「けいおん!!」二次創作 唯澪短編その5 Aimez-vous un cœur simple et fidèle? #6
2010/08/31/Tue
恋愛感情ってなんだろう。澪ちゃんに告白された夜、私は自分の部屋でぼんやりとそんなことを考えていた。机の上には夏期講習で使っているテキストが無造作に開かれている。復習はあまり進んでなく、もう夏休みも終ろうというのに、自分が受験生だって意識は限りなく薄かった。いや、それをいえば、もうあとちょっとで最後の学際ライブがあり、半年を過ぎれば、自分は否応なく高校生ではなくなる。この三年間過してきた場所と人とのつながりが消えてしまう。私には、そういったことすべてが非現実的な気がした。でも、澪ちゃんが私を好きだというのは、それら以上に不思議に実感が持てなかった。
「お姉ちゃんスイカ切ったよ、食べる?」
ノックの音がして、ひょっこり憂が顔を出した。いいタイミングと思った私は、今考えていた疑問を憂にぶつけてみる。
「憂は人を好きになったことある?」
「え、私はお姉ちゃんのこと好きだよ。」
「そういうのじゃなくて、こう恋人に抱くような…」
「お姉ちゃん、誰かのこと、好きになったの?」
「私じゃなくて、その、告白されたんだよ、澪ちゃんに。」
そういうと憂はとても驚いた様子だった。やにわに興奮し出して、それでお姉ちゃんはなんて答えたのと聞いてくるから、私は澪ちゃんの申し出にオーケーしたよと呆気なく返事した。すると憂は少しまじめな顔をして、
「お姉ちゃんは澪さんのことが好きなの?」
と質問した。
「澪ちゃんのこと、嫌いなはずがない。でもそれが恋愛の好きかどうかはよくわかんない。」
私が自分の少し困惑した気持を率直に口にすると、憂はそっか、そうだよねといってくれた。憂が理解を示してくれたというだけで、私は心が軽くなる気がする。
「やっぱり簡単にいいよなんていわないほうがよかったかなぁ…? でも澪ちゃんすごく真剣だったし、私、なんていったらいいかよくわからなくて…」
私が気弱に声を出すと、憂はにこっと笑って、お姉ちゃんはやさしいからといった。
「最初は好きかどうか、自分の気持がはっきりわからなくても、付き合っていくうちに見えてくるものがきっとあるよ。」
私は憂のその言葉を信じることにした。今わからないことも、未来になればわかるようになる。そういうことはたくさんある。澪ちゃんが私を好きというなら、私も澪ちゃんを好きになろう。澪ちゃんの思いは誠実なものにちがいないんだから。
――私もみんなと一緒に勉強して、みんなと同じ大学に行きたい。
澪ちゃんが推薦を取りやめたとき、私はただただ驚いた。澪ちゃんがずっと一人でがんばって勉強していたことは知っていたし、高校三年間の努力の結果で獲得することができた推薦を、あんなに簡単に放棄しちゃったんだから。
「……りっちゃん、澪ちゃん本当にいいのかなぁ。」
ある日の昼休み、たまたま二人きりだったりっちゃんに、私はもやもやとした思いを思いきっていってみた。りっちゃんはすぐになんの話題かを察したようで、私にぽつりぽつりと言葉を洩らす。それはたぶん、りっちゃんも澪ちゃんのことが引っかかっていたために、口にできた言葉だったように私は思う。
「…澪はさ、今の関係性がすごく好きなんだよ。ほら、唯、今年の春、クラス替えの掲示を見たとき、澪がすごく喜んでたの覚えてる? 澪はああいう性格だから友だち多いほうじゃなくてさ、つるむのも私とくらいだったし、だから、今の仲間とのつながりに、固執したいのかもな。」
私はりっちゃんのいいたいことはよくわかる気がした。そして、りっちゃんはこうも付け加える。
「あとは、唯、お前のせいかもしれないぞ。」
「ふぇ?」
「唯はふわふわしてるから、そばにいると不安になるのかもしれない。……ま、それが唯の魅力だけどな。」
このりっちゃんの言葉はすぐにはよくわからなかった。りっちゃんは話は終ったとばかりに午後のリーディングの予習を始めた。私は机に肘をついたまま、秋の空を眺めていた。物憂い雲が漂っていた。
「お姉ちゃんスイカ切ったよ、食べる?」
ノックの音がして、ひょっこり憂が顔を出した。いいタイミングと思った私は、今考えていた疑問を憂にぶつけてみる。
「憂は人を好きになったことある?」
「え、私はお姉ちゃんのこと好きだよ。」
「そういうのじゃなくて、こう恋人に抱くような…」
「お姉ちゃん、誰かのこと、好きになったの?」
「私じゃなくて、その、告白されたんだよ、澪ちゃんに。」
そういうと憂はとても驚いた様子だった。やにわに興奮し出して、それでお姉ちゃんはなんて答えたのと聞いてくるから、私は澪ちゃんの申し出にオーケーしたよと呆気なく返事した。すると憂は少しまじめな顔をして、
「お姉ちゃんは澪さんのことが好きなの?」
と質問した。
「澪ちゃんのこと、嫌いなはずがない。でもそれが恋愛の好きかどうかはよくわかんない。」
私が自分の少し困惑した気持を率直に口にすると、憂はそっか、そうだよねといってくれた。憂が理解を示してくれたというだけで、私は心が軽くなる気がする。
「やっぱり簡単にいいよなんていわないほうがよかったかなぁ…? でも澪ちゃんすごく真剣だったし、私、なんていったらいいかよくわからなくて…」
私が気弱に声を出すと、憂はにこっと笑って、お姉ちゃんはやさしいからといった。
「最初は好きかどうか、自分の気持がはっきりわからなくても、付き合っていくうちに見えてくるものがきっとあるよ。」
私は憂のその言葉を信じることにした。今わからないことも、未来になればわかるようになる。そういうことはたくさんある。澪ちゃんが私を好きというなら、私も澪ちゃんを好きになろう。澪ちゃんの思いは誠実なものにちがいないんだから。
――私もみんなと一緒に勉強して、みんなと同じ大学に行きたい。
澪ちゃんが推薦を取りやめたとき、私はただただ驚いた。澪ちゃんがずっと一人でがんばって勉強していたことは知っていたし、高校三年間の努力の結果で獲得することができた推薦を、あんなに簡単に放棄しちゃったんだから。
「……りっちゃん、澪ちゃん本当にいいのかなぁ。」
ある日の昼休み、たまたま二人きりだったりっちゃんに、私はもやもやとした思いを思いきっていってみた。りっちゃんはすぐになんの話題かを察したようで、私にぽつりぽつりと言葉を洩らす。それはたぶん、りっちゃんも澪ちゃんのことが引っかかっていたために、口にできた言葉だったように私は思う。
「…澪はさ、今の関係性がすごく好きなんだよ。ほら、唯、今年の春、クラス替えの掲示を見たとき、澪がすごく喜んでたの覚えてる? 澪はああいう性格だから友だち多いほうじゃなくてさ、つるむのも私とくらいだったし、だから、今の仲間とのつながりに、固執したいのかもな。」
私はりっちゃんのいいたいことはよくわかる気がした。そして、りっちゃんはこうも付け加える。
「あとは、唯、お前のせいかもしれないぞ。」
「ふぇ?」
「唯はふわふわしてるから、そばにいると不安になるのかもしれない。……ま、それが唯の魅力だけどな。」
このりっちゃんの言葉はすぐにはよくわからなかった。りっちゃんは話は終ったとばかりに午後のリーディングの予習を始めた。私は机に肘をついたまま、秋の空を眺めていた。物憂い雲が漂っていた。