムで、参加メンバーを書いただけで
作品紹介が終わってしまう感じで(笑)作品内容について記すことは殆どないのですが、
スティーリー・ダンは当時のギターインストブームを受けて複数のギタリストを
起用するのですが、脱退したジェフ・バクスターは一度も再招集しませんでした。
本作で2度目の参加となったラリー・カールトンさん最大のヒット曲「Room335」は
本作収録曲「Peg」のフレーズを気にいりそのまま流用した公認パクリ曲です(笑)
Pegのギターはカールトンさんが弾いてると思っている方が多いようですが
弾いているのはジェイ・グレイドンさんです。
カールトンさんの弾いたテイクは没になったため自分のアルバムに流用したとのことです。
(Peg)
(Room 335)
又、翌年、日本では未公開ですが「FM」という映画のタイトル曲を提供し
このタイトル曲が唯一聴けるアルバムということとフォリナー、イーグルス、ボズ・スキャッグス、
ボストン、リンダ・ロンシュタット、ドゥービー・ブラザーズ、クイーンといった
人気アーチストの楽曲がてんこ盛りだったため「FM」のサントラ盤は大人気でした。
(これが現在の洋楽ヒット曲コンピレーションアルバムのはしりではないでしょうか?)
The Royal Scam(幻想の摩天楼)/Steely Dan - 1976.05.15 Sat
[sales data] 1976/5 [producer] Gary Katz [member] Donald Fagen(key/vo) Walter Becker(b/g) ***** Chuck Rainey(b) Paul Griffin(key) Don Grolnick(key) Denny Dias(g) Larry Carlton(g) Dean Parks(g) Elliott Randall(g) Bob Findley(horn) Chuck Findley(tp) Dick "Slyde" Hyde(horn/trombone) Jim Horn(sax) Plas Johnson(sax) John Klemmer(sax) Rick Marotta(ds) Bernard "Pretty" Purdie(ds) Gary Coleman(per) Victor Feldman(per/key) Timothy B. Schmit(bvo) Venetta Fields(bvo) Clydie King(bvo) Sherlie Matthews(bvo) Michael McDonald(bvo) | The Royal Scam |
「Katy Lied(うそつきケイティ)」リリース後、ジェフ・ポーカロ(>toto)と
マイケル・マクドナルド(>ドゥービー・ブラザース)が脱退。
デニー・ダイアスもゲスト扱いに降格し、ライヴを放棄しスタジオでのアルバム制作に
専念するベッカー&フェイゲンは「バンドの正式メンバー」という概念を排除し
二人のユニットへ本格的に変貌を遂げます。
本作も適材適所にゲストミュージシャンを起用し
チャック・レイニー、ポール・グリフィン、ドン・グロルニック、ラリー・カールトン、
ディーン・パークス、エリオット・ランドール、バーナード・パーディー、
ヴィクター・フェルドマン、ティモシ―・B・シュミットなど
ジャズ&フュージョン系メンバーを多用するクロスオーバー路線効果が
次作「彩」で結実するのですが、、緻密さや完成度の点で完璧と評される「彩」と比較すると
本作はまだまだ人間的なアナログ感が健在です。
Katy Lied(うそつきケイティ)/Steely Dan - 1975.03.15 Sat
[sales data] 1975/3 [producer] Gary Katz [member] Donald Fagen(vo/key) Walter Becker(b/g) Denny Dias(g) Jeff Porcaro(ds) Michael McDonald(bvo) ***** Michael Omartian(p/key) David Paich(p/key) Wilton Felder(b) Chuck Rainey(b) Victor Feldman(per) Hugh McCracken(g) Rick Derringer(g) Dean Parks(g) Elliott Randall(g) Larry Carlton(g) Jimmie Haskell(horn arrangement) Bill Perkins(horn) Phil Woods(sax) Hal Blaine(ds) Myrna Matthews(bvo) Sherlie Matthews(bvo) Carolyn Willis(bvo) | Katy Lied |
ジェフ・バクスター(>ドゥービー・ブラザーズ加入)とジム・ホッダーが脱退し
オリジナルメンバーはドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカー、デニー・ダイアスの
3人だけとなりますが、「さわやか革命」ツアーをサポートしたマイケル・マクドナルドと
ジェフ・ポーカロを正式メンバーとして迎え、体裁的にはバンドとして継続しますが
フェイゲン&ベッカー&カッツの三頭政治体制で前作「プレッツェルロジック」で確立した
自分達の求める音を表現するスタジオミュージシャンを適材適所で使うといった手法を用い
スタジオでアルバム制作に専念するようになり、ライヴは行われなくなります。
マイケル・オマーティアン、デヴィッド・ペイチ、ウィルトン・フェルダー、チャック・レイニー、
ヴィクター・フェルドマン、ヒュー・マクラッケン、リック・デリンジャー、ディーン・パークス、
エリオット・ランドール、ラリー・カールトンなどその豪華なゲストミュージシャンの顔ぶれに圧倒されますが
この頃のスティ―リー・ダンのサウンドはジャズポップ的なフュージョンに近いものになります。
「Aja」~「ガウチョ」の成功の足音はもうそこまで聴こえています。
Pretzel Logic(さわやか革命)/Steely Dan - 1974.02.15 Fri
[sales data] 1974/2 [producer] Gary Katz [member] Donald Fagen(key/sax/vo) Walter Becker(b/g/bvo) Jeff "Skunk" Baxter(g) Denny Dias(g) Jim Hodder(bvo) ***** Jim Gordon(ds) Michael Omartian(key) David Paich(key) Timothy B. Schmit(b) Wilton Felder(b) Chuck Rainey(b) Ben Benay(g) Dean Parks(g/banjo) Plas Johnson(sax) Jerome Richardson(sax) Ernie Watts(sax) Lew McCreary(horn) Ollie Mitchell(tp) Jeff Porcaro(ds) Victor Feldman(per) | Pretzel Logic |
「リキの電話番号」はバンド最大のヒット曲となりますが、デューク・エリントンの楽曲を
カバーするなどポップ・ジャズ・バンドの特異性を打ち出します。
このアルバムが発売された頃は辛うじてバンドとして機能していましたが、
本作もジム・ゴードン、デヴィド・ペイチ、ティモシ―・B・シュミット、チャック・レイニー、ジェフ・ポーカロなど
多数のゲストを起用しスタジオで音を作り込むスタイルが固まります。
リリース後ジェフ・バクスターとジム・ホッダーが脱退したため(バクスターはドゥービーブラザーズへ)
マイケル・マクドナルド、ジェフ・ポーカロがツアーメンバーとして参加しそのまま
正式メンバーとなります。
「バンドとはこうあるべきだ」とか「ウエストコーストサウンドはこんな感じ」と
いった一般常識を打破したフェイゲン&ベッカーは本来作曲家としての活動を望んでいたため、
肉体的にも精神的にもしんどいライブ活動を嫌い、本アルバムツアー後90年代の再結成まで
ライヴ活動を停止し、ジャズ&フュージョン系ミュージシャンを起用したスタジオ専任デュオグループとして
アルバムをリリースしていくことになります。
Countdown to Ecstasy/Steely Dan - 1973.07.15 Sun
[sales data] 1973/7 [producer] Gary Katz [member] Donald Fagen(vo/p/el-p) Walter Becker(b/harmonica) Denny Dias(g) Jeff "Skunk" Baxter (g/pedal steel g) Jim Hodder(ds/per) ***** Ray Brown(b) Ben Benay(g) Rick Derringer(g) Victor Feldman(vibraphone/marimba) Ernie Watts(sax) Johnny Rotella(sax) Lanny Morgan(sax) Bill Perkins(sax) Sherlie Matthews(bvo) Myrna Matthews(bvo) Patricia Hall(bvo) David Palmer(bvo) James Rolleston(bvo) Michael Fennelly(bvo) | Countdown to Ecstasy |
デヴィッド・パーマーが抜け(バックボーカルでは参加)5人体制となった本作(2nd)は
ライブの合間の急場のセッションで制作されたそうで、緻密に計算されたお洒落な
サウンド作りをするというスティーリー・ダンの一般的なバンドイメージとはかけ離れ
むしろサザンロックの匂いすらします(笑)
この作品はバンドの代表作ではないのですが、スティリー・ダンの本当に凄いことを
証明しているのは、本作は前作のように「Do It Again」や「輝く季節」のような
シングルヒット曲がないにもかかわらず、アルバムはゴールド・ディスクを獲得。
シングルヒットを軸にアルバムセールス拡大を狙っていた米音楽業界で
アルバムアーチストとしての認知された数少ない成功例です。
ドナルド・フェイゲンとワォルター・ベッカーの二人はバンドとしての結束力には
全く興味がなく、楽曲のサウンドイメージに合ったスタジオミュージシャンを
複数起用し、バンドの魅力である「積み重ねのグルーヴ感」を無視したことが
逆にこのバンドの独自性となり、本作もレイ・ブラウン、ベン・ベネイ、ヴィクター・フェルドマン、
アーニー・ワッツ、ジョニー・ロテラ、ラニー・モーガンなどジャズ&フュージョン系の
ミュージシャン達を登用し(そんな中ロック系のリック・デリンジャーの参加が異色です)
クロスオーバーなアレンジ&ミックスを施した楽曲作りがAORの分野に多大な影響を与えることになります。
Can't Buy a Thrill/Steely Dan - 1972.11.15 Wed
[sales data] 1972/11 [producer] Gary Katz [member] Donald Fagen(vo/p/org) Walter Becker(vo/b) David Palmer(vo) Jeff "Skunk" Baxter (g/pedal steel g) Denny Dias(g/el-sitar) Jim Hodder(vo/ds/per) ***** Elliott Randall(g) Jerome Richardson(sax) Snooky Young(fl) Victor Feldman(per) Venetta Fields(bvo) Clydie King(bvo) Sherlie Matthews(bvo) | Can't Buy a Thrill |
70年代後期「彩」「ガウチョ」の大ヒットでAORブームのど真ん中にいた「スティーリー・ダン」の
初期作品を遡る時、まずこのデビューアルバムのお下劣なジャケット画に違和感を感じた方は
多かったのではないでしょうか。
(アルバムタイトル「Can't Buy a Thrill」はボブ・ディランの「悲しみは果てしなく」の
歌詞から抜粋したものだそうです)
ジャケットの構図は通りで客を待つ売春婦の写真をコラージュしたもので、スペインでは発禁となり
バンドの演奏スナップに差し替えられたようです。
私は長い間「スティーリー・ダン」とはアーチストの個人名だと勘違いしていたのですが(苦笑)
このお洒落な感じのする名前は、ウィリアム・S・バロウズの小説「裸のランチ」に登場する
男性器の張型「Steely Dan III from Yokohama」に由来しているとのことで
もしかしたら女性ファンで「スティーリー・ダンが好き」と公言するのを憚る方もいらしたかもしれませんね。
(Steely Dan III from Yokohama)
ジャズとロックの双方が歩み寄りフリー系ジャズの発展としてジャズロックがスポット浴びる一方
POPS、ROCK、JAZZといった複数ジャンルのクロスオーバーサウンドを
歌で聴かせるという手法を確立したのが、このスティーリー・ダンだったのかなと。
全曲ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカーとプロデューサー、ゲイリー・カッツの
最強スタジオセッションディレクションチームはゲストミュージシャンを多数起用しながら
時代と共にどんどんお洒落に洗練された楽曲を量産するのですが、
まだバンド形式の面影があるこのデビュー時点ではドゥ―ビー・ブラザースっぽい曲もあるのですが
そのドゥービーがマイケル・マクドナルド&ジェフ・バクスターが加入するとスティーリー・ダン化していくのですから
音の変遷って面白いですよね。
ドナルド・フェイゲン談(1973年のメロディ・メーカー誌)
「スティーリー・ダンの典型的な曲は、鋭いヴァース、湧き上がるようなコーラス、刺激的なブリッジ、
そしてもちろん、制限のないインストゥルメンタル部分が何かしら含まれる。
ポップ・ソングだけど面白い構造とそこから発展する何かがある。
そういう意味ではトラディショナルなんだ、でもコードがほとんどのロックン・ロールより面白いと
私たちは思っているよ」