木の家を訪れたように安心して受診ができる眼科医院 | 一般社団法人 木造施設協議会

施設実例

木の家を訪れたように安心して受診ができる眼科医院

地元の人が行き交う駅前で、わが家のように「ほっ」と落ちつける医院を目指して

針谷眼科(群馬県太田市)

運営:針谷眼科

群馬県太田市で、お父様の代から眼科医院を営む針谷先生が太田駅前に新たに開設された「針谷眼科」。
地元の木や、土や石、紙を用いてつくられた建物は、診察を受けに訪れる患者さんをあたたかく迎えてくれる医院となりました。

地域材と自然素材、パッシブソーラーを用いて居心地のよい空間に

地元地域で代々眼科医を営む「針谷眼科」。2016年に群馬県太田市駅前に新しい木造の眼科クリニックをオープンし、地元地域の多くの人が訪れる場所となっています。
女性眼科医である針谷院長。ご自身が地元で良く足を運ぶ雑貨屋さんの木造のお店の雰囲気が気に入っていたことから、医院の建築にあたってその雑貨屋さんの店舗を建築した工務店「小林建設」に相談をします。同社は群馬や埼玉を拠点に木の家づくりで定評のある地域工務店。長年、木と自然素材の家づくりと太陽光で床暖房するOMソーラーを採用した暮らしの提案をしています。

「受診に訪れる患者さんが、自分の家にいるかの様にくつろぎながら診察を受けていただけるクリニックにしたい」

そんな針谷院長先生の要望をもとに、小林建設の設計士とコミュニケーションと打合せを重ね、木造の眼科医院の建築計画が進んでいきました。針谷院長は、同社が建築する木造住宅の完成見学会にも幾度も足を運びながら、少しずつイメージを形づくっていったそうです。

針谷眼科の内観。構造材や天井の梁や建具などほっと落ち着ける木の家のような内部空間

針谷眼科の内観。構造材や天井の梁や建具などほっと落ち着ける木の家のような内部空間

待合室や受付、お手洗い、建具や自動ドア。一つひとつの要素にこだわって

針谷眼科の建物では、自然素材を丁寧に使って柔らかな空間を計画すると同時に、OMソーラーも採用。秋から冬にかけて診察室や待合室などの室内空間全体をじんわりと暖かくしながら、光熱費など医院運営時のランニングコストの低減にもつながっています。

温熱環境の向上に加えて、待合室や受付などの空間や、そこにある建具や仕上げといった細部まで、丁寧に計画がなされていきました。屋外から靴のままで診察を受けることができるよう、待合室から受付の床はブラックチェリー材を、診察室の床には土間用コルク材が採用されています。

待合室には丸い窓を設けて女性の院長先生のやわらかい雰囲気や遊び心も表現。壁には調湿性を持った珪藻土を用いている。

待合室には丸い窓を設けて女性の院長先生のやわらかい雰囲気や遊び心も表現。壁には調湿性を持った珪藻土を用いている。

受付部分には木や大谷石、紙、土などの自然素材を採用し、ところどころの木部にベンガラを塗って落ち着いた色合いに。

受付部分には木や大谷石、紙、土などの自然素材を採用し、ところどころの木部にベンガラを塗って落ち着いた色合いに。

診察室。

診察室。

建具にはシナ材を用いて明るい印象に。カウンターはメラミン化粧板を用いてメンテナンス性もよく。

建具にはシナ材を用いて明るい印象に。カウンターはメラミン化粧板を用いてメンテナンス性もよく。

床は大理石(トラバーチン)として、腰壁はタイル、壁は珪藻土に。明るく清潔感のある空間となった。

床は大理石(トラバーチン)として、腰壁はタイル、壁は珪藻土に。明るく清潔感のある空間となった。

自動ドアも木製で設計。レールや木のレールカバーを用いての吊り込みは建具屋さんの丁寧な仕事。

自動ドアも木製で設計。レールや木のレールカバーを用いての吊り込みは建具屋さんの丁寧な仕事。

地元作家によるアイアンのサインを取り入れて

医院の室内を歩くと、かわいらしいアイアンのサインプレートが目に留まります。
針谷院長先生が地元の作家に依頼してデザイン・製作されたもので、子どもから大人まで様々な患者さんが目にした時にちょっと楽しめる工夫となっていました。

診察室のプレート。視力測定の記号を模したかわいらしいデザイン。

診察室のプレート。視力測定の記号を模したかわいらしいデザイン。

お手洗いのサイン。これら以外にも、院内のあちこちにプレートがつけられていて患者さんを楽しませてくれる。

お手洗いのサイン。これら以外にも、院内のあちこちにプレートがつけられていて患者さんを楽しませてくれる。

エントランスの看板もあたたかみのあるオリジナルフォントに。

エントランスの看板もあたたかみのあるオリジナルフォントに。

患者さんのこと、地域のことを想い完成した眼科医院

建築時のことを振り返って、医院の設計を担当した小林建設の設計士である亀倉治さんにお話を伺いました。

(以下は亀倉さん談)
木の家のように、眼科医院をつくる針谷院長先生からのご要望をもとに、普段の住宅設計とほぼ同じ手法で眼科医院を計画していきました。最初の要望として特徴的だったことの一つ目は、これまで受診されている患者さんの大量の治療カルテの保管庫を収められる『収納』があること。これは、建物の一部に二階を設けて、そこに本棚のある書庫スペースや、院長室やスタッフルーム、水回りを集約することで解決しました。二つ目は、光熱費などの維持費用やメンテナンス性について。こちらには、普段私たちが住宅でも提案している『OMソーラーシステム(パッシブソーラーによる全館床暖房・換気の仕組み)』を採用しています。

 

働くスタッフや訪れる患者さんの心の拠り所となるように設計時には、患者さんにとってリラックスできる空間であることはもちろん、院長先生や5人のスタッフの皆さんにとっても長く働いて居心地の良い環境となるように心がけました。(建築後には)喜んでいただけていると感じています。「こうすれば良かった」というのはあまりなく、院長先生と綿密にコミュニケーションをとりながら進められたことが良かったです。
群馬県太田市の駅前ロータリーに面した立地条件であるものの、太田市駅前はドーナツ化現象が進んでいて、駅前にあまりにぎわいがない状況です。針谷院長先生とも、一般的な眼科医院というよりも、訪れる人がほっとできるような建物になって、地域のシンボルとなるような建物にしましょうと話していました。

 

地域の工務店として

今回は木造での眼科医院の建築工事でしたが、地域にある飲食や美容院の店舗建築や、保育園舎や学校の校舎を木造でつくる事例が、これから群馬や埼玉の地域でも増えていくことができたらとても素晴らしいことだなあと感じています。たくさんの人が出かけたくなる場所を木造でつくるお手伝い、そんな仕事をこれから私たちも挑戦してきたいですね。

「針谷眼科」の医院の設計を担当した亀倉治さん(小林建設 設計部・一級建築士)

「針谷眼科」の医院の設計を担当した亀倉治さん(小林建設 設計部・一級建築士)

施設仕様

施工会社
株式会社 小林建設
竣 工
2016年6月
意匠設計
株式会社 小林建設
敷地面積
217.81㎡
建築面積
1階:114.34㎡ 2階:266.24㎡
延床面積
180.58㎡
建物概要
木造二階建(在来工法) OMソーラー搭載
その他
地 域:商業地域 準防火地域
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