『 ハート・ロッカー 』 (2008)
監 督 : | キャスリン・ビグロー | キャスト : | ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、 クリスチャン・カマルゴ、ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、 デヴィッド・モース、エヴァンジェリン・リリー | イラクを舞台としたアメリカ軍爆弾処理班を描いた戦争アクション、社会派ドラマ。撮影はヨルダンで行われた。第82回アカデミー賞では作品賞以下6部門を受賞、ビグローは女性で初めての監督賞受賞者となった。 2004年、イラク・バグダッド郊外。アメリカ軍の危険物処理班は、仕掛けられた爆弾の解体、爆破の作業を進めていた。だが、準備が完了し、彼らが退避しようとしたそのとき、突如爆弾が爆発した。罠にかかり殉職した隊員に代わり、また新たな“命知らず”が送り込まれてきた。地獄の炎天下、処理班と姿なき爆弾魔との壮絶な死闘が始まる……。 |
Good! ・実際に家族がイラクで爆弾テロの恐怖と面と向かっているアメリカ人にしかわからないであろう評価が加算されてのオスカーなので、日本では、アカデミー賞獲得が不思議に思われる方も多いかもしれない。しかし、本物のプロの狂気を覗いてみたい方には、ぜひお薦めしたい作品だ。 ・素晴らしいと感じたのは砂漠のシーン。緩急の付け方、動と静の対比、銃声と被弾のタイムラグ、援軍が来ないこと、撤収までの時間の長さ。ライフルスコープ目線は多々見てるけど、ここまで完成された映像は少ないと思います。見ていて喉が乾きました。 ・米兵の存在によって救われたり、傷つけられたりしながらも、彼らを受け入れるしかない現地の人たちのやりきれないような気持ちと、またそれを感じているであろう米兵。それでも仕事をしなければならない彼ら。監督のアカデミー賞での「無事で帰ってきて」という言葉に納得しました。日本にいる私たちはどれだけ米兵のこと現地の人のことを理解できているのでしょうか。 ・安全空間である劇場で戦場を疑似体験してしまっている事に、その時点でさえ、戦地では常に危険に身を晒して日々を送っている人々(兵士も住民も含めて)が存在する事に申し訳なく思え、「何かできないんだろうか?」と映像を観ながら考えさせられてしまった。 ・主人公ジェームズの人物造形が素晴らしい。西部劇のガンマンのような雰囲気を持ち、判断力も体の動きも一流。だけど、決して神懸かりではなく、英雄的でもなく、破滅的でもない。自分の命が大事であり、引くときは引く。現地少年との心の交流という幻想も自らで振り払う。台詞の少ない終幕での空虚さも胸に響く。 ・思うように運ばない作業。オープニング・シーンにて、役立たずロボやヤギが「ままならなさ」を表現してくれています。こうした「ままならなさ」は映画としてとても面白く思います。この演出は全篇にわたって描かれています。 ・決して、エンターテイメント性が強調された映画ではないと思うし、観る人によっては誤解を受けやすい映画であるようにも思う。 それはこの映画が、今この瞬間の「戦争」の表面的な狂気や惨劇を描いているのではなく、まだその実態さえも検証されていないリアルタイムの混沌を表現しているからに他ならない。 ・爆発物処理班として、危険な場所にばかり赴くジェイムズ軍曹。無心に映るかもしれないが、何も感じないのではなく、感じていてはできないのだ。ただ、自分を必要としている人々のために動きたい。それだけ。愛する家族とも離れて。 ・近年の作品としては珍しく展開がゆったりしているので、やや満足しきれない人がいるかもしれない。残念ながら、この作品は観る人を選んでしまう。じっくりと腰を据えて見て欲しい。 ・終始、男臭い物語かと思っていたが 後半にほんの一瞬だけ乳の谷間が登場して眠気が覚めました。
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・断末魔に近い戦争の狂気が伝わってきますが、その原因に踏み込んでいないのが不満です。映画の出来が良い割りに終わり方が想像通りで少し残念に思いました。 ・ストーリーテリング上、決定的な間違いをしてしまっている。(戦争)中毒者を描きたいのか、中毒者に翻弄される周りを描きたいのか、イラク戦の異常性を描きたいのか。ストーリーの幹が何なのか整理しきれないままエピソードを羅列している。 ・ドキュメンタリーを匂わせる為なんでしょうが、序盤の動きの安定しないカメラワークは、疲れ目の私には厳しかった。 ・中盤から少し気だるいシーンが続く。賞をとったことで期待しすぎたのだろうか。興奮しない。たぶん見せ方が悪いのだ。ここでこの作品に対しての悪い感想がうまれた。しかし終盤になって、完全にではないが悪いイメージをだいぶ払拭できた。 ・女流監督が作ったとは到底思えないハードボイルドさで、終始圧倒されてしまった。しかしながら、この作品の持つ軽さと見やすさが戦争を肯定するようにも思えて、これがアカデミー賞受賞の理由かもしれない…とも考えてしまった。 ・全体的にみると、かなり良くできていて、すばらしい映画であるのは間違いないですが、アカデミー賞をとるほどの作品には思えませんでした。 ・リアルを作り出すため、手ぶれやズームの切り替えがたびたび行われている。個人的には過剰に感じた。そこまでしなくてもリアルさはきちんと出てたと思うし、やりすぎると意図的な感じが出てしまって逆にリアルを損ないかねない。 ・リアルな戦争の恐怖や罪を世の中に問いかけているのだろうけど、ぐっとこさせる説得力がありませんでした。さらに「愚かさと恐怖」を引っ張ったにもかかわらず、ヒーロー奨励映画みたいな終わり方には不満と疑問が残りました。 ・何か物足りない感じがしました。観た人に、ストレートに真正面から現実を突きつけることに全てを費やしたからでしょうか。 ・作家のメッセージが何も伝わってこない。この作品の演出は、戦争のスリルを伝えることだけに終始している。優れたアクション演出で息苦しいほどの緊迫感をもった映画だが、それは観客に戦争を疑似体験させるだけの類のものだ。
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