天界(Astral Trip)/喜多郎 - 1978.06.15 Thu
[sales data] 1978/6 [producer] 喜多郎 |
ビクター「ZEN」レーベル第一弾
ライナー序文
「21世紀の扉を開くために、音楽は何をすべきか、真剣に考えました。
そして、いま時代が求めるマインド・コントロールの世界へ」
●それは、音を超えた世界
●それは、瞑想への誘い
●それは、心の中への旅
●それは、イメージの翼
●それは、「真理」へのパスポート
「神を求めるのですか?それなら人間の中に求めなさい。神は他の何物よりも人間の中に
明解であります」by ラマー・クシュリナ
何やら思いっきり宗教の臭いがプンプンするのですが、精神的な音楽、理性、知性の音楽という
意味でマインド・ミュージックという言葉が使われるようになったのはこの作品からでしょうか。
FEFB時代にクラウス・シュルツェとの出会いに多大な影響を受け、シンセサイザーの
無限大の可能性に魅かれ、バンド脱退後、インド~カトマンズ~タイを訪れ
ヨガを学び、瞑想を体験し、次元を超えたサウンドの創造者が誕生する。
ライナーによると富士の裾野、二合目に経てたスタジオ兼住居に篭り、
オールセルフで演奏、録音、ダビングに要した時間は1,000時間超。
驚くことにこの頃、まだ無名で音楽で生計を立てられなかったので、生活のため昼間は
コンクリートブロックの穴あけ作業をしていたとのこと。
喜多郎談
「天界、このサウンドは私が創り出したものではない。私の心が感じてしまった自然と私の
サウンド・イメージとのライヴ・セッションなのだ」
天空人/ファー・イースト・ファミリー・バンド - 1977.11.25 Fri
[sales data] 1977/11/25 [producer] 宮下文夫 [member] 宮下文夫(vo/g/key) 福島博人(g) 原田裕臣(ds) ***** 深草彰(b) |
メンバーが宮下氏と福島氏の二人だけとなり新たに原田裕臣を加えたラストアルバム。
宮下氏はこのアルバムでファーラウト以降一貫して取り組んでいたテーマ
「日本人的精神世界」がひとつの完成を見ますがバンドを解散した後も、
宮下(現:富実夫)&伊藤(現:詳)&高橋(現:喜多郎)はこぞってマインドミュージックの
世界に没入
特に高橋さんはクラウス・シュルツェと出会ったことで、シンセサイザーにすっかり魅了され
「喜多郎」に改名し(ロン毛の高校時代に「キタロウ」(「ゲゲゲの鬼太郎」)と呼ばれて
いたことから別漢字を当て「喜多郎」としたそうです)ソロ活動を開始し世界的な
アーチストとなります。
(喜多郎氏が同時期にリリースしたソロアルバムのタイトルがなんと「天界」と
ネタがかぶってるのは偶然でしょうか(笑)
原田裕臣さんは人気セッションドラマーとして活躍しゴダイゴ、萩原健一、沢田研二、山内テツの
バック演奏の他、大野克夫による「太陽にほえろ!」シリーズなど多くのレコーディングに参加。
深草彰(現:深草アキ)さんは中国の古楽器「秦琴」の第一人者として活躍されています。
Nipponjin/ファー・イースト・ファミリー・バンド - 1976.08.25 Wed
[sales data] 1976/8/25 [producer] 宮下文夫 [member] 宮下文夫(vo/g/key) 伊藤明(key) 高橋正明(現・喜多郎)(key) 福島博人(g) 深草彰(b) 高崎静夫(ds) |
「多元宇宙への旅」の制作過程で生じたトラブルから伊藤、高橋、高崎、深草の4人が脱退。
解散もやむなしの状況下で宮下と福島がバンド存続を意図して編集に尽力し
ミックスをクラウス・シュルツに依頼しファーラウトの「日本人」のリメイクや未発表2曲を含み
新アルバムとしての体裁を整えたベスト的な内容です。
結果的にドイツなどでは好セールスを記録しバンドは原田裕臣(ds)を新メンバーに加え
脱退した深草彰をゲストプレイヤーに迎え「天空人」をリリースします。
多元宇宙の旅/ファー・イースト・ファミリー・バンド - 1976.03.15 Mon
[sales data] 1976/3 [producer] クラウス・シュルツ [member] 宮下文夫(vo/g/key) 伊藤明(key) 高橋正明(現・喜多郎)(key) 福島博人(g) 深草彰(b) 高崎静夫(ds) |
ヴァージンレコードのマナースタジオ録音。
プログレバンドは大別すると
(1)テクニカル系(クリムゾン/YESなど)
(2)精神音楽追求系(ピンク・フロイド、タンジェリン・ドリーム)で
本作は元タンジェリン・ドリームのクラウス・シュルツがプロデュースしたことで
ピンク・フロイドからクレイムが出てもおかしくない神秘をそのままカバーしたような流れで
日本語をもっと活かしてオリジナリティをださなかったことがちと残念。
アルバムコンセプトは前作のテーマ「日本神話」から「再生」「無限」「宇宙」と
精神的な時空に拡大させ、緻密な音作りを完成させるも、ハードな制作スケジュールで
様々なトラブルから伊藤、高橋、高崎、深草の4人が脱退。
あと一歩のところで世界進出計画は頓挫します。
このノアの箱舟のような宇宙船地球号はどこへ向かおうとしていたのか・・・
地球空洞説/ファー・イースト・ファミリー・バンド - 1975.08.25 Mon
[sales data] 1975/8/25 [producer] unknown [member] 宮下文夫(vo/g/key) 伊藤明(key) 高橋正明(現・喜多郎)(key) 福島博人(g) 深草彰(b) 高崎静夫(ds) |
マインドミュージック第一人者、故宮下文夫率いるファー・イースト・ファミリー・バンド
(以下FEFB)のデビューアルバム。
「地球空洞説」とは我々の住むこの地球は、中身の詰まった球体ではなく、ゴムボールのように
中空であったり、別世界へ繋がっているという考え方で小学生が読むSF雑誌なんかには
好奇心をくすぐるネタが幾つも書いてありましたね。
地球は宇宙から見ると北極と南極には穴がぽっかりと開いていて、中身が空洞になっていて、
そこには地底人の高度な文明が栄えていて、空洞には真ん中に太陽があり光に満ちていて
(その光が洩れてたものがオーロラ)空飛ぶ円盤は地底人が飛ばしているとか(笑)
ちなみにマイルスのアルバムタイトルのアガルタ(Agartha)とは、ジャケット画(横尾忠則作)にも
描かれていますがスリランカの地底にあると言われた高度な文明を持つ社会・伝説上の理想郷、
または異世界の名称。
そしてこのネタに大真面目に取り組んだのがFEFBで、
11台のコズミック・キーボード(ハモンド・オルガン、ムーグ、メロトロンほか)で巧みに
アレンジされたサウンドと日本神話風に展開する「地球空洞説」は国内はもとより
まだ国際的に門戸を開いていない閉鎖的な日本人に対する神秘的なイメージも手伝い
海外でも高い評価を受け、日本人初の世界同時発売で海外リリースもされ、
CDは2009年に紙ジャケで再プレスされましたが、このバンドの作品は長い間、
何故か輸入盤(UKプレス)でしか入手できないという珍現象がおきていました。
穏やかな情感が全編を覆い、痃想的でとても心地良いサウンドに仕上がっています。
デヴィッド・ギルモア風のギター、倭旋律のムーグ、そしてメロトロンの響き、
大仰なサウンドコンセプトと落差のある文夫さんの歌スタイル(カレッジ・フォーク)に
やや違和感がありますが、日本のロックを語る上で欠かすことのできない好盤。
1970年中期は海外のロックミュージックが音楽シーンをリードしていく構図で
商業的には開花しませんでしたが、日本にも世界に通用する「音楽」を創ろうとしていた
志の高い音楽家が存在した事は記憶に留めておくべきでしょう。
ちなみに高橋政明さんは後に「喜多郎」と改名しワールドワイドな活躍をしているのは
ご存知の通り。
日本人/ファーラウト(FAR OUT) - 1973.03.15 Thu
[sales data] 1973/3 [producer] 宮下フミオ [member] 宮下フミオ(vo/g/moog) 左右栄一(g/org) 石川恵(b/g/vo) アライ マナミ(ds) ***** 喜多嶋修 ジョー山中 |
70年代初期の邦楽ロックというのは、情報も少なく、音源も殆どが廃盤だったので
音楽雑誌の記事だけで想像する未聴のサウンドに胸をときめかしたものですが
90年頃からCDで続々復刻して、気軽に聴けるようになったのはありがたいことです。
70年初期の邦楽ロックは内田裕也的な洋楽ロックを模倣した英語歌詞系と
はっぴいえんどな日本語系というのが柱ですが、他に60年代を席巻したGSブーム終焉後の
ミュージシャンが烏合離散を繰り返しセッション形式で複数の音源を残していることに
注目したいと思います。
早速、取り上げたいのがこれなんですが、故宮下富美夫を中心に左右栄一(元頭脳警察)
石川恵、前田トミオ(元タイガース)によって1971年に結成されたGS崩れによって
再編成されたグループのひとつです。
(FAR OUTとはフラワー&サイケデリックな60年後半ヒッピー間で使われていたスラングで
「最高!」「ブッ飛んだ!」という意味)
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このアルバムはバンド名義ですが実際は宮下氏のソロアルバム的内容で
TOO MANY PEOPLEと日本人の長編2曲で構成されるコンセプトは60年代後半サイケムーブメントの
テーマだった「解放」を根底に据え、その後のシンセサイザーサウンドによる瞑想的世界の音像化に
多大な影響を与えたそうです。
内容的にはシンセよりギターメインのハードロック系ですが、元ランチャーズの喜多嶋修とのコラボ作品
「新中国」をフミオ&オサム名義で制作したのを機に宮下氏の音楽指向は精神世界へ
傾倒して行きます。
バンドはワンステップ・フェスティヴァルなどに出演後、音楽的な方向性が定まらないまま解散。
宮下氏は伊藤彰、高橋政明(喜多郎)らとファーラウトのコンセプトを継承し
ファー・イースト・ファミリー・バンドを結成します。