とある方（知名度もあると思われる方）より私が販売公開している作品に対して連絡がありました。正直その内容にかなりイラっとしたので（気が短いというのもある）、自分が行っている行動や考えについての意思表示と、今後不要な誤解を招かないように書いておこうと思い筆を執ることにしました。大事なことなので。
　ここ数カ月はずっとそこそこ忙しくしていたりと、時間や気持ちに余裕が無くブログ記事起こしなんてしてなかったのですが、ちょっと我慢できず。仕事に対する考えなどは私生活にも繋がってくると思いますので、長文になりますがお付き合いいただけると幸いです。

　だた、相手方は悪い方では無い上、最終的にご理解いただけています（多分）。いきなり連絡が来たのもですからその時の心情の勢いのまま書き記しました。（その後冷静になってから目次や挿絵などを編集……）

いただいた連絡の内容には現在販売しているモノに対する以下のようなものが書かれていました。

「データ素材が悪いせいで台無し」

「データ改変してアップデートして」

「完成度が最高なモノでない限り暗号化はしないで」

「有料で販売するなら商品の完成度を高めて」

「過去の商品も全てアップデートして」

というものでした。（要略）

いつか誰か言ってくるかと思っていましたが、それがまさに今回。この内「有料なんだから完成度を高め、アップデートで継続対応して。」ということを中心に、世間一般の考えも交えて自身の考えを述べたいと思います。






　 　

◆価格設定について

　まず2023年9月現在公開している商品（商品というのも違う気がするので以下「作品」）は無料公開のものを除くと50～300円。（最新作は500円）大体の作品が200時間越えの作業内容です。なのでモノにもよりますが正直3,000円であったりそれ以上で提供したいくらい。ですが、「その価格ならいらない」と思う人間が多いんじゃないかと予想して敢えて低価格で提供しています。

　価格を上げない理由は他に、作業時間こそ膨大な時間と労力がかかっていますが、「知識がつけばつくほど同じ作業時間でより完成度・品質の高いものを作れるハズだ」という考えもあります。つまり自分は凄く大変な思いをして作っていても、知識のある人間が作ればちょちょいと作れる可能性があるということ。まぁかといってじゃぁ無料公開するかというとまた違う話で、労力と需要そして作品の公開理念（商品というより「こんなの作ったよ！寄付してくれたらあげる」という認識）の塩梅を考えて価格設定しています。（後述）

　ここでひとつたとえ話。仕事の話をします。仕事をする。対価を受ける。仕事は何でもいいです。アルバイト、パート、本業の生業などなど。「仕事」の中には「責任」も含まれる。責任の大きさは大なり小なりあるかと思いますが、「有料だから要望に対応しろ」という気持ちを持つのも自然かと思います（今回の連絡者は未購入者ですが）。ただ、「その『責任』も含めた報酬、対価を受けている場合の話は」です。

　本業ではありませんが稀に写真のお仕事を頂いていた身からたとえ話をしますと「結婚式の写真撮影」なんかが（現在は色々変わっているのかもしれませんが）分かりやすいかと思います。

　式の撮影を行い報酬ウン十万～三桁万円などを頂くとしましょう（くどいようですが撮影プランや時代背景などで差異があるのであくまで例）。大変なお仕事には変わりありませんが労力に対しての報酬は高めです。では何が含まれるかというと「責任」なんじゃないかと思います。「撮り直しがきかない」、「一生に一度の舞台」という状況にもかかわらず

「データが飛んでてお渡しできません……」

「露出を間違えてマトモな写真がありませんでした……」

なんてことは起きちゃいけないワケです。勿論そうならないように準備や対策に余念はないはずです。ですがそれでも万が一起こってしまった場合どうなるかというと「慰謝料」とか「賠償」って話になるわけです。仮に結婚式の撮影仕事を一万円で受けて、でもそこには失敗や不運に見舞われる可能性も孕んでいて……というのではハナシになりません。

　たとえ話が長くなりましたが、そういった「売った後の対応」まで考慮すると販売価格が大きく変わってくることになるわけです。でも高すぎては誰も買わないでしょう。なので「現在の完成度・品質に対して文句が言われないくらいで且つ買ってくれそうな価格」という事から現在の価格になっています。今後状況によっては価格を見直す可能性もありますが……（笑）

　ただ今後も一貫して変わらない考えとしては「動かない・開かないなど致命的な不具合が無い場合は基本的にアップデートしない」「自身の技術が高まり作品をより高品質にできるようになっても過去作には基本手を入れない」というのがあると明記しておきます（致命的といっても数年～十数年後に仕様変更があって動作しなくなってもその頃には対応できないと思います）。都度手を入れていたら時間も労力も足りません。「作るのが大好き、人に提供するのが大好きで、仕事や寝る食べるなどの時間以外は全てそれらに注ぐ。」という人間なら話は別ですが。

　 　

◆商品をアップデートするということは

　もうひとつ、その「アップデート」に関して。有料商品として販売させていただいてはいますが、私自身まだまだ発展途上。古い作品は今のと比べて満足度が低いと思いますし、現在の最新作であってもいずれもっと高品質な作品を作れるようになっているかもしれません。かといって過去の作品も全て毎回「アップデート」していたら前述したように時間的にも労力的にも割に合わなくなってきます。労力に見合った価格で「アップデート版〇〇〇円」と出しても殆どの人が納得しないでしょう。なので今現在公開している作品は「その当時全力で作った作品を売り切り」としているわけです。SNSの紹介文に「寄付のお礼に～」などと明記しているのも同じ理由。

　昨今は色々な商品提供の形式があるため「無料・無償で高品質な物が手に入る」、「無料・無償でアップデートしてもらえる」のが普通という誤った認識をもってしまっている方が少なからずいらっしゃるかと思います。でも何かしらの方法で「対価を得ている」事をお忘れなく。ソフトウェアなどのアップデートであれば

「商品価格に〇回分のアップデート料金が含まれているので〇回できる」

「ソフトやアップデート自体は無料だけど利用は定額制」

「広告が常時表示されてそれで利益を得ている」

などなど。最後なんてのはイマドキな仕様ですね。

備考：無料＝金銭などを払う必要が無い、無償＝金銭だけでなく何も見返りを求めない

　最後に似た話をもうひとつ、今回の話とはちょっと変わりますが同じような話。最近は作品を無料・無償で提供している方や集団がいたり、今回のようにコースマップデータでなくとも仕事自体を「無償で引き受けます！」などと募集している方もいらっしゃいます。これについては賛否あるかと思いますが、個人的には否定派です。（勿論特別な理由があったり全否定しているわけではありません。私自身もそういった製品やサービスなどを使わせてもらっているわけですし。）

　
画像出典：https://www.photo-ac.com/

「経験の為に無償で引き受けます！」

「趣味でやってるだけなので無償で！」

という気持ちは凄く分かりますが、それを依頼した側、恩恵を受ける側が「それが普通で当たり前」と思ったり、そういった間違った思考が広く浸透してしまうことが問題。

「この品質（或いは仕事内容）で無償でやってるやつがいるんだからお前も無償でやれよ」

といった考えが当たり前になるとまずその業種が育たなくなります。そうして最終的にはその業種が廃れていったり。なので、正確に言うと「無償で引き受ける・提供する人間が悪い」のではなく「無償で手に入るのが当たり前」と思い込んでしまっている人間の考えや風潮が間違っている。

　誰でも気軽に無料で見られて、知らない人間はごく僅かではないかという知名度の誇る某動画サイトをはじめ、利用者に直接的な金銭負担が無く高品質のものを利用できる昨今の弊害でしょうか。とにかく、自身が行った仕事は対価を受けるべき、そして無償でなんでも手に入るのは普通ではないという事を今一度多くの方に認識してもらいたいです。（私自身が作品を低価格で提供しているため、その悪い風潮に加担しているという考えもできますが……）

蛇足

改めてやり取り内容。自分超長文じゃん。そして誤字……
しかも自分が「心の中にとどめておいても～」って言ってるのに最後は「とどめておいて」ってなってるし笑（とどめておけなかったのは「相手を直接批判する言葉」。「不快です」って直接は中々言わないので、少しでも柔らかい表現になるよう段落初めに一言つけくわえました。）

「制作知識のある人間が手放しで褒め称えているのが理解できない」（上から１０行目）と仰っており「あなたの」trackとは明記してこそいませんが、これに対しては「価値観は人それぞれ」ということ。今回連絡があった方は私より制作知識があると思われるので粗が気になるのかもしれません。でもだからと言って「凄い」「完成度が高い」「現実みたい」という前向きな考えを持っている人たちに対して
「お前らちゃんと見てる？〇〇なところも△△なところも粗だらけじゃん」
と価値観を押し付けるのはご法度。
「なんでこんなくだらない動画で再生回数〇百万回？ 対してこんな凄い事をしてる・面白い・プロが発信している動画なのにコッチは数千回？ みんなどんな感性してるんだ？」
などと動画サイトの見出し画像と動画の題名を見て思って……はいいけど声に出してはいけません。（コレは私の事、反省してます。）


いきなりの連絡だったので、眉間やキーボードを打つ手をピクピクさせながら半ば反射的に送り返してます（苦笑）。先にも述べましたが相手方は悪い方ではないのと最終的に恐らくご理解いただけたのでこれで終わり、よしとします。でも大事な話なので記事は残します。