夫のドナー検査が順調に進んだ。
手術日をとりあえず仮予約して
その日に向けて準備していきましょう...ということで
具体的な手術日が示された。
複雑な心境のまま
どんどん話が進んでいく。
自分の気持ちだけが取り残されていくようで
不安と焦りだけが膨らんでくる。
夫に
「もっとよく話し合おう」と言うと
「あの時できることがあったのに...と
後で後悔したくないからこれでいいんだ」
と言い切る。
そして
5月の最終日
最終結果の話を
夫婦そろって聞きに行った。
なんと
最後の検査で不適合となった。
この状態で移植をすると術後に拒絶反応が出る場合が多く
あまりお勧めできませんとのこと。

色々なことを考えながら過ごしてきただけに
何ともあっけない形で幕が下り
なんだか拍子抜けした感じだ。
それでも
自分で出せなかった結論を
検査結果が出してくれたようで
どこかホッとしている自分がいる。
道は閉ざされたけれど
これでよかったんだと思う。
心配してくれている共通の友人に報告すると
先日、夫と二人で食事をしたときに
移植手術を控えているから食事も気を付けているようだったのに
と聞かされた。
夫にはいろいろな思いをさせてしまい
申し訳なかったり
ありがたかったり
感謝の言葉しかない。
帰り道、のどかな川沿いに車を止めて
二人で
ゆっくりと散歩を楽しんだ。

お互いに
今回のことに触れることもなく
娘の話や他愛もない話をしたり・・・
それでも
車に戻るときに
「いろいろとありがとう」と言うと
じっと私を見つめて
笑顔を返してくれた。
なぜか熱いものがこみあげてきた。

そして翌日の朝から
何もなかったかのように
いつも通りの毎日が始まった。
夫は仕事に行っていた日よりも早く家を出て
バイクと工具だらけのガレージで趣味に没頭している。

私は
透析と仕事
その合間に好きなことと
母との時間を過ごしている。

朝、バタバタと家事をしながら支度を整え
一度車に乗るも
携帯を忘れたことに気づき
あわてて戻ったりして
それなりに忙しい。
この数か月間の
色々な思いも遠い昔の出来事のようだ。
赤信号で止まって一息つくとフッとおかしくなった。
こんな毎日が我が家らしい。

