202淡路成ヶ島
「成ヶ島」は大阪湾の入口、洲本市由良地区にある小さな島ですが、大阪湾のガラパゴスともいえる生物多様性に富んだ無人島です。ここではすでに姿を消した絶滅危惧種にランクされている生き物などをたくさん見ることができます。一方でこの島はゴミの島です。海岸には大阪、神戸、瀬戸内、四国方面から漂着した膨大な量のゴミが打ち上げられ、島の豊かな自然が環境汚染に晒されています。 しかし、地域の人々やボランティアの保全活動で、今ではたくさんの生物を確認できるようになりました。温帯のマングローブともいわれるハマボウの咲く7月初め、成ヶ島を訪ねました。
島へは由良港から船で渡る。定員15名、鉢巻き姿の船頭さんが待ち構えています。僅か100mほどの海峡で泳いでも渡れそうですが、波が荒いと欠航です。成ヶ島を美しくする会代表のHさんから島の歴史や貴重な植生について説明がありました。明治時代には大阪湾を守る軍事的要衝とみなされ、成山、高崎に砲台がおかれたこと、戦後は潮干狩りや釣り人で一時賑ったこと。その後希少な動植物がいることが分かり、無人島として多様な生態系の保全に努めたたこと。なんと絶滅危惧種500種のうち100種がこの島に存在するそうです。島の最高峰成山50mへ登ると、由良港を守るように砂州が伸びていおり、紀淡海峡を挟んで対岸の友ヶ島が望めます。その様は淡路橋立と呼ばれています。
山を下り、海浜を歩きます。海岸には漂着物ゴミがありましたが、数年前に訪れた時よりずっと少なくなっていました。軽トラと何人かの人影を見ましたが、浜の清掃をされているのでしょう。大阪湾には時計回りの緩やかな流れがあるため、この流れに乗って漂流したゴミが自然海岸の残る成ヶ島や対岸の友ケ島に多く漂着・堆積し、美観を損ねるだけでなく海浜植物や海岸動物の生育を脅かしています。ペットボトルなどの生活ゴミが多く、主に近畿地方から遠くは中国・四国地方からも流れてきます。以前に訪れたときは宝塚のゴルフ練習場のマークのついたボールがあり驚きました。
成ヶ島は大阪湾の宝島と呼ばれていますが、植物はハマボウ、ハママツナ、ハマウツボなどに代表される貴重な海浜・海岸植物を主とし約300種類の植物が自生しています。海岸動物相も豊かで、ハクセンシオマネキ、アカテガニ、ハマガニ等カニ類や、アサリ、サクラガイなどをはじめ約500種類の貝類が確認され絶滅危惧種に指定されている貝も多く生息しています。また初夏には瀬戸内海岸側でアカウミガメの産卵も見られ、夏の夜には浅瀬でアカテガニの誕生も観察できます。この時期はとりわけ満開となったハマボウの樹林が見事でした。