To The Bone/The Kinks - 1994.10.03 Mon
[sales data] 1994/10/3 [producer] Ray Davies Dave Davies [member] Ray Davies(vo/g/key) Dave Davies(vo/g) Jim Rodford(b) Bob Henrit(ds) | ![]() To The Bone |
今のところ、キンクスとして発表された最後の作品(ライヴ盤)
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1994年にインディーズ(コンク)から1枚物で発売されていましたが1996年に改修され
米のガーディアンからから発売された2枚組は何故か「Waterloo Sunset」と「Autumn Almanac」
の2曲が外れています・・・
この「To The Bone」というタイトルは、アイルランドの格言
「骨を握って離さなければ、犬はついてくる」から来ているそうで、レイにとって
私のようなキンキーファンはいつまでたっても尻尾を振って骨をおねだりする犬なのです(笑)
レイによるとこの作品は偶然の産物で元々はビデオ撮影するつもりで、ライヴ感を出すため
数人のファンや知人をコンクスタジオに招いて収録(1994/4)したアコースティックセットが中心で
(この音源にフィラデルフィア(1993/8)とポーツマス(1994/3)のライヴ音源+新曲2曲を加えて編集)
これが当時流行のアンプラグドとは比較にならない眉唾ものの出来です。
何故かこのライヴ盤からはMTVのような嫌味なアンプラグド臭はしないのですが
一ついえるのは原曲が良いためアンプラグドで引き立つのだと思います。
キンクスといえば「歪み」のギターみたいなイメージがありますが、こうして年数を
重ねた過去の名曲をアコースティック調に聴くと曲の原点(本質)のようなものが
聴き手にヒシヒシと伝わってきます。
選曲もほぼオールタイムのベスト選曲なのでキンクス初心者の方はこのアルバムから入門して
膨大な音楽キャリアから好みの時期を模索して、レイ様の忠犬になるのもいいかも
しれません(笑)
Phobia/The Kinks - 1993.03.29 Mon
[sales data] 1993/3/29 [producer] Ray Davies Dave Davies [member] Ray Davies(vo/g/key) Dave Davies(vo/g) Jim Rodford(b) Bob Henrit(ds) | ![]() Phobia |
コロンビアに移籍し前作から実に4年ぶりにリリースされたレイ・ディヴィス渾身の
コンセプトアルバム。
「こんな社会に住む我々は、みんな何かの恐怖症(フォビア)だ」と荒廃した世相を
多角的に歌った作品。
いい歳のおっさん連中が流行のグランジあたりに近接しながら行きつかなかったように歪む(笑)
このサウンドをキンクスだと気づく人は少ないでしょうが、以前もどこかに書きましたが
キンクスはサウンドに特徴があるのではなく、デビュー時から一貫したレイ・ディヴィスの
強靭な精神性こそが最大の持ち味なのです、
アルバムトータルでの物語性はありませんが、楽曲1曲1曲捨て曲がないのに
テーマが暗いためか、セールスは惨敗で、さすがのレイ・ディヴィスも心が折れてしまったのか
2018年時点でオリジナルのスタジオ作品としては実質上ラスト・アルバムです。
拝啓、レイ・ディヴィス様
世の中にはレイ様のシニカルな楽曲を楽しみにしている輩が少なからずいます。
何とかあと1枚、最後の断末魔的なコンセプトアルバムがリリースされることを願います。
レイ様の歌通り「世の中は憎しみと憎しみという強い絆で結ばれている」のですから・・・
UK Jive/The Kinks - 1989.10.02 Mon
[sales data] 1989/10/2 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g/key) Dave Davies(vo/g) Jim Rodford(b) Bob Henrit(ds) Mick Avory(ds) | ![]() UK Jive |
日本ではこの年、ストーンズ初来日の話題で持ちきりで、ストーンズより1年後輩の
同期ザ・キンクスのこのアルバムがどの程度、話題になったのか覚えていませんが
活動拠点を英国に移しているので、MTVを中心に回っていた洋楽路線からは外れ
この頃のキンクスのPVはないのですが、とんでもなく恰好いい快作です!
ストーンズと一緒に60~70年代のキンクスを愛聴していたファンがこのサウンドだけ聴いたら
キンクスと分からないかもしれませんが、レイ・ディヴィスの社会問題へ向けたシニカルな
歌詞は衰え知らずで本作もメッセージの強い楽曲が多く、自動車やスピード社会のもたらす
環境破壊やフラストレーションの増大を歌った「アグラヴェーション」では三菱、トヨタを
実名で非難(笑)
サウンド面でも前作「Think Visual」から欧州回帰色が強まっているので、
初期のキンクスを聴いていた方の耳にもなじみやすいのではないかと思いますが
ザ・キンクスは時代と共にマイナーチェンジを繰り返したサウンドに特徴あるのではなく、
デビュー時から一貫したレイ・ディヴィスの強靭な精神性こそが最大の持ち味なので
レイの言葉をより伝えやすくするため、その時代に合わせてサウンドを変えていると
私は好意的に考えているのですが、英語のため日本人にはなかなかその真意が伝わらず
(「エンターテインメント」の歌詞内容はかなりエぐいです(苦笑)
マイナーな立ち位置は不動になってしまっているのですが、本作は80年代のMTVを筆頭株主とした
ビジュアル偏重の洋楽にはない「音楽」としての楽しさが詰まっています。
最近の若い人が映画の影響でクイーンを再評価していることをとても嬉しく思い、
昔の良い音楽に興味の扉を開く絶好の機会ではあるので是非、ザ・キンクスも
聴いてみてください!
売れてない音楽にもこんなに素敵な音楽あるのを知ってしまったらその興味の枝葉は
際限なく広がり、誇大広告に振り回される売れ線音楽生活から脱し、自分の耳を頼りにした
自分だけの深い音楽生活が送れると思います。
「Loony Ballon」はキンクスの隠れ名曲
The Road/The Kinks - 1987.12.21 Mon
[sales data] 1987/12/21 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g) Dave Davies(g) Jim Rodford(b) Bob Henrit(ds) Ian Gibbons(key) | ![]() The Road |
1987年の米ライヴツアー。
1987年にドイツで先行リリースされ、米は年明け1月、英国は更に半年以上遅れて発売。
(多分日本プレス盤はないと思われます)
そんなこんなであまりの流通数の少なさから中古で高値が付きキンクスファンの
私ですらなかなか手が出なかったのですが、ようやくいい値で入手できました。
選曲は「ワン・フォー・ザ・ロード」と重複せず、過去のヒットナンバーも収録せず
「ワン・フォー・ザ・ロード」以降の80年代総決算的な内容です。
OPの「The Road」のみスタジオ録音で他はライヴという変わった構成です。
このライヴ音源はドラムの音がやたら硬質なことが特徴的です。
ライヴ用に楽曲をアレンジしているわけでもないので、コンパクトにまとまった
ベスト盤みたいで少々物足りませんが、伸びないセールス的なこともあるのでしょうが、
1枚物ではなくフルセットでの再登場を願っております。
Think Visual/The Kinks - 1986.11.17 Mon
[sales data] 1986/11/17 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g/key/harmonica) Dave Davies(vo/g/key) Ian Gibbons(key) Jim Rodford(b) Bob Henrit(ds/per) Mick Avory(ds) ***** Kim Goody(bvo) | ![]() Think Visual |
1985年のライヴエイドには何故か参加しなかったキンクス・・・
(レイ・ディヴィスはチャリティイベントにはあまり参加しない傾向ですからね)
同期のストーンズとは背負ってる看板の大きさが違うので注目度は天と地の差があり、
簡単に比較はできませんが、再起を果たした米アリスタからロンドン/MCA移籍第1弾は
米から英に戻ったこともあり、アルバムの中で混在するレイとデイヴの楽曲では
デイヴがアリスタのノリをそのまま持ち込んでいますが、アリスタ時代のやや過剰な脚色は減り、
パイ時代のような単調なR&Rを展開しており、昔からのファンは嬉しかったのでは
ないでしょうか?
キンクスらしさというのはサウンドではなく、むしろレイ・ディヴィスの歌詞に宿っており
サウンドはチープでも(勿論パイ時代から比べればシンセも導入してサウンドは厚みを
増していますが)レイ・ディヴィスの英国スピリッツは未だ健在で
1曲目の「Working At The Factory」では「工場で働くのが嫌でミュージシャンになったのに、
結局、音楽産業という工場で働いている」といかにもという感じのシニカルな歌詞を
明るく歌い飛ばしてしまうキンクス流儀。
タイトル曲の「Think Visual」は訳詞を読まなければそのままスルーしがちですが
♪
生産性は日ごとに向上していくのに、収益はどんどん落ちていく
~
予算は限られているし
市場は競争、競争、また競争だ!
デジタルに考えろ 総合的に
コンピュータ化だ 視覚で考えろ
~
マーケティングは目標達成を要求するが
財政は逼迫している
~
歯をむいてやれ 目を覚ませよ
視覚で考えろ!
デフレ・インスパイラルにモロに打撃を受けた身としては骨身に染みわたる歌なのです(笑)
商業音楽の世界で「ヒット曲にこだわらず歌いたいことを歌う」という姿勢を貫くことは
非常に困難なことなのですが、60年代からスタイルを変えず、のらりくらりと演り続けているのは
多分キンクス(=レイ・ディヴィス)ぐらいしかないと思います。
Word of Mouth/The Kinks - 1984.11.19 Mon
[sales data] 1984/11/19 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g/key/harmonica) Dave Davies(vo/g) Jim Rodford(b) Mick Avory(ds) Bob Henrit(ds) Ian Gibbons(key) | ![]() Word of Mouth |
アリスタ・レコード最後の作品。
「State of Confusion」リリース後、デイヴの脱退騒動などがあり、バンド活動は休止状態となると
レイは英国テレビ向け映画「リターン・トゥ・ウォータールー」の撮影、編集、サントラ制作に追われ、
収録曲の大半が仕上がりかけた頃、ソロ活動に転じたものの結果がパッとしなかった
デイヴが出戻ってくるのですが、なんとオリジナル・ドラマーのミック・エイヴォリーを
解雇して後任にジムの元同僚ボブ・ヘンリットに交代しています。
私はあまり聴き込んでいないので分かりませんが、 制作途中でドラマーが変わった為、
アルバムの色が変わってしまいサウンドトラックから半分、ボブ加入後の新録音から半分と
統一感の無い内容で、セールス的に大きな失敗に終わったようです。
後にレイ・ディヴィス名義でリリースしたサントラ「リターン・トゥ・ウォータールー」の方が
よっぽど内容が良いとのことです。
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State of Confusion/The Kinks - 1983.06.10 Fri
[sales data] 1983/6/10 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g/synthe/p) Dave Davies(vo/g) Mick Avory(ds) Jim Rodford(b) Ian Gibbons(key) | ![]() State of Confusion |
英国人というのは音楽については米のセールスに左右されない誇り高きリスナーが
多いんだろうなという考えを根底から覆すことがこのアルバムで起こりました。
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英国で先行リリースしたシングル「カム・ダンシング」「思い出のダンス」が縦続きに
不発に終わり、予定されていたアルバム「エンターテイナー」(仮)の発売がお蔵入り
しそうになった矢先、米で「カム・ダンシング」が発売されるとMTVの影響でトップ10入り。
急遽、アルバムタイトルを「ステイト・オヴ・コンフュージョン」に変更し
アルバムジャケットも前作「ギヴ・ザ・ピープル・ホワット・ゼイ・ウォント」と
同じようなものに差し替えてリリースされると、英国でも不発だったシングル2曲が
チャートにランク入りするほど売れました。
(誇り高きリスナーの多い日本でも少し売れました(笑)
キンクスはこのアルバムの米ツアーの途中でデイヴがソロ活動にシフトするため脱退してしまい、
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後半のツアーをキャンセルし後任ギタリスト候補にクリス・スぺディングの名があがりますが
結果的にソロ&ツアーとも惨敗に終わったデイヴがバンド復帰を懇願して元の鞘に収まりますが、
上昇気流に乗っていたキンクスの勢いに陰りが見え始めます。
Give the People What They Want/The Kinks - 1981.08.15 Sat
[sales data] 1981/8/15 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g/key) Dave Davies(vo/g) Jim Rodford(b) Mick Avory(ds) Ian Gibbons(key) with: Chrissie Hynde(vo) | ![]() |
ビートルズ、ストーンズ、ザ・フーと60年代同期の英国ビッグバンドが時代の変遷と共に
大きく変化していく中、ヒット曲と遠いところで悠然とマイペースで活躍していたのが
ザ・キンクス。
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「One For The Road」で完全に息を吹き返し、サウンド的にはかなりメタリックになっていますが、
キンクス魂はそこかしこに配置されており「オール・オブ・ザ・ナイト」のセルフパロディ
「デストロイヤー」などレイ・デイヴィスは相変わらず面白いなと(笑)
レイやデイヴは「再結成するなら1981年のメンバーで」というほどお気に入りのようで
このアルバムリリース後の1982年に初来日を果たします。
One For The Road/The Kinks - 1980.06.04 Wed
[sales data] 1980/6/4 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g/harmonica/key) Dave Davies(g) Ian Gibbons(key) Mick Avory(ds) Jim Rodford(b) ***** Nick Newall(additional key) | ![]() |
パイ時代からRCA、アリスタ時代のシングル曲を網羅したキンクス・ライヴ決定盤。
(1979~1980全米&欧州ツアーから30箇所以上の録音テープから選出されたベストライヴ)
ヴァン・ヘイレンの「ユー・リアリー・ガット・ミー」が大ヒットしたため
米でキンクスのリバイバルブームが起こり、日本もその流れで1982年2月に初来日が実現しました。
(しかし箱は日本青年館という小ささ・・・)
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大ベテラン域のキンクスが日本に初来日したのがなんと1982年になってからという事実が
信じられないのですが、ライナーによると当時、日本のレコード店でパイ&RCA時代の
アルバムは廃盤で(日本青年館のライヴに行かれた方は多分このライヴアルバムで予習して
行かれたのはないかと思われます)又その来日を報じるメディアも音楽雑誌以外皆無と
ビートルズ、ストーンズ、ザ・フーと並ぶ英国4大ロックバンドの一角を担う
キンクスが日本でいかに超マイナー扱いだったか分かりますね(苦笑)
私がキンクスが好きなのは、音楽に向きあうその変わらぬ真摯な姿勢です。
正直キンクスのサウンドは似たり寄ったりなのですが、キンクスにしか出せない音があり
それは長年積み上げてきたからこそ効いているキンクスの音宝(出汁)なのです。
さぁ、キンクスのライヴを心行くまで楽しんでください!
"Rock bands will come , Rock bands will go,but Rock'n'roll is gonna go on forever!!!"
by Ray Davies
youtubeにUPされているこれらのライヴ映像は同タイトルの映像商品のもので
1979年ロード・アイランド、プロヴィデンス・シヴィック・シアターのライヴなので
CDと内容は若干異なります。
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Low Budget/The Kinks - 1979.07.10 Tue
[sales data] 1979/7/10 [producer] Ray Davies [member] Ray Davies(vo/g/key) Dave Davies(g) Jim Rodford(b) Mick Avory(ds) ***** Nick Newall(sax) | ![]() |
前作「ミスフィッツ」が予想以上に売れなかったため、短期間のレコーディングと
大幅な制作予算削減を強要されたアルバム。
(タイトルそのものが「低予算」という皮肉たっぷりなのもキンクスらしく微笑ましい(笑)
しかし制作スケジュールが短かろうが制作予算が削られようが、しっかりお仕事をこなす
レイ・ディヴィスさんはさすがのプロフェッショナルです。
本作はかなりデイヴ・ディヴィスさんのギターのエッジの尖がったギターリフが恰好よく
サウンド面ではかなりコンパクトでアメリカナイズされたと感じます。
アルバム拡売のため「スーパーマン」「ガソリン・ブルース」「ムーヴィング・ピクチャー」
「プレッシャー」「救いの手」と次々とシングルカットしますが、「スーパーマン」だけが
ディスコブームに乗っかりトップ40に入るものの他は全く売れず(苦笑)
可もなく不可もなくいつものマイペースなキンクスワールドに愛想をつかしたアリスタとの
契約解除も時間の問題と思われたこの年、思わぬ出来事がキンクスを襲います。
この年、デビューしたヴァン・ヘイレンがカバーした「ユー・リアリー・ガット・ミー」の
シングルが大ヒットしたため「キンクスって誰?」ということであれよあれよと人気が高まり、
何と米でゴールド・ディスクを獲得してしまいます(棚から牡丹餅とはこのことかと(笑)
繰り返しになりますが、キンクスは殆ど何も変わっていません。
変わってしまったのは、ヒット曲にしか興味のない商業音楽業界とそれに踊らされる
人々だということを実証し、英国ではチャート入りしなかったものの
米では約15年振りのトップ20入りでキンクスの第二期黄金期の開幕です!