2013年12月 - Classic音楽,リュート,宇宙
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Classic音楽,リュート,宇宙

クラシック音楽とリュート、宇宙・科学 etc

2013年のお気に入り盤  

さて、年越しまで数時間、今夜は帰省した息子とDVDでも見て過ごします。

ざっと今年のレビューを見返して、良かったなと思う音盤です。
旧来から知っている演奏でLPを再入手したものも含むのでかなりの数になりました。各部門ベスト3くらいに絞るのがよいですが、どうにも選外にできません^^;思い切り優柔不断なのです。青:CD オレンジ:LP

O.ダントーネ:バッハ チェンバロ協奏曲
Van ワース:ハイドン交響曲86番
ボッケリーニ:ギター五重奏曲第4番「ファンダンゴ」ほか
P.ティボー:ハイドン トランペット協奏曲
M.アンドレ&J.L.コボス:ハイドン tp協奏曲 LP
ムター&カラヤン:ベートーヴェンvl協奏曲 LP
V.ムローヴァ:バッハ ヴァイオリン協奏曲
P-Jan・ベルダー:バッハ ブランデンブルク協奏曲
K.リヒター:バッハ ブランデンブルク協奏曲 LP
P-Jan・ベルダー:テレマン ターフェル・ムジーク
B.ハイティンク:ハイドン交響曲第86番(ライヴ)
C.デイヴィス:ハイドン交響曲第86番 LP
E.ギレリス:ブラームス ピアノ協奏曲第1番ニ短調 LP
A.シェルバウム:トランペット協奏曲集 LP
P.ティボー:フンメル トランペット協奏曲 LP
R.グッドマン:ハイドン交響曲第22~25番
D.ゲリンガス:ハイドン チェロ協奏曲1番、2番
M.アンドレ:ハイドン トランペット協奏曲(アルヒーフ盤) LP
スメタナ弦楽四重奏団:シューベルトSQ No.14「死と乙女」LP
M.シェーファー:バロック・リュートの音楽 第3集 LP
ルベン・シメオ:トランペット協奏曲集
F.フリッチャイ:ベートーヴェン交響曲第5番「運命」LP
G.レオンハルト:バッハ ブランデンブルク協奏曲 LP
エクルンド:バロック・トランペットの技巧 第4集
F.フリッチャイ:ベートーヴェン交響曲第9番「合唱」LP
A.マンゼ:バッハ管弦楽組曲
サラゴンSQ:J.M.クラウス 弦楽四重奏曲集

今年はトランペットの名演に凝った傾向があります。
不動の傑作ハイドン交響曲86番を3枚追加、いずれもツボを捉えた名演です。
今まで目を向けてこなかったボッケリーニ室内楽の魅力を発見。
LPもこまめに入手、良好盤が多く針をおろすのが楽しみでした。
来年も同じようなことを続けると思います;

皆様良いお年をお迎えください。

category: 時事・雑記

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ソンブレロ銀河  

地上望遠鏡の写真でも昔からお馴染みだったソンブレロ銀河ことM104ですが、これもハッブル宇宙望遠鏡で臨場感のある画像が見られるようになりました、距離4600万光年だそうですが、ごく近傍でしょうね。

m104c.jpg
M104 地上望遠鏡

しかし、銀河の形としてはひじょうに珍しい、以前はバルジの大きな渦巻銀河だと考えられていましたが、にしてはバルジとやらが大きすぎる、アンドロメダ銀河の中央のバルジを見ても黄色い古い星が多いですが、このM104のバルジとされる星々は黄色くはない?星間ガスを含む円盤は渦巻きというより、リング状に見える、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線画像で銀河は透けて見えますがその様子がよくわかり、まるで楕円銀河をリングが取り巻いた姿です。

m104.jpg
宇宙望遠鏡 上:可視光 下:赤外線

たぶん中心に向けての重力が強く、速い速度で回転していないと、この整った形は維持できないだろうと思いますが、中心のブラックホールも超大質量でダークマターも多いとか・・とても活動的で星もいっぱい生れているのかも、全体を取り巻く球体=ハロー内の球状星団の数も他の銀河より多いそうです。
宇宙初期の小銀河が合体を繰り返して多くの渦巻銀河が出来てきたわけですが、まだ形の整っていないのもあり、様々ですね。しかしこのM104はどんな経緯でこんな姿になったのか、似たような例がないので見当もつきません?直径は14万光年とされていますが、これも修正が多い数字です、大きいのも形が整う条件とは思いますが。
大きな画像を見ると、後方にもおびただしい銀河が写っていて宇宙の奥行きを感じます。本当に空間は三次元的に無限なのか・・

category: 科学・自然・雑学

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年末20%OFFセール  

今年最後の中古ショップ通いです。さっと行ってさっと帰ってきました。今年はもう一度欲しいなと頭に浮かんだLP盤を執念で集めた一年でした、状態がイマイチの盤は数枚取り寄せて良いのを選ぶという場面も・・^^;さて今日は以下の4枚、

12 29lpa
上、スメタナ弦楽四重奏団&J.スーク モーツァルト 弦楽五重奏曲No.3&4 DENON
下、カラヤン指揮、BPO J.シュトラウス ワルツ集 D.G


スメタナSQ & スークのモーツァルト、クィンテットは良い意味でクール、爽快緻密なアンサンブルで曲の構成をきっちり聴かせます。片面に34分という録音時間ですが、さすがDENON、内周いっぱいまで刻まれていますが最後まで歪なしです、ハーフ・スピード・カッティング=音源再生とカッティング回転を通常の半分の速度にして行う、これによりカッティング・マシンのレスポンスが十分反映した溝切りができる、これの効果でしょうか。品質チェックも良く不具合箇所はありません。
次のカラヤン、J.シュトラウスはD.Gチューリップ盤、古いだけあって多少ノイズなど不具合箇所はありますが、フリッチャイのJ.シュトラウス集とは一味違った好録音、カラヤンらしいJ.シュトラウスですが、BPOの弦がVPOも真っ青なチャーミングな表情も聴かせます。

12 29lpb
上、カラヤン指揮、BPO ベートーヴェン交響曲第9番「合唱」1962年D.G
下、F.フリッチャイ、BPO 同上 1957年D.G(ドイツ盤)
 
 

次は第九が2枚、上のカラヤン&BPO(1962年)は何度もCDで聴いたはずですが、これも1枚のLPに詰め込んだというハンディーを感じさせない、充実した響き、まったく古臭さがない生きたサウンドなんですね。カラヤンのレガート基調のぐいぐい押す推進力もいいもんです。
下がまたもフリッチャイの第九、ただしドイツ盤で新盤状態、、盤が私を呼んだというか、ひょいと目に入ってしまった;ちょい高かったけど2割引き、不具合箇所なしでじつに良好、前に買ったのは予備としましょう^^両雄のgoodな第九が揃いました。

category: 音響機器

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科学史の順序  

科学史の発見の前後関係は意外に思うことがあります。
まず、光の速度はハイドンが生れる以前にわかっていたんですね、1725年のこと、イギリスの天文学者ジェームズ・ブラッドリーがある恒星の年周視差を観測していたところ、光行差というものを発見し、これが光速度を計算できるものだった、わずかな誤差でほぼ秒速30万kmと算出した。その後1849年になってフランスの物理学者M.フィゾーが歯車の装置で光の速度を正確に実測した、その後イギリスのJ.C.マクスウェルが1864年に電磁気学の理論計算で導き出した電磁波の速度がフィゾーの光速度と一致するのに気付き、光も電磁波の一種だとわかった。私はこの順序はフィゾーが一番最後だと思い込んでいました;いずれにしても光速度が早くも18世紀、19世紀にはほぼ完璧にわかっていたというのはのは凄いと思います。
一方、アンドロメダ銀河が我々の銀河系内の天体なのか、外にあるのか、何だか原始的にも思える課題が20世紀に入った1924年、E.ハッブルの観測でようやくわかった、というのにも驚きます、それだけ途方もない宇宙の距離を測るのは難題だったということでしょう。セファイド変光星の光度で測定したのですが。

アンドロメダ
M31 アンドロメダ銀河

天の川を広角で写真に撮れば銀河を内部から見た様子だと容易にイメージ出来るし、アンドロメダ銀河も外部から斜め横に眺めた同様の銀河だと今でこそ容易に想像できますが;いざ距離を測るとなると三角測量で精度良く測った近場の天体の距離を根拠に積み上げしていくしかない、遠くなるほど誤差も見込まれ、現在254±6万光年とされているアンドロメダ銀河の距離も何度か(大きく)修正されています。ぼんやりと光のシミのように見えていた遠方の銀河の姿もハッブル宇宙望遠鏡のおかげで、実体感を感じるほどに見られるようになりました。
さて作曲家が本業だったという天王星の発見で有名なウィリアム・ハーシェル(1738-1822)

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ウィリアム・ハーシェル(1738-1822) 

後にハーシェルは天文学に力をいれましたが、我々の銀河系がほぼ円盤型をしているというのを最初に発見したのも偉業です。観測法は夜空の視野を区切り、星の数を数えていくという天文学者らしい地道な作業、しかし未知のことを探るのに余念がない科学者共通のロマンティストだったんでしょうね。ちなみにウィリアムの息子、ジョン・ハーシェルはオリオン座のベテルギウスが脈動変光星であるのを発見、天文一家です。

ハーシェルの銀河系
ハーシェルの銀河系、青丸の位置が太陽系、右側の窪みは銀河中心方向で、星間ガスで星が少なく見えた結果。  また全体を囲むように大きめに描かれた星は球状星団かも 

当然、W.ハーシェルがどんな曲を書いたのだろうと興味は湧きます。あらためてレビューしたいです。

category: 科学・自然・雑学

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マリオ・アゴスト:バッハ リュート作品全集  

バロックリュートというのは実に厄介な楽器です。調弦が面倒とか壊れやすいとかは置いといて、表現上、特に鳴らしたい音が鳴らない、音価いっぱい伸ばしたい音が技術上切らざるを得ない、弦がいっぱい張られていて、ある和音のアルペッジョを弾いたら弾いてもいない弦が旺盛に共鳴しだす、和音外の音は極力消さなきゃいけない、こんな小回りの利かない楽器でバッハを満足に表現するなんて至難の業です;よって全曲録音する、というだけで偉業なんですが。
さてバッハのリュート曲CDなんて久しぶりですが、これもBRILLIANT CLASSICS、演奏はイタリアの奏者、マリオ・ダゴスト、詳しい情報はわかりませんが、ホプキンソン・スミスに学んだ人のようです。あまり音量派ではなく、弾弦は響孔付近を弾く音、そういえば師H.スミスの影響も感じられます。
録音がまた現実的、音を拡大した感じがなく、通常のボリューム位置で生で聴く感覚、ここは好感がもてます。今では何度も録音して良いところを継ぎ接ぎ編集するのが普通でしょうが、BWV1000では調弦のやや狂った状態が曲の始まりから最後まで続くので一発録りに近いかもしれません。弦はナイルガット(合成弦)らしい響きがハッキリ聴こえます。

bach lute

組曲No.1 e-moll BWV996 最初のプレリュードは前半がパッサジォ、その名のとおり、パッセージの連なり、鍵盤的な曲だがリュートの運指上の特性を活かしてセンス良くまとめている、後半は2声のフーガ、ほんの短いフーガでもリュートには大変、ここは急がず堅実にまとめる。続く舞曲も急がないテンポで反復では装飾演奏をふんだんに行う、ややワンパターンなところがあるが。
プレリュード、フーガ、アレグロ BWV998 曲ごとにマイクのセッティングが変るせいか、前曲と少し違って聴こえる、生っぽい録音は良いが少し小寂しいような、昔、自宅の録音機で録ったのがこんな音でリュートってこんなショボい音かと思ったのを思い出す。さて演奏はプレリュードは普通、フーガはゆったりとしたテーマがいかにもリュート的、入念に運指を決めたうえ慎重に弾き進む様子が目に浮かぶ、喜遊部に入ってもフーガのテーマが顔をだすが、そこはくっきりと聴かせる。アレグロは鍵盤的でやはり慎重に運ぶしかない、丹念にバス弦は消音している。
組曲No.3 g-moll BWV995、無伴奏チェロ組曲No.5のリュート編で、これはリュート譜も残る、実際リュートで弾かれた作品、最初のプレリュードはフランス序曲を意識した曲、グラーヴェの部分は深々とした感覚より軽やかさを出す、アレグロ部分は標準的でスリリングではない。この曲の注目はサラバンド、反復での装飾をかなり踏み込んで演奏する。終曲ジーグの反復の装飾が切れが良く心地よい。
組曲No.4 e-dur BWV1006a プレリュードは普通でしょう、あまり超人的に鮮やかじゃないところがリュートらしい振る舞いで安心して聴ける。二曲目のルールはもう少し伸びやかであってほしいが、やや細切れっぽくなる。最後のブーレとジーグがかなりゆっくりと始まるが、反復での装飾演奏のため余裕を取っている。
フーガ g-moll BWV1000 楽譜は奏者によっていろんな版を使うが、ここではバッハの弟子が書いたリュート譜として残された版の演奏、ハイポジションで調弦の狂いが目立つがそれは最後まで続く、単純に和音で書かれた部分は鮮やかなアルペッジョにして弾く、終結は大袈裟に粘らず、最後の和音はキッパリと簡潔に鳴らして終わる。
意外にもリュートには一番不向きな曲のNo.1 BWV996が良かったです。

category: J.S.バッハ

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Pro arte antiqua Praha:ベートーヴェン交響曲第7番(室内楽版)  

室内楽が続きますが、今日の中身は交響曲です。
交響曲の室内楽版と言えば以前、コンバッティメント・コンソート・アムステルダムによるハイドン交響曲100、101番(室内楽版)をレビューしました、この団体はモダン楽器の古楽奏法でしたが、ハイドンの交響曲を美しい室内楽として仕上げていました、またフルートが1本入っている分、響きも華やぎました。一方当盤は同じレーベルでややこしいですが;プロ・アルテ・アンティクァ・プラハの古楽器による弦楽五重奏編、白熱したベートーヴェン第7をどう表現するか、興味が湧いて求めたものです。この演奏は渋い響きで室内楽的と言うより、オーケストラの何分の一かのスケール・モデルを表現しているように聴こえます。あくまでオーケストラで聴いたことがある、というのが前提でしょうが、演奏されるのは大ホールではなくサロンのはず、近くで聴くチェロというのは結構迫力があり、コントラバスのずっしりくる響きやティンパニの轟きまで暗示します。また弦のアタックの鋭い立ち上げでダイナミクスを表現します。

be sym 7 quin
プロ・アルテ・アンティクァ・プラハ
1996年録音 プラハ


第一楽章、ピュア・トーンの細い響きながら、気合いの入った序奏の始まり、チェロの響きにティンパニも含まれているように感じる。テンポは速めにとり、躍動感を強める。管楽器の代役もすべて弦が務めながら主部に入る、よくあるテンポ、弱音方向にぐっと音量幅を設けているためか、各声部が意外に懐深く聴こえる、いくつかのパートが歌い継ぐところ、1本の楽器でやらなきゃいけない場面など、編曲の苦心も時折感じながら;提示部は見事に進む、展開部のじりじりクレシェンドをかけるところ、さすがに大変だが、聴き手の心理を最強音へと導いていく。もともと曲が持っているエネルギーもあるでしょう。
第二楽章、ここはアレグレットらしいテンポでリズムは軽やかに打つ、そこにレガートな味わいでテーマを重ねていく、オーケストラでは音が埋め込み合って聴きづらかった動きが明瞭に聴こえるのは逆に強みでしょう。
第三楽章、この楽章が一番面白く聴ける、弦上に弓が跳ねる響きが、小刻みで切迫感のあるスケルツォにぴったりくる、とても自然でこの編成の為に書かれたように聴こえる。ピチカート音も余韻がよく聴こえ、表現の妙でダイナミクスも十分、なかなかの迫力で押してくる。トリオでは内声を弾く第二vlやvaが管楽器かと錯覚するように響く。
終楽章、冒頭の気合い、切れ味でツカミはgood、怒涛のような楽章だが、強く響かせる音はちょっと長めに弾き、弱い音は短く弾く、量感の差で表現するなどテクニックというのはあるもんです。最後まで見事に白熱感に引き込んで終わる。それにしても終番のトレモロ音の鋭さは凄い、LP盤の歪み音を聴いているようです;
バロックやハイドンまでの音楽には不向きでしょうが、ここではベートーヴェンsymphonyを満足させる演奏を実現しています。フランツ・リストによるピアノ編曲もまた違った角度から味わうようで良いですね。

category: ベートーヴェン

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サラゴンSQ:J.M.クラウス 弦楽四重奏曲集  

私が隠れファンである、ヨーゼフ・マルティン・クラウス、べつに隠れなくてもよいですが;今日は古楽SQのサラゴン四重奏団によるアルバム。
クラウスはハイドンのSQの書法を十分継承し、4つのパートは見事に綾を成す、また大バッハの孫弟子ゆえであろうか、奥の深い対位法でも魅了する、4つの楽章という定型に拘らず、3楽章だったり2楽章だったり、古典派でありながら、バロックのような、ロマン派のような精神性を表し、予測できない自由な構成、とてもインテリジェンスな音楽に巻き込まれます。全曲素晴らしいですが構成を掴むのが難しく全てレビューはしんどいので3曲に絞ります;

j m kraus sq
クラウスの肖像画のテーブルにはビールが美味しそうに描かれていますが、そこをCDにプリントしたところが粋です^^
j m kraus sq2

1曲目G-durは4つの楽章、第一楽章アレグロはソナタ形式、撫でやかな親しみ易い動機は印象的でもあり支配的、提示部から各パートの緊密な重なりが見事、デリケートな接続句を置いて次へと繋ぐ、いつの間にか展開部に入っている、深い転調の緊迫感とシンコペーションの推進力で引き込む、再現部に移るにも繊細な書法、ハイドンのようにきっぱりと区切らない、結構長い再現部で構成上の追加部分で充実させる。消えるように楽章を閉じる。
第二楽章はScozzese(スコットランドの踊り)、3拍子で民族的、メヌエットの代りであろうか、トリオに相当しそうな中間部もある。スケルツォとも違う新鮮な感覚。
第三楽章、ラルゴ、これは孤独感のある短調の主題で開始、vlがソロを奏でる部分は美しい、それをvcが受け継ぐ、一段と精神性の深さを綴る、安らいだ長調の挿入部が入り気分を変え、また短調に戻る。消えるように終わり終楽章へ続けて入る。
終楽章、アレグロ・アッサイ、明るく軽快な動機を奏で、すぐ切れ味鋭く全パートが凌ぎ合う、短いがクラウスらしい緊迫感で魅了して終わる。

3曲目E-dur、全楽章、旋律美が特長の親しみやすい曲、これが当CDでは世界初録音とされている、埋もれていたのはもったいない話。
第一楽章アレグロ・コン・ブリオ、流麗な親しみやすい主題、提示部は快調、短調となった展開部は構成は見事でちょっとハイドンを凌ぐ粋な雰囲気、全体にボッケリーニ風というかラテン的な趣も感じる。魅惑的な旋律の楽章。
第二楽章アダージョもなかなかの旋律美、4パートの綾も味わい深い。中間部分でチェロがレシタティーボを奏る、消えるように終わって終楽章へ続けて入る。
終楽章、アレグレット、ロンド形式か、愛らしいテーマで始まるがすぐ、畳み込むようなキビキビした挿入部に入る、vlが小気味よいパッセージを弾く、チェロのソロも聴かせる、終楽章もスっと消えるように終わる。

4曲目g-moll、3楽章の短めの曲ですが、これぞクラウスの魅力が詰まった作品、モーツァルトにもハイドンにも期待できない曲です。
第一楽章アンダンテ・コンモート、短い印象的な導入部があり、二重フーガが始まる、これはバッハの「フーガの技法」を連想する、リチェルカーレと呼ぶべきか、書法といい深い趣といい、傑作です、再び冒頭の導入部を聴かせ、フーガの再開、ただし最初とは書き方を変えて、ただの繰り返しにしない。
第二楽章、ロマンツェ、第一楽章とはがらりと趣を変え、いかにもロマンツェらしいテーマで始まる、しかし緊迫感のある中間部はロマンツェとはかけ離れた趣。
第三楽章、テンポ・ディ・メヌエット、短い曲だが、小悪魔の踊りのような怪しげなテーマは意外で引き付ける、これも並みの発想ではないクラウスの魅力でしょう。

J.M.クラウスのカテゴリに書くのはこれで10件目です。クラウスはNAXOSレーベルで知るようになりましたが、数は少なくとも良い演奏で現代に蘇ったのは幸いです。サラゴン四重奏団の演奏も作品の真価を聴かせてくれる秀逸なものでしょう。

category: J.M.クラウス

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ボッケリーニ・エディションより:pfとvlのためのソナタ  

今日もBRILLIANT CLASSICSのBOXセット、以前一部取り上げたボッケリーニ・エディションよりvlとpfのためのソナタ集です。ボッケリーニといえばスペインに移ってからの作品がやはり魅力ですが、これらはイタリア時代の曲、純粋な古典派第一線の作品として聴かせます。ピアノの技法や曲想から感じるのはモーツァルトより、A.サリエリの作風に近い感じですね。軽やかな古楽器のヴァイオリン、フォルテ・ピアノによる繊細な演奏は申し分なし、作曲家の頭に閃いた響きが伝わってくるようです、こうでなきゃボッケリーニの真価は聴き辛いでしょう。

ボッケリーニ ed
フォルテピアノ:Franco Angeleri
ヴァイオリン:Enrico Gatti


1曲目変ロ長調G25op.5-1および2曲目ハ長調G25op.5-1は3楽章の整ったソナタ、第一楽章はpfとvlが交互に主旋律を弾いたり、助奏したり、センスの良いテーマが歌い継がれ、標準的ながら美しく退屈させない。緩抒楽章はイタリアらしい情緒に溢れる、ハ長調のほうは短調に変り感傷的、終楽章は軽快に切れ味よく駆け抜ける。
3曲目変ロ長調G23op.5-3は二つの楽章、第一楽章モデラートは旋律美が一段と光る、第二楽章アレグロは闊達でvlとpfの間髪いれない掛け合い、和合が良い。
4曲目ニ長調G28op.5-4、第一楽章は安らかなアンダンテ、第二楽章で気分一転、交響曲ニ短調G506op.12-4“悪魔の家”第一楽章のアレグロ部分と同一曲が置かれる、pfとvlの2つでシンフォニックな気迫を聴かせ、これは圧巻。終楽章ロンド・アレグレットで再び落ち着く。
5曲目ト短調G29op.5-5、第一楽章、短調作品になると後のスペイン時代にありそうな一面も感じる、vlがシンコペーションを多用しリズムの快速感をけん引する、短かいが魅力的な楽章。第二楽章アンダンテ・レントは長調でここはモーツァルト的味わいも聴かれる。終楽章プレストは短調にもどるが、長調に移る傾向が多い、軽快な魅力で駆け抜ける。
6曲目変ホ長調G30op.5-6、第一楽章アレグロ・マエストーソはいかにも楽天的なマエストーソで始まるがpfが伴奏しvlが短調のテーマを歌うなど変化に富んだ味わい。第二楽章ロンド・アレグレット、まさにロンドのお手本のようだが、挿入部分のセンスは光る。

category: L.ボッケリーニ

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A.マンゼ:バッハ管弦楽組曲  

お得なBRILLIANT CLASSICSのBOXセット、ついつい集めてしまいますが、中身は一級品が多いです。今日は4枚組で内2枚は以前レビューしたP-Jan ベルダー率いるムジカ・アムフォンのブランデンブルク協奏曲集、残り2枚はアンドルー・マンゼ率いるラ・ストラヴァガンツァ・ケルンによる管弦楽組曲集です。いずれも古楽として標準的な表現と言えますが従来より磨きをかけた美しい演奏で統一感があります。
A.マンゼによる管弦楽組曲を聴きます、DENON原盤によるもの。

bach suites
アンドルー・マンゼ指揮、ラ・ストラヴァガンツァ・ケルン
fl.トラヴェルソ:有田正広
1994年録音


4曲ともハっとするスリリングな即興性はないですが、入念に練り上げたアンサンブルが聴きどころ、4曲中第2番はポピュラーゆえにあまり聴かなかったのですが、有田正広がfl.トラヴェルソを吹く当演奏は特筆ものですばらしい、序曲のグラーヴェから満足、多くの部分でトラヴェルソと1st,vlは重なるが、有田の安定した美しいトラヴェルソとマンゼの弾くvlとが緻密なまでに同化して響く、お互いの音を聴きながら見事に質を合わせている。こんな充実したグラーヴェは初めて聴く、グラーヴェの終わりでふっと力を抜き、アレグロに入る瞬間の気品が良い、アレグロに入ってもflとvlの一体感は維持する。続く舞曲、特にゆったりしたサラバンドでは同様の魅力を聴かせる。各楽章、程よいテンポで急がずじっくり聴かせる。
ほかの曲も良いです、第1番の序曲はもっともテレマンに近い快活さが魅力、インネガルのリズムを取るグラーヴェはリズムの妙に引き付ける、アレグロは期待どおり切れ味よく快活。
第3番はtp、timpの押し出しが程よく、バランスの良い録音でサウンド的にも楽しめる、アリアは複数人の弦楽で幾分速いテンポをとりながら、とてもしなやかなアンサンブルで魅了。
第4番、これはtp、timpの無い版が使われる、しかしまったく不足感はない、序曲のアレグロは私の一番好きなところ、弾むような一貫したリズム、深く迷い込む転調、バッハならではの不思議な魔力のようなもので引き付けて行く、マンゼの演奏はツボを掴みきったように快調。続く舞曲もこの作品は面白い、最後のレジュイサンスは傑作です。
またこの2枚にはカンタータのシンフォニアが2曲挿入されていて、1曲はBWV29、原曲は無伴奏vlやギター、リュートでも演奏されるBWV1006のプレリュード、バッハは編曲を数々聴かせてくれるが、ここではオルガンがソロを弾き管弦楽が加わる、tpやtimpが鳴るところはバッハが力感の入れどころを示していて、無伴奏曲の参考にもなるでしょう。
もう1つはBWV146のシンフォニア、この原曲はBWV1052、チェンバロ協奏曲No.1の第一楽章の編曲、これも元々はvl協奏曲でここではオルガンがソロを弾く、この霊感に満ちた曲が一味違ったホールトーン豊かな響きで味わえる。

category: J.S.バッハ

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C.ホグウッド:ハイドン交響曲第71番、73番「狩」  

C.ホグウッド指揮、AAMによるハイドンの中期交響曲、今日は71番と73番「狩」を聴きます。
70番の終楽章の見事さから気合いが持続したまま書かれたような71番は、待ってました、と言いたい作品。71番なんて全集でもなければ録音される機会もないであろう隠れた傑作です。それまでの作品の焼きまわしのような感覚はなく、聴き始めからハイドンの新感覚にあふれています。凝り過ぎていて聴きづらいとの声もあるでしょうが、通好みの曲でしょう。それをホグウッドは申し分ない演奏で聴かせてくれる。
73番「狩」こちらはよく演奏されるお馴染みの曲ですが、親しまれやすいポピュラー性も傑作の要素だとしたらこれも優れていると言えましょう。

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71番 変ロ長調、第一楽章、トゥッテイ・ユニゾンの太い響き、涼やかな響きを交互に聴かせる序奏は短かいが印象的、主部は軽妙な動機で入り、ユニゾンの力感も交互に入れる、快調な第一主題が進み、突如バスのリズムが止み、快速感を消して、弦+obの涼やかな和声を緩抒楽章のごとく聴かせる、転調の成り行きが瞑想的。提示部の最後に活発で特徴的な第二主題が出る。展開部はそのまま第二主題で始める、しばし進め疑似再現を聴かせるが展開部後半に入る、第一主題を繰り返す転調を聴かせるがこれがまたいい、そして本当の再現部が変化した魅力で閉めくくる。ホグウッドは後半も反復して十分聴かせる。この第一楽章は85番「王妃」第一楽章の元になっている感じも受けます?
第二楽章、変奏曲だが主題はごく落ち着いたもの、これが第一変奏から流麗な魅力となる、第二変奏はフルートとファゴットが開離音程でテーマを演奏、ユニゾンや掛け合いを聴かせるがユニークな響き、第三変奏は3連符型となる、再び初めのテーマに戻ったあと、カデンツァの開始和音が響く、何かのソロが始まると思いきや、全パート重奏と言えるような書き方、簡略ながら面白い。
メヌエット、テーマがありふれておらず印象的、トリオはvl2本とvcのトリオに弦楽が合いの手を入れる、一工夫ある味わい。
終楽章が傑作、かっちりしたソナタ形式、始まりはいつものハイドンらしい爽やかな第一主題で快調に進み、ちょっと装飾音型の入った第二主題も一味添える、展開部は調を変えた第一主題で始まる、巧みな転調で瞑想に引き込む、ここでも疑似再現があり、その後は見事な対位法を加えてさらに引き込む、そして本物の再現部に戻るが、本当に無駄のない充実楽章です。もちろんホグウッドは反復する。

73番 ニ長調「狩」、さすがに全楽章親しみやすいですね、C.ホグウッド、AAMの極上の演奏で聴けます。第一楽章のハイドンならではの健康的な快調さだけでも魅力、聴き馴れすぎて気付きませんでしたが、展開部の見事な対位法、転調が聴きどころです。ただ転用曲の終楽章はタイプが違い、71番の魅力には及ばないかな。

category: F.J.ハイドン

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F.フリッチャイ:ベートーヴェン交響曲第9番「合唱」  

今週は小忙しく、レビューが書けませんでした。年末並みの寒さにもまいります;今、外気温は1℃、風速が1m増すごとに体感温度は1℃下がるそうですね。
冬の音楽はなにかと厄介です、まず人間が温まってリラックス、楽器、リュートも部屋の暖房に馴染むのを待つ、それからスタートです。
LP盤再生も同じですね、盤が冷え切っていては硬直して歪み感があり、本来の音が出ません、盤もシステムも暖房に馴染んでから、ゆったりとストレッチされた響きになります。
大晦日にはまだ早いですが、今日は第九、フェレンツ・フリッチャイのLPです。予備に取り寄せたD.Gスペシャル盤のほうで、コンディションが良く、じっくり聴けます。録音は1957年、この素晴らしい録音は時代感覚を惑わせます;両面合わせて約1時間15分ですが、限られた盤スペースに見事なカッティング配分で不足感のないサウンド、カートリッジは図太く再生するAT-DS3を使用、CDのやや硬化した響きに対し弦の瑞々しい感触がいい。

フリッチャイ be sym9
フェレンツ・フリッチャイ指揮、ベルリン・フィルハーモニーO
イルムガルト・ゼーフリート(S)、モーリン・フォレスター(A)
エルンスト・ヘフリガー(T)、D.フィッシャー=ディースカウ(B)
聖ヘトヴィヒ大聖堂聖歌隊


第一楽章は遅くない自然なテンポ、強弱の起伏を深く、ビシっとした響きの緊張、やんわりとポルタメントの効いた弦、いずれも引き付ける気迫を維持し、時間の経つのも忘れる、大袈裟ではないが効果的なアッチェルランドを行う。
第二楽章は快速、スケルツォのリズムがことのほか緊迫感があり、強弱が深く、ピアニッシモになるほど引き付ける。
そして素晴らしい第三楽章、年末に第九を聴くという習慣で意義があるのはこの第三楽章が一年の心の垢を洗い落してくれる効果でしょうか。長い変奏曲ですが、変奏曲であることを忘れて自然な雲の流れのように聴いてしまう神がかった傑作楽章です。フリッチャイは起伏の深い演奏で理想と言えましょう、終番ではトランペットが鳴り響きますが、この響きが半端じゃない高鳴り、終楽章の前にも大きなクライマックスを聴かせます。第三楽章の途中で盤を裏返すことになりますが、それが楽しみな?充実感。
終楽章の乱奏的な始まりは管の響きが中心、バス弦によるレシタティーボは深々と響く、ここは音盤の優秀さで満足、バス弦で始まる歓喜の歌は遅くせず淡々と始め、声部が重なって壮大に発展、アッチェルランドがかかり、再び乱奏、声楽部へ突入、ここまで聴けばあとの見事さは十分予感できる。

category: ベートーヴェン

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ホグウッド:ハイドン交響曲第62、63、70番  

ハイドンの交響曲60~70番代というのは傑作もあるけど、不揃いといった感じです。期待しすぎてもいけない;作品成立の背景もあってか、オペラなど他の作品からの転用曲もあり、どうにか4つの楽章を繕って交響曲にしたような作品もあります。ホグウッドは目いっぱい美しく演奏していますが、この1枚にカップリングされた62、63、70番を通して聴くと、ローカルな地に所々花が咲いているような印象です。

hay 62 63 70

62番、第一楽章は53番「帝国」の終楽章Bヴァージョンからの転用で、快活な魅力は聴かせるが頭の楽章とするにはどうも役不足、展開部も転調しながら同じゼクエンツの繰り返しで簡潔に終わる。
第二楽章、アレグレットは涼やかでこの時期の緩抒楽章らしさにダイナミクスも聴かせる、深い瞑想に誘うとまでは行かない。
メヌエット、普通のメヌエットであり、特に印象強いものはない、トリオも同様。
終楽章、ようやくハイドンらしい切れ味が聴かれる。調の移ろいも引き付ける、パワー全開の曲、とまでは行かないが。

63番「ラ・ロスクラーヌ」、第一楽章はオペラ「月の世界」序曲の転用、疾風怒涛期の作風だが、さすがオペラ序曲だけあって華やかなまとまりを持つ、展開部以後も木管の活躍も味わいがあり、型どおりだが心地よく運ぶ。
第二楽章アレグレットは「ロスクラーヌ」という劇音楽からの転用、弦にフルートが重なり、おとぎ話の一場面のような雰囲気を聴かせる。
メヌエット、これも劇音楽かもしれない雰囲気のメヌエット、トリオも親しみやすいが、まあ月並みな範囲。
終楽章で救われる、切れ味のよい主題で意外な転調がある、展開部は対位法で書かれ、終結にかけて82番「熊」の終楽章を予感させる、ここは痛快。

70番、第一楽章はtp、timpの入る祝祭的な曲、晴れやかな魅力は聴かせるが流麗な部分はなく、展開部も簡潔。
第二楽章、「二重対位法によるカノン」というタイトルが付いている楽章は珍しい。二つの主題による変奏曲で単調の悲歌的な主題が印象的。
メヌエット、活発な主題のメヌエット、3曲の中では一番良い感じかな、トリオは実に素朴。
終楽章、vlの弱奏で始まる動機はD音を刻む音、どこかで聴いたような?人間ドックの聴力検査の発信音に似ている^^;バスが単純な呼応を聴かせる、なんか頼りない雰囲気の導入、しかし一転、休符を置いてこの動機がいきなり見事なフーガとなる、ヘンデルのフーガ楽章にも似たバロック的な魅力を彷彿させ、tp、timpが加わって独自の輝きも放つ。後半長調に変り、もう一息盛り上げてくれる、と思ったところでまた冒頭の"発信音"、スパっと鋏が入って終わる、しかしここでは大輪の花です。

category: F.J.ハイドン

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ペグ・ワックスの使い道  

写真の液剤はリュートのペグなどに塗って滑り止め効果を強くするものです。松ヤニの成分に近いものと思いますが、効きが強すぎて使う箇所は限定されました;よほど緩みやすくて困るペグだけ、ごく少量です。

ペグ ワックス

新しく買った靴の紐がツルツルしていて、どう結んでも締まらず、すぐほどけてしまう;そこで思い出したのがこのペグ・ワックス、紐の結ぶあたりに軽く塗ってやったら、思惑どおり、がっちり結べて緩みません^^v

靴

使い道はあるだろうと思っていましたが、このためにあるような・・

category: 時事・雑記

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C.ホグウッド:ハイドン交響曲第67番、68番  

ハイドンの中期交響曲、60~70番代というのは結構聴き漏らしていたあたりです。着々とハイドンの力量が蓄えられてきた聴きごたえ十分の作品群です。今日はしばらく保留してあったホグウッド盤、緻密なアンサンブルできりっと整えながら柔軟な味わいも聴かせてくれる演奏で67番、68番のカップリングを聴きました。

hog hay 67 68
クリストファー・ホグウッド指揮、エンシェント室内O

67番、第一楽章プレストは第一主題の小刻みで切れ味よい快調なスピード感が魅力、終楽章的でもある。第一主題が支配的で、簡潔な第二主題も出るが、第一主題後半の変形のようでもある。展開部は第一主題を使い、ポリフォニックな聴かせどころが用意される、再現部はほぼ型どおりという感じ。後半も反復して楽しませる。
第二楽章、アダージョもソナタ形式、第一楽章の活気を沈静化するような始まり、疾風怒涛期からすでにあった弱奏の中に深く引き込む魅力もあり、充実感を増す。展開部では短調に転じ、弦によるカノンを聴かせ、再現部は普通に、終結では弓の背で弦を叩く奏法で閉じる。
メヌエット、53番でも聴いたような明快で印象的なメヌエット主題が魅力、トリオはvl2本のみで弾かれる素朴な音楽。
終楽章、アレグロ・ディ・モルトは活気よく始まる楽章だが意外にも中間にアダージョ・エ・カンタービレが挿入され結構長い、vl2つとvcによるトリオだが、古楽器による演奏はバリトン・トリオを思わせる古雅な味わい、やがて木管や弦楽も加わって発展する、再びアレグロの再現部となって終わる。

68番、第一楽章、弦の弱奏で動機が始まり活気に満ちたトゥッティが続くがじつに健康的で明るい魅力、こういう曲はいくつあってもいい、展開部そのものはあまり凝っていないが続く再現部と一体となった充実感で聴かせる、ここも後半反復する。
第二楽章にメヌエットを置く、なで肩のメヌエット主題でさらりと聴き流せるタイプ、トリオも簡潔でさほど主張感はない、軽い印象で終わる。
第三楽章、アダージョ・カンタービレ、3度~6度音程を交互に繰り返す伴奏が全曲リズムを刻み、夢想的なカンタービレ旋律が乗っていくが徐々に力感を付けて突如フォルテに達する変化、隠されたストーリーの描写に聴こえる。展開部と思われる後半の始まりから転調の妙でより夢想的な世界に引き込み素晴らしい、フォルテ音で一旦展開部を閉じ、再現部となる。後半も反復され時間は13分ほどと長くなるが、特に展開部はもう一度聴きたい魅力にあふれる。"うんざりする楽章"と書く解説者もいるが、とんでもない話である。
終楽章、プレスト、ややおどけた味のロンド主題、ホグウッドは程よい急速感と活気でまとめる、ロンド主題の間に挿入される部分の充実、ロンド主題そのものの変奏も聴かせ、最後には各パートのソロの交代をpppで引き付けで終わる。

60~70番代、聴きどころ満載のようで、しばらく集中して聴きたいです。

category: F.J.ハイドン

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N.アーノンクール:ハイドン交響曲第100番、68番  

T.ファイの「軍隊」を聴いたら、ほかにも聴いてみたくなる、そこで今日は師匠のN.アーノンクール指揮、RCOのハイドン交響曲100番「軍隊」と68番です。妙な取り合わせですが、アーノンクールはロンドン・セット全集の中に何故か68番を追加しています。100番ではトルコ風パーカッションを盛大に鳴らします、たしかゲオルク・ショルティも派手に鳴らしていましたが、それを超えます。それがRCOの美音とともに痛快にコンセルトヘボウに響きわたる。

アーノンクール hay sym

100番「軍隊」序奏は滑らかに美しく始まるが、短調に入ったフォルテではtimpを力強く打ち鳴らし、ここでもう打楽器の凄味を聴かせる。主部のテーマはロンドン・セットの中でも一番チャーミングなものでしょう、それを軍隊調に仕上げ、ミスマッチじゃないのがさすがハイドン。アーノンクールは木管に続き弦が滑らかに動機を奏で、動機の最後の音からトゥッティになる、この武骨なまでの力感がいい、また旋律に細かな表情付けがあり、アーノンクールらしいレガート表現も織り込み、いつもの手腕で聴かせる。弾むような第二主題で盛り上がる展開部、再現部、終結部へのエネルギッシュな推移も見事、ナチュラルtpを使っているが、そのブリリアントで爽快な吹奏がさらに気分を高揚させる、tpはこれでこそ存在価値があると感じる、輝かしく第一楽章を閉じる。
第二楽章、T.ファイよりはゆっくりめ、RCOの弦や木管が美しく聴かせた後、トルコのパーカッション、シンバルやトライアングルはびしっと響くが、グランカッサがウーファーをいっぱいに揺らすような音圧でくり出す、軍隊ラッパはナチュラルtpがまさにそれらしく吹く、再びパーカッションが圧倒して終わる。
メヌエットはやや速めにきりっと決める。
終楽章、ロンド風で101番「時計」の第一楽章と同系の小刻みでキビキビした主題、アーノンクールはあまり急がず、一音ずつくっきり粒立て、強弱の対比で緊張感を出す、そこへパーカッションが入って痛快に決める。

68番、ロンドン・セットでもパリ・セットでもない中期の傑作を紹介したかったのか?一曲だけ追加されています。たしかに魅力的な曲です。
第一楽章のテーマは爽やかなものです、提示部だけでとても良い、展開部を経て再現部に入ったのはわかるが、そのまま展開部が続いているような内容は見事。
第二楽章のメヌエットはさらりとして、あまり存在感は強くない、トリオは特徴的だが短かい、長大な次の楽章の前奏のようでもある。
第三楽章、22番「哲学者」の第一楽章と同系か?このアダージョは何やら描写しているような謎めいた楽章、アーノンクールの聴かせどころでしょう、T.ファイのハイデルベルク響のような透明な弱音で始まる、3度音程を交互に鳴らす音形が全体の骨格のようで、わざわざ強調して聴かせる部分を置く、やたら長い楽章だが不思議な魅力、聴き手は謎解きの姿勢で引き込まれる;後半では謎の扉が開かれそうな?推移が素晴らしい、がアーノンクールだけが解明して演奏している、とも思われる^^;長い後半も反復されるが、もう一度聴きたいと思わせるのが作品、演奏共々凄い、俗世的な感情表現とはまた違う、心の深層に響くような不思議な世界感に引き込む曲はモーツァルトにもベートーヴェンにも思い当たらない、ハイドンを真の天才と感じるところ。
終楽章はロンド風、飛び跳ねるような元気な主題、ファゴットが主題を印象的に奏でる、快調な推移で変奏的書法も加え、終結前には各パートからソロの掛け合いがあり、これもまた謎めいている。

category: F.J.ハイドン

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最後の紅葉  

昨日、あれこれ用事を済ませた後、市内の郊外へ行きました、午後3時。
だいぶ散った紅葉の色づきはよかったものの、空気の澄み具合、日光の角度でなかなか思ったように撮れないもんです;山の北斜面全体がちょうど日光の角度で一斉に葉っぱが透かされる時間帯があって、そこに青空を入れた写真を撮りたかったのですが遅れました;また来年撮りましょう^^;
11 30a
11 30b

category: 風景・散策

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T.ファイ:ハイドン交響曲第99、100番「軍隊」ほか  

21集目を迎えたトーマス・ファイのハイドン交響曲シリーズ、今回は99番、100番のロンドン・セットに「突然の出会い」序曲を冒頭に入れた選曲。T.ファイらしい斬新な演奏ではありますが、意外に全体のまとめ方は標準の域、特に驚くところはないですが、語るような緻密なデュナーミクはさすが、録音も今回はやや距離を置いたサウンドに聴こえます、もちろん鮮明ですが、今までのように金管が鋭く前へ出た響きにはなりません。"鳴り物入り"の曲、という音響バランスもありそうです。

さて冒頭には歌劇「突然の出会い」序曲が入ります、トルコ風が人気だった当時、中東を舞台とした歌劇がありました、当然シンバル、太鼓を派手に打ち鳴らす快感、曲調も異国らしい雰囲気が作曲家を問わず、共通のものがあるようです、T.ファイはA.サリエリの歌劇の序曲集も痛快な演奏で録音していますが、歌劇「タラール」の序曲がやはりトルコ風→参考動画:A.サリエリ、「オルムスの王アクスール」序曲(「タラール」序曲と同曲)、別の演奏ですがT.ファイはこれより快演です。モーツァルトの「後宮からの誘拐」も同系の作品ですね。

fey hay 100
2013年3月 トーマス・ファイ指揮、ハイデルベルクSO

100番「軍隊」を聴く前の耳馴らしに「突然の出会い」は良いです。T.ファイは切れ味のよい快演です。
99番序奏はやや速めで涼やか、トゥッティの強奏が濁って響かないのはいつもながら良い、主部は快活にエッジを立て、弦楽、木管それぞれの弱奏はしなやかで美しく、ダイナミクスが心地よく打ち込んでくる。もはや当たり前というべき現代的演奏を先導しているような名演でしょう。
第二楽章を聴いていると、S.クイケン&プティット・バンドにも負けない透明に整った美しさ、ほんとに古楽器かと思える。
メヌエットもリズムに単調ではない、細やかな味わいを付ける。
終楽章は快速なテンポできっちり整えながら音の渦に巻き込むかのように進める。
100番「軍隊」序奏の弦の開始が美しい、短調部分力強さは期待どおり、休符をじっくり間を取り次に入る。主部もチャーミングに入る、そしてトゥッティのがっしりくる力感、第一楽章を堂々と組み上げる。細かく聴けば、一音ずつのデュナーミクも味わい深く飽きの来ない演奏。再現部から終結にかけての高揚感もさすがT.ファイ、ツボはばっちりv、エネルギッシュに畳み込んで終わる。
第二楽章はアレグレットらしく、ゆったり行進するリズム、シンバルほか鳴り物はずっしり痛快に入れます。
メヌエットは普通くらいのテンポだが、リズムを軽やかに耳当たりのよく進める。ダイナミクスをスパっと切り、重たくしない。
終楽章は心地よい快速、弱奏と強奏の対比をつけ、緻密なアンサンブルで引き付ける、やはりデュナーミクの細かさは並みではない。
T.ファイとハイデルベルク響はまさにハイドンとエステルハージ・オケのような関係でしょう、客演でちょっとやそっとでできる演奏じゃないですね。

salieri 序曲
A.サリエリ、歌劇序曲、間奏曲集

サリエリの作品も聴きごたえ十分、さすがT.ファイ。

category: F.J.ハイドン

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